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「Gレコ ファンジン 暁のジット団」vol:10(若き4人が理想とするもの) [Gのレコンギスタ ファンジン]

「ガンダム Gのレコンギスタ」のブログ内同人誌「暁のジット団」vol:10をお届けします。

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ビーナス・グロゥブでスペースノイドの再入植が喫緊の課題となっていることを知ったアイーダとメガファウナの面々は、事情の複雑さを胸にしまい、地球への帰路についた。

地球に近づくにつれ、ドレッド軍、ジット団らのレコンギスタ派の活動が活発になり、また大陸間戦争も依然として続くなかでの大気圏突入になった。各団体入り乱れての攻防の末、アイーダは自分の名を使って各自に停戦を呼びかける。

この戦いの中で、レイハントン家の当主をクーデターで殺害したドレッド将軍、愛人を殺されなかば狂ったマッシュナー、アースノイドの結集を訴えレコンギスタ派と戦争しようとしていたグシオン・スルガン、アメリア大統領ズッキーニ、すべての元凶クンパ大佐など旧世代の主要な人物が死んでいく。

その前にはカーヒル、デレンセン、キア・ムベッキも死んでおり、それぞれの派閥で交戦的な人間はあらかた死んでいるといってよい。そのすべてにG-セルフが絡んでいる。

こうして物語は終わりますが、生き残った4人の若者たちが何を見つけ、このあとに何を成そうとするのか考えていきたいと思います。4人に託されたものを考えることで、死んでいった旧世代が何を成そうとしていたのか考えれば、より理解が深まるはずです。


*ルイン・リーの階級闘争

第1話から優等生でベルリの善き先輩であったルインは、クンパ大佐に見出され、競争による身分差別の破壊が可能だと教え込まれることで、自らを簡易的な強化人間マスクに変え、キャピタル・アーミーを踏み台に出世を志すようになります。

果敢な突撃精神で信頼を得た彼は、クンタラだけの部隊を結成し、徐々に野望に目覚めていきました。

ルインは政治状況を利用して戦艦の乗っ取り、カシーバ・ミコシの乗っ取り(表向きは法王の救出)、軍の乗っ取り、領土の簒奪など様々な試みをしますが、そのたびにベルリに行く手を阻まれ、最後はベルリを殺すことだけが目的となっていきました。

マスクキャラであった彼はファーストガンダムのシャアを意識したキャラですが、それはガンダムに様式を持ち込む製作側の都合であって、負わされた役割はシャアとはまったく関係がありません。彼が負うべきなのは、階級闘争なのです。

彼が望んでいたのは、組織の中での一個人の出世だけではなく、クンタラ全体の身分制度からの解放でした。ベルリが憎くてしょうがなかったのは、マスクの副作用もあったでしょうが、ベルリというレイハントン家の御曹司であり、タワーの運航長官の息子であり、飛び級生という支配体制を象徴するような存在への嫌悪です。嫌悪がマスクによって憎悪に変わったのでした。

ベルリを独裁者になり得る血筋とまで断じて憎悪しますが、当ファンジンではそれは簡易強化人間になっていた彼の感情の暴走と捉えています。それより大事なのは、彼がクンタラ部隊を作ったこと、クンタラのために殉教者になっても良いと思い定めていたことなどです。

彼の生涯のテーマは、階級闘争だと定まったのです。優等生は、マニィという仲間を得て、社会に階級闘争を仕掛ける何者かになった。そう思って最後の彼を見ると、ただ旅をしているのではなく、クンタラのための新しい国を作ろうとしているテロリストのようにも見えてきます。

ルインが望んでいるのは、身分制度のない理想の世界です。



*クリム・ニックの覇権主義

天才クリムが旅で得たものは、世の中には奪えるものがたくさんあると知ったことでした。クリムの面白いところは、誰にも変に感情移入せず、他人を自分に寄せてこようとするところでした。多少甘えたことをいうのは戦友でもあるミック・ジャックのみ。彼女にだけは心を許していたのでしょう。

他者に思入れを持つことを嫌っていたのは、自分が大統領の息子ということで、利用される恐れを抱いていたからではないでしょうか。天才とおだてられていたとき、逆に自分を天才と呼ばせようとしていたところなど、自己陶酔よりもっと厳しい気持ちを感じたものです。

彼は一貫して目の前の勝利にこだわりました。彼の戦歴は勝ったり負けたりでしたが、あまりやる気のない艦長の下にいながら、常に何かを奪うチャンスを窺っていたのです。

ルインがすぐに何かを得ようと焦るのに対し、クリムは奪う練習をしているように感じました。勝っても負けてもあっさりしており、ルインのように悔しくて臍を噛むような描写はありませんでした。まだ若く、大統領の息子でしかないと自覚する彼は、すべてが練習だったのでしょう。

では何を目指し、望んでいたのか。彼は明らかに多くの人間を率いて責任を果たす練習をしていました。腹を立てるのはいつも自分に対してだけ。最後に父の演談を邪魔して逃走しますが、彼はアメリアの大統領を目指していたのでしょうか。

才気溢れる彼は、アイーダの父グルシオ・スルガンに似たものを感じました。庶民の代表としてお飾りの大統領としてではなく、もっと実質的に人々を率いて何かを成したい野望があり、そのために常に自分を高め、修練に励んでいたのでしょう。

自分にはアイーダが大統領を目指す立場になり、クリムがグルシオの立場に近くなるように感じました。彼の覇権主義は、アメリア主導で戦争を終結させ、地球と宇宙双方を善導することを目的としており、覇権主義はあくまで紛争終結の手段に過ぎないと割り切っていると考えます。

クリムが望んでいるのは、政治的統一がもたらす理想の世界です。


*アイーダ・スルガンの協調主義

ヘルメス財団幹部の血を引き、アメリア軍事総監の子供として育てられ、多くの人間に姫と慕われる彼女は、望む望まないに関わらず政治の世界で役割を果たすことになるでしょう。

彼女は父のように軍事総監として大陸間戦争を遂行することは出来ないでしょう。彼女はその共感する力の強さから、スペースノイドの再入植が喫緊の課題だとよく承知しています。本当ならレイハントン家の跡取りにでもなってヘルメス財団とともにレコンギスタを抑え込みながら再入植計画を実の父から引き継いでも良いのですが、アメリアでの立場が大きく、それができません。

彼女はアメリア人としてはスコード教にも理解があり、誰ともちゃんと話ができる立場にあります。ドレッド家を失ったトワサンガとの関係も彼女なら構築できるでしょう。ビーナス・グロゥブも同様です。彼女の最大の武器は育ちの良さそのものといっていい。

戦争の続くアースノイドとスペースノイド双方を理解し、誰にも肩入れをしない彼女は、協調主義をもって自分の役割を果たすしかありません。

協調主義者の仕事は、双方の利害調整です。これは政治家にしかできない仕事であるため、彼女は政治を志すことになります。クリムとは親の役割から逆転するわけです。レコンギスタの芽は一応すべて治まって終わっていますが、全員が納得する利害調整は難しく、困難が予想されます。

また彼女は政治を志しても新人議員から始めなくてはなりません。

アイーダが望んでいるのは、双方が譲り合う協調による理想の世界です。


*ベルリ・ゼナムの相互理解

物語のラストでベルリが世界を旅して周っているのを見たとき、最初は己の見識を高めるための旅だと思い、そう感想にも書きました。しかし、同じようにルインも旅をしていたことや、Gレコの世界観の理解が進んだことで、いまは別の目的で動いていたのではないかと考えるようになりました。

バカな言動にも関わらず飛び級生で頭の良い彼は、スペースノイドの再入植場所を探していたのではないでしょうか。ヘルメス財団の幹部であるレイハントン家の跡取りとして、再征服(レコンギスタ)を諦めさせる重要な手段は、早急に再入植計画を策定することです。

スペースノイドの迅速な再入植を進めることが、ひいてはアイーダのサポートにもなります。そこで彼は、環境回復が進み、実り豊かな大地を探して回っていたのです。ここでも彼は、クンタラのために豊かな大地を探しているルインとバッティングしてしまうのです。

ルインは金星には行っていません。彼はムタチオンの深刻さや、スペースノイドが辛抱強く宇宙で暮らしながら地球環境の回復と再入植を待っているとは知らないのです。彼は虐げられたクンタラのために、クンタラが豊かに暮らせる新しい国家の建設を目指している。でもそのような土地は、ベルリの立場ならばスペースノイドの再入植場所にしたいのです。

ベルリにはタワーの運航長官の息子として、アメリアの有望な議員の弟として、レイハントン家の次期当主として、ヘルメス財団の幹部として、ガンダムの操縦者としての立場があります。一方でルインには何もありません。ルインにあるのは恋人のマニィだけです。

この運命に気づいたとき、ファーストのラストシーンや逆襲のシャアのラストシーンで描かれた相互理解の可能性が隠されていないはずがないとわかったのです。G-セルフのコアファイターコクピットがサイコミュ搭載で、νガンダムが起こした奇跡と関係があるとする考察には反対もあるでしょうが、人間同士の相互理解を描かない富野ガンダムなどあるのかという話です。

ベルリが望んでいるのは、人間同士の相互理解の先にある理想の世界です。



「Gレコ ファンジン 暁のジット団」vol:10は以上になります。

今回の考察で、ベルリとルインの関係や、アイーダとクリムの関係の理解がより深まってくれたのなら幸いです。

協調と覇権、どちらも平和をもたらす手段です。どちらが優れているということはないですし、どちらにも悪い点はあります。階級闘争と相互理解は、どちらも大切です。一方のために一方を諦めることなど出来るはずもありません。

「ガンダム Gのレコンギスタ」は、これらの運命を背負った4人の子供たちが、自分の運命を想い定めた物語でもあります。

この続きはvol:11で。次回もよろしく。



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