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「Gレコ ファンジン 暁のジット団」vol:7(状況の提示) [Gのレコンギスタ ファンジン]

「ガンダム Gのレコンギスタ」のブログ内同人誌「暁のジット団」vol:7をお届けします。

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宇宙から飛来してきたガンダムによって動き始めた運命。それがGレコの物語になっていきますが、運命論的な物語であったのならなぜすべての解決法を提示しなかったのか。それはガンダムが模索の物語であるためでした。

ガンダムの物語にリアリティがあったのは、社会の複雑さを単純化せず、できるだけ現実に近い設定を作り出したからです。ファーストガンダムにおいて悪として成敗されるジオンにしても、ジオン・ズム・ダイクンの名を借りたザビ家独裁が悪であるとされ、またザビ家に希望を託したスペースノイドの困窮についても触れられており、勧善懲悪にはなっていません。

それが当時のロボットアニメにしては画期的だったわけです。ファーストガンダムの成功によって、日本のアニメは扱うテーマの幅を大きく拡げることが出来ました。

「ガンダム Gのレコンギスタ」では、スペースノイドを困窮から救う方法として、シャア・アズナブルが提示した、環境改善後の地球にスペースノイドが再入植するというのがありますが、この物語もまたファーストガンダムから逆襲のシャアがそうであるように、模索の物語になっているのです。

vol:7では、Gレコにおいてどのような状況提示がなされたか考察していきたいと思います。


*競争原理・闘争本能は悪なのか

月の表面で何かが起こっていると知ったアメリア軍総監グシオン・スルガンは、求める答えがスコード教にもキャピタル・タワーにもないと知って、主に防衛観点から航宙艦サラマンドラを建造してクリム・ニックに託し、月の状況の偵察に向かわせました。彼は自身の行動がクンパ・ルシータの思惑に沿ったものだとは考えていません。

月へ向かうのが元アメリアの航宙艦メガファウナとサラマンドラだけになり、競争の偏りを怖れたクンパ・ルシータは、ゴンドワンから航宙艦ガランデン(大気圏脱出後はスペース・ガランデン)を調達し、さらにキャピタル・アーミィにも航宙艦ブルジンを建造させてアースノイドすべてに宇宙の状況を見せます。

こうして彼は徹底して競争状況を作り出しますが、一方でアースノイドがすぐに競争に熱中して暴力的になることには強い嫌悪感を抱いていました。スペースノイドである彼にとって、それはまさに絶滅してもいいと思えるほどの嫌悪対象だったのです。


*結果の平等と機会の平等

スコード教に絶望しつつ教義は尊重し、競争に未来を託しながらそれに絶望していたのは、劇中ではクンパ・ルシータただひとりでした。彼のシニカルな態度の源泉はなんだったのでしょうか。

作品を何度か繰り返し観ていて気付いたのは、身分が固定化された状況で安寧を得たスペースノイドに対する反発でした。自分たちの身にムタチオンという絶望状況が迫っているのに、主体的に行動ができず、スコード教とヘルメス財団が何かをするのを待っているだけ。

遺伝的変質という最大の絶望を前にしながら、トワサンガのレイハントン家の家臣は我が身の経済状況の心配だけしている。彼らに何かを示唆して導けば、彼らの中には従う者もいたでしょうが、それは依存する対象が変わるだけで、本質は何も変わっていない。

なぜ望むことがありながら行動しないのか、その答えを競争の不在に求めたのではないでしょうか。

競争して望むものを欲して主体的に動く人間を作り出す必要を彼は感じたのでしょう。これらの考察から、彼がビーナス・グロゥブで官僚であったのではないかとの推察や、スコード教はクンタラだけを先に地球に下ろしたのではないかと考えたわけです。

ヘルメス財団は再入植を進めていた。しかしそれは順番待ちだった。地球への帰還を強く望む者もいるはずなのに、誰も逆らい争ってでもそれを求めようとはしない。これらの事実が、彼の中で遺伝的変質に見舞われながら、粛々とスコード教に従う羊の群れの弱さと結びついたのです。

身分の固定化や宗教の禁忌による支配は、人から機会を奪い、同時に強さを奪っているだけで、階級階層社会の欠点でもあります。言い換えれば不平等による支配です。彼は情報の拡散によって強い意志を持った人間に機会を与え、「機会の平等」を求める状況を作り出したのです。

結果の平等と機会の平等のどちらが正しいのかについては答えはありません。ムタチオンという現実が、彼に結果の平等に対する絶望を与えてしまったのでしょう。


*宇宙に向かうもうひとつの視点

ビーナス・グロゥブから地球へやってくる過程で、クンパ・ルシータは機会の平等の種を撒き散らし、競争によって何が起こるか確かめなければいけませんでした。彼は誰の味方でもなく、競争が人を強くしていくのかどうかだけに興味があったのです。

強い人間は期待通りの政治力を持つのかどうか、弱い人間をどう扱うようになるのか、彼は競争は双方が争い続けることによっていずれ止揚し、政治的妥協の元で均衡をもたらすと信じていました。戦いを忘れ、再び戦いを与えられた人間がその境地に辿り着けるのかどうか、彼はキャピタル・アーミーのブルジンの中からそれを見届けようとしました。

しかし、もうひとつの視点が同じ状況を見ているとは観察できていなかったようなのです。それはメガファウナのアイーダとベルリの視点でした。そしてルイン・リーです。

アメリア育ちのアイーダ・スルガンは、開明的で自主独立気質の強い人間でした。彼女はソーラーパネルの設置によってアースノイドは自主独立できると信じ、キャピタル・テリトリィ侵攻の急先鋒にいました。節度ある競争を好み、階級階層社会への反発が強いという点でクンパ・ルシータの立場と似ています。スコード教を尊重しながら、その支配体制は壊したかったところも似ています。

それはアイーダの気質ではなく、アメリアの気質といっていいでしょう。

一方のベルリは、キャピタル・タワー運航長官の息子で、スコード教の熱心な信者であり、敬虔な人物です。彼は同時にトワサンガを支配していたレイハントン家の嫡男でもあり、クンパ・ルシータの対極にあったヘルメス財団による支配体制の申し子のような人物です。

しかも本人はかなり頭が良く、飛び級生でした。マスクことルイン・リーが彼を最後まで敵視して殺そうとまで思い詰めたのは、彼の存在が「結果の平等」思想に基づく階級階層社会そのものであったためです。結果の平等は身分の固定化なのです。

結果が同じなら皆同じ身分のはずだと考えるのはまったくの間違いです。「結果の平等」を作り出し維持するのは官僚ですから、行政執行する過程で指示する人間とされる人間が最初に分かれ、優先すべき人間と後回しにされる人間に分かれ、保護すべき人間と捨て置く人間に分かれ、どうしようもない人間は処分されていなくなるのが「結果の平等」を求めた先にある社会です。

クンタラは、行政執行の過程で捨てられた人間にほかならず、捨てるのだから食べてもいいとされたわけです。しかもそれが子孫にも適用されました。犯罪者の子を非人として扱い、人間ではないのだから食料にしてもいいと考えたのがクンタラです。クンタラは平等主義によって生まれたのです。

弱肉強食の世界では、弱い者が食べられてしまうことはあったでしょうが、身分としてそれが固定化されることはありません。逃げる自由も戦う自由もあります。

アイーダ、ベルリ、ルインの3人の視点が、クンパ・ルシータの視点と対になっているのです。同じ世界を、世を達観した老人と、現状を変えようとする3人の若者に見せて、どちらに託すべきなのか提示してあるわけです。

こうして多くの人間たちが、トワサンガに向けて旅立っていきました。



vol:7はここまでです。

Gレコを面白いと感じるかどうかは、物語の中の何を見るかにかかっていると思います。クンパ・ルシータが仕掛けた競争にのみ目を奪われると、重要な部分を見落としてしまいます。

ルイン・リーがいかに切実に機会の平等を求めたのか、結果の平等に安住する人々(トワサンガのレイハントン家の家臣たち)が最後は武器商人になっていっただけなのはなぜなのか、そうした部分を見落とすると、なぜこの作品に惹かれる人が一定数いるのか理解できないでしょう。

面白い部分があるから、面白いと評する人がいるのです。


この続きはvol:8で。次回もよろしく。



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