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「Gレコ ファンジン 暁のジット団」vol:9(少年と少女の冒険譚) [Gのレコンギスタ ファンジン]

「ガンダム Gのレコンギスタ」のブログ内同人誌「暁のジット団」vol:9をお届けします。

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アイーダとベルリのロード・ピクチュアであった本編は、多くの謎が蒔かれており、その背後にあるものを掴むのが難しい作品でした。昨今の何から何まで説明されるアニメしか観たことがないと理解することはできなかったでしょうし、プラモデルにしか興味のない層にも不評でした。

しかし、ファーストガンダムをリアルタイムで観た世代の一部には何か心に引っ掛かるものがあり、放送から数年を経てこうして形になっているわけです。ガンダムは商業作品なので多くの層に向けてアニメが展開されていますが、子供向けとしてはかなりの冒険だったファーストガンダムを理解して受け止めた子供たちと、数十年を経ていま一度邂逅できないかとの試みがあったのでしょう。

新たな受け手は作り出せなかったかもしれませんが、富野監督はまだまだ諦めてはいないようですし、出来るだけの支援はしたいものです。

vol:9では、物語をスッキリとまとめるにはどうしたらよかったかを考えてみたいと思います。


*アイーダとベルリのロードピクチュア

アイーダとベルリの姉弟が、スペースノイドの命運を背負ってしまったキャスバル・レム・ダイクンと対応させてあるという指摘はすでにしました。ここでふたりの間に何が起こったのか整理してみたいと思います。劇中では次のようなことが起こりました。

①少年と少女が出会い、少年は恋をする。

②少年は少女の恋人カーヒルを殺してしまい、自責の念に駆られる。

③少年は少女の新たなナイトになりたいと密かに願う。

④少女は自らの役割を自覚し、少年を利用する。

⑤少女は政治状況の不穏当を感じ、原因を探る旅を決断する。

⑥旅の最初の目的地で、少年と少女が姉弟であると判明する。

⑦少女は政治に関与する運命をより自覚し、少年は少女の運命的ナイトであることを受け入れる。

⑧旅の最後の目的地で、政治状況の原因を知る。

⑨少年の必死の働きを認め、少女はカーヒルを奪った少年を許す。

⑩地球へ帰還し、政治状況に変化がないことを知る。

⑪少女は最初の政治的役割を果たす。

⑫少女のナイトとしての役割が終わった少年は、自分の新たな役割を探す旅へ出る。

ふたりはこのように描かれました。劇場版がどのような構成になっているのかわかりませんが、わかりやすくまとめるなら上の流れを中心にして、クンパ大佐の暗躍をもっと分かりやすく描き、それぞれの対立を簡素化するはずです。

個人的にはクンパ大佐が意図せぬ偶発的な戦いは省いていいと思っています。戦争をしたことがない人間たちが武器だけ与えられて戦争ごっこを開始したことだけを重点的に説明すべきでしょう。テレビの本編は、戦いの描写が多すぎましたね。


*おもちゃのための多すぎたムダ

テレビ本編を視聴していて無駄だなあと感じたのは、おもちゃのための機体や装備の数々です。あまりに多くのモビルスーツ、あまりに多くのバックパックが出過ぎました。このせいで、リギルド・センチュリーの平和的世界観が表現できなかった。おもちゃ屋に媚びすぎました。

そもそもガンダムは量産機という発想をアニメに持ち込んだのが斬新だったのですが、Gレコは「ヘルメスの薔薇の設計図を撒かれた」という理由があるにせよ、機体の乗り換えが早すぎ、それぞれに思い入れを持つ暇もなく使い捨てられていきました。

余計なものが描かれた反面、表現できなかったことが多すぎるのです。ヘルメスの薔薇の設計図では性能がよくわからないはずなのに、前よりも良い機体がパイロットに提供されるというあり得ないことが起きていました。それは研究開発をやっていないとわからないことです。基礎になる部分がタブーになっているのに、軍隊に都合が良いようにモビルスーツが完成するはずがない。

おもちゃ屋からの要求が作品のクオリティを落としてしまいました。本当はもっと芽生えた闘争本能と、タブーを意識した恐怖を丁寧に描くべきだったでしょう。

∀ガンダムがアースノイドを絶滅寸前に追い込んだ機体だと思うのですが、月光蝶に似た機能が出ても、それがいかに怖ろしいものなのか表現しきれていないように感じました。「∀ガンダムの機能を使い出したら人類は終わり」なのだと描かれていれば、宇宙世紀が終わったことのメリハリがついたでしょう。宇宙世紀の終わりを記念館で匂わせただけだったのは描写不足と感じました。


*黒歴史の恐怖が足りていない

Gレコは明るく楽しい冒険譚として作るべきだったでしょう。その方向性は支持するのですが、一方で黒歴史たる宇宙世紀を戦争描写の部分で描き切れていませんでした。

角の生えた小鬼のようなデザインのG-セルフの描写は良かったと思います。ただもっと悪魔的な側面を見せても良かったのではないでしょうか? G-セルフがカーヒルを殺したことも、すべてベルリの責任になりましたが、機体が勝手に交戦的人物を選んで殺していたら、主役機でありながら白い悪魔と評されたガンダムの恐ろしさが倍増したと思います。

ビーナス・グロゥブのジット団も、もっと背徳的意識の強い人たちなら面白かったのではないでしょうか。G-ルシファーはそのネーミングから大きな期待を賭けたのですが、使い切れないまま終わりました。設計図通りに作ったら訳の分からない機能がついていたという表現はよかったのですが。

Gレコの戦闘描写は最高でした。しかし同時に兵器の恐ろしさはもっと激しく描かれるべきだったのではないでしょうか。ビーナス・グロゥブの海に穴を空けて、それをキア・ムベッキが命懸けで塞ぐ場面など、面白い反面、笑ってしまうところがあった。原因はジット団の面々が、そのあとすぐに気持ちを切り替えてレコンギスタに邁進してしまったからです。


*トワサンガとビーナス・グロゥブの描き分け

トワサンガを旅立ち、宇宙空間を飛行しながら金星へと向かうメガファウナ一行の面白さは格別でした。ああした部分がGレコの魅力で、旅をしている気分にさせられるところでした。その前のトワサンガへ初めて入港するなども、緊張感に溢れ、どんな場所なんだろうとワクワクしたものです。

多少ガッカリだったのは、トワサンガとビーナス・グロゥブの描き分けです。トワサンガはビーナス・グロゥブの出先機関でしかなく、地球へ降りるための基地のようなものですから、ビーナス・グロゥブの住人はもっと多くのことを知っているべきだったはずです。

宇宙世紀が失敗に終わり、リギルド・センチュリーが始まったいきさつ、宇宙に留まりひたすら耐え抜いていたことなどが足りなかった気がします、個人的にはビーナス・グロゥブでクンパ・ルシータの陰謀がすべて暴かれると同時に、スコード教の秘密が全部開示されてほしかった。

ビーナス・グロゥブでの情報開示の少なさが、アイーダとベルリがここで決定的に変わったのだと印象付けることに失敗したのだと考えます。

当ファンジンでは、スコード教の起源はアムロがアクシズを逸らせた奇跡を発端にしていると書いていますが、そうした何か決定的事実がないと、ビーナス・グロゥブで少年と少女の意識を変革することに繋がらなかったのではないでしょうか。

こうして考察などが書かれるわけですから、種は蒔かれていたのでしょう。でもそれでは匂わせただけで終わりです。ビーナス・グロゥブでアイーダとベルリのみならず、視聴者やガンダムファンに心にガツンと来る情報開示が欲しかった。

ラ・グーが自分の肉体を見せたことなど、あるにはあったのですが、弱かったですね。モビルスーツの諸々に時間を取られ過ぎていました。金星へ行ってみたら、素晴らしい環境で人は生きていたものの、肉体が変容し始めておりもう限界で、本当は全員いますぐ地球に収容しなきゃいけないほど状況は切迫している。

それなのにアースノイドは与えられたおもちゃを弄ぶことに忙しい。これではスペースノイド全員の再入植など望めない。その事実を前に、少年と少女が啓示を受けたように変わって欲しかったんですよ。

匂わせるような描き方だったので、雷に打たれたような心の変化として表現できていなかった。

こういうところが本当に残念なんです。



暁のジット団 vol:9は以上です。

初見時、ビーナス・グロゥブの場面でモヤモヤした気持ちでいたことを全部書いたつもりです。秘めたポテンシャルを完全に発揮できなかったテレビシリーズの欠点を、少しでも劇場版で埋めてもらいたいと切に願います。


この続きはvol:10で。次回もよろしく。



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