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「ガンダム レコンギスタの囹圄」第20話「残留思念」前半 [Gのレコンギスタ ファンジン]

「ガンダム レコンギスタの囹圄」


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第20話「残留思念」前半



(OP)


ノースリングの上部に隠された薔薇のキューブから出撃したザム・クラブは、その巨躯を躍らせてラライヤのG-アルケインに迫った。

突如出現した奇妙な形のモビルアーマーに驚いたラライヤは、そのコクピットに座っているのが正気を失ったバララ・ペオールであることを知った。バララは人としての意識を失っているのに、人としての機能が最大限に発揮されている状態だった。

何が彼女を動かしているのか、操っているのか、ラライヤにもバララにもわからなかった。

ザム・クラブは卵を海に放出するかのようにファンネルを機体から撃ち出した。G-アルケインは囲まれないように移動しながら姿勢を制御してひとつひとつ撃ち落としていく。だが数が多すぎて徐々に対応できなくなり、直撃を喰らうようになった。

上体をエアバックで守られながらラライヤはサウスリングへと後退していった。代わりに貨物用ハッチから飛び出してきたのはベルリのG-セルフだった。下がりながらも射撃を続けるラライヤを、ターンXのケルベスが制止した。

ケルベス「もういい。あとはベルリに任せるんだ、ラライヤ」

ケルベス「バララさんです。バララさんが生きています」

ケルベス「バララ・ペオール? 彼女はユグドラシルで死んだはずだ。それより落ち着いて聞いてくれ。この事件の黒幕は法王庁だ。ゲル法王をトワサンガへ亡命させるところからすべて彼ら主導で現在まで進んでいる。この戦争は地球に生配信されて、オレたちはお尋ね者になっているそうだ」

ラライヤ「(ふうと息をついて正気に返り)こんなにミノフスキー粒子が濃いのに、地球まで電波なんか届かないですよ」

ケルベス「これはオレの推測だが、電波以外の何らかの波長に映像を乗せて、シルヴァーシップで中継しながら地球に送っているんじゃないだろうか? 最初から彼らは先手を打ってきていて、こっちは状況に踊らされるばかりだった」

ラライヤ「(驚いて)じゃあ、宇宙世紀復活派というのが法王庁?」

ケルベス「おそらくな。認めたくはないが。戦争は資源とエネルギーを浪費する。それは地球では枯渇している。宇宙で暮らす者は、それらを地球に提供する。戦いの中で人類は進歩して、宇宙世紀の時代に戻っていく。だが・・・」

ラライヤ「いったい何のために? そうか! 進歩はしたいけど、進歩した地球人類が宇宙に進出してくるのは嫌なんだ。だから、資源とフォトン・バッテリーの技術だけは絶対に手放さない」

ケルベス「そういうことだから、ラライヤはサウスリングに撤退してくれ。オレはこの機体でシルヴァーシップを叩いて中継を途切れさせる!」

G-アルケインとターンXは入れ替わりになってラライヤはサウスリングへと撤退した。

アイーダは脱出艇が並ぶデッキで学生たちと話し合っていた。機体を降りたラライヤは彼らの輪の中に加わった。戦闘は続いており、とても脱出艇を出せる状況ではない。かといってシラノ-5の重力装置は全停止したままであった。

ラライヤ「話はケルベスさんから聞きました」

アイーダ「まさか法王庁が宇宙世紀復活派で地球を進歩の囹圄にするつもりとは考えもしませんでした。しかしそんなことをして一体地球から何が奪えるというのでしょう? 貨幣価値で得られる快楽? わたくしはアメリアの名誉を回復するためにも地球に戻らなくてはならなくなったのです」

学生A「先ほどから姫さまと議論していたのですが、地球を人間進化の実験場にして封じてしまうのはおかしいのですよ。資源とエネルギーはスペースノイドの労働によって賄われます。法王庁自身が働かないにしても、無駄が多すぎる。ぼくはこれはもっと前からあるイデオロギー対立の具現化だと考えます。ディアナ・ソレルのお伽噺は決してムーンレイスは悪役じゃない」

ラライヤ「そうか。レイハントン家はやはりムーンレイスを味方と考えていた!」

アイーダ「それについてはディアナさんから重要なお話を聞いているんです。アメリアへ戻ってある人物のお墓へ行けば、何かがわかるかもしれない」

学生のリーダー格の青年は、自分をジル・マナクスと名乗り、メガファウナに同乗してアメリアへ向かうことになった。

ラライヤ「わたしは宇宙に残ります。まずはここを脱出しませんと」







ターンXを得たケルベスは、その機体性能に大きな手ごたえを感じていた。ターンXのモニターに出現する文字を読めない彼は、望遠で戦闘地域から外れたところで滞空するシルヴァーシップを見つけ、ターンエックスで攻撃を仕掛けた。

背部ウェポンプラットホーム・キャラパスが唸りを上げ、シルヴァーシップにあらゆる攻撃を仕掛けていく。ビームライフルを引き抜いたケルベスは、凹凸のない船体から射出口が出てくる一瞬の隙をついて正確にビームを命中させ、船を撃沈した。

他に通信の中継をしていそうな船体が見当たらなかったため、彼は機体を振り向かせると、ベルリの助太刀に戻った。彼はザム・クラブのファンネルを蹴散らし、カブトガニのような機体に体当たりをかますとそのまま敵の動きを封じた。

ザム・クラブは急加速してターンXを振り落とそうとしたが叶わず、急減速した一瞬の隙をベルリのG-セルフに狙われた。すでにファンネルのほとんどはG-セルフに撃墜されていた。

ベルリ「バララさんは前に戦ったときとまた違う。あのときは憎しみで一杯だったけど、いまは空っぽになってしまっている」

ファンネルを失ったザム・クラブを援護するかのように、トワサンガのモビルスーツが大挙して押しかけて来た。

ラライヤのG-アルケインも再び戦闘に加わり、サウスリング周辺は上方の艦隊戦とは違ってモビルスーツ同士の戦いの場となっていった。

シラノ-5のリングの回転は止まってしまっていた。これはベルリも知らない機能によってG-セルフが勝手に行ったものであった。リングの回転が止まったことによってシラノ-5全体が重力を失っていた。各リングからは多くの脱出艇が宇宙空間へと飛び出しており、宙域は大混乱の様相を呈していた。

それを見たムーンレイス艦隊は徐々に攻勢を強め、オルカ数隻がシラノ-5の港へと強制着艦しつつあった。トワサンガのシルヴァーシップは後退して宇宙の闇の中へ消えようとしていた。

ところが、である。突如シルヴァーシップは攻撃目標を変えた。

シルヴァーシップの大軍はノースリング上方まで辿り着くと船首を下方に向け、民間人が乗った脱出艇めがけて射撃を開始した。武装していない脱出艇はシルヴァーシップのメガ粒子砲に船体を貫かれて、次々に炎上していった。

シルヴァーシップは民間人の虐殺を開始したのだ。

戦場になすすべなく殺された者たちの思念が渦巻いた。

恐怖が空間を支配していった。

ケルベス「しまった! あいつらは自分たちがやっていることをこちらになすりつけようとしている連中だ。民間人への攻撃もこちらのやったことにされてしまうぞ!」

ベルリ「教官!」

ケルベス「おう!」

G-セルフとターンXは一気に加速して、サウスリング以外から出てきた脱出艇の前に入り、シルヴァーシップを攻撃した。G-セルフは青い光に包まれ瞬間移動するかのような加速をすると出力が最大となったビームサーベルでシルヴァーシップを撃沈させた。

さらにケルベスが搭乗したターンXもその性能をフルに発揮し、キャラパスが次々に攻撃を仕掛けると機体がバラバラに分解され、オールレンジ攻撃でシルヴァーシップを破壊していく。そこにオルカの艦隊も加わって一方的に押されたシルヴァーシップはさらに後退した。

2機は敵を押しのけたが、戦艦のメガ粒子砲は止むことなく脱出艇を撃ち落としていいった。

ベルリたちの背後で炎が消えることはなかった。

ケルベス「ダメだ、他のリングの脱出艇は全滅だ」

ベルリ「どうしてなんだーーーー!」

そのときだった。シラノ-5の頭についていた資源衛星で巨大な爆発が起こり、周囲に拡散していく砂粒の煙の奥から真四角な箱に球体をくっつけたような物体が出現した。

ケルベス「あれが・・・」

ベルリ「薔薇のキューブ!」

それは、シラノ-5やビーナス・グロゥブにおいて、統治者にすら秘匿されていた宇宙世紀の遺物、薔薇のキューブだったのだ。側面に刻まれた巨大な薔薇の紋章はそれがヘルメス財団のものであることを示し、球体の下部についた巨大なノズルはそれが惑星間移動船であることを物語っていた。

ベルリ「これで・・・、これに乗って宇宙の果てから地球に戻ってきたのか! 行く先々で戦争の種を撒き散らしながらッ!」

薔薇のキューブは、惑星間移動船であると同時にとてつもなく巨大な移動式のスペースドックでもあった。生産設備を兼ね備え、人間を生存させ、人間同士を戦わせるものなら何でも生産できる設備なのだ。人間はこれに乗って外宇宙まで進出し、数百年も戦い続けた。

薔薇のキューブはゆっくりとシラノ-5から離れていった。破壊されずに残ったシルヴァーシップも合流し、正六面体の前面に2重の円を描くように布陣した。彼らはゆっくりゆっくり後退し、宇宙世紀時代のスペースコロニーの残骸に近づいていった。

シルヴァーシップの大艦隊が後退したことで、ムーンレイス艦隊は難なくシラノ-5に入港していった。作戦は成功したものの、これでトワサンガを取り戻したと言えるのかどうか疑わしかった。きっと法王庁はアメリアとムーンレイスがトワサンガを乗っ取ったと宣伝するだろう。

それはすでに放送されたかもしれないのだ。

戦闘はいったん休止状態となった。敵は攻撃を仕掛けてこず、ムーンレイスたちはシラノ-5に入っていく。メガファウナはサウスリングの脱出艇を守るように貨物用ハッチを離れて、ラトルパイソンと合流すると月に向かって移動していった。

MS隊はしばらく薔薇のキューブの出方を監視していた。ターンXがベルリのG-セルフの肩に手を置き、接触回線を開いた。

ケルベス「あのカブトガニみたいなMAは撃墜されたのか?」

ベルリ「そういえば、ラライヤ・・・」

ふたりの元へ1機のグリモアがやってきた。それにはアイーダが搭乗していた。

アイーダ「大変です! わたしたちの目の前でアルケインがカニみたいなのに捕まってそのまま・・・」

ベルリ「ラライヤが誘拐された!?」







サウスリングの貨物デッキはちょうど薔薇のキューブの死角になっていた。

生き残ったのはサウスリングの脱出艇だけであった。

彼らをムーンレイスの月基地に送り届けたメガファウナとラトルパイソンは、再びこの場所へ戻ってきていた。アメリアの2隻の前には、ディアナ・ソレルの旗艦ソレイユも停泊している。

メガファウナの艦橋にはディアナ・ソレル、アイーダ・スルガン、ベルリ・ゼナムが集結して今後の話し合いに挑んだ。

アイーダ「法王庁が敵で、彼らの名前で地球に偽の情報が発信されたのなら、わたくしはすぐにでもアメリアへ戻らねばなりません。そしてなぜ法王庁が今回の件の黒幕のような動きをしているのか、ヘルメス財団の真の目的とは何なのか、すべて暴かねば地球は常に戦争が起こる危うい世界になってしまいます。それは絶対に阻止しなくてはならない」

ディアナ「アメリア軍の総監だというアイーダさんが、現在の地球に戻ればおそらく大変な非難を浴びましょう。それでも行かれるというのですね?」

アイーダ「それはやむなきことです。政治家なら覚悟のこと」

ベルリ「ぼくはここに残ります。多くの人を死なせてしまって、もう王子なんて名乗る資格はないけれど、それでもぼくは生き残ったサウスリングの人たちを元の生活に戻す義務があると思うし、連れ去られたラライヤのこともある。それに気づいたんですけど、G-セルフやG-メタルには隠されていることが多すぎる。姉さんのことは心配ですけど・・・」

アイーダ「心配には及びません。大丈夫です」

ディアナ「ウィルミット長官の協力で月面基地について多くを知ることが出来まして、レイハントン家は我々にたくさんのものを託していると分かりました。ムーンレイスは月の守護者としてこれからも生きていく所存ですので、トワサンガのことは不幸な出来事も考慮して、宙域を明け渡せとの要求は撤回させていただきます。ただ、あの薔薇のキューブを倒すまでは、ここは基地として使わせていただかなくてはいけませんし、ベルリさんの協力がなければ成し遂げられないことも多いでしょう」

アイーダ「地球と月で戦力を分散する必要があるのですが、どうお考えでしょうか」

ディアナ「本来ならば全軍で薔薇のキューブを叩いてから地球に降下して状況を説明すべきでしょう。しかし、地球がもし反アメリアで結託し、ハリーの報告にあったように敵側にモビルスーツが供給されていたならば、最悪、フォトン・バッテリーが尽きるまで戦い続けることになる。対立の火種が燃え盛ってしまっては、鎮圧するのに武力が必要になる可能性もある。こちらから縮退炉の技術を提供させていただくこともできるのですが、それには・・・」

アイーダ「反対なんです。いずれ話し合わねばならないでしょうが、宇宙世紀時代のイノベーションの産物を再び地球に持ち込んでエネルギーが供給過多になった場合、人類がどのように考え、行動するかまったく読めません。もしかすると、エネルギーを消費させるためだけに戦争を続けさせようと考えるかもしれない。フォトン・バッテリー供給に頼って生まれた秩序を破壊して、そのあとの秩序をどう作ったらいいのかわたしたちには残念ながら知恵はないのです」

ディアナ「だとすれば、地球を再びクンタラの時代にしないためには、フォトン・バッテリー供給システムは維持すべきでしょうし、クレッセント・シップとフルムーン・シップを無事にビーナス・グロゥブへお返ししなければいけない。まどろっこしい気もしますが、この件でわたくしが口を挟むのはよしておきましょう」

アイーダ「そこで・・・、心苦しいのですが、ディアナ閣下の親衛隊をお貸しいただきたいのです」

ディアナ「ほう」

アイーダ「アメリアと敵対するゴンドワンのルーン・カラシュ、それに薔薇のキューブから新たに供給されたMSともにアメリアのグリモアやキャピタル・テリトリィのレックスノーでは太刀打ちできません。新しい機体を生産することもできないのが現状でして・・・」

ディアナ「スモーを提供するのではいけないのですか? あ、そうか。文字が違うのですね。ユニバーサル・スタンダードというものに統一されたとの話もお伺いしております。G-セルフをこちらに留め置くわけですから、見返りは考えますが、残った戦力で薔薇のキューブを叩けるかどうか」

アイーダ「メガファウナを丸ごと宇宙に置いていきます。お借りしたいのは、最も閣下の信頼が厚い親衛隊と、ターンXです」

メガファウナを置いていくとの話が出たとき、ブリッジにいたドニエル以下クルーの面々は深く溜息をついてうつむいてしまった。モビルスーツデッキでスピーカーの傍に陣取り耳を澄ませていたハッパなどは力なくその場にしゃがみこんでしまった。

ハッパ「いつまで戦い続けなきゃいけないんだ? 休暇は?」

ブリッジでは話し合いが続いていた。

ディアナ「ターンXは承知しました。パイロットのケルベス中尉も一緒ですね。それにキャピタル・タワーを奪還するためのガードの方々とそのレックスノー」

アイーダ「これでギリギリなんです。どうか・・・」

ディアナ「わかりました。もしそれだけの戦力をアメリアへ回すのならば、我々はクレッセント・シップとフルムーン・シップの守備に割く戦力がなくなってしまう。ハリーは最も信頼すべき部下ですので、それをお貸しするというのであれば、あの2機の価値はわたくしどもではわからないということもありますし、ともにアメリアで預かっていただきたい」

アイーダ「クレッセント・シップとフルムーン・シップをですか・・・。それは責任重大ですけど・・・、確かにビーナス・グロゥブにお返しする期日が決まっているわけですし、月に置いていて何があるかわかりませんね・・・。了解しました。クレッセント・シップとフルムーン・シップはこのアイーダ・スルガンが責任をもってお預かりいたしましょう」

ベルリ「ということは、クレッセント・シップとフルムーン・シップをビーナス・グロゥブに返却するまでにあの薔薇のキューブをやっつけなきゃいけないってことになる」

アイーダ「どちらにしてもフォトン・バッテリーの余裕はありません。短期決戦ですべてのケリをつけなければ!」

ベルリ「わかりました。姉さん、気をつけて」

アイーダ「希望的楽観的すぎると言われるやもしれませんが、もしことが解決されたならば、地球のすべての戦力を率いて援軍に参ります。それだけのことを成し遂げる意気込みと覚悟はこの胸の中に」








旗艦ソレイユへ戻ったディアナ・ソレルに、ハリー・オードが近づいてきた。

ハリー「お話は伺いました。自分を地球へ派遣するとか。よろしいので?」

ディアナ「(ハリーを近づけ耳打ちをする)あなたもディアナさまのお墓には行っておきたいのでしょう? それに、姫さまが知っておられる外宇宙へ脱出した文明存続派が絡んでいるのは確か。今後のためにもその手掛かりが欲しい」

ハリー「(声を潜め)ロランとともにアメリアのどこかに隠棲した際に何かを隠された可能性が?」

ディアナ「加えて地球の状況など。あとから戻ってきた外宇宙脱出派の内部分裂には、文明存続派と文明リセット派の対立があるように思えてならない。しかし彼らは多くの点で一致しているようにも見える。なぜいまになって対立したのか。少しでも手掛かりがあるのなら」

ハリー「アメリアへ行くのは500年ぶりですか。何もかも変わっておりましょう。彼らが連れて行ったリックとコロンが生きてりゃいいのですが」







ケルベスがメガファウナのブリッジからラトルパイソンに戻ると、彼が連れてきたキャピタル・ガードの兵士たちが駆け寄ってきた。

トリーティ「どうでしたか?」

ケルベス「地球へ戻ることになった。どちらにしてもあんなデカブツ相手ではレックスノーは役に立たん。(両手を上げ)代わりのMSの提供もなしだ。ただあのターンXだけは使えるぞ。曰く付きらしいが、壊れるまで頑張ってもらうしかない」

教え子A「タワーは取り返せるでしょうか?」

ケルベス「最後には取り返すさ。しかし、クレッセント・シップとフルムーン・シップを地球帰還組で預かることになったし、ザンクト・ポルトを少し見て、敵が完全制圧しているようならいったんはアメリアだ。それは覚悟しておけ。しかし最後には必ず取り返す!」

教え子B「ジムカーオに寝返った連中は一体どんな奴らなんだ!」

ケルベス「マスクの仲間だった連中だろうな。クンタラだよ。結局、キャピタル・テリトリィに根強く残っていた差別意識が、こういう事態を引き起こしたともいえる。ガードの中にもマスクへの賛同者は予想以上にいたということさ」







ラライヤが薔薇のキューブに拉致されたとの話を聞いたノレドは力なく床にへたり込んだ。

ウィルミット「外はそんなことになっていたのですか?」

ゲル法王とリリン、それにノレド、ウィルミットの4人は冬の宮殿で情報解析の作業を続けていた。冬の宮殿は月の奥深くにあるために、激しい戦闘のことは冬の宮殿が同時録画した映像でしか知らなかった。それにはラライヤのことも薔薇のキューブのことも映っていなかったのだ。

兵士「ついては皆さまは引き続き作業をしていただきたいとのことでございます」

ウィルミット「もしアイーダさんにお時間があるなら、こちらにお越しいただきたいのですが」

アイーダ「もうお越しさせていただいております」

アイーダの姿を見るなり、椅子から飛び降りたリリンが駆け寄って両手を差し出した。戸惑うアイーダに、ウィルミットが説明した。

ウィルミット「いま宇宙世紀初期の映像を分析しているのですが、ロックが掛かっているものがあって、それを解除するのはもしかしたらG-メタルというものとレイハントンコードじゃないかと話し合っていたところなんです」

アイーダ「ああ、これですか」

そういうと彼女は首から下げていたG-メタルを取り出し、紐を外して小さなリリンに預けた。受け取ったリリンはそれを細長い窪みに差し込んだ。キュルキュルと音が鳴り、コンソールから弱い光が伸びたので、アイーダはその光に眼をかざした。

すると、1秒ほど再生されたところで止まっていた映像が流れ出した。

リリン「2時間あるんだよ」

アイーダ「残念ながら全部を見ている暇はなさそうです。ここへ来たのは他でもなくて、ゲル法王猊下にお伝えしなければならないことがあるのです」

ゲル法王「(意外そうに振り返り)いったい何事でしょうか?」

アイーダ「薔薇のキューブ、そして宇宙世紀復活派の黒幕は法王庁でした。法王庁およびヘルメス財団は、初めからゲル法王猊下を謀り、今回の事件を仕掛けてきたのです。ただ、その目論見の全容が解明されたわけではなく、目下調査中です」

それを聞いたゲル法王は静かに頷いて、まっすぐにアイーダを見つめ返した。

ゲル法王「そんな気がしておりました。ビーナス・グロゥブで説法をさせていただく前、亡きラ・グー総裁は彼の地の神父、牧師、そのほか法王庁関係者すべてに逮捕状を出して連行していたのです。それを見たときに、この日が来るのは覚悟しておりました。しかし、法王などという身分に関わらず、わたくしはひとりの神学者としてスコード教の原点、信仰が起こるきっかけになった奇跡を見つけたいと欲し、ここにいらっしゃるウィルミット長官、ノレドさん、リリンちゃんの力をお借りしてまさに勉学させていただいているのです。これを解明することが出来たのちは、いかなる処分も甘んじて受ける覚悟でございます」

アイーダ「処分などと・・・」

ゲル法王「法王だのと崇められながら何も知らなかったわたくしには、相応の罰があってしかるべきです。しかし、いましばらく時間が欲しい。ひとりの神学者としてスコード教の原点を知りたい。もしそれを知ることが出来たのなら、あとは何も望みません」

アイーダはふと4人が研究しているという映像を見た。

そこには人類だけでなく地球上のすべての生物を亡ぼせるほど巨大な小惑星が、地球に落下しようと邪悪な意思に導かれているさまが映っていた。なぜそこまで地球文明を憎むのか。なぜスペースノイドの英雄は追い込まれたのか。神学者ではないアイーダにはわからなかった。








薔薇のキューブの中に、ゆっくりとザム・クラブは降りていった。その8本の脚にはしっかりとG-アルケインが捕らえられている。

ラライヤ「放せ、このッ!」

ザム・クラブにG-アルケインごと鹵獲されたラライヤは、ザム・クラブから降りてきたエンフォーサーに羽交い絞めにされてジムカーオの元へ連行されてきた。ラライヤは必死に暴れたが、エンフォーサーの力は強く、ビクともしなかった。

ジムカーオ「素晴らしい能力を発揮されていたのはあなたでしたか。お久しぶりです。カシーバ・ミコシの中で対面して以来ですかな」

ラライヤ「あんたの悪事は全部暴いた! わたしなんか捕まえても逆転などできないですよ! 諦めてバカなやめはやめなさい!」

ジムカーオ「悪事などと人聞きの悪い。自分はヘルメス財団の者ですから、財団の意向のままになすべきことをやっているだけです。あなたにはちょっとした実験台になっていただきます。バララ・ペオールという人物に心当たりがあるでしょう? 彼女にはニュータイプの資質がありまして、エンフォーサーユニットとして思念を移してみたのですが、どうにも安定しないので、もっと強いニュータイプを求めていたのですよ。それがあなたです」

ラライヤ「ニュータイプ?」

ジムカーオ「連行しろ」

ラライヤはエンフォーサーに捕まったまま廊下を連行されていった。どんなに暴れてもピクリとも動かない。廊下では白衣を着た数名の人間とすれ違った。

ラライヤ(薔薇のキューブの中に住んでいる人たちか・・・。ノレドの話では彼らもエンフォーサーだと言っていた。ハッパさんの話・・・、思い出せ! そうだ、エンフォーサーユニット。つまり、ニュータイプとサイコミュで何かを執行する・・・)



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この続きはvol:61で。次回もよろしく。



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