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「ガンダム レコンギスタの囹圄」第5話「ザンクト・ポルトの混乱」後半 [Gのレコンギスタ ファンジン]

「ガンダム レコンギスタの囹圄」


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第5話「ザンクト・ポルトの混乱」後半



(アイキャッチ)


メガファウナが出航すると同時に144番ナットからレックスノー部隊が出撃した。キャピタル・ガードはケルベス中尉が到着するまで決死の覚悟でタワーを守り抜く決心だった。

ドニエル「クノッソスが2隻来るぞ。挟撃されるのは避けたい。モビルスーツ部隊はどちらかに狙いを定めて足を止めろ。地球に引っ張られるなよ」

副艦長「タワーからできるだけ離れる。出撃は2分待て」

メガファウナとクノッソスは距離を保ったままタワーから離れていく。この驚異的な構造物が主砲の射程内から外れた瞬間にモビルスーツが出撃した。メガファウナの主力モビルスーツ・グリモア隊を率いるのはオリバー。彼の指示で左舷のクノッソスに照準を定めることになった。

クノッソスからは20機近いザックスが出撃してきた。数の上でも性能の上でもメガファウナは圧倒的に不利であった。

ベルリ「(悩みを振り払うように)やるしかない、やるしかないんだ!」

ザックス兵団の先頭を切るのはガヴァン・マグダラであった。

ガヴァン「不採用のYG-111に居場所があって、なぜ守備隊長のオレに居場所がないんだ!!」

G-セルフとザックスが交戦距離に入った。ビームライフルの閃光が交わり合って空域を一瞬だけ輝かせる。密集陣形を敷いていたザックス1機が流れ弾に当たって撃墜された。離れた場所からルアンのG-アルケインが高出力対艦ビーム・ライフルでベルリを援護をする。

陣形は崩れ、ガヴァン隊はG-セルフを囲むように展開するが、G-セルフの速さについてこられず1機また1機と戦闘不能状態に追い込まれていった。

ガヴァン「誰かそいつを爪で捕まえろ!」

守備隊だったザックス兵団はモビルスーツ鹵獲の技術に長けていたものの、固まれば遠距離からビームで狙撃され、中間距離ではG-セルフに狙い撃たれ、まるで思うように戦えなかった。G-セルフはまるで彼らの動きを先回りして読んでいるかのように逃げ回った。

ベルリ「トワサンガの人たちは故郷に家族もいるんでしょ? なぜ戦争をやめられないんですか!」

ガヴァン「なぜお前ら地球人は何もかも奪おうと戦争を仕掛けるんだ!」

バヴァンは巧みにベルリの攻撃をかわしたが、一瞬の躊躇で取り残された者は容赦なく撃墜させられていく。G-セルフの動きは滑らかで判断の迷いなどないかのようだった。

ガヴァン「墜ちろ、墜ちろ、おちろーーーーッ!(悔しさに歯を鳴らしながら)地球人の戦争慣れにやられるばかりでーッ!」

戦友たちが搭乗する味方機が撃墜させられるたびに、ガヴァンの焦りは濃くなっていった。

オリバー率いるグリモア部隊もザックス兵団の1隊と交戦に突入した。機動力に劣るグリモアは防御を固めながら艦砲射撃から距離を置き、数に劣る戦力を優位な形に持っていけるよう相手を誘導しているところだった。

オリバー「あっちのモビルスーツは爪に捕まると厄介な相手だ。こちらは陣形を崩すな。(加速させて)上を取って戦艦ごと地球に押し込むぞ」

メガファウナは、グリモア隊の動きに呼応するように空間を自在に動き回り、クノッソス2隻に挟撃されないよう位置取りしていた。幸いガヴァン隊をG-セルフが完全に足止めしてくれていたので、ステアは砲撃の脅威にさらされることなく動き回ることが出来た。

ドニエル「「常にクノッソス2隻の背後に地球が映るように動け。どちらか一方でも視界から消えたら無理して追い込まなくていい」

空間の奪い合いはクノッソスが重なったところで艦砲射撃の撃ち合いとなった。オリバーのグリモア隊は地球を背後に並んでしまったクノッソスに対して突っ込んでいき、至近距離からビームを撃ち込んで一撃で離脱する。相手のモビルスーツは戦艦を守るために船に近づくなどして陣形を乱していった。

近く重なりすぎたクノッソスは身動きが取れずにやみくもに弾幕を張るばかりとなった。

ドニエル「ステア! 右旋回、オリバーが上を取った。艦砲射撃で左のクノッソスを地球に押し込め」

ステア「イエッサー」

ドニエル「大気圏に押し込めーー!」

クノッソスの1隻がグリモアとメガファウナに押されているのを見て、ガヴァンは大声で怒鳴り上げたが、G-セルフとの交戦で孤立した彼の声はミノフスキー粒子に阻まれ、誰にも届かなかった。

2隻並んで戦うクノッソスは、側面を取られたまま旋回することも挟撃体制に移ることもできずに同じ方向への射撃を繰り返すのみであった。もとより彼らはトワサンガの守備隊であり、ドレッド軍のように艦隊戦術の訓練は受けていなかったのである。

ガヴァン「(両腕を振り回し)それでは2隻ある意味がないではないかーーッ! ラダッタ、ラダッタの船は宙域から離れて挟撃だッ。挟み込んで戦うんだ!」

オリバーのグリモア隊は、ザックスとは距離を空けるための射撃をするばかりで、相手が攻めあぐねるとみるとすかさず1機、また1機と陣形を離脱して戦艦に突撃するや至近距からビームを撃ち込んで離脱していった。

狙われた地球側にあるクノッソスは徐々に押し込まれ、地球の重力に引かれて高度を下げていった。それを見たラダッタ艦長のクノッソスはようやく艦首の向きを変えたが、砲撃の照準が乱れた隙を突かれてグリモアの突撃敢行を甘んじて受けるだけになった。

ガヴァンは自ら撒いたミノフスキー粒子を恨みながら、クノッソスに戻って指示を出そうとするが、G-セルフによる撃墜は止まらず、戦力は削られていく一方だった。彼は先頭を切って突撃したことを悔やんだがすでに遅かった。

ガヴァン「(呆然とした表情で)なぜ負ける? なぜこんなにあっさり負けるんだ?」

最初に押し込まれたクノッソスは、すでに大気との摩擦で船体が真っ赤に染まっていた。ガヴァン隊のクノッソスには大気圏突入シールドは装備されていない。地球に対し横向きで押し込まれたまま、船体の制御もできないまま装甲は燃え尽き、剥がれていった。

もう1隻のラダッタが艦長を務める船は、艦首を無理に変えたために、地球を背にしたより危険な態勢で大気圏に突入しようとしていた。そして、重力から逃れるためにメインエンジンを最大出力にした瞬間、船体後部が大爆発を起こしてその炎は一気に艦首まで伸びた。

グリモアと交戦していたザックスの動きが止まったとき、赤い飛行形態のモビルスーツが間に飛び込んできて変形した。ルアンのG-アルケインだった。グリモアとG-アルケインは茫然自失のザックスの編隊を掃討していった。

ガヴァン「(四方を見回し)あいつらにはみんな家族がいるんだぞーーーーッ!」

ベルリ「あんたが隊長なんでしょ! なんでこうなるまで戦おうとするんですか!」

ガヴァンのザックスはG-セルフに後れを取らない動きで最後まで生き残った。ガヴァンはもはや考えて機体を動かしてはいなかった。訓練に次ぐ訓練で培った経験だけでG-セルフと距離を置きながら撃ち合いに持ち込んでいた。

ガヴァン「地球の奴ら・・・、お前たちは悪魔だ。滅びるがいい。何もかも凍って死人の肉を喰らいながら最後は朽ちて死ぬがいい。そして再びクンタラの捨て場所となってこの世の地獄となるがいい!」

ベルリ「なんで撃つのをやめないんだ! どうして戦争ばっかりしたがるんですか!」

ガヴァン搭乗のザックスは、複数のビームライフルに機体を貫かれて爆発炎上した。ベルリは彼が四散したに黒い渦が巻き起こるのを見た。黙っていると、その渦に引き込まれてどこか別の空間へ移送されてしまうようだった。

耳が聞こえなくなっていた。操縦しているのに、機体が反応しているように感じなかった。何もかも手応えがなくなってしまった。ベルリは自分がどこかへ落下しているような気分になった。息苦しくて、声が出なかった。コクピットのモニターに見慣れない警告が並んでいた。

これは学校の教養課程で習った宇宙世紀時代の古代文字だった。ベルリのヘルメットに、見慣れない文字列が反射していた。

ドニエル「みんなよくやった。すぐに戻ってきて休め。フルムーン・シップを探しに月まで行くぞ」

ドニエルの声がベルリを気づかせた。背中が汗でべっとりと濡れていた。何かが起こったはずなのに、何が起こったのか思い出せなかった。






トワサンガのシラノ-5。レイハントン家の屋敷は十数年ぶりに活況を呈していた。ノレド・ラグはすでに住民たちからは女主人として扱われ、ひっきりなしに各地区の有力者の来訪を受けていた。

一気に近衛隊長に昇格したラライヤ・アクパールは、ジムカーオ大佐が紹介した軍人たちを部下にすることだけは断固拒否した。彼女は生まれ故郷のサウスリングでレジスタンス活動をやっていた仲間たちに声をかけ、即席の近衛兵団を作り上げた。

近衛兵たちには飾り立てられた制服が誂われた。レイハントン家に忠義を尽くし、長年ドレッド家のレコンギスタ作戦に抵抗してきた者たちはこれでようやく報われたと涙に暮れた。

彼女らと一緒に屋敷に押し込められたウィルミット・ゼナムに至っては、解散された議会から送られてくる稟議書に目を通し、サインをして決済する仕事までこなしていた。眼鏡をかけた彼女は膨大な書類に毎日目を通し、ひとつひとつ慎重に吟味して処理していくことから、議会よりはるかに有能だともっぱらの評判であった。

そこまでしなくてもよいと何度も止められたが、ウィルミットはいずれベルリがやる仕事ならいまのうちに自分が内容を把握しておきたいと言って譲らなかった。彼女があまりに有能であったため、トワサンガの役人たちもついつい頼るようになってしまっていた。

長年クラウン運航長官として勤め上げ、また役立たずな議会の代わりに政治にも関与してきた彼女のキャリアは伊達ではなかった。

愛想がよくいつも笑顔が絶えない将来の妃候補と、美しく仲間想いな近衛隊長、有能で切れ者の王子の義母という組み合わせは、トワサンガ、特にサウスリングの住民たちにレイハントン家再興が近く、また問題なく王政へ移行できるという安心感を与えた。

しかし、実情は少し違っていたのである。3人は食事が終わるとメイドたちを自宅へ帰らせ、3人でひとつの寝室にこもって話し込むことが日課になっていた。

屋敷の周囲には元レジスタンスの若者たちが、近衛兵の制服で周囲を警戒していた。彼らの多くはレイハントン家の家臣だった者らであり、かつて味わった屈辱を繰り返すまいと固く誓っていた。

ノレド「やっぱりおかしいよ。なんか変だ。どこの地区の人たちに訊いても、治安維持はモビルスーツでやっているって話すんだ」

ラライヤ「確認しましたが、ザックス兵団ではなく、カットシーとウーシアを使っているんですよ。少数ですがエルフ・ブルックも。(窓の外を気にしながら)あれってキャピタル・アーミーのものでしょ? 本国守備隊が別のものに入れ替わっているのは間違いないですよ」

まだ3人はトワサンガの本国守備隊がメガファウナに全滅させられたことを知らなかった。

ウィルミット「ここ数日予算の流れを調べていたんですけども(目頭を指で揉み)また戦艦を建造しようとしているみたいなんです。それはこちらで止めてありますけども、別の方のサインで通るようになったらもうこちらとしてはお手上げになります。・・・まさかこんなことになるとは。ノレドさん、ラライヤさん、どうお詫びしていいやら」

スコード教の熱心な信者であるウィルミットは、法王庁の発表を疑うことはせず、ゲル法王のトワサンガ亡命にノレドとラライヤを巻き込んだことを悔やんでいた。

彼女たちにはG-ルシファーが与えられ、こまめにフォトン・バッテリーの交換も受けることができる状況がウィルミットを一層混乱させていた。モビルスーツがあれば最悪脱出することができる。もしこのおかしな状況を作り出したのがジムカーオ大佐ならば、そんなヘマはしないはずだった。

キャピタル・ガード調査部のジムカーオ大佐は、地球とトワサンガの状況を整えてビーナス・グロゥブと交渉すると3人に話していた。彼の話を信じる方が、彼に悪意があると考えるより筋が通っている。それなのに、どうしても釈然としないことが多くありすぎるのだ。

ノレド「(申し訳なさそうに両手を振る)かまわないですよ。そんなこと。それより、結局あたしたちはここに閉じ込められたってことでしょう? どうやって逃げるか・・・。うん? 待てよ。逃げていいのかどうかもわからないのか。困ったなー」

ラライヤ「いざとなったらわたしがG-ルシファーでおふたりを脱出させます。でも、そう。逃げていいのかどうかもわからないですし、逃げてどこに行くのかも決まっていない」

屋敷の外にはG-ルシファーがいつでも乗り込めるように置かれている。レジスタンスのメンバーによって、この機体にもレイハントンコードが仕込まれ、レイハントン家のアイリスサインを持つか、ラライヤ、ノレド以外は認証しないように改造してしまったのだ。

ウィルミット「わたくしは若いおふたりのように金星まで行ったなんて経験はありませんが・・・、月の表面には何かありますの? 毎月空気の玉、水の玉、フォトン・バッテリーが僅かですけど運ばれていますよね。ラライヤさんはトワサンガの方でしたっけ?」

ラライヤ「月の表面には・・・」

シラノ-5は明かりが消え、人工的な夜が作られていた。





ノレドら3人はサウスリングに常駐していたが、ジムカーオは主にセントラルリングのオフィスか工業地帯で仕事をしていた。

彼は地球から運ばれてきた1機のモビルスーツを眺めていた。

ジムカーオ「この白いのはいったいどういうものなのかな?」

ジムカーオの質問に答えるのはキャピタル・テリトリィから法王と共にトワサンガにやってきた一団であった。彼らの中には元兵士もいれば博物館の学芸員などもいた。ほとんどが故郷でクンタラとして差別されてきた人間やその友人たちであった。

ベルリ・ゼナムに敗れて故郷に居場所がなくなったルインは、恋人のマニィを連れて放浪の旅に出た。それによってマスク部隊は解体したが、クンタラの地位向上を目指す志は地球に戻ってからも彼らを活動へと駆り立てていた。そこに現れたのがジムカーオ大佐であった。

ジムカーオは元マスク部隊を中心にキャピタル・テリトリィ内のクンタラを集め、いずれはクンタラ安住の地カーバに導くと約束した。彼らはまさかクンタラが調査部の大佐になっていたとは知らず、その地位が完全に本物であることを確かめると彼の元へと集結したのだ。

集まった人間たちに新たな身分や制服は与えられなかった。彼らはキャピタル・テリトリィ時代と同じ格好と身分でトワサンガで活動をさせられていた。表向きの理由はトワサンガの新国王になるはずのベルリ・ゼナムに疑われないためにとのことであった。カーバを与えるとは約束したが、トワサンガが彼らクンタラのカーバになるとは告げていなかった。

キャピタル・テリトリィで博物館の学芸員をやっていた男が進み出てジムカーオに説明した。

学芸員「これは地球で発掘された機体なのですが、実はもう1機ありまして、状況から類推すると500年前に地球とムーンレイスとの間で起こった戦争に使われたもののようです。製造されたのは遥か昔で1000年以上前ではないかともいわれております」

ジムカーオ「ああ、そういうことか」

短い説明でジムカーオが納得してしまったので学芸員の男は驚いてしまった。

学芸員「(戸惑いながら)・・・、月に持ち込んだのは、アメリアに残されていた記録ではその2機はいにしえよりライバル関係にあり、同じ場所に置いておくと災いが起こるとのことでしたので、ウーシァなどと共に運ばせていただきました」

ジムカーオ「1000年前のものとは思えないほど綺麗だろう? これはナノマシンという技術で、いまでは途絶えた宇宙世紀時代の究極の技術だったのだ。動力はおそらく縮退炉であろう。これもかなり一時的にしか実用されなかったものなのでとても貴重でな」

学芸員「(汗を拭きながら)わたしなどよりよほどお詳しく」

ジムカーオ「いやなに、古いものに興味があるだけだ。この機体の整備はできるのか? コクピットの座席の交換くらいなら君にでもできるんじゃないか。使うかどうかはともかく、直せるところだけ直してくれないか。胸の傷は修復しなくていい。それはおそらくこの機体の記憶なのだ」

学芸員「わかりました」

その隣にあったのはG-セルフと同型の機体であった。まだ塗装がされておらず、銀色のままであった。ぞろぞろと大人数を引き連れたジムカーオは、ひとりでさっさと階段を駆け上がってコクピットを覗き込み、酷くガッカリしたように肩をすくめた。

ジムカーオ「これが用意できたということは、YG-111のヘルメスの薔薇の設計図はあったんですね?」

話を振られたのはトワサンガに先乗りをして工作活動をした調査部の新米であった。彼はジムカーオを前にかしこまってしまいしどろもどろになっていた。

調査部の男「いえ、なかったんです! ヘルメスの薔薇の設計図は見つけておりません! これはYG-111の試作機と残存パーツで組み上げただけのものでして、あのその」

確かに肩のところに薄くYG-101との文字を見つけたジムカーオはひとり頷いた。

ジムカーオ「ヘルメスの薔薇の設計図はなかった。それは残念。引き続き探してくれているよね?」

調査部の男「それはもちろん!」

ジムカーオ「ならいいんだ。いやなに、別にこんなものは必要とはしていなくてね、欲しいのはYG-111のコアファイターの情報なんだよ。地球に捨てられていた機体もコアファイターだけなかったみたいでね。これも見たところ、ただのユニバーサル・スタンダードだ。レイハントン家が子供に残した機体は操縦席がコアファイターという飛行機になっていてね、操縦系統にこちらが知りたいものが仕込んである可能性があるんだよ。その情報が欲しいだけなんだ」

調査部の男「では整備の方は?」

ジムカーオ「整備はあてがあってね。もうすぐこちらにうってつけの訪問者がいらっしゃるから、彼にやらせればいい。(アーミーの制服を着た男を指さし)その人物が来たら君に案内させるからそのつもりでね」

アーミーの兵士「自分みたいな下っ端にですか?」

ジムカーオ「(驚いたように身体をのけぞらせて)まぁ、下っ端の仕事だからな」

そういって彼は可笑しな奴だと笑ったので、一同は釣られて笑い声を立てた。アーミーの制服の男は笑われるのに慣れているのか頭を掻いて恥ずかしさをごまかした。

地球からやって来た彼らは、トワサンガでの生活に順応したわけではなく、初めての宇宙での生活に戸惑うばかりであった。多くは家族を地球に残してきており、自分たちの仕事がいつ、どのような形になれば終わるのか何も知らされていない。ただ、カーバの夢だけを頼りについてきた者だった。

それほどクンタラの人間にとってカーバの予言は大きなものだった。ついてきた者たちの中には、その秘密の一端に触れるだけでも満足だと言ってはばからない人間もいたほどだ。

彼らはまだ自分たちがスペースコロニーにいるのだということさえまともに理解しているか怪しかった。ジムカーオは彼らにパトロール任務を与えていたものの、宇宙での生活に順応するための訓練は施していなかった。それもあって、多くの者はすぐに地球に還れるのだと信じていた。

まだ中年に差し掛かった年齢にしか見えない若き大佐であるジムカーオは、キャピタル・テリトリィのクンタラの希望の星であった。


(ED)


この続きはvol:31で。次回もよろしく。









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