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「Gレコ ファンジン 暁のジット団」vol:8(相互理解なき世界) [Gのレコンギスタ ファンジン]

「ガンダム Gのレコンギスタ」のブログ内同人誌「暁のジット団」vol:8をお届けします。

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物語の影の主役クンパ・ルシータが生み出した競争社会が、決して弱肉強食による生命としての強化だけを目的にしたものではないということをvol:7で考察しました。競争原理は機会の平等を目的としたものであり、結果の平等を否定した彼なりの理想論だったわけです。

それに最も近いのが、アメリアという国家でした。アメリアは自主独立気風の強い土地柄で、キャピタル・タワーからもたらされるエネルギーに依存した支配的社会の打倒を目的とし、技術のさらなる開示をキャピタル・テリトリィに要求します。

キャピタル・テリトリーはあくまで仲介者でしかないので、その要求には応えられません。しかしトワサンガのことすら知らないアースノイドたるアメリア人は、キャピタル・テリトリィが技術を開示しないのだと思い込んで強奪を繰り返しました。

このように、人間同士は宇宙世紀、リギルド・センチュリーを経てもなお相互理解とは程遠い存在だったのです。相互理解の可能性を信じているのは、過去の号で指摘した通り、スコード教だけでした。それはスコード教が興る原点になったのが、「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」のラストシーンだったからというのが本ファンジンの考察になっています。

今回は「状況の提示」の補完として「相互理解なき世界」について考察します。


*終わらぬ大陸間戦争

ラライヤ・アクパールが操縦するG-セルフが宇宙から落ちて来たとき、すでに地球ではゴンドワンとアメリアの大陸間戦争が始まっていました。

グシオン・スルガンが協定に違反してメガファウナを温存し、海賊船として運用していたのは、「宇宙からの脅威」を証明して、政治的駆け引きの中でゴンドワンとの停戦とキャピタル・テリトリィからの技術提供を同時に引き出そうとしたからと推測することが出来ます。

共通の敵を設定することで、同盟関係を樹立するのは政治の定石です。結果、スコード教からもキャピタル・テリトリィからも何も引き出せませんでしたが、それは彼らが要求されたものを持っていなかったからです。また宇宙からの脅威がどのようなものなのかもわかりませんでした。

ゴンドワンとの調停も上手くいかなかったようです。劇中で描かれることのなかったゴンドワンとは、現在の欧州辺りのことで、南米大陸北部にあるキャピタル・テリトリィから遠く、アメリアほどには恩恵に与れない地域でした。遠くにあるため、より敬虔さを尊び、フォトン・バッテリーの安定供給体制を維持したかったのでしょう。

アメリアがゴンドワンとの調停に際し、大元であるキャピタル・テリトリィの抱き込みを模索したのは当然といえるでしょう。

スコード教の協力があれば、ゴンドワンとの戦争にも終わりが見える。しかし、スコード教はそうした政治的駆け引きによる安定ではなく、人間同士の抜本的相互理解を模索するための宗教で、現実的対応には不向きだったのです。


*分配の不平等

劇中にもあったように、キャピタル・テリトリィには物資が豊富にある様子が描かれていました。フォトン・バッテリーは取り決め通り分配されていたかもしれませんが、分配というのは不平等がつきもので、すべての人間に平等に分配されることはまずありません。

それに、地域差というものもあります。ヘルメス財団が南米北部に軌道エレベーターを建設したのは、当然そこがより有望だったからに他なく、キャピタル・テリトリィに近い地域で、森林資源の豊富な場所ほど多くの資源が回復していたと考えるのが自然です。

スコード教とは、シャアの理想論の実現とアムロの人間同士の相互理解がふたつの柱なので、当然地球環境の回復後は地球に帰還すること、再入植することが前提になっています。キャピタル・タワー建設自体が、スペースノイドの再入植を前提として建設されたと考えるのが自然でしょう。

すると、キャピタル・テリトリィに住んでいる人間は、再入植した人々も混ざっていると考えることが出来ます。これではただでさえ難しい平等な分配など望むべくもありません。

物資の不足が日常化している世界に戦争の道具が撒き散らされたわけですから、当然より豊かな土地への羨望は起きるでしょう。アメリアとゴンドワンの戦争の理由は定かではありませんが、不平等な分配への反発が原因になって大陸間戦争が起きたと考えることも出来そうです。


*征服を目指すクリム・ニックと知見を得たいアイーダ・スルガン

そうした地球の事情を背に、サラマンドラとメガファウナはトワサンガへと向かいました。両艦の重要人物は、クリム・ニック(アメリア大統領の子息、サラマンドラ)とアイーダ・スルガン(アメリア軍事総監の娘、メガファウナ)です。ふたりはアメリア人ですが、立場はまったく違っていました。

宇宙空間にありながら豊かな生活を営むトワサンガの様子を見たクリム・ニックは、ゴンドワンよりよほど魅力的な、戦争をしてでも手に入れたい場所だと感じました。戦力差などが明らかでないため、攻撃を仕掛けるということはありませんでしたが、スコード教の教えに従って大人しく生きている人物たちを侮るところがありました。

最後に大統領の父と決別する彼ですが、政治家としてのちに目指していくものがアイーダとはまったく違ったことは注目に値します。

一方のアイーダは、トワサンガに着くなり自分がここで生まれ育ったことを思い出します。彼女はアメリアで教育を受けましたが、元はスペースノイドだったわけです。しかも、両親はレコンギスタに反対したことが原因でドレッド家に暗殺されている。

父とカーヒル大佐の影響で、反キャピタル・テリトリィの立場だったものが揺らぎ、ドレッド家が目指す再征服(レコンギスタ)と、同郷のクリムが密かに望むアースノイドからの宇宙侵略と政治的に戦う運命を知るのです。

アンビバレンツな感情に支配された彼女は、まずは多くを知ることが大事だと思い定めます。意思決定の根幹になる立場を、自分自身で見定めたいと思ったのです。

憧れの人物が姉だと知ったベルリは、悩んだ末に彼女のナイトになることを決意します。姉が納得できるまで彼女を守ろうとしたのです。

こうして、キャスバルを追い込んだ政治と軍務両面を背負う重い運命は、ふたつに分かれ、未来に小さな希望をもたらすことになりました。


*相互理解とG-セルフ

相互に分かたれ、宗教的儀式でしか出会わなかったスペースノイドとアースノイドは、こうして邂逅を果たしました。

ところがレコンギスタを目指すドレッド家とレジスタンスの対立、ドレッド家とサラマンドラのクリム・ニックの戦力の奪い合いなどが表面化し、また強化人間マスクとなってクンタラの名誉回復を目指すルイン・リーの攻撃も活発化して、スコード教の目指す「相互理解なき世界」とはまるで遠く離れた争いが続いてしまったのでした。

そんな中で発揮されたのが、G-セルフの隠れた性能でした。当ファンジンで「G-セルフのコアファイターはサイコミュ搭載」と考察したのは、レイハントン家の目的が、ビーナス・グロゥブのレコンギスタ派を月で阻止するためとの推測と、争い続ける人間同士を諫めるようにG-セルフの能力が発揮されていたことを合わせて考えた末のことです。

ガンダムを特徴づけるアイデアの中で、最も重要なものはニュータイプです。「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」のラストシーンで何が起こったのかを見過ごして、ガンダムという物語は終わらないはずです。


vol:8はここまで。

「相互理解なき世界」にG-セルフがなぜ必要で、なぜG-セルフだけにコアファイターが搭載されていたのか、それを読み解くヒントにしない手はありません。

明らかにこの作品は宇宙世紀初期に起こった「機動戦士ガンダム」「機動戦士Zガンダム」「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」の続きなのです。あの時代に始まったことを、終わらせる意図がある作品なのです。

追記。

地理関係に記憶違いがあったので修正しました。


この続きはvol:9で。次回もよろしく。



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