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「Gレコ ファンジン 暁のジット団」vol:80(Gレコ2次創作 第30話 前半) [Gのレコンギスタ ファンジン]

「ガンダム レコンギスタの囹圄」


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第30話「エネルギー欠乏」前半



1、


クンパ大佐とジムカーオ大佐による大規模反乱によって、トワサンガのヘルメス財団はその正体が知られないうちに壊滅してしまった。トワサンガのヘルメス財団とは、ウィルミット・ゼナムがジムカーオ大佐に紹介されて目にしたノースリングの行政官たちのことである。

トワサンガの行政区を取り仕切っていた彼らが果たして「宇宙世紀存続派」だったのか「ニュータイプ集団」だったのか、確定的なことは誰にもわかっていない。真実はいまだ歴史の闇の中に閉ざされたままなのだ。

ただ、クンパ大佐が関係していたレコンギスタ支持派の多くにビーナス・グロゥブのヘルメス財団とトワサンガのレジスタンスが関与していたのはわかっている。彼らの前身が軍産複合体組織であったことは確かなようで、対してジムカーオ大佐の反乱に加わったのは、宇宙世紀時代にニュータイプ研究所として機能していた研究者の集団であったようだ。クンパ大佐の反乱の協力者は主に兵器開発者であり、ジムカーオ大佐の協力者はニュータイプ研究者であった。

彼らが何を企み、何を目指し、何をしようとしていたのか、全容は明らかになっていなかった。それもそのはず、すべての大本であるビーナス・グロゥブからの情報が圧倒的に少なかったために、地球の人間はただ茫然と宇宙での戦いを眺めるしかなかったのである。

トワサンガのヘルメス財団に残党はいない。彼らはジムカーオ大佐の用意周到な作戦によって完全に取り込まれ、薔薇のキューブとともに全滅してしまった。それがクンタラ出身であったジムカーオの復讐だったことは、ごく一部の人間が断片的に知るのみである。

ザンクト・ポルトを天上界とし、トワサンガとの交流の利権を一手に引き受けていたキャピタル・テリトリティのスコード教団は、キャピタル・ガードの調査部を使って情報をコントロールしていたクンパ大佐とジムカーオ大佐を失ってからというもの、自分たちの信仰の根幹が揺らいで気が動転してしまっていた。

彼らは自分たちの利権がいままでと同様に確保されることを前提に組織を運用していこうと考えていたので、まずもってゲル前法王の打ち出した「人と人との間の断絶を乗り越える奇跡を信じる」などという世迷いごとに付き合うつもりはさらさらなかった。ゲル前法王の新方針は、彼らに何の実利ももたらさなかったからである。スコード教団関係者にとって、実利がないとはつまり信仰の意味がないということであった。

彼らはジムカーオが成そうとしていた「レイハントン家の復興によるスコード教団の地位保全」を支持していたが、そもそもフォトン・バッテリーの供給が再開されないのではないかと不安になって、いろいろ悩んだ挙句にムーンレイスの存在に辿り着いた。

ムーンレイスはトワサンガの住民にとっても御伽噺の中の存在であり、ディアナ・ソレルは月の女王として神話の中の存在に等しかった。その女王が500年の眠りから目覚め、大きな陰謀を阻止する大活躍を果たした。彼女とムーンレイスには独自の技術体系があり、ふんだんにエネルギーを生み出すことが出来る。彼らムーンレイスならば、ビーナス・グロゥブに代わる「実利をもたらす信仰対象」になり得るのではないかと考えたのだ。

ところが肝心のディアナ・ソレルはアメリアのどこかの地域に隠れるように移り住んで暮らしているのだという。アメリアに大きな拠点を持たないキャピタル・テリトリティのスコード教団は、ディアナ・ソレルの居所を探すことすらできない。彼女を担ぎ上げて新法王にするなり、信仰の対象とすることは諦めるしかなかった。ゲル前法王もそのアメリアに取り込まれつつあり、自分たちは取り残される一方だと感じてしまったのだ。

そんな折のこと、月の奥深くにある冬の宮殿を調査中であった派遣団から、トワサンガには巨大船がないとの連絡がもたらされた。唯一稼働中なのはメガファウナというアメリアの船で、これも武装は解除されていて攻撃能力はなく、多くの戦艦は月にある宇宙世紀時代のドッグに封印されているというのだ。しかも彼らの女王は月にはいない。月を手中にすれば、自分たちが天上人になることさえ可能ではないかと、彼らは夢想してしまったのだった。

「知れば知るほど月というのは大変な代物です」ギャラ・コンテ枢機卿は興奮を抑えきれなかった。「宇宙世紀の時代からの技術が詰まっている。月自体が地球人の科学文明の粋を集めた結晶のようなものなんですね。無限のエネルギー、無限の生産力、地球から失われたものがすべてここには残っている。何て豊かな場所なんでしょう」

ギャラ・コンテ枢機卿は惚れぼれとした顔をキョロキョロとあちこちに向けた。彼はいま月を縦断する地下の鉄道設備を案内されて興奮していた。月の輸送システムは基本的に宇宙空間へ出て行われているが、いつの時代の遺産なのか、月の表面と裏面を結ぶハイパーループが存在するのだ。彼が案内されたのは、月の表面側にあるハイパーループの駅であった。

駅には彼が判別できないユニバーサルスタンダード以前の文字と様々な記号が描かれていた。壁も床も天井もすべてが銀色で覆われ、作られてからどれほどの時間が流れたのかまるで見当もつかない。つい昨日完成したばかりだと言われても信じてしまいそうなほど劣化を免れていた。

案内しているのは月に常駐しているムーンレイスの職員だった。彼は法王庁の調査団のところへ地球からやってきたギャラ・コンテ枢機卿のでっぷり太った姿に辟易しながらも、接待係としての自らの仕事は忠実にこなしていた。何の目的で月に来たのか詰問することは彼の仕事ではなかった。彼は鼻息荒くはしゃぐ枢機卿相手に淡々と説明をしていった。

「人類が初めて月面に着陸してからおよそ2000年。この施設は我々が初代レイハントンによって月に封じられてから発見したもので、成立年代がわかっておりません。500年前にはいまと同じようにここに存在していた。実は月の内部の施設はその多くが不明で、各施設の成立年代も不明、使用されている文字も様々、動力源も様々、長さと重さの単位もどうやら2種類存在するといわれています。枢機卿の時代のユニバーサルスタンダードを加えると3種類です。地球のように発掘品は出てきませんが、未発見の施設はおそらくたくさんあります。その中にどのような驚くべき設備があっても不思議ではないといわれているのです」

ギャラ・コンテ枢機卿は黄ばんだ目を案内役に向けた。

「動力源というのは発電設備のことでしょうか?」

「そうです。おおよそ核分裂、核融合、縮退炉、ソーラーシステムですが、ソーラーシステムはバッテリーの寿命が尽きており、現在は使用されていません。核分裂炉は燃料棒が抜かれてかなりの時間が経過しており、核融合炉は現在再点検中で稼働していません。現在利用しているのは縮退炉のみです」

「その縮退炉というものだけで、月のこの設備すべてを賄っているのですか?」

「そうです。我々の時代に近い設備なので、しばらくは縮退炉だけで運用されるはずですが、月にはヘリウム3が豊富にあるので、核融合炉の稼働も検討中です」

「素晴らしい。実に素晴らしい。無限のエネルギーじゃないですか。フォトン・バッテリーなど必要ない」

技術者がすでに絶えており、縮退炉を新造することはできないのだが、案内人はそこまでは話さなかった。何せ彼はエネルギーが枯渇しつつある地球からやってきた彼が太っていることが気に食わなかったのである。こんなに太っていて病気になったら欠員はどうするのだろうかと、スペースノイドである彼は考えてしまう。

「やはり、フォトン・バッテリーなど必要なかったのですな」

ギャラ・コンテ枢機卿は、相手の怪訝そうな顔には気づかず、興奮気味にまくしたてた。


2、


「連絡は取れないのか?」

ディアナ・ソレルが薔薇のキューブとの戦いで指揮を執った月面指令室は、いまでは数人が詰めているだけのトワサンガとの連絡室として使用されていた。月の表面にあるために、裏面の向こう側にあるトワサンガとの連絡には不便であったが、他に使える適当な施設が見つかっていないのだった。彼らはトワサンガのベルリ・レイハントンの方針に否定的で、月を人類の居住区にすべきだとの意見が主流であった。

「妨害電波なんですかねぇ?」通信士は首を捻った。「トワサンガとの連絡がまるっきり取れないんですよ。いまあちらには船がないはずで、通信が途絶えると困るんですよね」

通信士はトワサンガをモニターしているわけではなく、月のモビルスーツがシラノ-5を攻撃したことは知らなかった。話を聞いた男も首を捻るばかりで、事情を呑み込んではいなかった。

「仕方ないなぁ。機器の故障なのか妨害電波なのかわからないから、エンジニアに相談してくる」

そういう彼もエンジニアではあるのだが、ムーンレイスが作った食料プラントしか修理はできない。様々な時代の施設が入り組んだ月のシステムは、技術体系がまるで違うために解析の糸口さえ掴めていない状態だった。彼は眼鏡を拭きながら、トワサンガのことを考えて顔をしかめた。

彼に限らず、月に残ったムーンレイスの技術者の多くはベルリ・レイハントンの方針に反対している。というのも、彼らはフォトン・バッテリーの時代のシステムに関する知識がなく、トワサンガに移住させられるとまた一から技術体系を学び直さなければならないからだ。

フォトン・バッテリーに関する技術は現代においてユニバーサル・スタンダードと称され、かなり簡素な仕組みにはなっていたが、簡素であるがゆえに故障した際に何をどう修理していいのかわからなくなっていた。主な修理方法は交換である。修理箇所は専門の技術者に委ねられ、その技術体系はかなり複雑であるのだ。

男がやってきたのは月の表面と地球を見ることが出来るガラス張りの窓のある食堂であった。この場所も通電させて施設として利用はしているが、いつの時代のものかわかってはいない。そこには彼の友人たちがたむろしていたが、いつもと違って興奮した様子であった。

「おい、妨害電波が出てるって知ってるか?」

「あ、コルネが来た」気密管理のエキスパートのハットが振り返った。「それどころじゃないぞ。ディアナ親衛隊のフィット・アバシーバが反乱を起こしたかもしれないって」

「反乱を起こしたっていうなら、妨害電波も彼か? ついにベルリ少年に実力行使で抗議する猛者が出現したってわけか。オレは連帯責任は御免だからな」

ハットは遅れてやってきたコルネに事情を説明した。彼によると、トワサンガへの移住に反対していたフィット・アバシーバは、地球から冬の宮殿の調査にやってきていた法王庁の集団200名から月と地球圏のビーナス・グロゥブからの独立の方針を聞かされ、処分覚悟でシラノ-5に抗議の意思を示したのだという。

「砲撃もしたのか?」戦闘経験のないエンジニアであるコルネは肩をすくめた。「おいおい、戦争になってあのハリー隊長に敵うわけないだろう。フィットは何を考えているんだ?」

「だからこうしてさ」ハットも嫌そうな顔で手をひらひらとさせた。「こっちに火の粉が降りかからないようにするにはどうしたらいいかと相談しているんだ」

「お前らはそういうけど」水質管理をおもに請け負っているサコタが話に加わった。「トワサンガの上半分のリングをちゃんと動かせたからって、フォトン・バッテリーが来なきゃあの資源衛星だって使い物にならないんだぜ。リングを回す動力は何か特殊な手段で維持されていて、その管理者は死んでしまった。内部のエネルギー源はすべてフォトン・バッテリー。水の循環もできなければ、水質保全もできない。当然空気だって作り出せない。あの王子さまは肝心なことをわかってないよ」

「だけど、重力を発生させるリングの動力は5年は大丈夫なんだろう? そう聞いたぜ」

「技術者が死んでるのに、そんなことアテになるもんかよ。5年以内にフォトン・バッテリーってのが来るのか来ないのか、そもそもオレは空気の玉とか水の玉とか、あんなものに頼って生きているってだけで足元が寒くなるよ。あれだってビーナス・グロゥブからの配給なんだぜ。そんなものに頼ってるシラノ-5に移住してこいとか、トチくるってるよ」

コルネは手で丸い形を作りながらサコタに応えた。「あれは地球で補填できるのか? つまり、中の空気や水がなくなったら入れ物を再利用できるのかって話だけど」

「できないできない」サコタは呆れた顔で手を振った。「空気や水をあの小さなボールに圧縮することなんか地球人にできるわけがない。オレたちにだってできない。技術がこう」彼は指先をクルクルと回した。「逆に戻ってるんだよ。技術体系がターンしてしまっている。逆方向に向かってるんだな。そもそもどうやって中から空気や水を取り出せるのかもわからない。電気だってアダプターを使わなければ取り出せない。アダプターの作り方は地球人が知ってるらしかったけど、仕組みはわからないって話だった。フォトン・バッテリーと同じさ。技術はビーナス・グロゥブにしかない」

「フォトン・バッテリー、水の玉、空気の玉。なんでもビーナス・グロゥブからの配給。この事実に恐怖しない連中の気が知れない。ビーナス・グロゥブの機嫌を損ねたらいつでも大量虐殺されてしまうじゃないか。何も送ってこなきゃいいんだから」

「確かになぁ」コルネもこのことに関しては同意見であった。「サコタが言うように、オレたちがレイハントンとの戦争に敗れてから技術は退化しているよな。500年前か、ディアナ・カウンターのときは地球人も飛行船を飛ばしたり、ディーゼルエンジンを作ったりしていた。それがいつの間にか技術が、そう、ターンしてしまって、フォトン・バッテリー前提で何もかも組み立てられてしまっている。以前より進歩しているようで、まったく逆だ。技術体系のコアな部分の知識がまるで欠落している」

「だからさ、反乱したってのよ。我々ムーンレイスの技術で新しい世界を作ろうってさ。エネルギーなんて宇宙で作ってビームで地上に転送すればいいんだから」

「ムリムリ。地球に送れても利用でないよ。どこにも送電線がないだろ。銅もなけりゃ、それに代わる技術もない」

「最悪、トワサンガの連中を全員月に迎え入れて、月の研究をすりゃいいんだよ。連中はヘルメスの薔薇の設計図だのなんだのって言ってるけど、月に残された技術の方がはるかに膨大だし、生存に必要な情報が詰まってる。これを放置して来るのか来ないのかわからないフォトン・バッテリーに頼るなんてどうかしてるよ」

彼らの不満は大きかった。しかしエンジニアである彼らは、なぜ技術がターンしてしまったのかまで関心がなかった。技術をすべて解析して掌握できないことが不満だった。

核心技術をビーナス・グロゥブに依存した地球は、フォトン・バッテリーを失った時点でキャピタル・タワー建設時点はおろかそのはるか昔まで文明を後退させることは間違いなかった。自力でディーゼルエンジンを組み立てても燃料の生産はおそらく植物の大量生産なくては意味がない。化石燃料はとうの昔に尽きてしまっている。地球人はろくな発電設備を持っていないのだ。

「フォトン・バッテリーがわざわざ金星から運ばれて来るおかげで、地球人は使用できるエネルギー量が人口に直結していることを忘れてしまっているんじゃないか。資源の尽きた地球はで生きられる人類はおそらく1億人程度だろう。それが地球全体に散らばっているのだから、わざわざモビルスーツを作ってレコンギスタするなんてナンセンスだよ。人が死んでいくのを待って、あのタワーとかいうので降りていけばいいだけだ。戦う必要なんて初めからなかったんだ」


3、


フィット・アバシーバはディアナ親衛隊の部隊長の中でも取り立てて有能というわけではなかった。彼は地球からやってきた200名の冬の宮殿調査チームの世話係をやっているうちに、ある閃きを得て突然彼ら地球人の地球圏独立案に賛同してしまったのだ。

彼はディアナ・カウンターの一員として地球の降り立ち、∀ガンダムと戦ったことがあった。その圧倒的戦闘能力の前になすすべなく退散しただけであったが、彼は∀ガンダムを文明を崩壊させるための悪魔の機体だと見做していた。∀ガンダムは、地球の文明を崩壊させて人類文明を古代まで退化させたというのだ。

「あの方の言うことは本当なんですかね?」

法王庁の役人たちは、地球圏独立を訴えいざ実行に移してみたものの、戦いに不慣れな官僚や宗教家ゆえに事の成り行きは大きな不安を感じていた。

冬の宮殿近くのホテルのような建物に泊まり込んで1か月が経過しようとしていた。その間、特にこれといった成果がないままモビルスーツ同士の戦いの映像ばかり見ているうちに彼らはすっかり飽きてしまっていた。その映像を一緒に眺めていたフィット・アバシーバだけが突然興奮し始めて、彼らがベルリ・レイハントンに反旗を翻すと聞いてすぐさま賛同したのだった。

「∀ガンダムというものが外宇宙からやってきた人間によって地球にもたらされて文明はいったん崩壊したもののアメリアを中心に再び文明は再興したと。それを見たディアナ・ソレルという方が地球に再入植しようとやってきたところ、条約に不備があったやらなんやらで結局その計画は見送ったと。そのあと月に戻ると、突然レイハントンという者が攻めてきて月の裏側の宙域を奪われて月に閉じ込められた云々。わたくしにはサッパリ理解が追い付かないのですが」

「話半分でいいでしょう」法王庁の官僚が応えた。官僚といっても法衣姿であった。「歴史など誰も正しくは把握していないものです。立場によって歴史は変わる。それより肝要なのは、500年前にアメリアが自主開発した技術が廃れたという話です。初代レイハントンがムーンレイスに戦いを挑み、彼らを月へと追いやった。そのあとにキャピタル・タワーが出来て、フォトン・バッテリーが供給されるようになったことで、最先端だったアメリアの技術よりも優れた技術が地球にもたらされて、一気に技術体系が塗り替わったと。一見宇宙世紀70年代まで技術体系が進んだかのように見えるが、実はフォトン・バッテリーがなければ500年前より技術そのものは劣っていると。肝心なのはここです」

「つまり・・・」スコード教団の神父が心配顔のまま続けた。「地球圏独立は正しいということで?」

「正しいというより、キャピタル・テリトリィが再び新技術供与の旗手となるにはこの方法しかないかと。フォトン・バッテリー中心の技術ではもうアジアには追い付けない。しかし、フォトン・バッテリーがこのまま供与されず、ムーンレイスの新技術を我々が持ち帰ればわたしたちが神になるのです」

スコード教団がトワサンガに突きつけた条件は、教会の学術調査の中止、信仰の自由の保障、月勢力圏の地球からの独立、ビーナス・グロゥブとの交流断絶、宇宙世紀時代の技術の復活、資源衛星を新たに作るの6つであった。

「ベルリという少年がどんな人物なのかよくは知りませんが、よほどのバカじゃない限り自分がトワサンガの王になって同時にスコード教の法王になることが最も正しい判断だと気づくことでしょう。彼の妃にふさわしいのはクンタラのノレド女史、もしくは月の女王ディアナ・ソレル。どちらになっても彼は新時代の神となり、わたくしたちは神のしもべとなるのです。これが最善の策というもの」


4、


一方、幽閉されていたザンクト・ポルトのスコード教会宿泊施設の一室を抜け出したノレドとラライヤは、意外に手薄な見張りの眼をかわしながら建物の外へと出た。すでに数度来訪経験のあるふたりは、サーチライトの明かりをひらりひらりと避けながら市街地へと逃げることに成功した。

噴水のある公園には警察の姿があったため、ふたりは念のために身を隠して行き過ぎるのを待ち、公園を横切ると農業家畜プラントのある地区まで逃げた。時間は深夜。人工的に作られた夜であっても、クラウンの住民にとっては本物の夜である。住民は寝静まっていた。

「もう追ってこないかな」

とのノレドの言葉を、ラライヤは即座に否定した。

「逃げたとわかればどこまでも追ってきますよ」

「くー、G-ルシファーさえあれば」

「ザンクト・ポルトを脱出するにはキャピタル・タワーで地上か下のナットに逃げるか、メガファウナに乗って月に行くしかない。メガファウナは月に向かってしまったから戻っては来られないでしょう。だとしたらわたしたちが向かうのは・・・」

「あちらさんもクラウンは警戒しているはず」

「でも、人を幽閉しているにしては監視がほとんどなかったのは気になりません?」ラライヤはノレドに顔を近づけた。「スコード教会の本拠地ですよ。もっと大勢に囲まれていると思っていたのに、全然人がいない。もしかしてこれって」

「これって?」

「みんな月に亡命したのでは?」

フォトン・バッテリー枯渇の折、夜はどこの商店も店が閉まっている。そもそもバッテリーの供給がなければザンクト・ポルトの住民は仕事にあぶれてしまう。ザンクト・ポルトとはあくまでフォトン・バッテリーの中継地点なのだ。ここでカシーバ・ミコシより降ろされたフォトン・バッテリーをキャピタル・タワーに積み込むのが住民の仕事である。

ふたりは町はずれの小さな教会を見下ろす丘でしばし休息を取ることにした。ノレドは草の絨毯の上に大の字になって伸びたが、ラライヤは周囲の警戒を怠らなかった。

ノレドが呟いた。

「スコード教のお偉いさんたちは月に逃げたのか」熱心なスコード教徒である彼女は顔を膨らませた。「フォトン・バッテリーが来なくなっただけであの人たちはこんなみっともないことになってしまうのか。もうあたしは敬虔なスコード教徒には戻れそうにないよ」

「ノレドさん」ラライヤは意を決した顔つきになった。「もしノレドさんが覚悟を決めてくれるというなら、第3の道もあるんです」

「第3の道?」

「反乱ですよ」

「お?」

ラライヤは声をさらに潜めた。「ノレドさんを出迎えにクラウンで降りる前ですけど、地球でスコード教の枢機卿会議があるって聞いていたんです。大きなイベントなのでザンクト・ポルトからも多数の出席者があったことでしょう。そして今回の反乱。スコード教の人たちは月に逃げた可能性がある。ザンクト・ポルトにいてはいつ迎えが来るかわからないし、キャピタル・ガードが乗り込んでくる可能性もあるわけですから、わたしたちが乗るはずだったメガファウナにたくさん乗り込んで月へ向かったはずなんです。そこでノレドさんを捕まえて、ベルリさんとの交渉の道具にするつもりだった。ということは、いまザンクト・ポルトのスコード教会はほとんど人がいない」

「なるほどね」ノレドは舌を出した。「こっちにはアイーダさんの正式なG-メタルがある。こいつはオールマイティーのジョーカーみたいなもの。どこの電子ロックも解除できる。だから、トワサンガから来た大学生たちのところに乗り込んで・・・」

「一緒に反乱を起こすんです」

ザンクト・ポルトのスコード教教会には学術調査のための派遣団が来ていた。その大学生たちと合流してザンクト・ポルトを制圧しようというのだ。ふたりは強く頷き合った。


5、


ディアナ親衛隊の中でいまだ無敗を誇るフィット・アバシーバ隊は、大きな不安に包まれていた。

危なくなるとすぐに逃げることから「撤退のアバシーバ」と異名をとる自分たちの部隊長が、突如覚醒したかのように攻めに転じたことに疑念を持たぬ者はいないといってよかった。いくらディアナ・ソレル不在とはいえ、ハリー・オードに逆らって自分たちがただで済むのかどうか彼らは胃に穴が空く思いでシラノ-5を攻撃したのだった。

意気軒昂、自信満々なのは当のフィット・アバシーバだけであった。彼は自慢の金髪をなびかせてじっとシラノ-5を睨みつけていた。

フィットは無線を通じて自分のスモー隊に檄を飛ばした。

「いまこそディアナ・カウンターを実行に移す時である。地球はこれから土民の時代に逆戻りしていくことだろう。地球人は過去に何度も何度も文明を興しながらそのたびに失敗してきた。それは我らに伝わる黒歴史に学ぶことができよう。地球人は欠陥人種なのだ。地球は我らスペースノイドが統治してこそ真の平和が訪れる。これは我らスペースノイドによる地球人の救済であって侵略ではない。憎きレイハントンもそのことを承知だったのだ。だからこそ我々を殺せなかった。我らが月の文明圏で築き上げてきた来たものを、いまこそ地球に持ち帰るときだ。我らは地球と月でしっかりと文明を再生し、ビーナス・グロゥブよりやってくる外敵と戦わねばならない。ビーナス・グロゥブ、彼らこそ我々ムーンレイスの真の敵である。地球文明圏の再生は、我々ムーンレイスに掛かっている!」


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