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「Gレコ ファンジン 暁のジット団」vol:40(Gレコ2次創作 第10話・後半) [Gのレコンギスタ ファンジン]

「ガンダム レコンギスタの囹圄」


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第10話「ビーナスの秘密」後半



(アイキャッチ)


古風な軍服姿の美少女と、物おじしない明るい少女と手を引かれる小さな女の子、この3人は意外なことに多くのビーナス・グロゥブの人々に歓迎されていく先々で人気者となった。

ラ・グー総裁に出迎えを受けた当初にあったどうにも気まずい雰囲気はそこにいた人々がヘルメス財団の人間であったことによるらしいとわかった。だが、地球人であるノレドと小さなリリンにはヘルメス財団がどんなものなのかわからない。ラライヤも詳しく知っているわけではなかった。

ヘルメス財団のトップはラ・グー総裁であったが、彼は3人に詳しいことを話すつもりはないようだった。その役割を引き受けたのは、月にある冬の宮殿で戒めの儀式を行っている際に無理矢理G-ルシファーに乗せられて運ばれた地球のゲル法王であった。

ゲル法王は法王庁のトップにいる人物で、ヘルメス財団に所属している。法王庁自体がヘルメス財団の管轄下にあり、宗教国家であるキャピタル・テリトリィの実質的な国家元首であった。

その彼が、地球から遠く離れたヘルメス財団のトップとじっくり話し合う気持ちになったのは、ひとえに責任感によるものである。フォトン・バッテリーの配給停止処置は、地球が再び暗黒時代に戻ってしまう可能性を秘めている。それを阻止したいとの決心が、ゲル法王を突き動かしていた。

法王がなぜラ・グー総裁のゲストハウスから逃げ出して外を見るように促したのか、ラ・グー総裁がなぜそれを追わないどころか金銭的面倒まで見てくれるのか、ノレドにもラライヤにも本当のところはわからない。大人の世界と子供の世界の壁に3人が気づくことなかった。

3人はオーシャン・リングの海が見える場所まで歩いてきていた。そろそろ人工的な夕刻が近づいており、リリンは少し眠たげな様子であった。しこたま買い食いしたあと、搾りたてのフレッシュジュースを飲みながら歩いていたとき、ポツリとノレドが呟いた。

ノレド「こうしてゆっくり歩いたのは初めてだけど、ビーナス・グロゥブってもしかして地球にあるものの複製品ばかりなのかな?」

ラライヤ「ああ、それはトワサンガも同じですよ。宇宙は常にルネサンスが芸術運動の基本です。ごくまれに新しい試みがムーヴメントになることはありますが、そうした運動もルネサンスの揺り戻しを受けて取り込まれていくんです」

ノレド「どうしてかなぁ。ここは地球より豊かに見えるのに」

ラライヤ「言葉ですかねぇ・・・。いつか地球に還ったとき、言葉が通じなかったら悲しいでしょ?」

ノレド「なるほど、どこかの時代に錨を下ろしておかないと、地球と宇宙でずっと離れて暮らしていると、こう(両手を勢いよく広げる)バアーーっと分かれていっちゃうもんね。それが怖いのか」

フレッシュジュースの飲み物の容器を捨てる際、ラライヤは小さなリリンが飲み残したものを飲み干してからごみ箱に捨てた。それがノレドには不思議で、新鮮であった。いつも仲よく遊んでいるラライヤだが、時折自分たちが違う場所で生まれたのだと感じることがある。

その晩、海辺のリゾート用ホテルに宿泊した3人は、翌朝また元気に外へと出掛けた。労働の義務が徹底されているビーナス・グロゥブでは、同時に休息の義務も厳しく設けられており、観光用のホテルは多数存在している。

ラライヤ「(3人並んでホテルを出る)宇宙ではあらゆるものが生産して作られているので、働くことがそのまま生命維持に必要不可欠な要素なんです。クレッセント・シップで地球を1周したとき、停泊した現地の人などが『食べるために働いている』と話すのを聞いたことがあります。しかし宇宙では、食べるどころか、呼吸するための空気すら労働の産物なんですよ。(目の前の海を指さして)この大きな海・・・、これだってただ水があれば海になるわけではありません。水資源をどこからか運び、人間による徹底した管理の元で水の汚染が食い止められているから、海が美しいままでいられる。でも地球の人は海にゴミを投げていました」

ノレド「地球人は宇宙の人より怠け者ってことか。(困ったような顔で)たしかにねー・・・、そうか、ゴミを燃やすのだって空気がいる。燃やさないのかもしれないけど。ジュースの飲み残しがあったら空気も燃料も余計にかかってしまうのか・・・。じゃあさ、逆にトワサンガ育ちのラライヤがビーナス・グロゥブで不思議に感じる点ってないの?」

リリン「(ぴょんぴょんと飛び上がりながら)リリンもトワサンガで育ったよ」

ノレド「じゃあさ、今日はビーナス・グロゥブとトワサンガの違うところをいろいろ探そう」

ノレドの発案で1日の予定が決まった3人は、大人4人が乗れる馬車のような形のシャンクをレンタルして、海から離れた場所へ出掛けてみることにした。ロザリオ・テンはビーナス・グロゥブの首都にあたる地域で、トワサンガよりかなり広いために住居施設に隣接して農業も行っている。

ラライヤ「広くて余裕があるというのが1番大きな違いですけど・・・」

2時間ほどキョロキョロと辺りを見回しながら歩いてみたが、ラライヤにはトワサンガとビーナス・グロゥブの大きな違いは見つけられなかった。

むしろリリンの方が話をよく理解していない分だけ、トワサンガにないものを見つけるのが上手い。あれもないこれもないと小さな指を差すたびに新たな発見がある。しかし、ノレドとラライヤが探しているものは、リリンが見つけるようなものではない。

ノレド「結局、ユニバーサル・スタンダードに縛られているってことだよね」

ラライヤ「そうですねぇ・・・、なんだろう、革新されているものがないとでも言いましょうか」

ノレド「さっきのルネサンスの話と同じだ。新しいことが始まろうとすると、復古運動の波に飲まれてスタンダードに組み込まれていく。あたしは地球とビーナス・グロゥブの違いを見つけたよ。それは海。ビーナス・グロゥブは海洋資源が豊富だよね」

シー・デスクに隣接する地域では漁業が盛んで、どこへ行っても魚の臭いがする。地球の海の方がはるかに大きいのに、地球の海は汚染と資源枯渇によってまだ再生段階にある。

ラライヤ「それが不思議で」

ノレド「不思議も不思議。(海からの風に吹かれながら)地球の海にはもうこんな多くの種類の魚や哺乳類はいないもん。それにさ、ラライヤはヘルメス財団の人は宇宙の彼方から金星に戻ってきたって言ったでしょ? これがずっと不思議で、太陽系の外側から戻ってきたなら、地球の方が近いよね」

ラライヤ「(首を捻って)たしかに」

ノレド「水資源も太陽に近い場所より遠い場所の方がたくさんあるはずで、それが凍らず、宇宙へ拡散せず重力に引かれてとどまっているのは地球くらいでしょ? 水資源はどこからか引っ張ってきたとしても、ヘルメス財団が設立されたときにこの海にいる生き物は地球にいたのかなって」

ラライヤ「でも地球以外のどこにこんな生き物がいるでしょう?」

ノレド「宇宙世紀の時代に地球は資源が枯渇して、あたしたちクンタラの祖先は悲惨な歴史を歩んだって聞いてる。それがいつのことなのかわからないんだけど、海にこれだけの生物がいて、人間を食べなきゃいけないほど飢えたのだろうかって」

ラライヤ「(クンタラという言葉にはっと驚きながら)時代が合わないと?」

ノレド「うん。だからムーンレイスの話が気になるんだ。ムーンレイスは月の人たちで、ラライヤたちの先祖と接触したって話だけど、月に人間なんているはずがない。元は地球人だったに決まってる。彼らだったら、地球の資源をどうにかして月に持ち出して、保存させられたかもしれないって考えててさ。冬の宮殿も彼らが保存していたものなんでしょ?」

リリン「(話に割って入る)リギルド・センチュリーが始まって1015年だよ」

ノレド「(リリンの頭を撫でて)そう。1015年。もうすぐ1016年」

ラライヤ「1000年・・・。海洋資源の回復と比べて人間の数が多すぎる!」

ノレド「(金星の海を指さし)地球の海にはこれほど豊富な生態系はない。そしてまだ回復していない。宇宙の果てまで海を持ち歩いていたわけじゃあるまいし、アグテックのタブーがあるのに、魔法みたいな技術を使ったとも思えない。ここの海の生物は、ムーンレイスって人たちが地球から月に持ち込んだとしか思えない。だけど、いまはヘルメス財団のものになっている」

ラライヤ「ビーナス・グロゥブとトワサンガの1番の違いは、目的です。こうして見渡していると、ビーナス・グロゥブはかなり多くの物を生産しています。ここでの生産が、トワサンガや地球のエネルギーを賄っています。フォトン・バッテリーなどは、ビーナス・リングに溜める分、トワサンガと地球に配給する分、これらは交換していない労働ですから、生産力がよほど大きくなければ維持できません」

ノレド「だから、どこかにウソがあるんだよ。宇宙の果てから地球を素通りして金星に戻ったという歴史も多分ウソ、ムーンレイスを懲らしめたのも多分ウソ。肝心なことは全部大人が秘密にしてるんだ」







ジムカーオが暗い場所を好むと知っているのはノースリングの先にあるヘルメス財団の人間だけであった。ヘルメス財団が管理するノースリングの先にあるオフィス群は、シラノ-5からもビーナス・グロゥブからも隔離されたもうひとつの世界だった。

その世界を知っているのは、ヘルメス財団の中でもごく一部の人間だけであった。それは血族によっていにしえの時代に定められた契約に基づいていた。多くの者は、その場所で働くことを選良だと考えていた。だが、クンタラ出身のジムカーオは血族による契約によってその場を支配しているわけではなかった。

ジムカーオ「長年研究してきたという割にはこの間からまるで成果がないように見えるのはこちらの気のせいなのかね?」

ジムカーオ大佐の前でかしこまっているのは医療局長であった。ふたりは他の医療スタッフと共に真っ白な壁の明るい部屋にいた。医療局長は大佐の不機嫌を部屋の明るさのためだと考えていた。

医療局長「どうもこの女性は先の戦いで負の感情を増大させる何かがあったようなのです。知っての通り、かつてジオン公国のあったこの宙域というのは人間の残留思念が多く残存する場所らしく・・・」

ジムカーオ「だが、この娘の中に誰かの残留思念が入ったのか、この娘の心象が何かに反応して能力を発揮したのかも解明できないでは、わざわざ助けてここに運んだ意味がない。あなた方は自らの血統というものをよく理解していて、主に他人を見下す際に使っておいでのようだが、自分たちの能力がどんなものかもわからず、その使い方もわからないでは意味がないのではありませんか。自分はクンタラで何の血統書も持ち合わせませんが、この娘に力があるのはわかる。何ならこの娘の中に入ってご覧にいれてもいい。負の力とおっしゃったが、それが残留思念によるものなのか、この娘の能力なのか、遺伝的欠陥なのか、とにかく解明していただかないと、開発中のMS、MAが無駄になってしまうのですよ。あなた方は自分たちの契約を果たして欲しいのでしょう? それは我々も重々承知しているから、こうして手伝っているのです。いやいや、自分は別に怒っているのではない。目の前の現象を解明しなさいと言っている。YG-111のコクピットの秘密が手に入らなかった以上、アンドロイドを使って何とかできないかやってはみますが、エンフォーサーというものは増幅器みたいなものですよ。サイコミュとは違うのです。契約を果たしてくれはよろしいとしても、力が釣り合わない状態ではただの虐殺になるか、虐殺されるしかないわけです。ああ、もう結構」

医療局長がまともに話を聞く気がないと知ったジムカーオは一方的に会話を打ち切ってその場を後にした。部屋の中には医療スタッフと、ベッドの上に横になったバララ・ペオールの姿だけがあった。

ジムカーオ「連中はどうやら一方的に虐殺することが勝利だと信じ切っているようだ。そんな単純な契約をレイハントンが交わすわけがないとなぜわからないのだろうか? ウィルミット・ゼナムを巻き込めば、あのニュータイプのベルリくんをこちらに引き込めたのに、あのばあさんは意外に勘が鋭かったようだ。死んだのかどうかは知らんが・・・。そういえばムーンレイスという話もあったな」

彼はまだムーンレイスがいるという話を完全に信じたわけではなかった。フルムーン・シップを奪われたときに、unknown 機と交戦したとの報告もあったが、画像が不鮮明で確証が得られていなかった。

ジムカーオはまた漆黒の闇に包まれた自室へと下がった。そこで彼はゆったりとソファに沈み込んで神経を集中させたが、どうやっても月に干渉することは出来なかった。

ジムカーオ(これがレイハントンの仕掛けだとしたら大したものだ。もしかすると自分は初代レイハントンと戦うことになるのだろうか・・・)






ゲル・トリメデストス・ナグ法王猊下はしんと静まり返った日本風ゲストハウスの中で、ひたすらラ・グー総裁がやってくるのを待っていた。この辛抱強さこそが信仰によって鍛えられた彼のもっとも優れた点であったといえるだろう。

彼に伝えられた情報といえば、ノレドたちのことは心配いらないと、ただそれだけであった。

夕刻を前に、ラ・グー総裁は、4人の秘書官を引き連れて厳しい表情でやって来た。 

ラ・グー「このような場所に閉じ込めてしまって誠に申し訳なく思っております」

ゲル法王「(立ち上がり)いえなに、こちらこそ有り得ない訪問をいたしてしまったわけですから、身が縮こまる思いでございます。また3人の少女へのご配慮、深く感謝いたします。(深く頭を下げる)」

ラ・グー「早速ですが、こちらで情報を整理したところ、現在地球では法王庁からの通達でフォトン・バッテリーの配給停止が発表され、ピアニ・カルータが流出させたヘルメスの薔薇の設計図の全データと、それから作られた物をすべて1年以内に完全廃棄するよう発表がなされたとか。間違いありませんね」

ゲル法王「はい」

ラ・グー「クレッセント・シップのエル・カインド艦長から報告を受けましたが、ジムカーオという人物がトワサンガにてレイハントン家の再興を目指し、ベルリ王子とノレドさんの婚儀を急いでいたとか。そのためにトワサンガ守備隊を追い出して、キャピタル・テリトリィの守備隊・軍隊の混成チームを率いて乗り込んできたとか。これも間違いないですね」

ゲル法王「はい。トワサンガ守備隊はザンクト・ポルトにいたと思います」

ラ・グー「(深く溜息をつき)ジムカーオというのは、ビーナス・グロゥブの生まれで、若く見えますがもう100歳近い年齢なのです。彼の情報を探し出すのは大変でした。もう50年も前にビーナス・グロゥブを離れ、トワサンガでヘルメス財団の仕事を30年、キャピタル・テリトリィの調査部に入って20年、記録を追うのも大変なほどの古株なのです。もうとっくに死んだと思っていたのですが、どうもこちらで遺伝子改良を受けた痕跡があり、それで若く見えたのでしょう」

ゲル法王「100歳・・・、遺伝子・・・」

ラ・グー「(肩をすくめ)ビーナス・グロゥブには長寿のための様々な技術があり、それらはアグテックのタブーには抵触しないのです。我々はここで生き、労働することが戒めであり、宗教活動そのものなのですから、地球やトワサンガの方々とはまた違った価値観を持っているのです」

ゲル法王「はい」

ラ・グー「ビーナス・グロゥブとトワサンガの間で通信することはできないので、今回の処置について様々な検討を行った結果、状況は基本的に追認することとし、法王猊下におかれましては、どうかこのままビーナス・グロゥブにとどまっていただき、こちらにおける次期スコード教の法王になっていただきたいのです。了承していただけますか」

この質問に対しゲル・トリメデストス・ナグ法王はしばらく考え、やがて口を開いた。

ゲル法王「わたくしは月にある冬の宮殿という場所で、様々な映像を見ることが出来ました。それらは恐ろしいほど破壊に熱中する人々の、悪しき心を映し出したものばかりでしたが、ひとつのことに気づいたのです。それは宇宙で暮らす人々の、地球人への激しい憎悪です。地球は繰り返し繰り返し宇宙の人々から攻撃を受け、そのたびに大きな損害と汚染を受けました。なぜあれほどの憎しみを向けられたのでしょうか?」

ラ・グー「スペースノイドとアースノイドの戦いのことですね。それは宇宙世紀初期においてあった局地戦に過ぎず、もっと激しい戦いは銀河の果てで起こったのです」

ゲル法王「それは宇宙で暮らす人々同士の戦いであって、地球と宇宙で暮らす人々の争いとは根本的に性質が違うのではないでしょうか? 戦争をしながら人類が宇宙へと散らばっていったのは、何らかの利益の追求があったからです。しかし、あの白いモビルスーツと赤いモビルスーツの戦いは違うものを感じたのですが」

ラ・グー「白いモビルスーツと赤いモビルスーツ? なんだろう? 誰か心当たりのある者はいるか?(4人の秘書がそろって首を横に振る)うーん・・・。(部屋の中を歩き回り)わたしは冬の宮殿に蓄えられた映像を解析したことはありません。ただ・・・、あなたがそこまで気に掛かるというのなら、もしかしたらそれはスコード教の根幹に関わる話なのかもしれませんね」

ゲル法王「スコード教は、人間同士の相互理解を追求するものです。それが奇蹟として起こったからこそ、わたくしたちは自信をもって信者たちに説法を行えるのです。白いモビルスーツと赤いモビルスーツのような、あれほど激しい憎しみがあって、果たして相互理解など可能なのでしょうか?」

ラ・グー「つまり、あなたの信仰が揺らいでいるのです。冬の宮殿にはそれほどのものがあったということですね」

秘書A「そろそろお時間ですが」

ラ・グー「ピアニ・カルータ事件は、様々な囹圄の柵を開けてしまったのです。しかし、もし人類が再びイノベーションに走ったならば、それは宇宙世紀の二の舞です。それらが黒歴史として囹圄の中に仕舞い込まれたのはあなたもご存じのはず。それを開けて探ってはいけないのですよ」

部屋を出て行こうとするラ・グー総裁に対し、ゲル法王はその袖にすがりついて激しく抗議した、

ゲル法王「現状を容認し、わたくしをビーナス・グロゥブに留め置かれるというのは、地球そのものを囹圄にするということです! それではあの白いモビルスーツと赤いモビルスーツの時代と何ら変わらないではありませんか! ただ戦わないだけです! これを続けていては、必ずや地球の者たちは立ち上がり、ビーナス・グロゥブと戦うと申しましょう! それではいけないのではありませんか!」

ラ・グー「ピアニ・カルータが撒き散らした戦争の種はすべて摘み取らねばならない! それだけは確かなのです!(法王を振り払い)では、失礼いたします」

部屋を出て歩いていったラ・グーは、声が届かない場所で立ち止まり、秘書たちに指示を出した。

ラ・グー「(秘書Aに対し)フルムーン・シップが数時間以内にこっちにやってくるのだろう? 全戦力を導入してロザリオ・テンへの入港を阻止せよ。(秘書Bに対し)もうこれはわたしとしてもヘルメス財団のお飾りではいられない。財団が隠していることをこの際だから洗いざらい明らかにしてしまいたい。(秘書Cに対し)守備隊を投入してヘルメス財団の本拠に乗り込む。用意してくれ。(秘書Dに対し)あの3人の少女の願いはなんでも叶えてやれ。ノレドさんはクンタラ出身と聞いた。もしかしたらムーンレイスの海洋資源を奪うまで宇宙ではクンタラを食用にしていたことを知られるかもわからないが、そのときは彼女は地球に還さない。何を知ったかだけ報告してくれ」







ノレド、ラライヤ、リリンの3人は、1日中シャンクで歩き続けて、クタクタになったところで近くの食堂で食事を摂ることにした。

ビーナス・グロゥブの食堂は、労働者が気分転換するものであり、家庭料理というものがないビーナス・グロゥブではすべての人間が夜は外食をする。また世界各地の郷土料理を守っていく意味合いもあるので、地球上のあらゆる場所の料理を食すことが出来るのだった。

それらの中には地球ではすでに失われた料理も存在した。

美味しい匂いに釣られてあの店この店と渡り歩くうちに、3人は立てなくなるほどお腹を膨らませてしまった。小さなリリンも、見たことのない食事をあれもこれもと頼むうちに、大人ふたり分は食べてしまっていた。それでもまだデザートを食べるつもりでいるようだった。

ノレドも食べ過ぎて動けなくなっていたが、彼女はラ・グー総裁から貰ったクレジット・カードを眺めながら、何か考え事をしているようにも見えた。

ラライヤ「どうしたんです?」

ノレド「このカードっていうのさ、なんにでも、いくらでも使えるんだよね?」

ラライヤ「そうらしいですけど」

ノレド「じゃ、決めた!」

ラライヤ「何をです? もうこれ以上どこにも行けませんよ?」

ノレド「うんにゃ。うちらはこれを使って、ビーナス・グロゥブの大学に入るのさ」

ラライヤ「えーーーーー!」

ノレド「リリンちゃんだって小学校に行かなきゃいけないでしょ? セントフラワー学園からの進学なんて前代未聞だろうけど、なーに、ダメでもともと。当たって砕けろですよ」

ラライヤ「ほんと、ノレドさんには驚かされてばかりです」

リリン「(眠そうに)リリンも学校行く。あと、アイス食べる」


(ED)


この続きはvol:41で。次回もよろしく。















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