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「ガンダム レコンギスタの囹圄」第4話「ケルベスの教え子たち」前半 [Gのレコンギスタ ファンジン]

「ガンダム レコンギスタの囹圄」


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第4話「ケルベスの教え子たち」前半



(OP)


シラノ-5行政区の大広場に設けられた祝賀会場では、もう丸3日も祭りが続いているという。

キャピタル・テリトリィの特別祭の2日も含めると、クレッセント・シップのクルーは1週間近く祭り漬けの日々を送っている。そうなった理由は彼らの送別祭にレイハントン家再興の祝賀祭が加わったからである。勤勉なトワサンガ住民にとっては、おそらく一生に一度のことになるはずだった。

ノレドとラライヤがその祭りに参加したのは最終日からだった。シラノ-5の住人たちが異様な興奮状態で彼女らを出迎えたのはそのためだった。法王とウィルミットを含めた4人は、文字通り御輿の上に担ぎ上げられ、市内を練り歩いたのち歓待の席に座らされ、予定のプログラムを見せられた。

法王は体調を崩して途中で退席したが、残りの3人はラライヤが操縦するG-ルシファーの手の上にのせられてレイハントンの屋敷まで行進しなければならなかった。それが決められた予定通りのプログラムだったのである。ノレドはここでは姫さまと呼ばれていた。

3人が落ち着いたのは翌日の昼になってからであった。

ノレドとラライヤは疲れ切ってまだ寝ている。クラウンに乗せられた際に睡眠薬を投与されて眠ってから、一度も眠っていなかったのだ。昼になっても彼女たちはひとつのベッドで眠りこけていた。

先に目が覚めたのはウィルミットであった。クラウンの運航長官になってから休みなく働いてきた彼女は、ラライヤが空から落ちてきて以来の騒動で、自分がすっかり怠け者になってしまったのではないかと気に病んでいた。クレッセント・シップの出立によってすべてが元に戻るとの彼女の淡い期待はすぐさま裏切られたのだと理解するしかなかった。

ウィルミットは、自己紹介する10人の女中の挨拶を上の空で聞き流し、食事の準備と掃除の指示だけ出すと、レイハントン家の屋敷の中をひとりで見て回ることにした。そして、書斎でアイーダとベルリの幼少時の写真を見つけた。気品ある両親と賢そうな姉、やんちゃそうな小さな男の子。

ウィルミット(ああ、これはベルリに違いない。昨夜寝る前も、ノレドさんとラライヤさんはこの家は2度目だといっていた。そうか、ベルリはこの写真を見てしまったのか・・・。それではわたしは・・・、わたしの役割は終わったということなのだろうか・・・。ベルリはまだほんの子供だと思っていたのに、モビルスーツなどに乗り、月の裏側の世界や金星の世界をわたしより先に知ってしまった。それを楽しそうに話してくれることもなく、ひとりで考え、世界1周へ旅立ってしまって・・・。もうわたしがベルリにしてあげられることはないというのだろうか。ベルリは月の王子さまになって、わたしの元から永遠に去っていくのだろうか・・・)

ジムカーオ大佐から受けたレクチャーでは、レイハントン家は永らくトワサンガの王家として君臨してきたという。

ピアニ・カルータ、つまりクンパ大佐が諸悪の根源で、彼の考え方に触発された人間たちがレコンギスタを目指し始め、ドレッド家の反乱によってレイハントン家は当主と妻を失った。その子供たちは地球へ亡命させられた挙句に施設に預けられた。トワサンガではドレッド家が権力を握り、その傀儡のハザム政権が作られ、地球と同じように戦争の準備を開始してレコンギスタを目指した。

武力拡大の原動力となったのが、宇宙世紀時代の記録である「ヘルメスの薔薇の設計図」というもの。それとそれをもとに作られたあらゆる兵器を破棄して回収できない限り、フォトン・バッテリーは2度と運ばれてこない。だとすれば、クラウンが時刻通りに運行される意味すら失ってしまう。

ノレド「おばさまー!」

ラライヤ「お食事ですよー」

元気な声が屋敷に響き渡った。ふたりはいつの間にか起きて、すぐさま食堂へ行ったようだ。ウィルミットは苦笑してから静かに頷いて書斎を後にした。

ウィルミット(ベルリはこの部屋を使うことになるのだろうか・・・。本物のお父さまと同じように。地球からこんなに離れた月の裏側で・・・)






そのころ地球では、ケルベスが挽肉の香辛料炒めを詰めた揚げパンを喰らっていた。

メガファウナを離れたケルベスは、キャピタル・ガード養成学校の生徒に車で迎えにこさせ、その日のうちに街を目前にした場所まで舞い戻っていた。

狭い部屋で10人ほどが同じ食事を摂っていた。彼らはキャピタル・ガード養成学校の生徒たちで、ケルベスの教え子たちであった。彼らはガードがザンクト・ポルトに上がってしまってから、学校のあるビクローバーに戻ることもできず、自宅待機の状態が続いていたのだ。

ケルベス「食いながらでいいからよく聞け。知っての通り、キャピタル・テリトリィの民主主義はお飾りで、アメリアのような成熟した民主国家ではない。法王庁中心の宗教国家が、建前上民主国家のふりをしてきただけだ。何もかもフォトン・バッテリー配給の権利を持っていたおかげでそれが認められてきた。もしこの特権がなくなったらこの国はどうなると思う?」

生徒A「(急いで食べ物を飲み込み)ただの未熟な法治国家ではないでしょうか」

ケルベス「その通りだ。アメリアでは有能な若者は法学部で法律を学ぶ。法学部出身でなければ政府の要職に就けない。対してキャピタル・テリトリィではガードの養成学校を出るか、神学校を出て神職に就くか、一般大学を出てクラウン運航庁に入るかしかエリートの行き場はない。官僚はキャピタル・ガード経験者の天下り先でしかないのだ。ではその国で軍隊がクーデターを起こした場合はどうなるか」

生徒B「アーミーもガード候補生から選抜しているので、ガード、アーミー、官僚機構のいずれも国民の支持を失うはずです」

生徒C「官僚機構の信頼が揺らいで、政府への支持が高まります」

生徒D「しかもクラウンも停止している!」

生徒A「法王も亡命している。クラウンも止まったまま。ガード養成学校出身者は信頼を失っている」

生徒B「ああ、そうか。反エリート主義が蔓延するということでしょうか」

ケルベス「そうだ。未熟な民主国家でも安定した国家であったのは、実は官僚機構が機能して国民の支持を得てきたからなのだ。それがなくなり、未熟な政府への期待が高まったからといって、未熟な政府が突然有能になったりしない。君らはこの状況をどう思うか」

生徒A「絶対におかしいです(他の生徒も一様に頷く)」

生徒D「自分はアーミーは解体されるのだと思っていました」

ケルベス「その通りだ。アイーダ・スルガン総監が発表した『連帯のための新秩序』を受け入れ、アーミーは解散、ガードが吸収して元の鞘に収まるはずだった。新規開発されたカットシー、エルフ・ブルック、ウーシァ全部解体して資源として使い、レクテンとレックスノーだけの時代に戻るつもりでいた。政府は決定を承認するだけだ。しかし、誰かが状況を操作して現在に至ったとしかオレには考えられんのだ。そこでお前らに作戦を伝える。(一同息をのむ)オレたちはこれからキャピタル・アーミーを乗っ取る。これの意味するところは分かるか?」

生徒B「官僚への信頼を取り戻すということですか?」

ケルベス「それもあるが、要するに敵を燻り出すのさ。オレたちはいま誰と闘っているのかわからんのだからな」






冬のゴンドワン北部は昼でも冷たい風が吹きすさんでいた。ロルッカとミラジは散歩に出ると告げて山の方向へ歩いていた。

ミラジ「じいさんは何でG-セルフに核兵器が仕掛けてあるなどとウソをついた?」

ロルッカ「(肩をすくめて)本当に王子はトワサンガへ戻らないのか? 王子がトワサンガへ戻るとしたら、G-セルフをあの男に渡すようなことになれば・・・、我々は戻れなくなる。あの男はマスクだろう? わたしにはそう見える。マスクはベルリ王子を殺そうとしたんだぞ。お前こそどうかしている」

ミラジ「だったらどうしろというんだ? 我々はもう地球に降りてしまった。お尋ね者だ。どこも我々を受け入れてはくれないし、レコンギスタしたスペースノイドは少数だ。クンタラのように反乱も起こせない。そもそもゴンドワンとアメリアにモビルスーツを売りつけて稼ごうなどとお前が言うから・・・。あの男がマスクだろうがクンタラだろうが関係ない。いまは彼にすがるしかないんだ」

ロルッカ「ここは寒い。オレは嫌だ。王子に土下座してでも許してもらい、もし王子がトワサンガへ帰るというならついていく覚悟だ。クンタラの世話になどなってたまるか」

ミラジ「お前の考えは分かった。だがあいつらを見ただろう? 脱走すれば殺される。もうすぐ原子炉が運ばれてくるから、その手伝いはやってくれよ」

ロルッカ「地球は寒い。大きすぎて温めることもできない。こんなところに住むのは気が狂っている」

ミラジ(このじいさんはもう地球が嫌になっているのか・・・)

地球にやって来てまだ1年しか経っていない。ロルッカは武器商人の仕事をしながら富を蓄えていったものの、その使い道のない野暮な男で、おまけにやもめ暮らしである。

元来ロルッカは女にもてるタイプではなく、意固地なほどに真面目なのが取り柄であった。それが地球へやって来てから緩み始めて、酒を飲むようになった。穀物の多く採れる地球では多くの種類の酒が造られており、トワサンガのように気分転換に少量を口にするのと違い、意識を失うまで飲んでも誰も咎めないし、そうした人物は大勢いた。

これが地球なのだとミラジは感嘆する。残量や汚染を気にせず好きなだけ清浄な空気が吸えて、屋外の浄水施設を管理するだけで大量の水がいつでも使える。人々は労働するがそれはトワサンガのように命に係わる義務を負っているわけではなく、金儲けの手段でしかない。

こんな環境で生まれ育てば人は必ず腐り、知能は発展しない。地球環境で生まれるニュータイプがあったなら、それはよほど過酷な生活をしてきたか、突然変異でしかないだろう。

声を発してもマイクがなければ相手に届かず、ミノフスキー粒子を撒かれればそれさえ失う環境に生きる緊張感など、地球生まれに育つはずがない。ミラジは安穏とした地球環境に慣れ親しみながらも、ここでロルッカのように規律を失ったら自分は終わりだとも感じていた。

そのためにも何らかの組織に属し、そのために義務を果たすことは必要であった。

ロルッカ「なぜこんなに冷え込むのだ?」

ミラジ「じいさんはさっきから寒い寒いというが、宇宙空間に放り出されることを思えばこんな寒さなどどうということはない。空気が大量にあるから寒いんだ。おまえさんはトワサンガで寒さというものに恐怖を感じるようになっているだけじゃないかな」

ロルッカ「寒さに恐怖・・・。ああ、確かにそうかもしれん」

ミラジ「春になれば勝手に温まってくるのが地球だ。空気を暖めるために多くの機材が正常に作動しているかチェックしなきゃいけないトワサンガとはまるで違うんだ。オレはレコンギスタのどさくさに紛れて地球に降りてきたが、こんなに快適なものならもっと早く来てもよかったくらいだ」

ロルッカ「レジスタンス活動を悔やんでいるのか? 王子は裏切れんだろう?」

ミラジ「おまえさんがハッタリをかましてくれたおかげで王子を裏切らずに済んだ。それにはまぁ、感謝しなくもないな」

ロルッカはフンと鼻を鳴らしていつものように酒場へ出掛けて行った。






世話になった家庭に丁寧にお礼したのち、ケルベスと生徒たちは農業用ピックアップトラックの荷台に乗ってキャピタル・アーミー簒奪のための作戦行動を開始した。

生徒たちはまだ大人とは呼べない年齢で、皆して緊張するばかりだった。震えている生徒たちの背中をケルベスがひとりずつひっぱたいて気合を入れる。

舗装されていない郊外をガタガタと揺られながら出ると、立派な舗装された道路に出た。運転している生徒が運転席から顔を出して訊ねた。

生徒E「どこに行けばいいんでしょう?」

ケルベス「アーミーの拠点はどこだ?」

生徒A「警察庁だったはずですけど」

ケルベス「では、警察庁へ行け」

いきなり敵の本部に乗り込むと聞いた生徒たちは不安げな表情でお互いの顔を見た。庁舎の前には4機のカットシーが並んで周囲を威圧している。

農業用のピックアップトラックは不釣り合いな豪勢な庁舎に横付けされた。颯爽と車を降りたケルベスは生徒たちを手招きして降ろすと、後についてくるように指示して正面玄関から乗り込んでいった。不安げな生徒たちはお互いに抱き合わんばかりに身を寄せて、震える足でケルベスの後をついていった。

ケルベスが庁舎の中へ入っていくと、若い兵士が彼に気付いた。警察庁の庁舎だというのに、疲れ切った表情のアーミーの兵士たちがそこらじゅうで雑魚寝をしている。どの顔も若い。

兵士A「ケルベス先生! ケルベス先生じゃありませんか。どうなさったんですか?」

ケルベス「クラウンが動かなくなったんでな(ケルベスは後ろに控えた候補生たちを指さし)教育実習だ。お前ら、ずいぶん疲れてそうだな」

人懐っこそうな顔の兵士が大声で別の兵士たちを呼び寄せた。眠たそうな顔の兵士も起き上がり、ケルベスの周りにはたちまち人だかりができた。彼らは口々にケルベスの名を呼び、挨拶をするのだった。ケルベスを取り囲んだ一団はワイワイと騒ぎながら軽口をたたき合った。

ケルベス「みんな元気そうだな。教え子たちがこうして活躍しているのを見るのが何より楽しみだよ。(一同を見回し)懐かしい顔ばかりだ」

兵士A「教官どのが来てくださったなら、治安出動のご教授などを賜りたいものです」

ケルベス「警察の連中はどうしたんだ?」

兵士B「それが(肩をすくめて)出勤してこないのですよ。全部こちらに丸投げです」

ケルベス「ここには若い連中しかいないようだが、現在アーミーの指揮は誰が執っているんだ? そのお方は治安出動のご教授をしてくれないのか?」

兵士C「ここにはアーミーしかいません。アーミーはご承知の通り急造の組織で、ガード養成学校を出たばかりの人間ばっかりですよ。それにもうすぐ解体されますし」

兵士の話を聞いて、候補生たちが互いに顔を見合わせた。

ケルベス「そんなこったろうと思った」

ケルベスは若い兵士たちに案内されて指揮所に入った。指揮所には卒業したばかりの生徒もおり、候補生たちは顔なじみの先輩を見て少し安心したようだった。

ケルベス「よし、全員集合!」

この一言で、その場にいた全員が一斉に駆け寄り、整列した。

ケルベス「では訊くぞ。なぜアーミーは反乱を起こしたのか」

兵士C「(困惑した表情で当たりを見回しながら)誓って自分らは反乱など起こしていません」

兵士A「(列から一歩前へ進み出て)反乱など起こすはずがないです。調査部の上官からの指示で、法王亡命の護衛にガードを連れて行くからあとは若い連中でアーミー解体の手伝いをしろとしか言われてないのです。引継ぎは警察庁でやるからというので、モビルスーツもこちらに移動させたのですが、そうしたら警察庁は休みになったとか連絡が入り、ひっきりなしにくる治安出動要請に応えるだけで精一杯。みんな寝不足で倒れそうになるまで国家のために尽くしています。反乱など」

兵士たちは一様に首を横に振った。その顔を眺めたケルベスは満面の笑みを浮かべて頷いた。

ケルベス「そうだろうと思ったよ。残っているアーミーは全部で何人だ?」

兵士A「詰めている者は総勢500名。若い者ばかりです。反乱というのはいったいどういう話なんですか?」

ケルベス「お前らは嵌められたのさ。いまお前らは反乱軍ということになっている。キャピタル・ガードの連中はお前らから逃げてクラウンでザンクト・ポルトに避難したことになっている。あいつらが戻ってきたら、お前らは反乱軍として処分される。口封じだな」

寝耳に水だったのか、兵士たちの間に動揺が走った。

ケルベス「だがオレはお前らをみすみす死なせるつもりはない。いまからアーミーの指揮はオレが執る。この中で不服のある者はいるか?(全員がノーサーと返事をする)だったら治安出動している者も含めて全員庁舎に呼び戻せ。時間はないぞ。それから警察長官に連絡だ」






アメリアの湾口は船であふれ返っていた。それを眼下に見下ろしながら、幾台ものモビルスーツがメガファウナに補給物資を運び入れていた。

ドニエル「なんでこんなに海に船が浮いているんだ?」

副艦長「クンタラですよ。姫さまの法案が通ったでしょ。だから大挙して押しかけてきてるんです」

ドニエル「なーる」

ハッパ「モビルスーツは本来こういうことのためにあるんだ。キリキリ働けよ、ベルリ」

ベルリ「(G-セルフで荷物を運搬しながら)もちろんそうですけど、天才クリムがあんなことして、G-セルフやアルケインをぼくらが使っちゃっていいんですかね? アルケインは姉さんの機体なのだから、アメリアに残していっても」

ハッパ「お前の姉さんはもうこんなのいらなくなったんだ。彼女の武器は法律と地位。もうモビルスーツには乗らないよ」

ベルリ(姉さんは頼もしくなった。あの「連帯のための新秩序」だって誰の力も借りずにひとりで書き上げた。それなのにぼくはまだまだ何をしたらいいのか迷っている。母さんにも何となくあわせる顔がない。ぼくはビーナス・グロゥブで見たことをなんて母さんに伝えたらいいんだろう?)

ドニエル「運び終わったらすぐに出航するぞ。ベルリ、どんどん運べよ。サボるなよ」






ビルギーズ・シバの第1政策秘書カリル・カシスは、法案審議が予想以上に長引いていることに内心で苛立っていた。だがその美しい顔にはおくびにも出さない。

議院内閣制のキャピタル・テリトリィでは、政府は常に与党であり、野党が質問形式で審議を行っていた。しかし今回はすべて議員立法であったために、作成者の議員以外に詳しい者がおらず、審議がたびたび止まって時間を空費していた。

一見とても有能そうなビルギーズ・シバの外面には時間的な制約がある。カリル・カシスはいつまでもつかとヒヤヒヤせねばならなかった。

カリル(ジムカーオ大佐はまだガードを掌握しきれていない。アーミー討伐の手柄で箔をつけておかないと、ベルリとかいうレイハントン家の小僧がしゃしゃり出てくると何が起こるかわからない。ベルリは運航長官の息子らしいけど、クンタラのものになるキャピタル・テリトリィにあんたなんかいらないんだよ。レイハントンの息子なら、月で王子さまでもやっていればいい)


(アイキャッチ)


この続きはvol:28で。次回もよろしく。



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「ガンダム レコンギスタの囹圄」第3話「アメリア包囲網」後半 [Gのレコンギスタ ファンジン]

「ガンダム レコンギスタの囹圄」


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第3話「アメリア包囲網」後半



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グシオン総監が世界に向けて訴えた宇宙からの脅威。それはメガファウナがビーナス・グロゥブを目指していたころに発表された。

宇宙からの脅威が差し迫っており、地球はいますぐ戦争を止め団結しなければならないとの彼の訴えは、広く世界に受け入れられ、また大陸間戦争の相手であったゴンドワンを絶望させる効果があった。彼らはクンパ大佐の求めに応じ、ガランデンを完成させながら、またクルーまで提供していたのに、宇宙からの脅威についてまったく情報を持っていなかったためである。

アメリアの反スコード教的進歩主義の打倒と宗教的連帯への回帰を訴えていたゴンドワンは、トワサンガの存在の公表と、続いてやってきたビーナス・グロゥブのクレッセントシップにアイーダが乗っていたことで一気に求心力を失った。アイーダが世界巡行中に発表した「連帯のための新秩序」は、ゴンドワンの宗教回帰とアメリアの進歩主義の折衷案であり、それを否定する思想はゴンドワンにはなかったのである。

ゴンドワンの真の狙いは、暖かい地域への領土拡張であった。そのための言い訳が封じられ、戦争継続が困難になったとき、現れたのがクリム・ニックだったのだ。クリムの思想は覇権による世界統一と新秩序構築。彼にはアイーダを否定する思想があった。ゴンドワンは屈辱を飲み込み、アメリア大統領の息子であるこの美しい青年をゴンドワンに受け入れた。

クリムの戦友であり愛人であるミック・ジャックは、自分の恋人がまるで映画スターのようにもてはやされるのを楽しんで見ていた。一方で心配もあった。

ふたりはオーディン1番艦のモビルスーツデッキに戻っていた。クリムは中佐に2階級特進していたが、モビルスーツに乗ることをやめるつもりはなかった。彼はゴンドワンの最新型モビルスーツ、ダ・カラシュの整備に余念がなかった。

ミック「これでアイーダさまと完全に決別することになりましたね」

クリム「(コクピットの最終調整をしながら)元々オレはあの女が好きではない。カーヒルのようなヒヒ親父と寝る女だぞ。箱入り娘というのはああいうものなのだ。最初から利用するつもりで近づいたのだから、いまも関係は同じだ。十分利用させてもらっている」

ミック「天才クリムは最終的に何を目指すのです?」

クリム「(ミックに顔を近づけながら)内緒だぞ。(小さな声で)オレは世界政府の初代大統領になるつもりだ。アメリアにいてはアイーダが邪魔だ。世界政府の大統領になるのに、踏み台がアメリアだろうがゴンドワンだろうが関係ないさ」

そこへオーディン1番艦艦長ドッティ・カルバスより連絡が入った。

ドッティ「クリム中佐。たったいまキャピタル・テリトリィがアメリアを非難する声明を発表いたしました。もしかして(楽しそうに)キャピタル・テリトリィのビルギーズ・シバが無能だという噂は本当かもしれませんね」

クリム「スコード教の総本山で真の民主主義が再興できると思うか? お飾りなのさ」

ドッティ「アメリアとキャピタル・テリトリィの連合軍が攻めてくるかとヒヤヒヤしましたよ」

クリム「確かにキャピタルの動きは少し変ではあるのだが・・・、ドッティ、キャピタルが世界の中心である限り、ゴンドワンは常に寒冷化の恐怖に怯えて暮らさねばならない。世界を闘争のために団結させ、ゴンドワンに世界政府を作ることができれば、とは考えないか?」

ドッティ「それは愉快。お付き合いさせていただきますよ。理想に準じるのは軍人の本懐ですから」






アイーダが上院に提出した「クンタラ亡命者のための緊急動議」は、クリム・ニックの「闘争のための新世界秩序」と名付けられた政治宣言と、キャピタル・テリトリィ首相ビルギーズ・シバによるアメリア批判声明によって思わぬ方向へ議論が進んでいた。

現在のアメリアは上院を旧グシオン・スルガン派が多数を持ち、下院はズッキーニ・ニッキーニ派が多数を占め、ねじれ状態にある。それでもクンタラ差別の少ないアメリアで人道のための法案が否決されることは少なく、緊急動議の賛成多数は揺るがないと思われていた。

ところがズッキーニ派はグシオンの政治宣言がゴンドワンに奪われたと騒ぎ立て、その責任をアイーダになすりつけてきたのだ。上院議員が提出した緊急動議が下院で早々に可決され、上院で紛糾するのは極めて異例の事態であった。息子のゴンドワン亡命で立場のなくなったズッキーニは、政治経験の少ないアイーダに狙いを定めて攻撃する作戦に出てきていた。

議員A「我々も困っているのですよ。(議会から拍手)グシオン総監の娘が父親の政治宣言を否定する『連帯のための新秩序』を勝手に発表する。ところが頼みのクレッセント・シップが宇宙に還ったとたんに政治状況は一変。アメリアの若者がゴンドワンでグシオン総監のお考えと同じ『闘争のための新世界秩序』を発表してあっという間に世界中の賛同を得ている。これではあなたひとりにアメリア議会が振り回されているようではありませんか」

アメリア議会は、政府への質問形式ではなく、議員同士の自由討論形式で質疑が進む。ズッキーニ派が送り込んだ背の高い西部出身議員の前に立ったアイーダは、後ろに控えた父が残したふたりの秘書とともに必死で敵とやりあっていた。討議はチーム戦なのである。

アイーダ「ここは、わたくしが発表した『連帯のための新秩序』を議論する場ではないことは議員もご承知のことと思います。「クンタラ亡命者のための緊急動議」の是非を問う場なのです。人道問題は一刻の猶予もならないために緊急動議として提出させていただきました。ありがたいことに下院の多数の方々のご賛同もいただき、下院はすでに賛成で可決いたしております。上院はいったいいつまで議決を先延ばしされるおつもりなのでしょうか」

議員A「もとよりアメリアはキャピタル・テリトリィよりやってきたクンタラ亡命者を積極的に受け入れることで産業基盤を発達させ、よその地域より文明再興が先んじた過去があります。500前には月よりの使者がやってきて、地球人を月まで連れて行ったこともあるとか。多くの人間によって多くの夢を叶える大地、それがアメリアなのは言うまでもありません・・・」

討論は続いている。その2階の傍聴席には、アイーダにクンタラの亡命者枠拡大を陳情したクンタラ代表団が陣取っていた。彼らはクンタラの中でも資産家たちで、世界中のクンタラを人道支援していた。

陳情者B「そういえば君は(隣のAに向かって小声で)今来(いまき)、古来(ふるき)という言葉を聞いたことがあるか」

陳情者A「(討論の行方に熱中しながら)いや、知らんな」

陳情者B「オレも幼いころに婆さんから聞いただけなのだが、クンタラにはもともと地球にいた者がいて、彼らを古来、新しくやってきた連中を今来と呼んで区別していたというんだな」

陳情者A「もともと地球に住んでいたのに『古来』なのかい? 昔にやって来た者と最近やって来た者がいるということだろう? 古来はどこから来たんだ?」

陳情者B「小さい頃からそれが不思議だったんだ。いま、あの議員の話を聞いていてふと思い出したのだが、『来る』って、どこから来たのだろう? オレたちのルーツのことさ」

陳情者A「(カリカリしながら)あの議員、いつまで粘るつもりなんだ」

陳情者B「アイーダさまはこれがデビュー戦なんだろう? すごい活躍じゃないか。・・・なあ、もしかして、地球にはクンタラという身分階級はなかったんじゃないか。クンタラというのは宇宙にしかなくて、古来(ふるき)は繁殖のために連れてこられ、今来(いまき)は宇宙の連中から・・・」

議長によって討論が打ち切られ、即刻採決の運びとなった。緊急動議は賛成多数で可決した。会場には万雷の拍手が鳴り響き、陳情者たちは互いに立ち上がって握手を交わした。

陳情者B(地球はクンタラの牧場じゃなかったのか。だとすれば地球人はみんなクンタラの末裔となる。地球人などというものは、宇宙世紀時代にすべて滅んだことがあるのではないのか・・・)

陳情者C「亡命者受け入れの件はこれでいいとして、やはり戦う必要はあるのじゃないかな。ゴンドワンとは早急に同盟を結ぶべきだ。カリブ海が欲しいのならくれてやればよい」

彼の意見は少数派だったようで、口々に否定されるのでそのまま黙ってしまった。だが、アメリアの中にはグシオン総監の従来の交戦論を支持する層も一定数いたのである。






レイビオ「よく我慢なされました、姫さま。素晴らしい初登壇です。」

レイビオは興奮を隠せないように早口でまくし立てた。彼はアイーダが思っていたよりはるかに有能だったことに驚き、用意していた辞表を捨てる決心を固めたばかりだった。

もうひとりの女性秘書セルビィも同様であった。「連帯のための新秩序」に否定的だったふたりは、相手がそれを攻撃材料に出してきたとき、秘かに負けを覚悟していた。しかし、アイーダは一切相手にせず乗り切ってみせたのだ。

3人は黒塗りのハイヤーに乗り込み、前後を護衛に固められながらアメリア議会を後にした。アイーダには自宅のほかに上院議員宿舎と総督府の官舎が与えられていたが、彼女は警備を考えて総督府の官舎に寝泊まりすることが多かった。

帰宅しメイドを下がらせた彼女は、隠し部屋に忍び込んだ。そこには通信機が隠してあった。






ベルリ「こんなときに母さんは何をしてるんだ!」

フォトン・バッテリー節約のために遠浅の海岸に停泊したままのメガファウナでは、ハッパ開放祝いの祝宴が開かれていた。たくさん作られた軽食が屋外に持ち出され、砂浜に張ったテントで各自が好き勝手に楽しむのがメガファウナ流であった。

日本で購入したラジオにすっかりはまっているベルリは、ラジオのニュースでキャピタル・テリトリィのアメリア非難声明を知ったのだった。夜空には美しい星々が瞬いていた。

ハッパ「(ビールを片手に)なんて言ってるの?」

ベルリ「姉さんが出した『連帯のための新秩序』をシバ首相が放棄するって。東アジアじゃ大人気の政策だったのに」

ハッパ「東アジアは森林資源も豊富で、熱帯雨林もあって、ソーラーパネル設置も進んで、戦争もないのだろう? 人口も多いからフォトン・バッテリーの配給も多いし、2・3年はエネルギーが持ちそうじゃないか。オレも出身はあちららしいんだよなー。移住も考えなきゃな」

ベルリ「ハッパさんはアメリア人でしょ?」

ハッパ「有休も恩給もないのに、アメリア人なんて何のメリットもありゃしないよ。」

そこにケルベスが姿を現した。

ケルベス「ちょっとこいつ借りていいかな」

ハッパは頷いてビールを片手にアダム・スミスがいる輪の中へと入っていった。

ケルベスはベルリを森の中の暗がりに連れて行くと、真面目な顔で話し始めた。

ケルベス「キャピタル・ガードの一連の動き、ベルリ生徒はどう思う?」

ベルリ「戦友じゃないんですか?」

ケルベス「お前はまだ卒業していないのだから、戦争が終わればオレの生徒さ。(声をひそめて)実をいうとオレはウィルミット長官に頼まれてまたメガファウナに乗ることになったのだが、長官はどうやらアイーダさんと連絡を取り合っていたそうなんだ。おそらくは今回の法王亡命とフォトン・バッテリー供給停止の件を事前に知らせたと思うのだが、何せあっちはアメリア軍総監さまだからな、だからといってキャピタル・ガードまでザンクト・ポルトに上がる必要はない。たしかに指導者を失ったアーミーが焦ってあの無能のビルギーズ・シバを縛り上げてクーデターを起こそうという気配はあった。当初はガードがアーミーを制圧して解体させる手はずだったのに、なぜかガードは長官と一緒にザンクト・ポルトに上がってしまった。かなりの人数がいるのに、全員。家族を残したままだ」

ベルリ「キャピタル・テリトリィは治安が悪化しているのでしょう? ガードがいなくなるなんて」

ケルベス「そうなんだ。ガードがいなくなって、アーミーは慣れない治安出動に追われていると聞く。軍隊が法律に則って市民の暴動を抑えられるとはとても思えない」

ベルリ「するとアーミーは市民の支持を失う」

ケルベス「そうなんだ。これには何か政治的な意思が働いているはずだ。アーミーは確かにジュガンやベッカーの影響で暴走気味だった。ガードが押されていたこともたしかだ。しかし、元はといえば全員オレの教え子だ。クンパ大佐、ピアニ・カルータさえいなければ全員ガードになっていた人間たちだ。そうだろ、ベルリ生徒」

ベルリ「はい」

ケルベス「そのアーミーがジュガンやベッカーを失ってもまだ権力を欲しがること、その割にやることなすことドジばかり踏んでいること。彼らが悪者になっていること。ガードが本来の任務を放棄して国を離れたこと。全部何かがおかしいんだ」

ベルリ「それで教官どのはどうするおつもりで?」

ケルベス「オレはメガファウナを降りて陸路でキャピタル・テリトリィに潜入するつもりだ。クレッセントシップ帰還の特別祭で地上に降りていた生徒がクラウンの運航停止で地上に残されていてな、あいつら、養成学校の生徒たちが協力してくれる。生徒らを残したのは甘かったんだよ。あいつらだって立派なガード候補生だ。だからな、ベルリ生徒。ここでお別れだ。長官と姉上をお守りしろ。いいな」

そういうとケルベスは誰にも別れを告げずにジャングルの暗闇の中へと姿を消していった。






夜。美しい星が瞬いている。エルライド大陸中部、キャピタル・テリトリィ勢力範囲の最南端に、幾台もの大型トラックが列をなしてやってきていた。列はジャングルを切り拓いて建てられた、滑走路を併設した巨大な研究施設に入っていく。サーチライトがその列を照らしていた。

列は滑走路の方へと入ってくる。そこにはホズ12番艦の姿があった。ライトに照らされるなか、男たちが書類を片手に説明に聞き入っている。

学芸員「首相命令にあったものを見繕って持ってきたつもりですけど、宇宙世紀時代末期のモビルスーツといいましてもいろいろありまして、最も状態の良いものは後から来ます。ぼくらも判断に困るモビルスーツが掘り出されていまして。エネルギー反応も大きくて、でもどんな核ユニットが乗っているのかわからないんです」

コバシ「反応が大きいって、まだ原子炉が生きてるってこと?」

学芸員「原子炉は宇宙世紀初期のものでも生きてますよ」

コバシの隣にはスーンの姿もあった。スーンは自分たちがクンタラの反乱部隊に命を救われたことをようやく理解し、ジュニア救出の約束を取り付けて協力する気になったのだった。

命が救われたというのはこういうことだ。

キャピタル・テリトリィはなぜかクンタラ建国戦線と通じた反乱部隊に協力的で、基地の提供および物資の提供を行っている。

それに対して彼らホズ12番艦を追いかけて攻撃してきたキャピタル・アーミーの船はそのまま行方をくらまし、キャピタル・テリトリィから正式に反乱部隊であると非難されたのだ。つまり、反乱軍はクンタラともうひとつ謎の組織があったのである。

ビーナス・グロゥブの旧ジット団団員たちは、そのもうひとつの反乱組織に騙されて偽の契約を交わしていたものを、クンタラの反乱に巻き込まれたことでなぜかキャピタル・テリトリィ側に引き戻されたのだ。クンタラ建国戦線も反乱部隊ではあるが、キャピタル・テリトリィから物資の提供を受けている以上、謎の組織よりはマシだというわけである。

サニエス「トラックで運んできたのはいったい何かな。数が随分と多いが」

学芸員「あれが原子炉ユニットですね。この原子炉ユニットというやつはやたらと丈夫にできていまして、モビルスーツが錆びた後もこれだけ残るわけです。地中に埋もれていたものなどは、他が全部錆びて朽ちても、原子炉ユニットだけが残っている。原子炉ユニットの型から埋蔵モビルスーツを推定することも多いわけです。実はずっと動いて発電しているものもかなりあって、扱いに困っていたのです。いやいや、助かりました。まだほんの一部なので、翌朝以降も運ばせます」

サニエス「(頭を抱えて)原子炉ユニットを剥き出しで持ってきたのか」

学芸員「あー、放射能のことなら意外に大丈夫ですよ。なかがどうなっているのか知りませんが、漏れてくる放射線はわずかなものです。それより、改造して使えるモビルスーツがないかとも注文があったので、もうじき参りますが、どうにも判断に困る機体を1機お持ちいたしました」

スーン「(鼻で笑いながら)宇宙世紀時代のモビルスーツはジット・ラボでも散々研究していたが、使えるものなど残っているはずがない。触れば壊れるようなものばかりだ」

そこに遅れてモビルスーツ運搬用の大型トラックが入ってきた。サニエスの指示でかぶされていた幌が取り払われると、確かに新品と見紛う機体が横たわっていた。かなり大きい。

コバシ「原形をとどめているなんて、よほど保存状態が良かったのね」

スーン「いや、おかしいだろ。宇宙世紀時代の機体がこんなに綺麗なはずがない。もっとずっと汚れて劣化しているものだ。外装を新しいものに変えてあるだろう?」

学芸員「そう思われるのも無理はありませんが、5年前に地中から発掘したときには他のモビルスーツ同様にボロボロだったのです。この機体は発掘して空気に触れた瞬間から自力で機体を修復しはじめまして、このような姿に戻ったのです。おそらくは宇宙世紀時代最末期の機体ではないかと推測してます。流出したヘルメスのバラの設計図にも載っておりませんし。繭のようなものにくるまれて、つがいのようにもう1機あったのですが、それはすでに宇宙へ送られています」

スーン「ヘルメスのバラの設計図は我々も研究していたが、解明できるものはリギルドセンチュリー初期のものまでだったな」

コバシ「キア隊長が論文テーマにするって意気込んでいた話でしょ?(スーンが力強く頷く)宇宙世紀とリギルドセンチュリーが500年ほど重なっていて、その間に宇宙世紀時代の技術がユニバーサル・スタンダードに置き換えられたって仮説」

学芸員「(眼鏡をきらりと光らせ)お、それは興味深い話ですね」

スーン「(得意げに)キア・ムベッキは天才だからね!」

コバシ「キア隊長の仮説では、宇宙世紀1500年ごろがリギルドセンチュリー1年ごろじゃないかって。宇宙世紀は2000年続いたそうだから、リギルドセンチュリー500年ごろに宇宙世紀が終わっている。我々の先祖がリギルドセンチュリーを使い始めた理由は、そのころアースノイドが絶滅したからだって。ま、1500年も戦争を続けてるような暦を使いたくないわよね」

スーン「ああ、確かにそう言ってた。キア隊長はリギルドセンチュリーとユニバーサルスタンダードの発祥は、アースノイドの絶滅がきっかけだったって」

サニエスはその場を離れて原子炉の運搬指示に向かった。原子炉とモビルスーツは海路で運搬する予定だったのだ。

コバシ「それにしてもこれ、不細工ね。地面に埋まっていたなら、1000年以上前の機体よね」

学芸員「古代文字のAを逆向きにした文様が額に入っているでしょう? だから我々はG-∀と呼んでいるのですが、G-∀は不細工ですけど、他の宇宙世紀時代のモビルスーツよりも多くの点で優れている可能性があるんです。機体の自己復元能力などは他にない機能です」

スーン「こいつを直すのはいいとして、こんな古いもの、誰か乗るのか? 宇宙世紀というが、1000年前の黒歴史そのものだぞ」

サニエス「ルイン・リーという若者が、使えるのなら使いたいと。G-セルフを欲しがっていた若者ですが。高機能でフォトン・バッテリーがいらないのなら使いようはあります」

コバシ「ルイン・・・、知らない名ね。でも、こんなの絶対に弱いわ。G系統に分類していいものかどうかも疑わしい。(顔をしかめて)禿で髭って。ウーシアにすら瞬殺されそうだけど、いいの?」

スーン「こいつの原子炉だか核融合炉だかは生きているんだな?」

学芸員「エネルギーが完全に充填されているんですよ。塵も自動で落としますし、コクピット周りさえ新しいものに換えれば、電装系すらそのままでイケるかもしれないんです。エネルギー・ユニットは核融合炉より強力ですね。この機体だけはかなり特殊なんです」

コバシ「嘘みたいな話ね。たしかに宇宙では観たことないなぁ」

スーン「これを直して乗れるようにして引き渡せば、ジュニアを取り戻してくれるか?」

サニエス「必ず」

学芸員「この機体はコクピット部分だけユニバーサル・スタンダードに換装すれば使えますよ」

スーンとコバシは顔を見合わせて頷きあった。彼らはキア・ムベッキ・ジュニアを取り戻すことをすべてに優先させると誓い合っていた。






カリブ海に停泊中のメガファウナは、大きな仕事を前に束の間の休息を取っていた。

クルーはハッパの無事を祝って浜辺で騒ぎ合っていた。その輪の中に席を外していたドニエル艦長が戻ってきた。

ドニエル「たったいま、姫さまより連絡が入った。(どっと歓声が沸く)メガファウナはゴンドワンとの大陸間戦争には参加せず、トワサンガでフルムーン・シップを奪ってビーナス・グロゥブを目指し、ラ・グー総裁にことの真意を尋ねてくる任務に就くことになった。全権大使は、ベルリくん、君だ」

ベルリ「ぼ、ぼくが!」

ドニエル「すぐにアメリアへ戻って補給を済ませてから、その足でトワサンガへ向かう。みんな準備にかかれ」

クルーは艦長の命令で一斉に動き出した。

ハッパは紙コップを片手に笑みを浮かべながらつぶやいた。

ハッパ(有休が欲しいなんて、言ってられないんだよなぁ)


(ED)


この続きはvol:27で。次回もよろしく。



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