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「その壁を砕け」(1959年作品)感想 [映画]

中平康監督による日本の社会派ミステリ映画。出演は長門裕之、芦川いづみ、小高雄二。

<あらすじ>

渡辺三郎という青年が自動車で新潟へ向かっていた。自動車修理工の技術を身に着けた彼は、新潟で独立して結婚するつもりだったのだ。ところがその途中で突然逮捕され、事件現場へ連行された。郵便局長が鉈で頭を割られて殺された挙句15万円を奪われた事件だった。目撃者は三郎が犯人だと断言した。

裁判は進んでいったが、警察署長は三郎の犯行を疑っていた。犯行時刻や証拠の有無が焦点になった。三郎は起訴された。彼の逮捕に功績があった森山巡査は栄転して刑事になった。被害者の家の離縁された嫁を好きになっていた森山は、彼女にプロポーズするつもりで会いに出掛けた。すると彼女はすでに近くに住む石工と結婚していた。森山は何かがおかしいと感じ始めた。

怪しい男を連行した森山だったが、彼は途中で殺された。その捜査の過程で、怪しい男が15万円を持っていたことを知った。裁判は、三郎が無実である証拠が次々に出され、検察は何も出せなかった。証言は間違いだと分かり、被害者の妻の証言も実はその時間に石工と浮気していたことがわかった。

三郎は無罪になって放免された。森山は、無実の人間を裁判にかけたことを悔やむと同時に、無実を晴らす役割を果たせたことにほっと胸を撫で下ろした。

<雑感>

これは素晴らしい社会派ミステリ映画だった。ミステリというが犯人はすでに分かっていて、冤罪者を生み出した森山刑事の苦悩から真実を明らかにすることの難しさを問いかけている。三郎は犯人を途中で乗せて下ろした。誰もウソをつかなければ、三郎は疑われることはなかった。

しかし、被害者の妻も、家の嫁もウソをついていた。証言に頼った起訴がいかに不確かなもので、そんなもののためにどれだけ冤罪被害者が苦しむか。テーマ性を追求した良い作品だった。

☆5.0。もちろんこの作品にはウソもある。現場の再検証に刑事や冤罪被害者の婚約者が立ち会うなどありえない。裁判関係者だけで行われるものだ。しかしそこにもし冤罪を着せられた人間の関係者がいたらどんなことを喋るか、それをドラマに入れるには小さなウソも必要なのだ。


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