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「Gレコ ファンジン 暁のジット団」vol:29(Gレコ2次創作 第5話・前半) [Gのレコンギスタ ファンジン]

「ガンダム レコンギスタの囹圄」


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第5話「ザンクト・ポルトの混乱」前半



(OP)


ノレドとラライヤにはパレードに使用されたG-ルシファーがそのまま与えられた。

G-ルシファーのいかつい機体は、ザウスリングののどかな陽光の中に佇み、レイハントン家の屋敷の庭に停められることになった。シラノ-5の農業区画であるサウスリングは緑豊かな場所で、その牧歌的雰囲気を味わうための別荘が多くある地域だった。

レイハントン家の屋敷もかつての当主がそこに住んでいたわけではなく、週末にやって来て家族と過ごすための場所であった。ドレッド家に殺された先代レイハントンは、身体を動かすことが好きで、休日のたびに家族を伴いこの屋敷にやって来ては使用人たちと一緒に農作業にいそしんでいた。

ベルリもアイーダもこの屋敷の庭を走り回って育った。使用人はそのまま王家の家臣団でもあり、忠誠心に篤く、レイハントン家が滅亡したのちもドレッド家に与せずにレジスタンスとして戦った。ここサウスリングのレイハントン領は、王と家臣団の結びつきを確認し合う牧場であり、空であった。

たとえそれが作り物の空であったとしても。

滅亡したドレッド家はノースリンクの工業地帯に地盤があり、豊かではあるものの家臣との関係は経済取引の延長のようなものだった。ドレッド家はその基盤を固めるために生産力の増強を訴え、連帯を重視するレイハントン家と対立していた。

両家の対立はノースリングとサウスリングの対立であり、経済成長と環境維持の戦いでもあり、価値の集中と価値の創造の対立でもあった。資本の集中に於いてドレッド家は常にレイハントンより優位にあったが、人心の掌握についてはレイハントン王家は圧倒的だったのである。

レイハントン王は人々の労働の中に多くの価値を見出して働く人々を称賛して優れた者に勲章を与えていた。たとえ貧しい家庭であってもその仕事ぶりが評価され、王家より名誉が分配されたのである。

ドレッド家は分配を嫌う資本家の意見が大きく反映されたので、彼ら自身は強大な力を持っていても、その後ろには誰もついてきてはおらず、事実1年前の戦争にてドレッド家が滅亡した暁にはその存在はあっという間に忘れられた。資本家たちはノウトゥ・ドレットに代わる権力者も用意できなかった。

自信満々だったノースリングの資本家たちは意気消沈し、ハザム政権が人々に打倒されるのをただ黙って眺めていた。

そこへやって来たのが、ノレドとラライヤだったのである。

ノースリングの資本家たちはふたりの小娘ならば組みやすいのではとさっそく近づいてきたものの、レイハントン家の嫡男ベルリ・ゼナムの地球での養母ウィルミット・ゼナムが一筋縄ではいかない有能な女性とわかってふたりの少女に手が出せないでいた。

ウィルミットはトワサンガの事情に明るくはなかったものの、政治的キャリアによる勘でノレドとラライヤに送られてきた高価な品々はことごとく送り主に返還してしまっていた。彼女のガードはまさに鉄壁であり、ノレドとラライヤは知らないうちに彼女によって完全に守られていたのである。

そうとは知らないふたりも、自分たちが置かれた状況を理解すべく動き始めていた。

ノレドとラライヤは協力してなるべく外を歩き回り、多くの人々に触れ合ってハザム政権が倒れた後のトワサンガの様子を観察していた。

元よりラライヤはサウスリングの出身だったので顔馴染みも多かったが、ノレドも屈託ない性格ですぐに地域住民に溶け込んで仲良くなっていた。新しい王女というのでおっかなびっくりだった住民たちも、ノレドと話をすればたちまちのうちに打ち解けて話せるようになった。物怖じも人見知りもしない彼女の明るい性格は、サウスリングに多くのファンを生んでいった。

ただ、見聞するものの中には不穏なことも多く散見されたのである。

そのひとつがモビルスーツの乱用であった。

ハザム政権が住民たちの蜂起によって倒れたのち、その治安を請け負っていたのはキャピタル・ガードとアーミーの混成部隊であった。ノレドがキャピタル・テリトリィで見知っているウーシァとエルフ・ブルックが治安出動の名目でそこらじゅうを見回っていたのだ。

モビルスーツによるパトロールは地域住民に強い圧迫感と不安を与えていた。憤慨したノレドはウィルミットを通じてモビルスーツの撤退を命じ、所属のハッキリしない彼らもこの命令には応じたものの、それはサウスリングだけのことで、セントラルリングとノースリングでは依然としてモビルスーツの運用が継続されていた。

ノレド、ラライヤ、ウィルミットの3人は、こうした状況をつぶさに観察しながら、じっとベルリの到着を待っていた。

3人には多くの使用人が与えられ、何不自由なく生活をしていたものの、いつも誰かに監視されているような気がしていた。屋敷には明らかに戦闘の経験がありそうな大柄の女性がふたり配属されていた。彼女たちはジムカーオ大佐が雇った人間だったので下手に追い出すわけにもいかない。

そこでウィルミットはこのふたりに荒れたままになっていた庭の手入れの仕事を与え、極力屋敷の中へ入れないように心掛けた。大柄のふたりのメイドは大人しくその指示に従い、蔦に覆われていた庭を切り拓いて元の美しい庭に戻していった。その様子をウィルミットは窓から監視するのを怠らなかった。

ノレド「今度さ、G-ルシファーでどこまで行けるか試してみようと思うんだ」

朝食のクロワッサンを頬張ったままノレドがいった。ノレドはサウスリングの歩いて行ける範囲は行き尽くしていた。

ラライヤ「ウーシァとエルフ・ブルックがどこの所属かわからないままうろついているのにですか?」

すっかり近衛兵の軍服が板についたラライヤが応えた。ノレドの負けず劣らずラライヤはその美貌でサウスリングの若い男性の憧れの的になっていた。

ふたりの話を聞いていたウィルミットは、治安維持を行っている人間たちの制服について文句を言い始めた。

ウィルミット「トワサンガへやって来て、あんなキャピタルの制服で人々を威圧するようにモビルスーツで歩き回るなんて、本当に配慮がなさ過ぎて眩暈がするくらいですよ」

彼女の口調が思っていたより激しかったので、ノレドとラライヤは思わず目を見合わせた。

ウィルミット「あの人たちをトワサンガの守備隊にするつもりならば、すぐに制服をあつらえればいいんです。それくらいの予算はすぐに組めると申し上げたのに、ジムカーオ大佐からは何も言ってこない。そもそも大佐自身が調査部の制服を脱ごうとしない。これじゃまるでキャピタル・テリトリィがトワサンガを侵略したみたいじゃないですか。どうもわたしはあの人というのは・・・」

ノレド「(声をひそめて)クンパ大佐みたい?」

ラライヤ「む!」

ウィルミット「(声をひそめて顔を前に出す)あの人は決して物事に無頓着な人ではないのですよ。大変頭の良い人なんです」

ノレド「悪い人なの?」

ウィルミット「それがですねぇ(椅子の背もたれに寄りかかり)そうとも断言できなくて困っているの。彼が一刻も早くフォトン・バッテリーの供給再開を目指しているのは確かで、そのための仕事も着々と行っていて、ビーナス・グロゥブからレコンギスタしてやってきた人々はクレッセント・シップで送り返し、その際にエル・カインドという方からラ・グー総裁にトワサンガと地球の状況を報告することになるから自分は急いでいるのだといわれると、そうなのかなという気もしてしまって」

ラライヤ「あ、そうか。それでトワサンガにベルリさんを早く招きたがっていて、地球には一刻も早くヘルメスの薔薇の設計図の回収を急がせていると」

ウィルミット「戦争の終結とヘルメスの薔薇の設計図の回収、それにレコンギスタ犯の引き渡し。これらの要求が通ればタワーも運航を開始したいから手伝ってくれとか、言ってることは至極まともだからこちらは言い返せない」

ノレド「でもおばさまの勘では、何か企んでいると」

ウィルミット「これでも日中仕事をしながらずっと考えているんですけどね、フォトン・バッテリーの配給再開以外に彼が何か目的を持っているかというと、それが見当たらなくて」

ラライヤ「得をすることがないんですね」

ウィルミット「(困ったように項垂れ)そうなの」

ノレドは人工的な朝日が昼のものに変わってきたのを確認すると、すっくと立ち上った。

ノレド「だったらいっちょモビルスーツで刺激してやりますか!」






ザンクト・ポルトより発進してきたモビルスーツは、トワサンガ本国守備隊ガヴァン・マグダラ率いるザックス兵団であった。すぐさまミノフスキー粒子が散布され、続いてクノッソス級戦艦1隻がポートから離岸するのが目視で確認された。メガファウナ艦内に警戒警報が鳴り響いた。

ドニエル「ステア、ここはタワーに近すぎる。敵の考えが読めんからには離れて戦う。高度はこのままで少し離れてくれ」

ステア「イエッサー」

青い地球を眼下に、メガファウナは小さく舵を切った。ガヴァン隊もそれに合わせて素早くカーブを描く。攻撃意思があるのは明白であった。10機のモビルスーツはみるみる近づいてきた。

ドニエル「メガファウナにできるだけ近づけるな。タワーがあるぞ。射撃は良く見て狙え。モビルスーツを出す。アダム・スミス、準備はいいだろうな」

メガファウナのモビルスーツデッキでは人が慌ただしく交差している。最初に動き出したのは、アイーダから機体を受け継いだルアンだった。

ルアン「G-アルケイン、出る」

グリモアもすぐさま動き出す。グリモア隊の指揮を執るのはオリバーであった。

オリバー「グリモア隊はあまり離れるな。あくまでメガファウナの守備が任務だ。続け!」

ベルリが搭乗するG-セルフもメガファウナを発艦する準備を進めていたが、ハッパがコクピットの真ん前に張り付いて機体の説明をしていた。

ハッパ「いいか、ベルリ。バックパックは姫さまの指示で全部廃棄してしまった。キャピタル・テリトリィで完璧に直したつもりだが、オレは博物館展示用だと思って整備していた。だからまだ無理はしないでくれ。機体不良でお前に死なれたら姫さまに合わす顔がなくなる」

ベルリ「わかってますって。自分ももうこれには乗らないつもりでいました。でもまずは降りかかる火の粉は払わなくちゃでしょ。ベルリ、出ます」

G-セルフがメガファウナを離れると、遠くのビームライフルの閃光がヘルメットに反射した。ザンクト・ポルトから発進したガヴァン隊は軌道エレベーターにもナットにもあまりに近い位置でビームライフルを使ってきた。タワーを背にしているのは彼らの方であった。

ルアン「タワーに当てるな。ベルリ、後ろへ回り込めるか」

ベルリ「やりますけど(G-セルフを加速させる)あの人たち、トワサンガの守備隊の人たちでしょ? タワーの重要性をわかって行動してます?」

足の速いG-セルフが素早くガヴァン1機の裏を取ってビームを発射した。威嚇のための発砲であったが、敵のパイロットはタワーを背にしたG-セルフめがけてビームライフルを撃ってきた。それは危うく軌道エレベーターのケーブルを傷つけるところであった。

ベルリ「(慌てふためきながら)ドニエル艦長! まずいですよ! トワサンガの人たち、タワーのことをわかっていません!」

ドニエル「なんだって! ダメだ! モビルスーツ隊は戻って艦に取りつけ! タワーを背にするな。クノッソスが出てきてるだ? 艦隊戦はダメだ。こんなところで艦隊戦なんかできるか。敵をタワーから引き離す。それまで不用意に撃つな。モビルスーツ隊、メガファウナについてこい!」

ベルリ「接近戦なんてやりたくないけど(モビルスーツを引きつけながらタワーから離れさせる)来るならやらなきゃいけない。姉さんからラ・グー総裁に会えって言われてるんだから!」

ザンクト・ポルトから出撃してきたクノッソス級戦艦はメガファウナを追いかけてきた。メガファウナと艦隊戦をやるつもりであるのは明白だった。敵は場所など考えずにやみくもにビームライフルを使ってきた。彼らは後方に向かってもビームを発射している。

タワーに関する知識がないことは明白だった。

ドニエル「なんだって、まだ出てきている? そいつらは味方なのか、敵なのか?」

副艦長「144番ナットからだって? 最大望遠!」

モニターに映し出されたのは盾を手にしたレクテンとレックスノーの大部隊であった。彼らは望遠モニターで確認する範囲では武器になりそうなものは持っておらず、盾を並べた部隊が前面に出て、後方の部隊がビーム拡散幕を用意してタワーに取りつけていた。

ベルリ「(G-セルフのモニターに顔を近づけ)あれはキャピタル・ガードでしょ!」

ドニエル「タワーが主砲の射程外に出たらクノッソスとやり合うぞ」

ギゼラ「敵、離れていきます。ザンクト・ポルトに近づけたくないだけのようです」

ドニエル「どうなっているんだ・・・」

メガファウナの下方から1機のレックスノーが白旗を掲げて近づいてきた。宇宙での操縦に慣れていないのか重力に引かれて危なっかしい挙動だったため、ベルリのG-セルフがそれを助けた。






レックスノーでメガファウナに接触してきたのは、ベルリの養成学校時代の同期トリーティだった。同期といっても飛び級生のベルリより年齢的には先輩にあたる。

彼はメガファウナのブリッジに連行され、質問を受けることになった。

トリーティ「お話ししたように、ゲル法王とウィルミット長官がザンクト・ポルトに上がるというので、ガードは警護のためにおふたりについていったんです。人数は数人のはずでした。ところがそのあとに同じクラウンにアーミーの残存兵力がモビルスーツを搬入していたことが明らかになって、事態が混乱したんです」

ドニエル「法王と長官はどうなされた」

トリーティ「アーミーに連行されました。彼ら反乱部隊はジュガン司令の派閥だった者たちで、特に好戦的な連中です。彼らはアーミーの解体に反対していたのですが、戦力的に弱いと感じたのか、トワサンガを追放されたハザム政権の残党と手を組んでザンクト・ポルトを目下占領中です。我々は144番ナットを掌握して、彼らを地球に降ろさないようにクラウンを完全に停めています」

ベルリ「他のナットは?」

トリーティ「(ベルリに向かって)どこに誰が潜んでいるかわからないから、いまひとつひとつ制圧中なんだ。でももうすぐ終わる」

ベルリ「母さん・・・、運航長官のことも」

トリーティ「それはすまない。わからないんだ。ザンクト・ポルトにいるのか、トワサンガにいるのかも。ただカシーバ・ミコシはザンクト・ポルトにはもういない」

副艦長「地球にいたときに聞いていた話では、アーミーの反乱者たちがキャピタル・テリトリィに残ってガードがザンクト・ポルトに上がったという話だったが」

トリーティ「(首を振って否定しながら)反乱を起こしたのはジュガン派の連中で、ザンクト・ポルトに立て籠もっているのもそうですよ。さらにマスク部隊だったクンタラたちが、ゴンドワンから購入したホズ12番艦を奪ってどこかに逃げてます。現在調査部から地球に降りてジュガン派の残党を討伐しろと命令が来ているのですが、もう自分らは調査部からの情報は信じていないんです」

ドニエル「情報を混乱させている奴がいるようだな。政府も頼りないし、キャピタルはボロボロじゃないか・・・(帽子を深くかぶり直し)いや、悪気はないのだが・・・」

ベルリ「(トリーティに向かって)キャピタルにはいまガード養成学校の生徒たちと一緒にケルベス教官どのが潜入して事態収拾にあたってますよ」

トリーティ「そうなのか。(表情が明るくなって)現在通信を切って1番から144番ナットまで制圧することを優先しているが、ケルベス教官がいてくれるなら・・・」

副艦長「クラウンというのは、ザンクト・ポルトから運行させられるのかい?」

ベルリ「ムリです。命令には優先順位がありますから」

トリーティ「それに、144番ナットで全部停められます。こうした事態も考えられた上で訓練も受けていますから。連中がクラウンを使って地球に降りるのは我々が絶対に阻止するつもりです。ただ連中は、戦争を仕掛けてきている。そうなると我々では防ぎきれないかもしれない。タワーだけは絶対に壊させないつもりですが・・・。でもケルベス教官が指揮を執ってくれるならぼくらにも・・・」

ベルリ「そうですよ、先輩!」

メガファウナはいったん高度を下げて144番ナットに入港した。回線を回復させるとケルベス・ヨーの元気そうな顔が映し出され、地上とビクローバーの混乱はひとまず収拾したとの連絡があった。

ケルベス「こちらで装備のすべてを員数管理してみたのだが、クラウンでザンクト・ポルトに上がった連中の他に、戦艦2隻とカットシーを奪っていった連中がいるはずだ。ホズ12番艦を追いかけていた奴らだと思う。あいつらはおそらくゴンドワンの潜入部隊だろう」

トリーティ「自分らはギニア高地の戦いに参加しておりませんので、何とも・・・」

ジュガン派との防衛戦が144番ナットだと分かったことで、ケルベスの判断によりクラウンは地上と144番ナットの間のみで運航を開始した。ケルベス自身もすぐさま144番ナットまで上がってくることになった。ケルベスが来るとわかった瞬間、ガードの隊員から歓声が上がった。

複雑だった状況は一部がほぐれたものの、まだまだ分からないことはたくさんあった。

それらを解き明かすためにも、メガファウナは月を目指す必要があった。





ビーナス・グロゥブのラ・グー総裁が、ピアニ・カルータ事件に絡む全問題が解決されるまでフォトン・バッテリーの供給を停止するとの意向を示したと法王庁が発表してから、トワサンガのハザム政権が打倒されるまで、わずか4時間しかかからなかった。

レイハントン家の滅亡にドレッド将軍が関わっているとの噂はすぐに拡がった。レコンギスタ作戦の生き残りのみならず、ハザム政権に関与していたすべての人間が槍玉に挙がり、トワサンガ政府関係者とドレッド軍の生き残りは本国守備隊であるガヴァン隊に守られ、命からがらザンクト・ポルトに逃げてきたのであった。

ハザム「(疲れ切った表情で)いつになったら地球に降りられるのだ?」

ガヴァン「うるせぇ、ジジイは黙っていろッ!」

トワサンガ本国守備隊元隊長ガヴァン・マグダラは、縛り上げられ横倒しになったトワサンガ元首相ジャン・ビョン・ハザムの横腹を蹴り上げた。恰幅のいい紳士だったハザムは、無精髭が伸び、どこにでもいる無能な老人と何ら変わらない風体になり下がっていた。

ガヴァン「腹が減ったの、クソがしたいの、何もできねぇくせに文句ばっかり垂れやがって。備蓄には限りがあるんだよ。ここがトワサンガじゃないっていつになったら理解できるんだ、ああん?」

ハザム「だが」

ガヴァン「だがとか言ってんじゃねーー!」

ガヴァンはなおも老人を蹴り続けた。政治家は身分を追われると普通以下の人間になり下がるとはいえ、あまりに酷い仕打ちであった。トワサンガ本国守備に人生を賭けてきたガヴァンにとって、本国の民衆に石を投げられながら撤退せざるを得なかった事態は、心に大きな傷を負う出来事であった。

隊員A「メガファウナは144番ナットに入港しました。タワーを奪わない限りレコンギスタできません」

ガヴァン「そんなこたーわかってる! クソッ、レコンギスタさせてやるだの、キャピタル・テリトリィで仕事をやるだの言いながら、アーミーの連中、オレたちに代わってトワサンガに行きやがった。(机をドンと叩き)オレたちは嵌められたんだ」

隊員A「(敬礼し)クノッソスで大気圏突入できない以上、全力でメガファウナを奪ってみせます」

ガヴァン「メガファウナがダメなら144番ナットにいるキャピタル・ガードと戦争だ。自分らが使えないタワーなんぞ知ったことか。死ぬまで戦い抜いてやる」

ガヴァンは腹いせ紛れにまたしてもハザムの横腹を蹴った。






144番ナットに集結したキャピタル・ガードの精鋭は、モビルスーツこそレクテンとレックスノーのみであったが、タワーの緊急時における対応には長けていた。彼らが緊張しているのは、戦争の経験がまるでない隊員ばかりであったためだ。

それに彼らはザンクト・ポルトにアーミーがいるとまだ思っていた。ガードはケルベスに従ってメガファウナに乗り込んだ一部を除いて戦争経験に乏しく、アーミーを怖れていた。

実際のところガードに紛れて上がってきたジュガン派のアーミーは、すでにカシーバ・ミコシを使ってトワサンガのシラノ-5に移動していたのである。

ベルリ「(水分を取りながら)ケルベス教官と合流するまで2日かかりますね」

副艦長「敵がタワーのことを何とも思っていないのは厄介ですな。キャピタル・アーミーというのはそういう教育は受けていないのかな?」

ベルリ「まさか! アーミーといっても急ごしらえで、ガード養成学校の卒業生ばかりですから、タワーが神聖なものだってことは理解しているはずです。その証拠にアーミーは出てきてないですし」

副艦長「アーミーはもういないってこともありますね。カシーバ・ミコシがないのなら、連中と入れ替わりで法王と一緒にトワサンガへ行ったのかも。」

ドニエル「そうだなぁ。ジュガン司令というのはもう死んだのだろう?」

ベルリ「はい」

ドニエル「じゃあ、ジュガン派というのは誰の指示で動いているんだ?」

ギゼラ「(話に割って入り)ちょっと見てください。月の縁のところの突起。月の後ろに何か大きなものがあるんじゃ」

ギセラが指さしているのはメガファウナのメインモニターに映っている月であった。

副艦長「モニターもっと拡大できないの?(クルー全員が目を細めてモニターを見つめる)」

ギゼラが月の画像をさらにアップにしてメインモニターに映し出した。拡大してみると確かに月の裏側に何かがあってほんのわずか突起のように突き出している。

ギゼラ「(モニターを指さしながら)あれってもしかして、フルムーンシップじゃ?」

ドニエル「(大声で)ああーーーーーーッ! んな、どうする、ケルベス中尉を待ってられないぞ」

副艦長「フルムーンシップがあればどこへだって行けますからねー」

ドニエル「総員、緊急発進準備、急げ! フルムーンシップを奪いに行くぞ!」

月の裏側にフルムーン・シップの姿を発見したメガファウナは、艦内にけたたましく緊急通報を流して発進の準備を開始した。







メガファウナの急な動きはザンクト・ポルトにいるガヴァン隊もキャッチした。軽食を口にしていたガヴァンはそのゴミをダストシュートに投げ入れるとすぐさまパイロットスーツにヘルメットを被せ、足元に転がっているジャン・ビョン・ハザムを一瞥した。

その彼にブリッジから指令が伝えられた。

隊員B「メガファウナ、144番ナットから出ようとしています!」

ガヴァン「クノッソス、2隻とも出すぞ! 全員乗艦! 遅れるな!」

ガヴァンはジャン・ビョン・ハザムを担ぎ上げてモビルスーツデッキまで運ぶと、そのまま船外に投げ捨てた。縛り上げられたハザムはもがきながらザンクト・ポルトの住人に受け止められた。

船が出ると知った住人たちは急いでハッチを閉じていく。彼らはガヴァンに恫喝されて、物資を強制徴収されていたのだ。ザンクト・ポルトの住人たちの冷たい視線は、トワサンガで彼に石を投げつけてきた民衆と同じ眼をしていた。

ガヴァン(なんでオレが厄介者になっているんだ? 職務に忠実だっただけじゃないか。オレはマッシュナーやターボ・ブロッキンみたいなドレッド将軍の犬じゃない。なのになんでみんなオレを拒むんだ? なぜオレたちは国を追われた?)

隊員A「全員乗艦確認。出します」

ガヴァン「いいか、メガファウナは生け捕りにするんだ。絶対に沈めたらダメだ。もうオレたちに故郷はない。新天地に降りない限り、オレたちに明日はない。もうトワサンガにオレたちの居場所はないんだ!」

キャピタル・タワー最終ナット、ザンクト・ポルトから2隻のクノッソスが出撃した。


(アイキャッチ)



この続きはvol:30で。次回もよろしく。















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