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「影法師捕物帖」(1959年作品)感想 [映画]

中川信夫監督による日本の時代劇映画。出演は嵐寛寿郎、中村龍三郎、小畑絹子。

<あらすじ>

老中田沼意次は利権まみれの政治家で、廻船問屋室津屋伝兵衛、堺屋藤左衛門と手を組んであらゆる悪事を働いていた。見かねた松平定信は影法師こと朱桜玲三郎を密偵として使わし、田沼の動向を探らせた。すると彼は天草四郎の隠し財産を探しているとわかった。謎を解くには金獅子と銀獅子の鍔を揃えねばならない。田沼は所有者を襲撃させたが、朱桜玲三郎がそれを防いだ。

金獅子と銀獅子の鍔を巡って田沼と影法師の駆け引きが始まる。さらに偽影法師まで登場して事態は混乱を極める。いったんは松平定信に届けられた金獅子も彼の元で働いていた女中の裏切りで奪われ、事態はなかなか収束しなかったが、最後は影法師が室津屋の奥座敷に乗り込んで悪を倒した。

<雑感>

全然知らなかった作品だが、なかなか面白かった。勧善懲悪ものの作品で、昭和の時代までそうだったように田沼意次が大悪党として描かれている。

田沼の再評価が進んだのは、バブル経済のころだ。あのころに経済学者が田沼意次の経済政策を分析して「そこまでひどく描かれるようなものではない」と結論付けて、田沼=完全悪の構図は瓦解した。それまでは経済のことを知らない歴史学者が、当時の悪評をそのまま真に受けて田沼意次=悪との認識を広めていたのだ。教科書にもそう書いてあった。

この作品はそうした再評価が行われる前の田沼意次が描かれているのだが、実際の田沼は株仲間などの整備を行った開明的経済政策実行者だった。田沼意次のことを悪と認識して育った戦後民主主義者の世代は、いまでも投資についての知識がまるでない。投資で儲けることは悪になるからだ。元日銀の三重野総裁などまさにこうした時代に生きた人間だった。

☆3.8。これらの知識を持った上で鑑賞しないと、新しい時代の知識しかない人たちはこの作品でなぜ田沼意次がこんなに悪者として描かれているのかさっぱりわからないだろう。


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コメント(4) 

コメント 4

二十代の閲覧者

田沼意次が悪様に言われていたのは、儒教の影響があったではないかと、個人的に考えてるんですが、これは常識だったりするんでしょうか?
昔、岩波書店の「大学・中庸」という本を読んだところ、天変地異が起きるのは時の指導者の悪徳に原因がある、みたいな発想が書かれていたのを見つけたことがありまして(確か『大学』の本文ではなく注釈だったと思いますが)。
で、田沼意次の時代は浅間山の噴火や天明の大地震や飢餓が立て続けに起こったために、この古代中国の発想を引き合いに出して、「田沼意次の政治が悪いから天罰が下ったんだ!」という結論に至ったんじゃないかと、僕は解釈しています。昔の人は漢籍を読んでる人が多かったらしいですし、儒教の影響を少なからず受けてたんじゃないかと思います。

【戦後民主主義者の世代は、いまでも投資についての知識がまるでない。投資で儲けることは悪になるからだ。】

という発想も、もしかしたら儒教の影響かもしれませんね(勉強不足で、まだ分からないんですが)。

以前、安倍前首相が辞任する前にやめろやめろ言っていた年配の人の中で、放射能のこととか、その他色々な災害を安倍のせいにして非難している光景を目撃したことがありまして、これも多分、儒教の文化の名残なのだと思うので、戦後民主主義者の人達が非合理的な事を言い立てたりするのは、儒教(ないしは古代中国の発想)の影響が色濃いためではないかと、個人的には考えてます。

全然的外れな考えなのかもしれませんが。

見識を広めるためにも、他の人の考えも聞いてみたいです。
by 二十代の閲覧者 (2021-06-02 13:51) 

ダグラム

二十代の閲覧者さんへ。

「儒教の影響」というのは日本を否定するときにとかく言われがちなのですが、欧州などの儒教の影響がまるでない地域にも「等しく貧乏なのば耐えられるが、前より少し豊かになっても貧富の格差が開くのは耐えられない」といった感性はあり、一概に「儒教の影響」で片づけられないというのが自分の考えです。

戦後の歴史家は、戦後憲法(もしくはGHQの意向)に合わせる形で「日本だけの特殊性」を血眼で探し、面倒な時は全部「儒教の影響」にしてきたので、自分も授業などで散々耳にしましたが、ずっと否定的でした。そもそも儒教など勉強したことがなく否定的なその教師の中にも彼が言う「儒教の影響」とされる感性がたくさんあったからです。「儒教の影響」とはそんなものではないでしょうか。

田沼意次が嫌われたのは、お金の流れを多様化して税収を増やす工夫をした結果、その改革についてこられる人間を重用したためと思われます。彼らは新しいお金の流れのことを詳細に知っているのでそれにアクセスしてたくさん稼いだ。その分税金も多く払ったのですが、町人たちにはそれが不正に見えた。これはいまの時代でも同じじゃないでしょうか。

自分は「儒教の影響」などと言ったものは存在せず、単純に「嫉妬」だと思っています。儒教のことなどひとつも知らない現代アメリカで株屋が嫌われているのと同じじゃないでしょうか。

「儒教の影響」といった物言いは、戦後民主主義者が考えた「日本が原爆を落とされるに足る特殊な民族である」という結論に合わせるべくひねり出した原因に過ぎず、そもそも「原爆を落とされるに足る特殊な民族」などは存在しないと反論せねば戦後民主主義者の蒙昧は開明しないのではないでしょうか。

by ダグラム (2021-06-02 15:36) 

二十代の閲覧者

なるほど。

つまりは嫉妬や嫌悪といった悪感情に由来する偏見というか、決めつけが先にあるということですか(田沼の場合は、汚い金を動かしている、という偏見。戦後民主主義者の場合は、日本が原爆を落とされるに足る特殊な民族である、という偏見)。

その決めつけを最もらしく正当化するために、儒教の影響がどうたらこうたらというような、小難しい理屈付けをしている、という事なのでしょうか?

これを解消するためには、根本的な偏見や決めつけの部分を、誤解であると説明しないといけない、ということになるわけですか。

その考えは納得です(この解釈で合っているのかは自信がないですが)。

儒教の影響によるもの、という論点はズレているということがよく分かりました。

勉強になりました。答えてくださってありがとうございます。


by 二十代の閲覧者 (2021-06-02 17:05) 

ダグラム

二十代の閲覧者さんへ

会社勤めをしていたときのことですが、株が上がったというニュースがあるたびに自分に「いくら儲かったん?」と尋ねてくる上司がいました。「1か月で2000万くらいですね」と答えるとさも悔しそうにしながら社員食堂で素うどんを注文する。株が下がると「いくら損したん?」とまた尋ねてくる。「1日で700万円なくなりました」と答えるとさも嬉しそうに肉うどんを注文する。

田沼が嫌われた原因なんてこんなものです。

人間観察をしていればわかることだと思うんですね。戦後の歴史学者は、GHQが考えた結論に合致する原因を考えさせられてきた。でもそんなものはなくて、GHQが最初に出した結論が間違っているんです。「儒教の影響」という原因は、占領統治が生んだ戦後の歪みのひとつでしかないと思っています。

by ダグラム (2021-06-02 22:28) 

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