「Gレコ ファンジン 暁のジット団」vol:13(各話箇条書き③) [Gのレコンギスタ ファンジン]
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4話から6話はカリブ海の孤島に隠れていたメガファウナを探し当てたデレンセンが部隊を率いて襲撃してくるところから、囮作戦のために弾道飛行を行ったメガファウナに再びデレンセンが仕掛け、ベルリに撃退されるまでが描かれていました。
第5話ではルインがマスクとなってアーミーに入隊。いきなり新型機を任されています。
ベルリがピンチに陥るたびに発動するG-セルフの謎の発光現象の解釈が問題になってきますが、vol:12で考察したように、レイハントン・コードとともにその機能が取り付けられたとすると、ロルッカやミラジがその秘密を知っていたことになってしまいます。
元々あるパイロットを守るための機能だとすると、もっと汎用的に用いられていたはずです。つまり他のモビルスーツにも機能が備わっていないとおかしい。
そこで当ファンジンで考察しているような、宇宙世紀末期にスコード教の考えにも適うサイコミュが開発され、それをレイハントンが対レコンギスタ用に設計図だけ準備していたところ、図らずもクーデターに遭い死亡した。残された設計図を元にロルッカやミラジが組み立てたもののサイコミュのことまで理解できず、隠し機能のようになってしまった。
G-セルフのコアファイターコクピットはサイコミュ搭載で、ニュータイプの資質のあるラライヤとベルリが乗ったときだけ謎の発光現象を起こしたと。さらにのちのち考察するつもりですが、G-セルフの月光蝶とも関係あり、人類が絶滅するきっかけになった出来事とも関係があるのではないか。
これらのことも踏まえつつ、7話から9話を観ていきましょう。
第7話 マスク部隊の強襲
ルインが大型戦艦ガランデンの中にクンタラ出身者だけを集めたマスク部隊を作る。彼は功績を挙げ、やがてはキャピタル・テリトリィを支配するまでになりたいと夢想している。ガランデンはクンパ大佐がゴンドワンから調達したもの。
マスク部隊はそのままメガファウナを強襲する。そんなときに限ってG-セルフはラライヤが動かしていた。ベルリはラライヤから機体を取り上げ、苦戦するクリムの救援に出る。
タワーの第1ナットから、ベルリの母ウィルミット・ゼナムが息子恋しさに大気圏突入グライダーで飛び出してしまう。入念な演技の練習のたまもので、アーミーには気づかれずに地球に降下していく。
ベルリが苦戦するなか、突如としてアメリアのMAアーマーザガンが救援にやってきた。
第8話 父と母とマスクと
救援に駆けつけたのはビレイに乗ったアイーダの父グシオン・スルガンだった。彼は補給物資としてG-セルフにトリッキーパックを装着させた。
マスク部隊は甚大な被害を出しながらまだ諦めていなかった。交戦は続き、バックパックに慣れないベルリは苦戦する。
戦闘は終了したが、アイーダは機体の不調で高高度まで飛び上がっていた。助けに行ったベルリは、そこでタワーから降りてきたグライダーに母が乗っていることを知り救出する。
ウィルミット・ゼナムはグシオン・スルガンと旧交を温めつつ、アメリアの戒律破りを咎めた。アメリアは協定に基づき解体されたはずの船を海賊船メガファウナとして運用していたのだ。スルガンはアメリアの技術はすべて自前のもので、ヘルメスの薔薇の設計図とは関係ないと念を押した。
アイーダは宇宙からの脅威を写真で示してみせた。アメリアのやっていることはタブー破りばかりでウィルミットにはおよそ耐えられなかった。彼女の与り知らぬところで、いつの間にか最大のタブーである戦争の準備は着々と進んでいるのだった。
ルイン恋しさにキャピタル・アーミーの一因になったマニィは、そのままマスクと同じガランデンのクルーになっていた。彼女はマスクがルインだと気づくが、半数を失った敗戦を悔やむ彼にはいかような言葉も不要であった。
第9話 メガファウナ南へ
クリムとミックがメガファウナを離れる。
ベルリは母に代わってメガファウナでキャピタル・テリトリィに入ってくれと頼み込む。宇宙からの脅威が本当ならば、アーミーとアメリア軍が協力して防衛任務に当たる必要があるとの理由だった。
これを聞き入れたグシオン総監はメガファウナを180度旋回させ、南へ進路を取ってイザネル大陸へ入った(?)。ここで民間人から物資を調達すると同時に、ウィルミットは有線回線を使ってキャピタル・ガードへ連絡を入れた。
索敵に出されていたマスクとメガファウナが鉢合わせをして戦闘になる。だが今回はマスク側の戦力が乏しく、長くは戦わなかった。マスクはすぐにクンパ大佐に援軍を要請した。
ウィルミットからの連絡を受けたケルベスがレックスノーで応援に駆けつける。
メガファウナのドニエル艦長はスコード教にほとんど興味を示さない。グシオン総監はキャピタル・テリトリィに物資が豊富にありすぎるのがお気に召さない。
ウィルミットはグシオンを法王に面会させた。グシオンはスコード教が宇宙に人がいるとは教えていないことを問いただすと、法王はフォトンバッテリーは湧いて出てくるものではないと応えた。フォトンバッテリーは地球人では解体も修理も出来ない。やろうとすると爆発する。それが独占の悪を生むのではないかと。
アイーダがクンパ大佐に対してヘルメスの薔薇の設計図のことを訊ねようとしたとき、突然ゲルベスが部屋に入ってきて彼女とベルリ、ノレド、ラライヤを連れ出した。
7話から9話は重要な情報開示があった回でした。
ふたつ指摘したいのですが、カリブ海から南へ進路を取ったメガファウナがイザネル大陸(アフリカ大陸)に入ったとの科白が出てきます。おそらくこれは間違いで、キャピタル・テリトリィのあるエルライド大陸(南米大陸)に入ったの間違いだと思われます。
自分はこの9話の記憶があったので、キャピタルがアフリカにあるのだと思い込んでいました(訂正済み)。初見のときから、現在のアフリカ大陸が長い年月をかけて南米のようなテーブル台地と水の溢れるジャングルに変わったと思い込んでいたのです。
しかし、ゴンドワンにスコード教信者が多く影響力も大きいなどの情報もあるので、いろいろ辻褄が合うのはキャピタルをアフリカ北部に置くことです。自分はキャピタルはイザネル大陸の中にあるので、大陸の使者をキャピタルで接待していたのだと想像していました。
ふたつめに、トリッキーパックのことです。ここでバックパック装着時にもおかしなことが起こると描写してしまったために、G-セルフの特殊性能がどのようなもので何があると作動するのかわかりにくくなった。おもちゃありきで何でも出すからこういうことが起きる。アニメの完成度を下げるような意味のないギミックはやめてもらいたいものです。
第9話で重要なのは、アメリアの人間がそれほど敬虔なスコード教ではないということです。これは彼らが自分たちの先進性に自信を持っているからで、ヘルメスの薔薇の設計図には頼っていないと自信を持って言えるまでになっています。
キャピタルがアフリカにあれば、近い地域ほど宗教色が強く、物資も豊かだと説明できる。アフリカが一番豊かで、次に欧州(ゴンドワン)、大西洋を渡ったアメリアにはキャピタルの恩恵はほとんどなく、ゆえに自主独立の機運が強いと説明できたのに惜しいことです。
キャピタルをアフリカではなく南米にしたのは、現在の気候や風土を意識しすぎたと思いますね。
当ファンジンでも宇宙世紀から2000年が経過、公式だと1万年以上が経っているのに、南米がいまと同じような風土であるはずがない。何度もコロニー落としをされているのに、あり得ないはずです。大きな地殻変動も起きているはず。
地理に関しては公式に合わせて、「イザネル大陸に入った」との科白は間違いだとしておきますが、明らかな間違いに関してはBD版で修正してもらいたかったですね。
「Gレコ ファンジン 暁のジット団」vol:12(各話箇条書き②) [Gのレコンギスタ ファンジン]
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1話から3話は、ベルリとアイーダが出会い、キャピタルを脱走したアイーダがのちに仲間になる若者たちとメガファウナに戻るところまででした。
物語の影の主役クンパ大佐は、キャピタル・ガード(自警団)を発展させ、いつの間にかキャピタル・アーミー(軍隊)を作り上げています。彼はビーナス・グロゥブ、トワサンガ、アメリア、ゴンドワンでも同じことを成し遂げ、太陽系すべてに争いの種を撒いた後だったのです。同じやり方を取ったために、どこの地域にも自警団と軍隊があるわけです。
ベルリの母ウィルミット・ゼナムが一方的にクンパ大佐に翻弄されていますが、これはクンパ大佐が偽名を使ってヘルメス財団の下部組織であるキャピタル・ガード調査部を支配しているからで、彼のところに宇宙におけるレコンギスタの進捗が伝わっていたのは、キャピタル・ガード調査部がヘルメス財団における再入植の調査を行う組織だったからだと当ファンジンでは考察しています。
彼は再入植計画を遅延させ、その隙に地球において軍隊を作り上げていたのです。彼は再入植より再征服(レコンギスタ)を支持していますが、スペースノイドが一方的に勝つ形では人間の闘争本能は蘇らず、遺伝子の強化もなされないと考えていました。彼は対立を作り上げたのです。
第4話 カットシー乱舞
キャピタル・アーミーの設立記念式典が盛大に執り行われる。ルインがアーミーに入隊。人質奪還を名目に最初の作戦行動が発動され、デレンセンが出撃。ウィルミットはアーミーのタブー破りに息子の名前が使われることに不満を持っている。
G-セルフ起動実験中にミノフスキー粒子が撒かれ、ベルリはメガファウナのクリムと連絡が取れなくなる。ベルリとデレンセンが交戦。G-セルフが謎の光に包まれる。
クリムはアーミー設立は宇宙からの脅威に備えたものだと認識している。
第5話 敵はキャピタル・アーミィ
ウィルミットはアーミーのタブー破りを阻止したいが手段がない。
ルインのマスクは調査部から出た資料を元に試作されたもの。クンパ大佐はヘルメスの薔薇の設計図について知らないと白を切る。マスクは新型機を任され、さっそく出撃する。
メガファウナはカーヒルの立案したキャピタル・タワー占拠作戦を実行しようとする。
マスクの隊とメガファウナが交戦。ベルリはコアファイターのまま飛び出してしまい、やむなくマスクの頭上で水の球を破裂させた。ベルリはそのままG-セルフと合体。ハッパを挟んだまま交戦。マスクを退けたのち、アイーダはベルリに礼を言い、メガファウナは弾道飛行に移った。
第6話 強敵、デレンセン!
ゴンドワンとアメリアとの大陸間戦争は20年続いている。
ベルリは北極圏の様子を調べるために高く飛び上がり、衛星軌道にアメリア軍が展開していることを知る。彼はその情報をG-メタルに記録する。
ベルリ救出のためにデレンセン自ら出撃することで軍事交戦を嫌うウィルミットを説得する。メガファウナとの間で高高度戦闘になる。
デレンセンとベルリが交戦し、デレンセンが死亡する。
G-セルフから発せられる謎の光はフォトン・シールドで、G-セルフのパイロットを守るための装備です。G-メタルが光ったりしていますが、1話のラライヤが搭乗していたときにも少しだけ出ていますね。これは公式でもあまり細かく設定されていないはずです。
そもそもYG-111として組み立てられたときは軍に採用してもらおうとしていたので誰にでも扱えるものだった。そこにレイハントンコードを仕掛けてラライヤに託した。だから3人しか扱えない。
アイーダはG-セルフの機能を拡張させられていないので、やはりこのコアファイターコクピットには特殊機能があってニュータイプに反応するようになっていると自分には思えました。つまりベルリとラライヤにはその素質があり、YG-111として組み立てられたときには隠し機能のように誰も能力を発揮させられなかった。そう考えます。
公式ではアイーダとベルリを守るための自動防御機能のような扱いになっていますが、もしそうならG-セルフの隠し機能はロルッカやミラジが大急ぎで付け加えたものになる。そんな機能を付けられるなら標準装備して、軍の採用試験に挑んだはずです。
やはり当ファンジンが考察するように、レイハントンが設計図だけ用意し、それをロルッカたちが組み立てたがコアファイターの秘密までは解明できなかった。実はサイコミュ搭載で、ニュータイプの素質がある人間が搭乗すると隠し機能が発動する設計だった。それをロルッカたちのレイハントンコードの設定によってベルリとラライヤだけが機能を使えるようになった。
こう解釈すべきではないでしょうか?
「Gレコ ファンジン 暁のジット団」vol:11(各話箇条書き①) [Gのレコンギスタ ファンジン]
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物語の背景にあるものを一通り考察したところで、今度は劇中で表面的に何が起こったのか、いつ、どんな情報が開示されたのか1話ずつ確認していくことにします。
整理するのは後回しにし、箇条書きで抜き出すことを優先します。気になった情報や失念していたことなどを確認していきます。
いずれ整理するつもりですが、モビルスーツや戦艦などの名称などは省略するのでそちらはWikipediaなどを参照してください。
当ファンジンは想像力を駆使して物語を読み解くことに力点を置きます。
第1話 謎のモビルスーツ
ラライヤがG-セルフとともに落ちてくる。G-セルフが謎の発光現象を起こす。
いつの間にかキャピタル・ガードの他にアーミーが設立されている。
根強く残るクンタラへの差別。それは暴力を伴っている。
アイーダがG-セルフでタワーを襲撃して、ベルリと交戦になる。G-セルフが上手く反応しない。アイーダはベルリによって捕縛される。アイーダが偽名として「アイーダ・レイハントン」を名乗る。G-セルフがベルリを認証。G-メタルを発行する。
第2話 G-セルフ起動!
クンパ大佐登場。アイーダとベルリがレイハントン家の子供だと知る。
キャピタル・テリトリィ(エルライド大陸・南米大陸のこと)と法王庁がイザネル大陸(アフリカ大陸のこと)の人間を接待する。
スマートフォンの電波がミノフスキー粒子で乱される。
カーヒル大佐の部隊が式典会場を急襲。ベルリがアイーダと同じアイリスサインを出していることを訝しむ。
アイーダはキャピタルを独裁だと思っている。ベルリの怒りにG-セルフが反応。カーヒルが死ぬ。
第3話 モンテーロの圧力
襲撃事件に調査部が乗り出してくる。G-セルフが調査部預かりとなり、クンパ大佐はベルリを呼び出す。
クリムがメガファウナに合流してすぐに出撃する。
アメリアは永くタワーに近づくことさえタブーだった。
クンパ大佐がアイーダを尋問する。海賊部隊とアメリアとの関係を質す。ベルリにはなぜG-セルフを動かせたのか質問する。
フォトンバッテリーの供給に対してアイーダとベルリの意見が異なる。道具は使い方次第とするアイーダに対して、ベルリはそれこそ宇宙世紀の考え方だと反発し、クンパ大佐は、カーヒルは神に成り代わるほどの人物だったのかと問い詰め、アイーダは答えに窮する。
クリムはキャピタル・タワーに対するタブーをあまり感じていない。アイーダはクリムのそうした部分と反りが合わない。クリムは自分を利用しようとしていると警戒している。
アイーダはG-セルフにベルリ、ラライヤ、ノレドを乗せたままメガファウナに帰投する。それを見送ったクンパ大佐は、ウィルミット・ゼナムに電話を入れて息子のベルリが連行されたと告げる。アメリアへのフォトンバッテリー供給停止を考えていたウィルミットはそれを聞いて思いとどまる。
クリムはキャピタル・タワーをアメリアの宇宙基地にしようと考え、アイーダを呆れさせている。
vol:11は以上です。
調べてみるとキャピタル・テリトリィの位置が南米になっていて、記憶と違っていました。メガファウナはイザネル大陸(アフリカ大陸)を移動していたのでは? 第2話のイザネル大陸からの使者を接待する場面は、イザネル大陸にあるキャピタル・テリトリィが、アーミー設立を祝い大陸各地の指導者を集めて饗宴を開催しているのだと思っていたのですが。
キャピタル・テリトリィがエルライド大陸(南米)だとすると、メガファウナはアフリカに隠れていたんですかね。カリブの島々のどこかに隠れていたと思い込んでいたので、位置関係が逆になるのかな? テーブルマウンテンがあるというからイザネル大陸が南米だと勘違いしていました。
公式といってもアニメ本編に間違いがあると混乱しますね。
でもこれは基本的なことなので公式に合わせて修正しておきます。自分は思想的なことにしか興味がないので、地理に関してはどっちがどっちでも別に構わないですけど、記事を読む人が混乱するでしょうから。
各話箇条書きは3話ずつやっていきます。
序盤は情報公開も少ないですが、ベルリとラライヤが搭乗した場合にG-セルフに発光現象が起きることや、クリムがタワーを奪おうとしていたことなど、過去の号で考察する手掛かりになっています。
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「Gレコ ファンジン 暁のジット団」vol:10(若き4人が理想とするもの) [Gのレコンギスタ ファンジン]
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ビーナス・グロゥブでスペースノイドの再入植が喫緊の課題となっていることを知ったアイーダとメガファウナの面々は、事情の複雑さを胸にしまい、地球への帰路についた。
地球に近づくにつれ、ドレッド軍、ジット団らのレコンギスタ派の活動が活発になり、また大陸間戦争も依然として続くなかでの大気圏突入になった。各団体入り乱れての攻防の末、アイーダは自分の名を使って各自に停戦を呼びかける。
この戦いの中で、レイハントン家の当主をクーデターで殺害したドレッド将軍、愛人を殺されなかば狂ったマッシュナー、アースノイドの結集を訴えレコンギスタ派と戦争しようとしていたグシオン・スルガン、アメリア大統領ズッキーニ、すべての元凶クンパ大佐など旧世代の主要な人物が死んでいく。
その前にはカーヒル、デレンセン、キア・ムベッキも死んでおり、それぞれの派閥で交戦的な人間はあらかた死んでいるといってよい。そのすべてにG-セルフが絡んでいる。
こうして物語は終わりますが、生き残った4人の若者たちが何を見つけ、このあとに何を成そうとするのか考えていきたいと思います。4人に託されたものを考えることで、死んでいった旧世代が何を成そうとしていたのか考えれば、より理解が深まるはずです。
*ルイン・リーの階級闘争
第1話から優等生でベルリの善き先輩であったルインは、クンパ大佐に見出され、競争による身分差別の破壊が可能だと教え込まれることで、自らを簡易的な強化人間マスクに変え、キャピタル・アーミーを踏み台に出世を志すようになります。
果敢な突撃精神で信頼を得た彼は、クンタラだけの部隊を結成し、徐々に野望に目覚めていきました。
ルインは政治状況を利用して戦艦の乗っ取り、カシーバ・ミコシの乗っ取り(表向きは法王の救出)、軍の乗っ取り、領土の簒奪など様々な試みをしますが、そのたびにベルリに行く手を阻まれ、最後はベルリを殺すことだけが目的となっていきました。
マスクキャラであった彼はファーストガンダムのシャアを意識したキャラですが、それはガンダムに様式を持ち込む製作側の都合であって、負わされた役割はシャアとはまったく関係がありません。彼が負うべきなのは、階級闘争なのです。
彼が望んでいたのは、組織の中での一個人の出世だけではなく、クンタラ全体の身分制度からの解放でした。ベルリが憎くてしょうがなかったのは、マスクの副作用もあったでしょうが、ベルリというレイハントン家の御曹司であり、タワーの運航長官の息子であり、飛び級生という支配体制を象徴するような存在への嫌悪です。嫌悪がマスクによって憎悪に変わったのでした。
ベルリを独裁者になり得る血筋とまで断じて憎悪しますが、当ファンジンではそれは簡易強化人間になっていた彼の感情の暴走と捉えています。それより大事なのは、彼がクンタラ部隊を作ったこと、クンタラのために殉教者になっても良いと思い定めていたことなどです。
彼の生涯のテーマは、階級闘争だと定まったのです。優等生は、マニィという仲間を得て、社会に階級闘争を仕掛ける何者かになった。そう思って最後の彼を見ると、ただ旅をしているのではなく、クンタラのための新しい国を作ろうとしているテロリストのようにも見えてきます。
ルインが望んでいるのは、身分制度のない理想の世界です。
*クリム・ニックの覇権主義
天才クリムが旅で得たものは、世の中には奪えるものがたくさんあると知ったことでした。クリムの面白いところは、誰にも変に感情移入せず、他人を自分に寄せてこようとするところでした。多少甘えたことをいうのは戦友でもあるミック・ジャックのみ。彼女にだけは心を許していたのでしょう。
他者に思入れを持つことを嫌っていたのは、自分が大統領の息子ということで、利用される恐れを抱いていたからではないでしょうか。天才とおだてられていたとき、逆に自分を天才と呼ばせようとしていたところなど、自己陶酔よりもっと厳しい気持ちを感じたものです。
彼は一貫して目の前の勝利にこだわりました。彼の戦歴は勝ったり負けたりでしたが、あまりやる気のない艦長の下にいながら、常に何かを奪うチャンスを窺っていたのです。
ルインがすぐに何かを得ようと焦るのに対し、クリムは奪う練習をしているように感じました。勝っても負けてもあっさりしており、ルインのように悔しくて臍を噛むような描写はありませんでした。まだ若く、大統領の息子でしかないと自覚する彼は、すべてが練習だったのでしょう。
では何を目指し、望んでいたのか。彼は明らかに多くの人間を率いて責任を果たす練習をしていました。腹を立てるのはいつも自分に対してだけ。最後に父の演談を邪魔して逃走しますが、彼はアメリアの大統領を目指していたのでしょうか。
才気溢れる彼は、アイーダの父グルシオ・スルガンに似たものを感じました。庶民の代表としてお飾りの大統領としてではなく、もっと実質的に人々を率いて何かを成したい野望があり、そのために常に自分を高め、修練に励んでいたのでしょう。
自分にはアイーダが大統領を目指す立場になり、クリムがグルシオの立場に近くなるように感じました。彼の覇権主義は、アメリア主導で戦争を終結させ、地球と宇宙双方を善導することを目的としており、覇権主義はあくまで紛争終結の手段に過ぎないと割り切っていると考えます。
クリムが望んでいるのは、政治的統一がもたらす理想の世界です。
*アイーダ・スルガンの協調主義
ヘルメス財団幹部の血を引き、アメリア軍事総監の子供として育てられ、多くの人間に姫と慕われる彼女は、望む望まないに関わらず政治の世界で役割を果たすことになるでしょう。
彼女は父のように軍事総監として大陸間戦争を遂行することは出来ないでしょう。彼女はその共感する力の強さから、スペースノイドの再入植が喫緊の課題だとよく承知しています。本当ならレイハントン家の跡取りにでもなってヘルメス財団とともにレコンギスタを抑え込みながら再入植計画を実の父から引き継いでも良いのですが、アメリアでの立場が大きく、それができません。
彼女はアメリア人としてはスコード教にも理解があり、誰ともちゃんと話ができる立場にあります。ドレッド家を失ったトワサンガとの関係も彼女なら構築できるでしょう。ビーナス・グロゥブも同様です。彼女の最大の武器は育ちの良さそのものといっていい。
戦争の続くアースノイドとスペースノイド双方を理解し、誰にも肩入れをしない彼女は、協調主義をもって自分の役割を果たすしかありません。
協調主義者の仕事は、双方の利害調整です。これは政治家にしかできない仕事であるため、彼女は政治を志すことになります。クリムとは親の役割から逆転するわけです。レコンギスタの芽は一応すべて治まって終わっていますが、全員が納得する利害調整は難しく、困難が予想されます。
また彼女は政治を志しても新人議員から始めなくてはなりません。
アイーダが望んでいるのは、双方が譲り合う協調による理想の世界です。
*ベルリ・ゼナムの相互理解
物語のラストでベルリが世界を旅して周っているのを見たとき、最初は己の見識を高めるための旅だと思い、そう感想にも書きました。しかし、同じようにルインも旅をしていたことや、Gレコの世界観の理解が進んだことで、いまは別の目的で動いていたのではないかと考えるようになりました。
バカな言動にも関わらず飛び級生で頭の良い彼は、スペースノイドの再入植場所を探していたのではないでしょうか。ヘルメス財団の幹部であるレイハントン家の跡取りとして、再征服(レコンギスタ)を諦めさせる重要な手段は、早急に再入植計画を策定することです。
スペースノイドの迅速な再入植を進めることが、ひいてはアイーダのサポートにもなります。そこで彼は、環境回復が進み、実り豊かな大地を探して回っていたのです。ここでも彼は、クンタラのために豊かな大地を探しているルインとバッティングしてしまうのです。
ルインは金星には行っていません。彼はムタチオンの深刻さや、スペースノイドが辛抱強く宇宙で暮らしながら地球環境の回復と再入植を待っているとは知らないのです。彼は虐げられたクンタラのために、クンタラが豊かに暮らせる新しい国家の建設を目指している。でもそのような土地は、ベルリの立場ならばスペースノイドの再入植場所にしたいのです。
ベルリにはタワーの運航長官の息子として、アメリアの有望な議員の弟として、レイハントン家の次期当主として、ヘルメス財団の幹部として、ガンダムの操縦者としての立場があります。一方でルインには何もありません。ルインにあるのは恋人のマニィだけです。
この運命に気づいたとき、ファーストのラストシーンや逆襲のシャアのラストシーンで描かれた相互理解の可能性が隠されていないはずがないとわかったのです。G-セルフのコアファイターコクピットがサイコミュ搭載で、νガンダムが起こした奇跡と関係があるとする考察には反対もあるでしょうが、人間同士の相互理解を描かない富野ガンダムなどあるのかという話です。
ベルリが望んでいるのは、人間同士の相互理解の先にある理想の世界です。
「Gレコ ファンジン 暁のジット団」vol:10は以上になります。
今回の考察で、ベルリとルインの関係や、アイーダとクリムの関係の理解がより深まってくれたのなら幸いです。
協調と覇権、どちらも平和をもたらす手段です。どちらが優れているということはないですし、どちらにも悪い点はあります。階級闘争と相互理解は、どちらも大切です。一方のために一方を諦めることなど出来るはずもありません。
「ガンダム Gのレコンギスタ」は、これらの運命を背負った4人の子供たちが、自分の運命を想い定めた物語でもあります。
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「Gレコ ファンジン 暁のジット団」vol:9(少年と少女の冒険譚) [Gのレコンギスタ ファンジン]
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アイーダとベルリのロード・ピクチュアであった本編は、多くの謎が蒔かれており、その背後にあるものを掴むのが難しい作品でした。昨今の何から何まで説明されるアニメしか観たことがないと理解することはできなかったでしょうし、プラモデルにしか興味のない層にも不評でした。
しかし、ファーストガンダムをリアルタイムで観た世代の一部には何か心に引っ掛かるものがあり、放送から数年を経てこうして形になっているわけです。ガンダムは商業作品なので多くの層に向けてアニメが展開されていますが、子供向けとしてはかなりの冒険だったファーストガンダムを理解して受け止めた子供たちと、数十年を経ていま一度邂逅できないかとの試みがあったのでしょう。
新たな受け手は作り出せなかったかもしれませんが、富野監督はまだまだ諦めてはいないようですし、出来るだけの支援はしたいものです。
vol:9では、物語をスッキリとまとめるにはどうしたらよかったかを考えてみたいと思います。
*アイーダとベルリのロードピクチュア
アイーダとベルリの姉弟が、スペースノイドの命運を背負ってしまったキャスバル・レム・ダイクンと対応させてあるという指摘はすでにしました。ここでふたりの間に何が起こったのか整理してみたいと思います。劇中では次のようなことが起こりました。
①少年と少女が出会い、少年は恋をする。
②少年は少女の恋人カーヒルを殺してしまい、自責の念に駆られる。
③少年は少女の新たなナイトになりたいと密かに願う。
④少女は自らの役割を自覚し、少年を利用する。
⑤少女は政治状況の不穏当を感じ、原因を探る旅を決断する。
⑥旅の最初の目的地で、少年と少女が姉弟であると判明する。
⑦少女は政治に関与する運命をより自覚し、少年は少女の運命的ナイトであることを受け入れる。
⑧旅の最後の目的地で、政治状況の原因を知る。
⑨少年の必死の働きを認め、少女はカーヒルを奪った少年を許す。
⑩地球へ帰還し、政治状況に変化がないことを知る。
⑪少女は最初の政治的役割を果たす。
⑫少女のナイトとしての役割が終わった少年は、自分の新たな役割を探す旅へ出る。
ふたりはこのように描かれました。劇場版がどのような構成になっているのかわかりませんが、わかりやすくまとめるなら上の流れを中心にして、クンパ大佐の暗躍をもっと分かりやすく描き、それぞれの対立を簡素化するはずです。
個人的にはクンパ大佐が意図せぬ偶発的な戦いは省いていいと思っています。戦争をしたことがない人間たちが武器だけ与えられて戦争ごっこを開始したことだけを重点的に説明すべきでしょう。テレビの本編は、戦いの描写が多すぎましたね。
*おもちゃのための多すぎたムダ
テレビ本編を視聴していて無駄だなあと感じたのは、おもちゃのための機体や装備の数々です。あまりに多くのモビルスーツ、あまりに多くのバックパックが出過ぎました。このせいで、リギルド・センチュリーの平和的世界観が表現できなかった。おもちゃ屋に媚びすぎました。
そもそもガンダムは量産機という発想をアニメに持ち込んだのが斬新だったのですが、Gレコは「ヘルメスの薔薇の設計図を撒かれた」という理由があるにせよ、機体の乗り換えが早すぎ、それぞれに思い入れを持つ暇もなく使い捨てられていきました。
余計なものが描かれた反面、表現できなかったことが多すぎるのです。ヘルメスの薔薇の設計図では性能がよくわからないはずなのに、前よりも良い機体がパイロットに提供されるというあり得ないことが起きていました。それは研究開発をやっていないとわからないことです。基礎になる部分がタブーになっているのに、軍隊に都合が良いようにモビルスーツが完成するはずがない。
おもちゃ屋からの要求が作品のクオリティを落としてしまいました。本当はもっと芽生えた闘争本能と、タブーを意識した恐怖を丁寧に描くべきだったでしょう。
∀ガンダムがアースノイドを絶滅寸前に追い込んだ機体だと思うのですが、月光蝶に似た機能が出ても、それがいかに怖ろしいものなのか表現しきれていないように感じました。「∀ガンダムの機能を使い出したら人類は終わり」なのだと描かれていれば、宇宙世紀が終わったことのメリハリがついたでしょう。宇宙世紀の終わりを記念館で匂わせただけだったのは描写不足と感じました。
*黒歴史の恐怖が足りていない
Gレコは明るく楽しい冒険譚として作るべきだったでしょう。その方向性は支持するのですが、一方で黒歴史たる宇宙世紀を戦争描写の部分で描き切れていませんでした。
角の生えた小鬼のようなデザインのG-セルフの描写は良かったと思います。ただもっと悪魔的な側面を見せても良かったのではないでしょうか? G-セルフがカーヒルを殺したことも、すべてベルリの責任になりましたが、機体が勝手に交戦的人物を選んで殺していたら、主役機でありながら白い悪魔と評されたガンダムの恐ろしさが倍増したと思います。
ビーナス・グロゥブのジット団も、もっと背徳的意識の強い人たちなら面白かったのではないでしょうか。G-ルシファーはそのネーミングから大きな期待を賭けたのですが、使い切れないまま終わりました。設計図通りに作ったら訳の分からない機能がついていたという表現はよかったのですが。
Gレコの戦闘描写は最高でした。しかし同時に兵器の恐ろしさはもっと激しく描かれるべきだったのではないでしょうか。ビーナス・グロゥブの海に穴を空けて、それをキア・ムベッキが命懸けで塞ぐ場面など、面白い反面、笑ってしまうところがあった。原因はジット団の面々が、そのあとすぐに気持ちを切り替えてレコンギスタに邁進してしまったからです。
*トワサンガとビーナス・グロゥブの描き分け
トワサンガを旅立ち、宇宙空間を飛行しながら金星へと向かうメガファウナ一行の面白さは格別でした。ああした部分がGレコの魅力で、旅をしている気分にさせられるところでした。その前のトワサンガへ初めて入港するなども、緊張感に溢れ、どんな場所なんだろうとワクワクしたものです。
多少ガッカリだったのは、トワサンガとビーナス・グロゥブの描き分けです。トワサンガはビーナス・グロゥブの出先機関でしかなく、地球へ降りるための基地のようなものですから、ビーナス・グロゥブの住人はもっと多くのことを知っているべきだったはずです。
宇宙世紀が失敗に終わり、リギルド・センチュリーが始まったいきさつ、宇宙に留まりひたすら耐え抜いていたことなどが足りなかった気がします、個人的にはビーナス・グロゥブでクンパ・ルシータの陰謀がすべて暴かれると同時に、スコード教の秘密が全部開示されてほしかった。
ビーナス・グロゥブでの情報開示の少なさが、アイーダとベルリがここで決定的に変わったのだと印象付けることに失敗したのだと考えます。
当ファンジンでは、スコード教の起源はアムロがアクシズを逸らせた奇跡を発端にしていると書いていますが、そうした何か決定的事実がないと、ビーナス・グロゥブで少年と少女の意識を変革することに繋がらなかったのではないでしょうか。
こうして考察などが書かれるわけですから、種は蒔かれていたのでしょう。でもそれでは匂わせただけで終わりです。ビーナス・グロゥブでアイーダとベルリのみならず、視聴者やガンダムファンに心にガツンと来る情報開示が欲しかった。
ラ・グーが自分の肉体を見せたことなど、あるにはあったのですが、弱かったですね。モビルスーツの諸々に時間を取られ過ぎていました。金星へ行ってみたら、素晴らしい環境で人は生きていたものの、肉体が変容し始めておりもう限界で、本当は全員いますぐ地球に収容しなきゃいけないほど状況は切迫している。
それなのにアースノイドは与えられたおもちゃを弄ぶことに忙しい。これではスペースノイド全員の再入植など望めない。その事実を前に、少年と少女が啓示を受けたように変わって欲しかったんですよ。
匂わせるような描き方だったので、雷に打たれたような心の変化として表現できていなかった。
こういうところが本当に残念なんです。
暁のジット団 vol:9は以上です。
初見時、ビーナス・グロゥブの場面でモヤモヤした気持ちでいたことを全部書いたつもりです。秘めたポテンシャルを完全に発揮できなかったテレビシリーズの欠点を、少しでも劇場版で埋めてもらいたいと切に願います。
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「Gレコ ファンジン 暁のジット団」vol:8(相互理解なき世界) [Gのレコンギスタ ファンジン]
更新は不定期。過去の記事は画面左側の[マイカテゴリー]の一番上をクリックするとすぐに探せます。
物語の影の主役クンパ・ルシータが生み出した競争社会が、決して弱肉強食による生命としての強化だけを目的にしたものではないということをvol:7で考察しました。競争原理は機会の平等を目的としたものであり、結果の平等を否定した彼なりの理想論だったわけです。
それに最も近いのが、アメリアという国家でした。アメリアは自主独立気風の強い土地柄で、キャピタル・タワーからもたらされるエネルギーに依存した支配的社会の打倒を目的とし、技術のさらなる開示をキャピタル・テリトリィに要求します。
キャピタル・テリトリーはあくまで仲介者でしかないので、その要求には応えられません。しかしトワサンガのことすら知らないアースノイドたるアメリア人は、キャピタル・テリトリィが技術を開示しないのだと思い込んで強奪を繰り返しました。
このように、人間同士は宇宙世紀、リギルド・センチュリーを経てもなお相互理解とは程遠い存在だったのです。相互理解の可能性を信じているのは、過去の号で指摘した通り、スコード教だけでした。それはスコード教が興る原点になったのが、「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」のラストシーンだったからというのが本ファンジンの考察になっています。
今回は「状況の提示」の補完として「相互理解なき世界」について考察します。
*終わらぬ大陸間戦争
ラライヤ・アクパールが操縦するG-セルフが宇宙から落ちて来たとき、すでに地球ではゴンドワンとアメリアの大陸間戦争が始まっていました。
グシオン・スルガンが協定に違反してメガファウナを温存し、海賊船として運用していたのは、「宇宙からの脅威」を証明して、政治的駆け引きの中でゴンドワンとの停戦とキャピタル・テリトリィからの技術提供を同時に引き出そうとしたからと推測することが出来ます。
共通の敵を設定することで、同盟関係を樹立するのは政治の定石です。結果、スコード教からもキャピタル・テリトリィからも何も引き出せませんでしたが、それは彼らが要求されたものを持っていなかったからです。また宇宙からの脅威がどのようなものなのかもわかりませんでした。
ゴンドワンとの調停も上手くいかなかったようです。劇中で描かれることのなかったゴンドワンとは、現在の欧州辺りのことで、南米大陸北部にあるキャピタル・テリトリィから遠く、アメリアほどには恩恵に与れない地域でした。遠くにあるため、より敬虔さを尊び、フォトン・バッテリーの安定供給体制を維持したかったのでしょう。
アメリアがゴンドワンとの調停に際し、大元であるキャピタル・テリトリィの抱き込みを模索したのは当然といえるでしょう。
スコード教の協力があれば、ゴンドワンとの戦争にも終わりが見える。しかし、スコード教はそうした政治的駆け引きによる安定ではなく、人間同士の抜本的相互理解を模索するための宗教で、現実的対応には不向きだったのです。
*分配の不平等
劇中にもあったように、キャピタル・テリトリィには物資が豊富にある様子が描かれていました。フォトン・バッテリーは取り決め通り分配されていたかもしれませんが、分配というのは不平等がつきもので、すべての人間に平等に分配されることはまずありません。
それに、地域差というものもあります。ヘルメス財団が南米北部に軌道エレベーターを建設したのは、当然そこがより有望だったからに他なく、キャピタル・テリトリィに近い地域で、森林資源の豊富な場所ほど多くの資源が回復していたと考えるのが自然です。
スコード教とは、シャアの理想論の実現とアムロの人間同士の相互理解がふたつの柱なので、当然地球環境の回復後は地球に帰還すること、再入植することが前提になっています。キャピタル・タワー建設自体が、スペースノイドの再入植を前提として建設されたと考えるのが自然でしょう。
すると、キャピタル・テリトリィに住んでいる人間は、再入植した人々も混ざっていると考えることが出来ます。これではただでさえ難しい平等な分配など望むべくもありません。
物資の不足が日常化している世界に戦争の道具が撒き散らされたわけですから、当然より豊かな土地への羨望は起きるでしょう。アメリアとゴンドワンの戦争の理由は定かではありませんが、不平等な分配への反発が原因になって大陸間戦争が起きたと考えることも出来そうです。
*征服を目指すクリム・ニックと知見を得たいアイーダ・スルガン
そうした地球の事情を背に、サラマンドラとメガファウナはトワサンガへと向かいました。両艦の重要人物は、クリム・ニック(アメリア大統領の子息、サラマンドラ)とアイーダ・スルガン(アメリア軍事総監の娘、メガファウナ)です。ふたりはアメリア人ですが、立場はまったく違っていました。
宇宙空間にありながら豊かな生活を営むトワサンガの様子を見たクリム・ニックは、ゴンドワンよりよほど魅力的な、戦争をしてでも手に入れたい場所だと感じました。戦力差などが明らかでないため、攻撃を仕掛けるということはありませんでしたが、スコード教の教えに従って大人しく生きている人物たちを侮るところがありました。
最後に大統領の父と決別する彼ですが、政治家としてのちに目指していくものがアイーダとはまったく違ったことは注目に値します。
一方のアイーダは、トワサンガに着くなり自分がここで生まれ育ったことを思い出します。彼女はアメリアで教育を受けましたが、元はスペースノイドだったわけです。しかも、両親はレコンギスタに反対したことが原因でドレッド家に暗殺されている。
父とカーヒル大佐の影響で、反キャピタル・テリトリィの立場だったものが揺らぎ、ドレッド家が目指す再征服(レコンギスタ)と、同郷のクリムが密かに望むアースノイドからの宇宙侵略と政治的に戦う運命を知るのです。
アンビバレンツな感情に支配された彼女は、まずは多くを知ることが大事だと思い定めます。意思決定の根幹になる立場を、自分自身で見定めたいと思ったのです。
憧れの人物が姉だと知ったベルリは、悩んだ末に彼女のナイトになることを決意します。姉が納得できるまで彼女を守ろうとしたのです。
こうして、キャスバルを追い込んだ政治と軍務両面を背負う重い運命は、ふたつに分かれ、未来に小さな希望をもたらすことになりました。
*相互理解とG-セルフ
相互に分かたれ、宗教的儀式でしか出会わなかったスペースノイドとアースノイドは、こうして邂逅を果たしました。
ところがレコンギスタを目指すドレッド家とレジスタンスの対立、ドレッド家とサラマンドラのクリム・ニックの戦力の奪い合いなどが表面化し、また強化人間マスクとなってクンタラの名誉回復を目指すルイン・リーの攻撃も活発化して、スコード教の目指す「相互理解なき世界」とはまるで遠く離れた争いが続いてしまったのでした。
そんな中で発揮されたのが、G-セルフの隠れた性能でした。当ファンジンで「G-セルフのコアファイターはサイコミュ搭載」と考察したのは、レイハントン家の目的が、ビーナス・グロゥブのレコンギスタ派を月で阻止するためとの推測と、争い続ける人間同士を諫めるようにG-セルフの能力が発揮されていたことを合わせて考えた末のことです。
ガンダムを特徴づけるアイデアの中で、最も重要なものはニュータイプです。「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」のラストシーンで何が起こったのかを見過ごして、ガンダムという物語は終わらないはずです。
vol:8はここまで。
「相互理解なき世界」にG-セルフがなぜ必要で、なぜG-セルフだけにコアファイターが搭載されていたのか、それを読み解くヒントにしない手はありません。
明らかにこの作品は宇宙世紀初期に起こった「機動戦士ガンダム」「機動戦士Zガンダム」「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」の続きなのです。あの時代に始まったことを、終わらせる意図がある作品なのです。
追記。
地理関係に記憶違いがあったので修正しました。
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「Gレコ ファンジン 暁のジット団」vol:7(状況の提示) [Gのレコンギスタ ファンジン]
更新は不定期。過去の記事は画面左側の[マイカテゴリー]の一番上をクリックするとすぐに探せます。
宇宙から飛来してきたガンダムによって動き始めた運命。それがGレコの物語になっていきますが、運命論的な物語であったのならなぜすべての解決法を提示しなかったのか。それはガンダムが模索の物語であるためでした。
ガンダムの物語にリアリティがあったのは、社会の複雑さを単純化せず、できるだけ現実に近い設定を作り出したからです。ファーストガンダムにおいて悪として成敗されるジオンにしても、ジオン・ズム・ダイクンの名を借りたザビ家独裁が悪であるとされ、またザビ家に希望を託したスペースノイドの困窮についても触れられており、勧善懲悪にはなっていません。
それが当時のロボットアニメにしては画期的だったわけです。ファーストガンダムの成功によって、日本のアニメは扱うテーマの幅を大きく拡げることが出来ました。
「ガンダム Gのレコンギスタ」では、スペースノイドを困窮から救う方法として、シャア・アズナブルが提示した、環境改善後の地球にスペースノイドが再入植するというのがありますが、この物語もまたファーストガンダムから逆襲のシャアがそうであるように、模索の物語になっているのです。
vol:7では、Gレコにおいてどのような状況提示がなされたか考察していきたいと思います。
*競争原理・闘争本能は悪なのか
月の表面で何かが起こっていると知ったアメリア軍総監グシオン・スルガンは、求める答えがスコード教にもキャピタル・タワーにもないと知って、主に防衛観点から航宙艦サラマンドラを建造してクリム・ニックに託し、月の状況の偵察に向かわせました。彼は自身の行動がクンパ・ルシータの思惑に沿ったものだとは考えていません。
月へ向かうのが元アメリアの航宙艦メガファウナとサラマンドラだけになり、競争の偏りを怖れたクンパ・ルシータは、ゴンドワンから航宙艦ガランデン(大気圏脱出後はスペース・ガランデン)を調達し、さらにキャピタル・アーミィにも航宙艦ブルジンを建造させてアースノイドすべてに宇宙の状況を見せます。
こうして彼は徹底して競争状況を作り出しますが、一方でアースノイドがすぐに競争に熱中して暴力的になることには強い嫌悪感を抱いていました。スペースノイドである彼にとって、それはまさに絶滅してもいいと思えるほどの嫌悪対象だったのです。
*結果の平等と機会の平等
スコード教に絶望しつつ教義は尊重し、競争に未来を託しながらそれに絶望していたのは、劇中ではクンパ・ルシータただひとりでした。彼のシニカルな態度の源泉はなんだったのでしょうか。
作品を何度か繰り返し観ていて気付いたのは、身分が固定化された状況で安寧を得たスペースノイドに対する反発でした。自分たちの身にムタチオンという絶望状況が迫っているのに、主体的に行動ができず、スコード教とヘルメス財団が何かをするのを待っているだけ。
遺伝的変質という最大の絶望を前にしながら、トワサンガのレイハントン家の家臣は我が身の経済状況の心配だけしている。彼らに何かを示唆して導けば、彼らの中には従う者もいたでしょうが、それは依存する対象が変わるだけで、本質は何も変わっていない。
なぜ望むことがありながら行動しないのか、その答えを競争の不在に求めたのではないでしょうか。
競争して望むものを欲して主体的に動く人間を作り出す必要を彼は感じたのでしょう。これらの考察から、彼がビーナス・グロゥブで官僚であったのではないかとの推察や、スコード教はクンタラだけを先に地球に下ろしたのではないかと考えたわけです。
ヘルメス財団は再入植を進めていた。しかしそれは順番待ちだった。地球への帰還を強く望む者もいるはずなのに、誰も逆らい争ってでもそれを求めようとはしない。これらの事実が、彼の中で遺伝的変質に見舞われながら、粛々とスコード教に従う羊の群れの弱さと結びついたのです。
身分の固定化や宗教の禁忌による支配は、人から機会を奪い、同時に強さを奪っているだけで、階級階層社会の欠点でもあります。言い換えれば不平等による支配です。彼は情報の拡散によって強い意志を持った人間に機会を与え、「機会の平等」を求める状況を作り出したのです。
結果の平等と機会の平等のどちらが正しいのかについては答えはありません。ムタチオンという現実が、彼に結果の平等に対する絶望を与えてしまったのでしょう。
*宇宙に向かうもうひとつの視点
ビーナス・グロゥブから地球へやってくる過程で、クンパ・ルシータは機会の平等の種を撒き散らし、競争によって何が起こるか確かめなければいけませんでした。彼は誰の味方でもなく、競争が人を強くしていくのかどうかだけに興味があったのです。
強い人間は期待通りの政治力を持つのかどうか、弱い人間をどう扱うようになるのか、彼は競争は双方が争い続けることによっていずれ止揚し、政治的妥協の元で均衡をもたらすと信じていました。戦いを忘れ、再び戦いを与えられた人間がその境地に辿り着けるのかどうか、彼はキャピタル・アーミーのブルジンの中からそれを見届けようとしました。
しかし、もうひとつの視点が同じ状況を見ているとは観察できていなかったようなのです。それはメガファウナのアイーダとベルリの視点でした。そしてルイン・リーです。
アメリア育ちのアイーダ・スルガンは、開明的で自主独立気質の強い人間でした。彼女はソーラーパネルの設置によってアースノイドは自主独立できると信じ、キャピタル・テリトリィ侵攻の急先鋒にいました。節度ある競争を好み、階級階層社会への反発が強いという点でクンパ・ルシータの立場と似ています。スコード教を尊重しながら、その支配体制は壊したかったところも似ています。
それはアイーダの気質ではなく、アメリアの気質といっていいでしょう。
一方のベルリは、キャピタル・タワー運航長官の息子で、スコード教の熱心な信者であり、敬虔な人物です。彼は同時にトワサンガを支配していたレイハントン家の嫡男でもあり、クンパ・ルシータの対極にあったヘルメス財団による支配体制の申し子のような人物です。
しかも本人はかなり頭が良く、飛び級生でした。マスクことルイン・リーが彼を最後まで敵視して殺そうとまで思い詰めたのは、彼の存在が「結果の平等」思想に基づく階級階層社会そのものであったためです。結果の平等は身分の固定化なのです。
結果が同じなら皆同じ身分のはずだと考えるのはまったくの間違いです。「結果の平等」を作り出し維持するのは官僚ですから、行政執行する過程で指示する人間とされる人間が最初に分かれ、優先すべき人間と後回しにされる人間に分かれ、保護すべき人間と捨て置く人間に分かれ、どうしようもない人間は処分されていなくなるのが「結果の平等」を求めた先にある社会です。
クンタラは、行政執行の過程で捨てられた人間にほかならず、捨てるのだから食べてもいいとされたわけです。しかもそれが子孫にも適用されました。犯罪者の子を非人として扱い、人間ではないのだから食料にしてもいいと考えたのがクンタラです。クンタラは平等主義によって生まれたのです。
弱肉強食の世界では、弱い者が食べられてしまうことはあったでしょうが、身分としてそれが固定化されることはありません。逃げる自由も戦う自由もあります。
アイーダ、ベルリ、ルインの3人の視点が、クンパ・ルシータの視点と対になっているのです。同じ世界を、世を達観した老人と、現状を変えようとする3人の若者に見せて、どちらに託すべきなのか提示してあるわけです。
こうして多くの人間たちが、トワサンガに向けて旅立っていきました。
vol:7はここまでです。
Gレコを面白いと感じるかどうかは、物語の中の何を見るかにかかっていると思います。クンパ・ルシータが仕掛けた競争にのみ目を奪われると、重要な部分を見落としてしまいます。
ルイン・リーがいかに切実に機会の平等を求めたのか、結果の平等に安住する人々(トワサンガのレイハントン家の家臣たち)が最後は武器商人になっていっただけなのはなぜなのか、そうした部分を見落とすると、なぜこの作品に惹かれる人が一定数いるのか理解できないでしょう。
面白い部分があるから、面白いと評する人がいるのです。
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「Gレコ ファンジン 暁のジット団」vol:6(Gレコは運命論的作品) [Gのレコンギスタ ファンジン]
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vol:6からは本編で起こったことを考察し、紐解いていきたいと思います。
*焦るドレッド将軍
レイハントン一族を滅亡させ、トワサンガの実権を握ったドレッド将軍は、10年以上の歳月をかけ軍備を整え、レコンギスタの準備を進めていた。
クーデターによってヘルメス財団と冷戦状態になっていた彼の元には地球の状況が伝わっていなかった。トワサンガはエネルギーをカシーバ・ミコシで運ばれるフォトン・バッテリーに頼っており、キャピタル・タワーを占領してビーナス・グロゥブを怒らせるわけにはいかなかった。
たとえレコンギスタに成功しても、エネルギーを止められては生きていけない。地球の文明がどこ程度回復しているのか、生産能力はどうなのかなど、レコンギスタを成功させるために必要とされる情報は多かった。そこで彼は、軍で不採用になった機体を使って地球の偵察を実行した。
*アムロの魂をララァが運ぶ
ドレッド将軍は知らなかったが、その機体にはサイコミュが搭載されていた。レイハントンが用意した、ビーナス・グロゥブのレコンギスタ派を月で食い止めるための決戦兵器だったのだ。しかし組み立てた側も運用する側もそのことは知らされていなかった。
こうしてYG-111・G-セルフは大気圏に突入した。人類の宇宙進出を記念して始まった宇宙世紀の黒歴史を、本当に終焉させるための始まりであった。人間同士の相互理解が起こした奇跡への信仰から始まったスコード教そのものが、褐色の肌の少女によって運ばれたのである。
*相互理解と相互競争
地球では、ドレッド将軍の動きを知らされたクンパ・ルシータが、キャピタル・ガードとアメリア軍を使って待ち構えていた。彼にとってどちらが勝つかは意味がなかった。ひとつの物事に対して競争状態が用意されていることが肝心なことだった。
クンパ・ルシータは、人と人は競争によって互いを高め合い、止揚に至って均衡的平和に至ることを理想にしていた。彼はスコード教の相互理解による平和実現を疑っており、むしろそれがスペースノイドをムスタチオンに導いたと嫌悪していた。
彼はスコード教の始まりとされる、ニュータイプ同士による相互理解が、アクシズという巨大隕石の軌道を逸らせたとの話を神話だと思っていた。神話は神話で尊重するが、それと現実は別であった。
宇宙世紀を悲惨なものにした競争原理が、相互理解の理想を待ち構え、拿捕したのである。
*託されたのはキャスバルとアルテイシア
ラライヤを乗せたG-セルフは、機体をアメリアに、パイロットをキャピタル・テリトリーに奪われた。誰も動かせなかったG-セルフだったが、なぜかアイーダを認証して彼女以外動かせないとわかった。これでパイロットとして自信を持ったアイーダは、カーヒルとともにキャピタル・タワーへ向かった。目的はフォトン・バッテリーの強奪だった。
そこで出会ったのがベルリ・ゼナムだった。タワーの運航長官の息子で飛び級生というエリート学生だった。彼女はそこで作業用レクテンで簡単に制圧されてしまう。彼女の中に芽生えた反発心は、カーヒルを殺されたことで頂点に達した。
しかし、パイロットとしての自信を砕かれたのは、彼女の運命であった。彼女は自分と同じようにガンダムに認証されたベルリを訝しみ、反発しながらも、受け入れるしかなかった。彼女に与えられた役割は政治であった。アムロの魂を乗せた機体は、政治に巻き込まれる運命を背負った彼女を守るために、弟に託されたのだ。
シャア・アズナブルという人間が、兄であったために政治も軍事もすべて引き受け自滅していった過去は、兄妹だった運命の子を姉弟に置き換え、新しい物語を作ろうとしていたのだ。
クーデターによって失われた父の理想を、少年と少女は自ら学びながら引き受けようとしていた。
*好戦的人間を葬る白い悪魔
アイーダのカーヒルを殺された深い恨みの感情は、ベルリに責任感を受け付け、彼とガンダムはメガファウナの防衛任務に当たることになった。当初ガンダムの操縦に慣れていないベリルだったが、アメリアのカーヒルに続き、キャピタル・アーミーのデレンセンも殺害してしまう。
アイーダの恋人に続き自分の恩師をも殺してしまったベルリは、深い苦悩に陥った。このとき彼は、自分とガンダムが背負った運命を知らなかった。
G-セルフは、レコンギスタというやむなき交戦を阻止するための機体だったのだ。この機体は、スペースノイドとアースノイドの決戦を阻止する運命を背負わされている。ベルリが彼らを殺したのではなく、機体が殺したのだ。ベルリが引き受けるのは、人を死なせた事実だけだった。それは彼が姉を守るナイトであり、武を担うが故に向き合わなくてはいけない重要な経験だったのです。
*運命論に満ちた「ガンダム Gのレコンギスタ」
このように、「ガンダム Gのレコンギスタ」は運命論に満ち溢れた作品です。「機動戦士ガンダム」において人間同士の相互理解の可能性を描き、「機動戦士Zガンダム」において相互理解の失敗を描き、「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」において相互理解の成就が描かれたとわかっていないと、この運命論には気づかないかもしれません。
シャアの理想論も同様です。彼が人類を宇宙に上げて進化を促すと同時に地球環境の回復を待つと定めたとの理解がないと、ムスタチオンが起こるまで辛抱してエネルギーを蓄え続けたビーナス・グロゥブの人間の気持ちが理解できません。彼らはギリギリまで待ったんです。
そして彼らスペースノイドは還ってくることになった。
作品として何事もなく再入植させることもできたでしょう。しかしそれは本当に人間同士の相互理解が実現するという確信でしょうか? アムロとシャアが悩み抜いたように、ベルリとアイーダも悩み、自分たちで答えを見つける必要があるのではないでしょうか?
そのために用意された試練が、クンパ・ルシータのもうひとつの理想論です。競争はやがて止揚し、均衡するという平和論の一種です。これは現在の軍事力の均衡論と同じ平和論なのです。
これを乗り越えられないと、ガンダムは本当の意味で終わらない。
人と人の間にあるのは断絶です。個と個の間には何もありません。これをニュータイプの共感現象によって乗り越えたのがガンダムです。スペースノイドの再侵略(レコンギスタ)を平和的再入植に出来ることがあるのだろうかとの問いが、終わりの始まりの物語のテーマでした。
人間同士の相互理解がなされてはじめて、ガンダムは終わるのです。
vol:6はここまで。
このような形で考察を進めつつ、いずれはGレコの続編でやるべきことまで示せればいいなと思っております。富野は自分でやれそうもないので、孫の代で作ってくれたら本望みたいにインタビューで答えておりますが、公式は売れなかったらそれまで、冷たいものですから、続編の可能性示唆まではファンで請け負わせていただきます。
小学生の自分に「機動戦士ガンダム」を与えてくれた富野への恩返しだと思って、地道に続けてまいります。
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HG 1/144 ガンダム G-アルケイン (ガンダムGのレコンギスタ)
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「Gレコ ファンジン 暁のジット団」vol:5(宇宙から降りてくること) [Gのレコンギスタ ファンジン]
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そろそろ内容に入っていきますが、vol:5ではいま一度、G-セルフが宇宙からやってくる意味について語り倒していきたいと思います。
この作品は不当に低く評価されており、いまのままでは公式になかったことにされてしまいそうなので、そうはさせじと語って語って語り倒してやろうというわけです。Gレコで示されたあれこれを考察していくと、確かにそれだけの価値のある作品だと確信しております。
vol:5のテーマは、宇宙から降りてくることの意味です。
*早すぎたレコンギスタ「∀ガンダム」
公式でも時系列が定まっていない「∀ガンダム」について、当ファンジンでは宇宙世紀1500年ごろ、リギルド・センチュリー500年ごろと定めている。宇宙世紀とリギルド・センチュリーが並列して使われていたというのは当ファンジンが勝手に考えたもので、公式ではありません。
公式というのは後付けでいいのです。どうせ考えているのはただのおっさんです。
「∀ガンダム」は、宇宙世紀の歴史が辿り着いた先の話で、すべての歴史が黒歴史として語らせるコレクト・センチュリーだとされていますが、宇宙世紀1000年には外宇宙連邦と太陽系連邦の内戦が起こっているというので、そのあとには資源枯渇による荒廃しか残っておらず、戦争している人間と、戦争に参加せず祈っている人間が、別の暦を使っていてもおかしくない。
いくつかの暦が併用されていた時代があったと考えればいい。コレクト・センチュリーの始まりは、釈迦の入滅でもなんでも勝手に決めればいいのだ。そもそも古い時代を捨てて人類の未来を切り開くつもりで定めた宇宙世紀が、終わりなき戦争の時代になった時点で、人類はみんなで仲良く時代を語る区分を定める機運は失われているはずだ。
コレクト・センチュリーを使っていた者たちは、宇宙世紀ではない歴史に生きたいと切に願ったからそう決めただけであって、リギルド・センチュリーを使っていた者たちとはまた違う。それに、後述するが、リギルド・センチュリーはスコード教の宇宙移民によって持ち込まれた暦である。「∀ガンダム」のリギルド・センチュリー500年ごろは、スコード教はまだスペースノイドの一般層が信仰する宗教でしかなかった。
まだ確固たる確信がない時期に試みられた地球との接触が、「∀ガンダム」だったと捉えたらどうでしょう。そこで人類を滅ぼした技術がまだ存在することを知って、時期尚早と考え直したのではないか。
*宇宙から降りてくるもの
宇宙世紀とは、人類が宇宙に進出しながら、延々と地球でやっていたのと同じ戦争を繰り返した歴史です。故に黒歴史なわけですが、宇宙に進出した人類の科学技術がロボットの開発にだけ注がれていたと考える必要はないと考えます。
それこそワームホールで遥か別銀河への進出、果ては並行宇宙への進出などを行い、恒星の誕生から消滅を超えて、バンダイが倒産するまで何百億年でも宇宙世紀を続け、新型ガンダムで戦い続ければいい。それは勝手にやればいい。
問題なのは、人間はバンダイの社員みたいな悪ばかりではないということです。当然厭戦気分も生まれ、平和を希求する人間も出てくる。秩序を欲しがる人間もいるのである。そういう人間の祈りの気持ちが、リギルド・センチュリーになったと考えたい。
彼らは、バンダイ社員が外宇宙まで出掛けてガンダムで戦っていた宇宙世紀1000年ごろ、宇宙世紀を捨て去って密かにリギルド・センチュリーを定め、スコード教を興した。教義の根幹は宇宙世紀初期に起こったアクシズを逸らせた奇跡。その人間同士の相互理解が生み出した奇跡を信じる気持ちから、シャアの理想論の実践を己に課し、ストイックに働き続け、宇宙で平和的文明の構築を行った。
そして、「∀ガンダム」から200年、リギルド・センチュリー700年ごろ、満を持して地球に降り立った。目的は、アースノイドの救済とスコード教の普及。化石燃料が枯渇し、「∀ガンダム」時代に起こった文明が森林資源を使い果たして再び食人時代へ戻ろうとしていた人類にエネルギーと文明を与え、代わりにスコード教の厳しい戒律を教え込む活動を行っていった。
シャアの理想論を実践する時代は終わり、スペースノイドは地球に帰還する準備を始めたのだ。
はじめて降り立った大地にはキャピタル・タワーが設置され、最初の入植者やスペースノイドの中のクンタラなどが労働力として降ろされました。
スコード教の制限的な文明は、南米大陸北部(キャピタル・テリトリー)からアメリアへと広がり、大西洋を渡ってゴンドワンにも届けられた。ただアメリアには「∀ガンダム」時代に再建された独自の科学文明と教育制度が残っており、それらと併存することになった。アメリアが開明的で革新思想を持つのはこのためである。
地球への再入植とアースノイドの再教育は、同時に進められていった。
*ムタチオンの顕在化
ところが、化石燃料が枯渇した地球は、思ったほど多くの人間を受け入れられなかった。再入植は遅々として進まなくなった。そこに起こったのが、ムタチオン問題の顕在化だ。これによって多くのスペースノイドが絶望的気分を味わうことになった。
地球環境が回復した分だけ地球に再入植させていくつもりだったのに、人間は早急に重力環境下に戻る必要性に見舞われたのだ。ピアニ・カルータは、それだけでは足らないと、永らくタブー視されてきた競争原理を再び人類に課そうとした。競争原理の導入は、リギルド・センチュリーが宇宙世紀の二の舞になる可能性を秘めていた。
スペースノイドとアースノイドを戦わせてはいけない、そう考えたヘルメス財団のレイハントンは、トワサンガにてG-セルフの設計図だけを用意した。G-セルフのコアファイターコクピットには、宇宙世紀時代の遺物ながら最終形となったサイコミュが搭載さた。アムロだったからこそ発揮された底知れぬサイコウェーブの増幅機能を備え、悪意あるサイコウェーブには反応しない代物だった。
ラライヤを乗せて宇宙から降りてきたG-セルフは、「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」のラストシーンで、地球の人々が空に見た奇跡と同じものだったのだ。G-セルフは、シャアの理想と怨念を終わらせるべく用意され、それを成し遂げられる人間に託されたのである。
G-セルフは、ベルリとアイーダとともに宇宙の現実を見聞し、その答えを若き姉弟に託した状態で地球に戻ってきます。ふたりには、再入植の必要性、化石燃料の枯渇、宇宙からの支援の必要性、地球の発展可能性、ばら撒かれた戦争の種などを解決していくことが求められて終わります。
残念なことにこの作品はそれほど人気がないので、続編は作られないでしょうし、劇場版も富野監督が望むほど完全なものは作らせてもらえないかもしれません。でもだからこそ、この作品を好きなファンがずっと語り続けて物語を完成させればいいのではないでしょうか。
当ファンジンは、最終的にはレコンギスタ版逆襲のシャアまで続けていきたいと思っております。
追記。
地理関係に記憶違いがあったので修正しました。
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「Gレコ ファンジン 暁のジット団」vol:4(G-セルフの役割) [Gのレコンギスタ ファンジン]
更新は不定期ですが、長期に渡って間隔が空くということはありません。
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vol:4のテーマは、G-セルフの役割についての考察です。
*情報の1本の糸
スペースノイドの間に起こったムタチオン(突然変異)。これによってスコード教とヘルメス財団は、平和裏のうちにスペースノイドを地球に再入植させる準備を急がねばなりませんでした。
彼らはキャピタル・ガード調査部を通じて密かに地球がどれほどの数を受け入れ可能か探っていました。そのために先行して入植させていた人々もいました。彼らの情報網は、地球とトワサンガ、ビーナス・グロゥブを結んだもので、全人類に対して包括的な情報を持っていたのは彼らだけでした。
ところが、ヘルメス財団の中に裏切り者が出ました。彼の名はピアニ・カルータ。彼はヘルメス財団の機密情報を盗み出し、まずはビーナス・グロゥブに流出させました。武器を手にしたビーナス・グロゥブの中に、地球の再生を待たず、再征服(レコンギスタ)する機運が高まりました。
ビーナス・グロゥブの人々の中に好戦的気分が高まっているとの情報は、トワサンガのヘルメス財団にももたらされました。トワサンガのヘルメス財団を取り仕切るレイハントン家は、地球の再生を待たずに強引な入植や、ましてや軍事行為による征服を行うことに反対でした。
それでは何のためにいままで我慢してきたのかわからなくなるためです。レイハントン家はスコード教の教義に反することは阻止する構えをみせました。ところが、ピアニ・カルータにはそれが好都合だったのです。彼はトワサンガの反応を利用してビーナス・グロゥブに自警団を作ることに成功しました。
*ピアニ・カルータは情報を見落とした
競争の創出を作り出すことが目的であるピアニ・カルータは、ビーナス・グロゥブに充分な争いの種を蒔いたと確信すると、トワサンガに武官として赴任しました。彼はレイハントン家に深く潜り込み、広く領民たちにも親しまれる紳士として顔を売りますが、裏では情報収集活動を活発に行っていました。彼の目的は、トワサンガに自警団を作らせ、いずれ軍隊に発展させることでした。
しばらく様子を観察したものの、敬虔なスコード教徒であるレイハントン家の人々は、まったくそんなそぶりは見せません。そこで彼は、レイハントン家と対立関係にあるドレッド家に目をつけ、彼らにヘルメスの薔薇の設計図を流出させました。
軍事的優位に立ったと確信したドレッド家は、戦いの準備をしていないレイハントン家に対してクーデターを起こし、領主と妻を暗殺しました。これはピアニの主義に反することでした。
このクーデターによってドレッド家のものとなったトワサンガは、いずれ軍隊を持つようになる。そう確信したピアニ・カルータは、事件発覚を恐れる気持ちもあり、レイハントン家の子供と一緒に地球へ亡命しました。彼は表向きヘルメス財団の一員で、信用があったからです。
ここで彼はひとつの情報を見落としました。レイハントン家は何も用意していなかったわけではなかったのです。彼らは最悪の場合に備え、最強のモビルスーツであると同時に、スコード教の原点となったニュータイプ同士の相互理解と奇跡を起こした機体を用意していたのです。
それが、のちにYG-111、G-セルフと呼ばれるようになるガンダムタイプのモビルスーツでした。
*G-セルフは対レコンギスタ用の決戦兵器
レイハントン家はこのモビルスーツの設計図だけを用意していました。対ビーナス・グロゥブ用にモビルスーツを開発すると見込んでいたピアニ・カルータは、設計図だけ用意されたこの情報を見逃したのです。
このモビルスーツの特徴は、サイコミュシステムが搭載されていることでした。
宇宙世紀初期において、ニュータイプ同士が相互理解し、それがこのシステムによって増幅されて地球を救った奇跡が、スコード教の原点です。レイハントン家は、再びやって来た争いの時代を嫌悪しながら、軍事バランスによる平和の実現を否定し、奇跡の力を用意することでビーナス・グロゥブからのレコンギスタを、月で食い止める腹積もりだったのです。
このサイコミュは宇宙世紀時代の最終形でした。宇宙世紀時代にニュータイプの発動に善悪があることを突き止めた人々が開発したシステムで、使用する人間の心の状態に反応するものでした。レイハントン家の人々は、このシステムならば正しい心で戦えると信じ、設計図を用意したのです。
レイハントン家は、この機体を使ってレコンギスタを食い止めようとしていました。
*領民の失望と変節
レイハントン家がクーデターで滅亡したのち、領民たちは領主の遺志を継いでレジスタンスとなりました。レコンギスタに前のめりになるドレッド家に対抗するためです。ところが、領主を失った彼らは、経済的に困窮し始めました。
彼らは遺された設計図を基にYG-111を組み立て、主に経済的理由から軍に売り込みますが、領主の残した秘蔵の設計図で作られたモビルスーツがそれほどの性能でないことに失望しました。彼らは特殊なサイコミュシステムのことなど理解していませんでした。
彼らはいまさらドレッド家に寝返るわけにもいかなかったために、レジスタンスとして活動を続けますが、レイハントン家に対する忠誠は日増しに薄れていくばかりでした。
そんな折、近くに住んでいたラライヤ・アクパールが偵察任務でYG-111を使って地球に降りると知った領民たちは、10年前に地球へと逃がされたレイハントン家の子孫たちがもしや見つかるのではと淡い期待を抱いて、YG-111にレイハントン・コードを仕掛けました。
しかし、そのことに大きな期待を抱いていたわけではありません。領主を失った彼らは、すでに理想主義者でも敬虔なスコード教徒でもなくなりつつあったからです。ムタチオンと無縁であった健康体の彼らは、レコンギスタより金に興味を覚えていたのです。
*フラミニア・カッレ
YG-111が軍の採用試験で大した性能を発揮できなくて失望した人々の中に、むしろホッとしている人物がいました。それがフラミニア・カッレです。彼女はビーナス・グロゥブの最強硬レコンギスタ派ジット団が派遣したスパイだったのです。
彼女やジット団は、自分たちにヘルメスの薔薇の設計図を流出させた人物のことは知りませんでした。しかし、そうしたものがヘルメス財団にあると気づくと、より多くの情報を求めてトワサンガのレイハントン家に領民として潜り込んだのです。
彼女は近所に住んでいたラライヤを養育するなど、周囲の信頼を得ていきました。ところがそこでクーデターが起こってしまった。その後に解明された事実によって、ヘルメスの薔薇の設計図の流出元がクンパ・ルシータだと知ります。
これで新しい設計図が入手できないとわかり、彼女は落胆しますが、そこに出てきたのがYG-111でした。彼女もその製造に携わり、ガンダムタイプの情報をビーナス・グロゥブに流すなどスパイとして活躍しますが、サイコミュシステムのことまでは理解が及びませんでした。
ところがそんな彼女のもとに、ベルリというニュータイプを得たYG-111、G-セルフが戻ってきたのです。G-セルフの性能は、パイロットの何らかの能力に左右されると知った彼女は大いに興味を持ち、これをジット団に持ち帰る必要性を感じ、機体を奪おうとしたのです。
*ニュータイプ研究の果てに
宇宙世紀時代はニュータイプ研究が盛んで、それを人為的に作り出す研究もおこなわれていました。サイコウェーブを伝達するサイコミュも試験的に多くのものが試作されました。戦争に勝つためのサイコミュは、能力がある者が操作すれば誰にでも使いこなせるものが良い兵器として貴ばれました。
しかし資源が枯渇し、宇宙世紀1000年ごろにリギルド・センチュリーが併存し始めたころから風向きが変わりました。善意悪意関係なく、力の強さだけを求めるシステムで良いのかどうかという疑問です。その試作サイコミュが、G-セルフのコアファイターに搭載されたシステムでした。
感覚的に「厭なもの、不快な感じ」には反応しないシステムです。また能力のない者が搭乗した場合は、通常兵器の範囲で動かすことも出来ました。
注:これらの事柄は富野作品においてのみの話で、他のガンダムは関係ありません。
*レイハントン・コード
レイハントン家の領民たちが急遽設置したレイハントン・コードですが、これはレコンギスタに徹底抗戦しようと考えていたレイハントンの意思を、偶然ながらも子供たちに伝えることになりました。
領民たちは、ただレイハントン家が復活してくれれば自分たちの生活も元に戻るに違いないと考え、子供たちを探しただけですが、その行為がG-セルフのコクピットに仕込まれたシステムを守ることになったのです。
アイーダとベルリは、知らず知らずのうちに、両親の遺志に応えたのでした。
以上で「暁のジット団」vol:4は終わりになりますが、最後に言っておきたいのは、昨今のアニメファンは答えを自分で探さないということです。
公式や漫画原作の知ってる自慢しかしない。そんなもの何の意味もない。公式など、金にならないことはやらないんです。
「機動戦士ガンダム」は、初回放送は低視聴率で打ち切られた作品でした。しかし、内容の面白さから多くの人が多くのことを語り、作品は延命して、再放送とガンプラの発売によってヒット作となったのです。多くの人がいろんな考えを語ったから作品は延命した。
作品は一方通行ではない。作り手と受け手が一緒に作り上げていくものです。そして受け手は、気に入った作品のことだけ語ればいい。
作り手にとって都合のいい視聴者になってもいいことなどありません。それは作り手を殺しますよ。
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