「Gレコ ファンジン 暁のジット団」vol:6(Gレコは運命論的作品) [Gのレコンギスタ ファンジン]
「ガンダム Gのレコンギスタ」のブログ内同人誌「暁のジット団」vol:6をお届けします。
更新は不定期。過去の記事は画面左側の[マイカテゴリー]の一番上をクリックするとすぐに探せます。
vol:6からは本編で起こったことを考察し、紐解いていきたいと思います。
*焦るドレッド将軍
レイハントン一族を滅亡させ、トワサンガの実権を握ったドレッド将軍は、10年以上の歳月をかけ軍備を整え、レコンギスタの準備を進めていた。
クーデターによってヘルメス財団と冷戦状態になっていた彼の元には地球の状況が伝わっていなかった。トワサンガはエネルギーをカシーバ・ミコシで運ばれるフォトン・バッテリーに頼っており、キャピタル・タワーを占領してビーナス・グロゥブを怒らせるわけにはいかなかった。
たとえレコンギスタに成功しても、エネルギーを止められては生きていけない。地球の文明がどこ程度回復しているのか、生産能力はどうなのかなど、レコンギスタを成功させるために必要とされる情報は多かった。そこで彼は、軍で不採用になった機体を使って地球の偵察を実行した。
*アムロの魂をララァが運ぶ
ドレッド将軍は知らなかったが、その機体にはサイコミュが搭載されていた。レイハントンが用意した、ビーナス・グロゥブのレコンギスタ派を月で食い止めるための決戦兵器だったのだ。しかし組み立てた側も運用する側もそのことは知らされていなかった。
こうしてYG-111・G-セルフは大気圏に突入した。人類の宇宙進出を記念して始まった宇宙世紀の黒歴史を、本当に終焉させるための始まりであった。人間同士の相互理解が起こした奇跡への信仰から始まったスコード教そのものが、褐色の肌の少女によって運ばれたのである。
*相互理解と相互競争
地球では、ドレッド将軍の動きを知らされたクンパ・ルシータが、キャピタル・ガードとアメリア軍を使って待ち構えていた。彼にとってどちらが勝つかは意味がなかった。ひとつの物事に対して競争状態が用意されていることが肝心なことだった。
クンパ・ルシータは、人と人は競争によって互いを高め合い、止揚に至って均衡的平和に至ることを理想にしていた。彼はスコード教の相互理解による平和実現を疑っており、むしろそれがスペースノイドをムスタチオンに導いたと嫌悪していた。
彼はスコード教の始まりとされる、ニュータイプ同士による相互理解が、アクシズという巨大隕石の軌道を逸らせたとの話を神話だと思っていた。神話は神話で尊重するが、それと現実は別であった。
宇宙世紀を悲惨なものにした競争原理が、相互理解の理想を待ち構え、拿捕したのである。
*託されたのはキャスバルとアルテイシア
ラライヤを乗せたG-セルフは、機体をアメリアに、パイロットをキャピタル・テリトリーに奪われた。誰も動かせなかったG-セルフだったが、なぜかアイーダを認証して彼女以外動かせないとわかった。これでパイロットとして自信を持ったアイーダは、カーヒルとともにキャピタル・タワーへ向かった。目的はフォトン・バッテリーの強奪だった。
そこで出会ったのがベルリ・ゼナムだった。タワーの運航長官の息子で飛び級生というエリート学生だった。彼女はそこで作業用レクテンで簡単に制圧されてしまう。彼女の中に芽生えた反発心は、カーヒルを殺されたことで頂点に達した。
しかし、パイロットとしての自信を砕かれたのは、彼女の運命であった。彼女は自分と同じようにガンダムに認証されたベルリを訝しみ、反発しながらも、受け入れるしかなかった。彼女に与えられた役割は政治であった。アムロの魂を乗せた機体は、政治に巻き込まれる運命を背負った彼女を守るために、弟に託されたのだ。
シャア・アズナブルという人間が、兄であったために政治も軍事もすべて引き受け自滅していった過去は、兄妹だった運命の子を姉弟に置き換え、新しい物語を作ろうとしていたのだ。
クーデターによって失われた父の理想を、少年と少女は自ら学びながら引き受けようとしていた。
*好戦的人間を葬る白い悪魔
アイーダのカーヒルを殺された深い恨みの感情は、ベルリに責任感を受け付け、彼とガンダムはメガファウナの防衛任務に当たることになった。当初ガンダムの操縦に慣れていないベリルだったが、アメリアのカーヒルに続き、キャピタル・アーミーのデレンセンも殺害してしまう。
アイーダの恋人に続き自分の恩師をも殺してしまったベルリは、深い苦悩に陥った。このとき彼は、自分とガンダムが背負った運命を知らなかった。
G-セルフは、レコンギスタというやむなき交戦を阻止するための機体だったのだ。この機体は、スペースノイドとアースノイドの決戦を阻止する運命を背負わされている。ベルリが彼らを殺したのではなく、機体が殺したのだ。ベルリが引き受けるのは、人を死なせた事実だけだった。それは彼が姉を守るナイトであり、武を担うが故に向き合わなくてはいけない重要な経験だったのです。
*運命論に満ちた「ガンダム Gのレコンギスタ」
このように、「ガンダム Gのレコンギスタ」は運命論に満ち溢れた作品です。「機動戦士ガンダム」において人間同士の相互理解の可能性を描き、「機動戦士Zガンダム」において相互理解の失敗を描き、「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」において相互理解の成就が描かれたとわかっていないと、この運命論には気づかないかもしれません。
シャアの理想論も同様です。彼が人類を宇宙に上げて進化を促すと同時に地球環境の回復を待つと定めたとの理解がないと、ムスタチオンが起こるまで辛抱してエネルギーを蓄え続けたビーナス・グロゥブの人間の気持ちが理解できません。彼らはギリギリまで待ったんです。
そして彼らスペースノイドは還ってくることになった。
作品として何事もなく再入植させることもできたでしょう。しかしそれは本当に人間同士の相互理解が実現するという確信でしょうか? アムロとシャアが悩み抜いたように、ベルリとアイーダも悩み、自分たちで答えを見つける必要があるのではないでしょうか?
そのために用意された試練が、クンパ・ルシータのもうひとつの理想論です。競争はやがて止揚し、均衡するという平和論の一種です。これは現在の軍事力の均衡論と同じ平和論なのです。
これを乗り越えられないと、ガンダムは本当の意味で終わらない。
人と人の間にあるのは断絶です。個と個の間には何もありません。これをニュータイプの共感現象によって乗り越えたのがガンダムです。スペースノイドの再侵略(レコンギスタ)を平和的再入植に出来ることがあるのだろうかとの問いが、終わりの始まりの物語のテーマでした。
人間同士の相互理解がなされてはじめて、ガンダムは終わるのです。
vol:6はここまで。
このような形で考察を進めつつ、いずれはGレコの続編でやるべきことまで示せればいいなと思っております。富野は自分でやれそうもないので、孫の代で作ってくれたら本望みたいにインタビューで答えておりますが、公式は売れなかったらそれまで、冷たいものですから、続編の可能性示唆まではファンで請け負わせていただきます。
小学生の自分に「機動戦士ガンダム」を与えてくれた富野への恩返しだと思って、地道に続けてまいります。
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vol:6からは本編で起こったことを考察し、紐解いていきたいと思います。
*焦るドレッド将軍
レイハントン一族を滅亡させ、トワサンガの実権を握ったドレッド将軍は、10年以上の歳月をかけ軍備を整え、レコンギスタの準備を進めていた。
クーデターによってヘルメス財団と冷戦状態になっていた彼の元には地球の状況が伝わっていなかった。トワサンガはエネルギーをカシーバ・ミコシで運ばれるフォトン・バッテリーに頼っており、キャピタル・タワーを占領してビーナス・グロゥブを怒らせるわけにはいかなかった。
たとえレコンギスタに成功しても、エネルギーを止められては生きていけない。地球の文明がどこ程度回復しているのか、生産能力はどうなのかなど、レコンギスタを成功させるために必要とされる情報は多かった。そこで彼は、軍で不採用になった機体を使って地球の偵察を実行した。
*アムロの魂をララァが運ぶ
ドレッド将軍は知らなかったが、その機体にはサイコミュが搭載されていた。レイハントンが用意した、ビーナス・グロゥブのレコンギスタ派を月で食い止めるための決戦兵器だったのだ。しかし組み立てた側も運用する側もそのことは知らされていなかった。
こうしてYG-111・G-セルフは大気圏に突入した。人類の宇宙進出を記念して始まった宇宙世紀の黒歴史を、本当に終焉させるための始まりであった。人間同士の相互理解が起こした奇跡への信仰から始まったスコード教そのものが、褐色の肌の少女によって運ばれたのである。
*相互理解と相互競争
地球では、ドレッド将軍の動きを知らされたクンパ・ルシータが、キャピタル・ガードとアメリア軍を使って待ち構えていた。彼にとってどちらが勝つかは意味がなかった。ひとつの物事に対して競争状態が用意されていることが肝心なことだった。
クンパ・ルシータは、人と人は競争によって互いを高め合い、止揚に至って均衡的平和に至ることを理想にしていた。彼はスコード教の相互理解による平和実現を疑っており、むしろそれがスペースノイドをムスタチオンに導いたと嫌悪していた。
彼はスコード教の始まりとされる、ニュータイプ同士による相互理解が、アクシズという巨大隕石の軌道を逸らせたとの話を神話だと思っていた。神話は神話で尊重するが、それと現実は別であった。
宇宙世紀を悲惨なものにした競争原理が、相互理解の理想を待ち構え、拿捕したのである。
*託されたのはキャスバルとアルテイシア
ラライヤを乗せたG-セルフは、機体をアメリアに、パイロットをキャピタル・テリトリーに奪われた。誰も動かせなかったG-セルフだったが、なぜかアイーダを認証して彼女以外動かせないとわかった。これでパイロットとして自信を持ったアイーダは、カーヒルとともにキャピタル・タワーへ向かった。目的はフォトン・バッテリーの強奪だった。
そこで出会ったのがベルリ・ゼナムだった。タワーの運航長官の息子で飛び級生というエリート学生だった。彼女はそこで作業用レクテンで簡単に制圧されてしまう。彼女の中に芽生えた反発心は、カーヒルを殺されたことで頂点に達した。
しかし、パイロットとしての自信を砕かれたのは、彼女の運命であった。彼女は自分と同じようにガンダムに認証されたベルリを訝しみ、反発しながらも、受け入れるしかなかった。彼女に与えられた役割は政治であった。アムロの魂を乗せた機体は、政治に巻き込まれる運命を背負った彼女を守るために、弟に託されたのだ。
シャア・アズナブルという人間が、兄であったために政治も軍事もすべて引き受け自滅していった過去は、兄妹だった運命の子を姉弟に置き換え、新しい物語を作ろうとしていたのだ。
クーデターによって失われた父の理想を、少年と少女は自ら学びながら引き受けようとしていた。
*好戦的人間を葬る白い悪魔
アイーダのカーヒルを殺された深い恨みの感情は、ベルリに責任感を受け付け、彼とガンダムはメガファウナの防衛任務に当たることになった。当初ガンダムの操縦に慣れていないベリルだったが、アメリアのカーヒルに続き、キャピタル・アーミーのデレンセンも殺害してしまう。
アイーダの恋人に続き自分の恩師をも殺してしまったベルリは、深い苦悩に陥った。このとき彼は、自分とガンダムが背負った運命を知らなかった。
G-セルフは、レコンギスタというやむなき交戦を阻止するための機体だったのだ。この機体は、スペースノイドとアースノイドの決戦を阻止する運命を背負わされている。ベルリが彼らを殺したのではなく、機体が殺したのだ。ベルリが引き受けるのは、人を死なせた事実だけだった。それは彼が姉を守るナイトであり、武を担うが故に向き合わなくてはいけない重要な経験だったのです。
*運命論に満ちた「ガンダム Gのレコンギスタ」
このように、「ガンダム Gのレコンギスタ」は運命論に満ち溢れた作品です。「機動戦士ガンダム」において人間同士の相互理解の可能性を描き、「機動戦士Zガンダム」において相互理解の失敗を描き、「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」において相互理解の成就が描かれたとわかっていないと、この運命論には気づかないかもしれません。
シャアの理想論も同様です。彼が人類を宇宙に上げて進化を促すと同時に地球環境の回復を待つと定めたとの理解がないと、ムスタチオンが起こるまで辛抱してエネルギーを蓄え続けたビーナス・グロゥブの人間の気持ちが理解できません。彼らはギリギリまで待ったんです。
そして彼らスペースノイドは還ってくることになった。
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そのために用意された試練が、クンパ・ルシータのもうひとつの理想論です。競争はやがて止揚し、均衡するという平和論の一種です。これは現在の軍事力の均衡論と同じ平和論なのです。
これを乗り越えられないと、ガンダムは本当の意味で終わらない。
人と人の間にあるのは断絶です。個と個の間には何もありません。これをニュータイプの共感現象によって乗り越えたのがガンダムです。スペースノイドの再侵略(レコンギスタ)を平和的再入植に出来ることがあるのだろうかとの問いが、終わりの始まりの物語のテーマでした。
人間同士の相互理解がなされてはじめて、ガンダムは終わるのです。
vol:6はここまで。
このような形で考察を進めつつ、いずれはGレコの続編でやるべきことまで示せればいいなと思っております。富野は自分でやれそうもないので、孫の代で作ってくれたら本望みたいにインタビューで答えておりますが、公式は売れなかったらそれまで、冷たいものですから、続編の可能性示唆まではファンで請け負わせていただきます。
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この続きはvol:7で。次回もよろしく。
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HG 1/144 ガンダム G-ルシファー (ガンダム Gのレコンギスタ)
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