「ガンダム レコンギスタの囹圄」第7話「ムーンレイス」前半 [Gのレコンギスタ ファンジン]
「ガンダム レコンギスタの囹圄」
第7話「ムーンレイス」前半
(OP)
ベルリがモビルスーツデッキに降りてきた。それを見つけたハッパが声を掛けた。
ハッパ「G-セルフを出す? 何かあったのか?(辺りを見回し)警戒警報は鳴っていないようだが」
ベルリ「(G-セルフに乗り込みつつ)月面から微弱な救難信号が出てるみたいなんです。ちょっと見てきます。皆さんはフルムーンシップへ急いでください」
ハッパ「月面から? 宇宙人でもいたのか・・・、あ、ベルリ!」
起動させるなりベルリはメガファウナを飛び出していった。
G-セルフのモニターにも救難信号はキャッチされていた。ベルリは月の重力圏に入り、落下してしまわないように気をつけながら信号が発せられる地点へ急いだ。
ベルリ「お月さまに降りるなんて夢みたいな話だけど」
月面の砂の上に舞い降りたG-セルフは、大きく砂塵を舞い上げた。月の表面は、白と黒の世界だった。みるみるうちにG-セルフの機体表面温度は上がっていき、コクピットの空調装置が作動して冷たい風を吹き出した。ベルリは慎重に並行方向へ推進しながら発信機を探した。
月面赤道付近には高さ100メートルほどの位置に人工構造物がある。それが何をするためのものなのかベルリには分からなかった。ただ触れてはいけない気がしたので、頭上に見上げながらG-セルフをぶつけないように操縦するばかりであった。
遠くクレーターの影で光るものを見つけ、そちらへ向かった。すると巨大なハッチが開いて岩の奥に深い暗闇を出現させた。モビルスーツの高さより遥かに大きな何かの入口であった。見渡したところ、戦艦の発着場のようにも受け取れる大きさであった。
ベルリ「何の施設何だこりゃ。ここから救難信号が出てた? いや、もっと奥。この奥だ」
クレーターの縁に設置された巨大なハッチの奥には人工的な空洞があった。足元の形状からモビルスーツデッキかシャトルの発着場に思えた。いつの時代のものかはわからない。かなりの量の砂が溜まっていた。放棄されてかなりの年月が流れていそうであった。
G-セルフに乗ったままさらに奥に進むと、床が途切れ、崖のように切り立った溝があり、その向こうは壁、手前に下に降りていく細長い空洞が出現した。その巨大な溝は幅が数十メートル、長さは光が届かなくなるまでずっと左右に続いていた。ベルリは機体を発光させて静かに溝の中に降りていった。
ベルリ「月は巨大な人工施設だったんだ。そりゃシラノ-5があるくらいだから月だって基地にするだろうけど・・・。(G-セルフが着地する音と衝撃)え? 水?(上を見上げ)高さも100メートルはある。人が使うものにしては大きすぎるし、なんだここ?」
溝の下部には3メートルほど水が溜まっていた。G-セルフに乗っていてはわからないが、降りれば溺れてしまう水量だった。
水をかき分けまっすぐ進むと、地球ではありえないほどの波が立った。G-セルフは横穴を見つけてその中に入った。横穴もモビルスーツで余裕をもって入れるほど巨大だ。人間が使うにしては大きすぎる施設であった。水は横穴にも続き、さらに奥にも溜まっていた。
どこかで見た光景だった。ホテルのプールを巨大にしたような光景。既視感の理由はすぐに分かった。ビーナス・グロゥブの海に似ていたのだ。あれはここよりはるかに巨大ではあるが、設備の仕組みは同じはずであった。人工的に作った海の跡なのだ。ただし海水の量は減ってしまっている。
ベルリ「ここは・・・、海だ。かつて海だった場所だ。さっきの大きな溝が水を循環させる水路だとすると、水を使って施設内部の気温変化を小さくする装置かもしれない。お月さまにこんなものがあるなんて。(ヘルメットを脱いで頭を掻きむしり)これもトワサンガのものなのか?」
G-セルフは一気に岸まで飛びあがった。
ラライヤが操縦するG-ルシファーはクレッセント・シップの出向に間に合った。ハッチが閉まるなりすぐさまフライトが始まるというギリギリのタイミングだった。
機体から顔を出したラライヤを見て近づいてきたのは、ビーナス・グロゥブ守備隊からメガファウナに乗って地球へとやってきたパイロットたちだった。
彼らは仲間を数人戦闘で死なせてしまったが、クレッセント・シップに同乗して地球一周を楽しんだのち、再びビーナス・グロゥブに戻る手はずであったという。ところが肝心のクレッセント・シップが大気圏突入と大気圏脱出で船体が傷んでしまい、修理に手間取っていたとのことだった。
守備隊員A「ラライヤさん、またこうしてお会いできて光栄です」
G-ルシファーを降りたラライヤの周囲にはたちまち人だかりができた。それを横目に少し頬を膨らませながらノレドはゲル法王とリリンを伴ってクレッセント・シップの乗客となった。
クレッセント・シップのエル・カインド船長は4人をブリッジに迎え入れると、ゲル法王に恭しく一礼してから、いま一度ノレド、ラライヤ、ゲル法王、リリンの顔を眺めまわした。誰が責任者なのか確かめようとしたのだ。そしてノレドに狙いを定めた。
エル「これはこれはトワサンガ・レイハントン家のお妃・・・。(心配そうに小声で)でしたよね?」
ノレド「(大袈裟に頷き)そうじゃ、よきに計らえ」
エル「(急に崩れた口調になり)船というのは重さが重要なのですよ。突然モビルスーツで乗り込まれると困るんです。まあ、持ってきてくれたのがビーナス・グロゥブのモビルスーツのようなので、回収ということで大目にみますが。それに(ノレドに耳打ちして)なんで法王さまがここにいらっしゃる?」
ノレド「それは・・・(わざと大きな声で)誰もかれもスコード教をないがしろにするから、スコード教こそが太陽だということを知らしめるためです!」
副長「ああ、それは良いお考えで」
法王「ノレドさん、ノレドさん・・・」
ノレド「早速ですけど、法王猊下に飛び切りの部屋を用意してください。それにあたしたち3人には何か食べるものなどを・・・、エヘヘ」
ノレドはポケットにしまってあったチョコレートをリリンと分け合っただけで、しばらく何も食べていなかったのだった。
エル「法王猊下、空いている中で最も良いお部屋をご用意させていただきます。他の皆さんは食堂へ。長旅になりますから。また走っていただきますよ」
巨大なコンクリートの壁を超え岸に降り立ったベルリは、救難信号が発せられている位置を確かめた。
ベルリ「ここからかなり地下にありそうだ。というか、月の上側に近いぞ」
彼はフックを使ってG-セルフを降りた。重力はおよそ1G。水路の重力は軽かったのに、人間が移動する場所は地球と同じ重力してあった。どんな技術が使われているのか見当もつかない。
岸には倉庫群が立ち並んでいた。明かりがなく、手にした懐中電灯とヘルメットのライトが頼りであった。酸素濃度が低くてヘルメットは外せなかった。しかし、倉庫の大きさ、乗り捨てられた自動車などは人間が利用するサイズだ。かつてここに人間が住んでいたのである。
ベルリ「トワサンガの人たちが放棄した施設なのか、もっと前のものなのか・・・」
ベルリは発信器のある場所へ辿り着こうと、廃棄された車が動くか確かめてみた。汚れの酷いものは朽ちてしまって使い物にならず、運転席は仕様がわからないものばかりで、ボンネットがやたらに大きかった。壊れているものを開けてみると、ボンネットの下に複雑な仕組みの機械が詰まっていた。
比較的新しいバギー1台が作動した。運転席はユニバーサルスタンダード、フォトン・バッテリーで動く。このバギーに関しては新しいものであった。誰かが最近までこれを使っていたのである。救難信号の主と同じなのかどうかは分からなかったが、運転席に座ったベルリはそれでできるだけ発信器を探してみることにした。
廃墟となった海を伴う施設は、月の表面地下1キロメートルの位置にあることがわかった。岩の天井はかつてガラスで覆われていたのか、ところどころまだ一部が残っていた。扉に55と書かれたハッチの手前で車を乗り捨てたベルリは、コンソールに電力が来ていないことを確かめると、少し離れ場所にあった非常用のハッチを手動で開けて、細い通路に入っていった。
そこは重力が軽くなっていた。発信器の位置は動いていなかったが、近づくそぶりもない。通路はどこまでも続き、いくつも枝分かれしていたために、何度もマーキングしなければならなかった。
通路の先にはあまりに巨大なドッグがあった。手すり越しに下を覗き込むと、メガファウナよりさらに大きな、見たこともない形の宇宙船が停泊していた。ドッグの上部には左右に開閉する扉がついている。そこから離発着するのだ。かなりの高さがあり、扉の向こうがすぐに月面であるのは容易に想像できた。
この区域に酸素は存在しなかった。そしてベルリはあることに気がついた。
壁に描かれている案内表示の文字が、海やその岸にあったものと違うのだ。この巨大なドッグは、宇宙世紀時代のものであった。
ベルリ「あれれ、道に迷っちゃった?」
救難信号を確かめてみると、それはふたつに増えていた。ひとつはごく微弱で途切れがち、ひとつはそれよりは強い信号だったものの、やはり微弱である。
ベルリ「(周囲を見渡しながら)ふたつの信号が重なっていたんだ。ひとつはかなり距離がある。月の裏側に近いところだ。もうひとつは・・・、こっち!」
発信器を追っていくと、また途中から文字が変わる場所に出た。どうやらここは宇宙世紀時代の遺跡にのちの時代の人間が手を加えてできたものらしかった。1時間ほど移動して、ベルリは他の場所より整備された区画に出た。そこはまだ動力が生きており、コンソールもユニバーサルスタンダードであった。ところがその区画を抜けるとまた見たこともない装置が並んだ部屋に出た。古代の動力室のような雰囲気の場所であった。計器の一部に通電しており、パネルに明かりが点っている。
ベルリ「どうなっているんだここは?」
部屋の奥にあったハッチは、丸い取っ手がついており、左に回すと緩んで扉が開いた。酸素が噴き出してきたので慌ててハッチをしっかりと閉じる。ベルリが開けたのはエアロックだった。計測器を確認するとその通路には呼吸可能な空気が十分に供給されていた。気温も摂氏10度。恐る恐るバイザーを上げてみると塩素の臭いが鼻についた。
さらに奥に進んでいくとT字路に出た。そこから先は床が金属製で、左右の壁と天井が透明な継ぎ目のない板でできていた。叩くとガラスではない。透明な壁からは微かに青い光が漏れている。暗闇に目が慣れたベルリにはそれすら眩しく感じた。発信器の位置は左だったので、ベルリは左に折れて進んだ。
光を発した透明な壁は、四方に及んでいることがわかった。透明な壁の向こうに巨大な空間があり、そこに人間ひとりが歩けるほどの細い空間が渡してあるのだ。金属の床は滑り止めのようなものであった。ベルリが歩いているのは、巨大な透明なケースの中のモグラの穴のようなものだった。
壁は微かに結露で濡れていた。パイロットスーツの袖で拭ってみると、その先には長さ2メートルほどのボートのような形のケースが数えきれないほど置かれている。それは10メートルほどの高さに8段重ねてあり、空間にびっしり整然と並んでいる。どこまで続いているのかわからないほどであった。
上下左右すべてにそれが並んでいた。左右の部屋の高さだけで10メートル、上と下の空間がどれほど拡がっているのかはわからない。ボート状のケースの中に何が入っているのかは、ケースの上部が曇っていてわからない。透明な壁には継ぎ目がないのでどこから入っていいのかも不明であった。
ベルリは発信器の位置を頼りになおも進んだ。徐々に近くなってきたので先を急いでみると、また違う空間に出た。そこは金属で形成された馴染みある空間であった。明かりはないが空気は存在し、機器類も正常に作動している。文字盤は現在のものと文法が違う点があるものの、文字は同じである。
救難信号はこの部屋から発信されていた。耳を澄ますと小さな警告音が断続的に聞こえてきた。
ベルリが驚いたのは、この部屋にはレイハントンの紋章がいたるところにあることだった。ベルリは首から下げたG-メタルを取り出し、警告音を発している機器に差し込んだ。すると合成された音声が古い文法で「封印を解除する」という意味の言葉を発した。ガタガタと空気を震わす大きな音がしたかと思えば、続いて読み物に出てくる怪獣の唸り声のような低音が響き渡った。
ベルリ「え? ええーーーーーーーーッ?」
G-メタルによって、設備は再稼働したのである。
ベルリ「なんなの? ぼくは何を助けに来たの? これはいったい何事なんだ?」
先ほど通ってきた通路へ戻ろうとしたが、透明な壁がいつの間にか出現しており、塞がれてしまっていた。焦ったベルリは別のハッチ状の扉を開けて通路に出た。そこは長方形の見慣れた金属製の通路であった。天井には明かりが点っており、床にはトワサンガの19世紀アメリア様式の服を着た3人の男性が倒れていた。彼らはすでに死んでいたが、亡くなってからさほど時間は経っていないようだった。
ベルリ「空気ッ!」
廊下の酸素濃度はかなり低くなっていた。息苦しくなって、ベルリは慌ててバイザーを下げながら出てきたばかりのハッチを開けて部屋の中に戻った。
ベルリ「なんなの? いったいなんなの?」
確認すると部屋の中の空気は充分にあった。廊下で倒れていた男たちは、廊下側の酸素低下に気づかず低酸素症で倒れ、そのまま息を引き取ったようにみえた。
ベルリは自分がとんでもないところに迷い込んだと悟って壁に身体を押しつけて息を整えた。そしてパイロットスーツの残存酸素量を考え、空気を節約するためにエアーの供給を止めて、バイザーを再び上げた。その瞬間に部屋には煌々と明かりが点った。
ベルリの視線の先には、金髪の美しい女性が全裸で佇んでいた。
ディアナ「あなたはレイハントン家の者ですか?」
ベルリ「(視線のやり場に困りながら)え? いえ、いや、はい」
ディアナ「ようやく我らの封印を解く気になったわけですね。それは結構。(全裸のままベルリに近づき)して、冬の城の技術を一体何年の囹圄として使われましたか?(冷たく微笑み)どのような理由で封印を解かれましたか」
フルムーンシップは月の裏側に係留してあった。その周囲にはトワサンガのシャトルが多数警戒して船を守っていた。メガファウナは速度を落としてゆっくりと近づいていった。
メガファウナ艦長のドニエルと長身の副長はモニターを睨みつけながら思案中であった。
副艦長「当然こうなりますわね」
ドニエル「だわなぁ。ガヴァン隊の連中がもしあれで全部なら、トワサンガに守備隊はいないはずだ。キャピタル・テリトリィの軍隊がカシーバ・ミコシでトワサンガに入っているはずだから・・・。キャピタルの連中がフルムーンシップに乗り込んでると思うか?」
副艦長「可能性は低いでしょ? 惑星間移動船を軍の連中が動かせるとは思えない。トワサンガの人間が調査中かもしれないですが、機関部のレクチャーを受けた我々ならともかく、あんなデカイもの、調べるたってそんな簡単じゃないですよ。ビーナス・グロゥブの人間ですら仕組みを理解していないのに」
ギゼラ「まさか丸腰のシャトル相手に発砲はしないですよね?」
ドニエル「そんなことやって、お前・・・フォトン・バッテリーの配給の件もあるのに・・・」
副艦長「フォトン・バッテリーの配給再開を直談判しに行くのに、トワサンガの丸腰相手に戦争はできないですな。こりゃ(両手を挙げて)お手上げですかね?」
シャトルから通信が入り、メガファウナはフルムーンシップを目の前にしながらいったんシラノ-5に入港することになった。
ドニエル「どういうこっちゃわからんが、オレが誰か連れて代表としてトワサンガの連中と話をつけてくるから、副長、あとは任せる。(副長頷く。ドニエルがブリッジのクルーに向かって)いつでも出航できるように気を張っておけ。あと何があっても、誰も艦内にいれるなよ!」
レバーを手にハッチに向かっていたドニエルは、すれ違ったハッパに声を掛けた。ドニエルはハッパの襟首をつかんで暴れる彼をむりやり連行した。
ドニエル「ハッパ、お前がついてこい」
ハッパ「イヤですよ。なんで技術屋のぼくがそんなことさせられるんですか? 放してくださいよッ!」
ドニエル「(ニヤけた顔をハッパに近づけながら)これが終わったらオレが姫さまに頼んで2か月の有給休暇をもらってやるから。恩給は自分で頼めよ」
ハッパ「(疑り深い顔で)本当なんでしょうね? 信じていいんでしょうね!」
メガファウナの入港してきた港には多くの市民が押しかけ、トワサンガ新王家の当主を一目見ようと待ち構えていた。その数は5万人に達し、港はノレドたちを出迎えたときと同じように異様な活気に満ちていた。しかも今度は本当の王子の到着とあって市民の期待はさらに大きくなっていた。
その中に王子の地球の義母と認知されているウィルミットとジムカーオの姿があった。メガファウナが海賊船としてキャピタル・タワーを襲撃してきてからというもの、彼女は息子のベルリと顔を合わせる機会がほとんどなくなり、メガファウナがザンクト・ポルトを出てからというもの、対面したのはほんの数回であった。
ウィルミット「ああ、やっとベルに会える。もう一体どれくらい離れていたでしょう」
ジムカーオ「ベルリ王子は日本でクレッセント・シップから降りたそうですね」
メガファウナのハッチが開き、ふたりの人間が出てきた。ウィルミットは双眼鏡でその姿を確認して、眉を寄せた。出てきたのはドニエル艦長と整備士のハッパだった。艦長が出てくるのはともかく、なぜ短パンにワークジャケットを羽織った東洋系の眼鏡の男が出てくるのか不思議であった。
ふたりで並んで歩く姿は、まるでハッパがベルリであるかのように映った。ウィルミットは周囲を見回し、クスクスと笑いが漏れる観衆たちに、あれはベルリじゃないと大声で言ってやりたかった。
隣にいるジムカーオはさっと引き締まった顔になり、ウィルミットを残してその場を離れた。観衆たちの間には戸惑いと失笑がないまぜになったおかしな雰囲気が流れている。ウィルミットもこうしてはおれないとふたりの元へ急いだ。
メガファウナから姿を現したドニエルとハッパにもその雰囲気は伝わっていた。
ハッパ「嫌な予感がしますよ。若干笑われているんですが、あれは艦長を見て笑ってるんですよね」
恰幅のいいガニ股のドニエルと、小柄で大きな眼鏡をかけたハッパは、いたたまれない気持ちをこらえながら大観衆の中を歩いていく。そこに血相を変えたジムカーオがやってきた。ドニエルとハッパには、一瞬それがクンパ大佐のように見えた。
ジムカーオ「メガファウナのクルーの方ですか? お初にお目にかかります。自分はレイハントン家の参謀を務めますジムカーオと申します。ベルリ王子はいずこへ?」
ドニエルとジムカーオは握手を交わした。
ドニエル「ベルリ? あいつなら月から出ていた救難信号を確認させに行かせてます。じきにこっちへ来るでしょう」
ジムカーオ「救難信号?」
そこへ遅れてウィルミットがやってきた。
ウィルミット「ベルは? ベルリはどこです?」
ジムカーオ「(ウィルミットに向かって)月から発信された救難信号の確認だそうです。おそらくノレドさんとラライヤさんのG-ルシファーでしょう。(少し考え)モビルスーツでザンクト・ポルトには行けません。放っておけばいずれ戻ってくるはずです。それを待ちましょう。(事務方の人間を手招きして)市民の皆様には、ベルリ王子は後からやってくるとアナウンスしてくれ。艦長とお連れの方はどうかこちらへ」
ハッパ「(とぼとぼ歩きながら)なんでこうなるかなぁ・・・」
ノレドとラライヤを乗せたクレッセント・シップは、加速を終えて慣性飛行へと移行していた。そのブリッジではクルーに加えノレド、ラライヤ、法王、そしてリリンが集っていた。ノレドがクレッセント・シップ艦長のエル・カインドに食って掛かっていた。
ノレド「(驚いた顔で)やっぱりビーナス・グロゥブの方も知らないの? 呆れたー」
エル「呆れたも何も、法王庁は我々ヘルメス財団の下部組織にすぎませんので、なぜそのような発表を勝手にしたのか、こちらでは何とも」
ノレド「でもフォトン・バッテリーの配給停止が、地球の人たちやトワサンガの人たちをすっごくすっごく不安にしてるんだよ。(法王を振り向きながら義憤にかられ)人々を怖がらせるようなことを法王庁が勝手にやるはずがない」
法王「(両手を上に広げ)あり得ないことです。我々法王庁はヘルメス財団の意向に背くことも、人心に不安の種を蒔くことも絶対にいたしません。ですが、キャピタル・テリトリィにそのような通信が入っていたのは確かで、それは法王庁の回線ですから、我々は信じたわけです」
ブルボン王朝風の近衛兵長の正装に戻ったラライヤは腕を組んで考えている。
エル「フォトン・バッテリーの配給と回収は通常年に3回、4か月おきになされています。しかし、今回は地球でのエネルギーの過剰消費を鑑みて、かなりの量を持ち込んでいます。員数管理が崩れておりますので、それが正常に戻るまでの期間の配給停止は考えられます」
ラライヤ「地球の人たちはどれくらいバッテリーの在庫を保有しているのですか?」
エル「通常は1年分です。それが大陸間戦争によって崩れていて、モビルスーツが破壊された際など回収されないバッテリーもあるので、正確な数字が取れなくなっているわけです。戦争をやめろというのはこういう点もあるんです。バッテリーは有限で、無限に存在するわけじゃない。ビーナス・グロゥブはバッテリーで星を作っている最中なのです。それは地球人に戦争をさせるためにムダ働きしているわけではないんですよ」
ノレド「いまでも在庫は1年分?」
エル「ちゃんと計算して1年は持つように配給してますよ。だから1年も使って地球を巡行したんです。地球巡行中は戦争もなく、バッテリーの回収はかなり捗りました。重さが大事だって言ったでしょう? この船も空のバッテリーが満載ですよ」
ノレド「1年か・・・」
ラライヤ「バッテリーの配給停止って誰が言い出したんでしょう?」
頭を悩ましてもそれ以上の答えは出なかった。
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この続きはvol:34で。次回もよろしく。
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