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「Gレコ ファンジン 暁のジット団」vol:85(Gレコ2次創作 第32話 後半) [Gのレコンギスタ ファンジン]

「ガンダム レコンギスタの囹圄」


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第32話「聖地カーバ」後半





1、




ムーンレイスの冷凍睡眠処置が終わって3日後のことだった。彼らの情報を整理していたヘルメス財団先遣隊の5名は、ムーンレイスが地球から移民してきた人類であると知って、その歴史へのアクセスを行っていた。ムーンレイスの歴史資料は一瞬で解析されたが、曖昧な点を議論するためにクンタラのふたりを加えて口頭による議論を行うことになった。

5名の内訳は、隊長は軍所属のカール・レイハントン、同じく軍所属のチムチャップ・タノ、ヘイロ・マカカ、研究員のメメス・チョップ博士、軍医のサラ・チョップであった。カール以外の軍籍2名は女性性を選択し、男性性を選択したカールと肉体関係を持っていた。メメスは生まれつきの男性、サラは女性である。

サラはメメス・チョップの娘だった。クンタラのふたりは志願しての参加とされていたが、メメスはカールの政治的支持者であった。肉体と思念が一体であるオリジナルのメメスとサラは、おそらく任務中に死を迎えるはずであった。彼らの思念が残るかどうかはわからない。

軍籍の3人は肉体を持っていない。忘れて久しいほど古い時代に思念体となって、以後必要なときだけ肉体を再生して生きている永遠の命を持った人類であった。カール・レイハントンは金髪碧眼、チムチャップは浅黒い肌のアーリア系、ヘイロはサモア系の豊満な身体である。3人とも自分のオリジナルに近い人種を選択している。

ヘルメス財団は、思念体を捨てて肉体という囹圄に戻ろうとする一派と、それを拒否する一派に分裂していた。しかし、思念が共有される彼らは、クーデターのようなものを起こせない。ふたつの意見は全員に共有されたまま、集団を分裂させることなく存在している。

肉体に戻ろうとする一派はレコンギスタ主義と呼ばれ、宇宙での進化を否定して地球人の姿に戻って地球に帰還することを目標にしている。それはヘルメス財団の新たな目標とされ、そのために膨大な資源とエネルギーを貯蓄はすでに始まっていた。カール・レイハントンは地球圏調査のための先遣隊であり、異なる意見を持とうと任務の遂行は義務として必ず果たされる。

彼ら5名は月の周辺域にラビアンローズを運搬中、ムーンレイスと遭遇した。月の裏側を開発する予定だったヘルメス財団は、与り知らぬ帰還者の存在に警戒したが、彼らがいわゆる思念と肉体を分離できないオリジナルだとわかり、カール・レイハントンに討伐を一任した。

ムーンレイスはたった3名の軍隊にそうと知らないまま全面敗北したのだ。彼らの戦艦ステュクスは、ラビアンローズが必要なときだけ組み上げる簡易型戦艦で、艦隊全体がひとつの作戦によって連動するものだ。ニュータイプ生命体を前提にした艦であるため、その歴史が失われていたムーンレイスにはまるで未知のものだったに違いない。

チムチャップ・タノ中尉が議論の進行役を務めていた。

「混乱が見られますが、ムーンレイスは外宇宙からの早期帰還者が地球文明と接触して起きたごく短期間の政体でよろしいでしょう」

残り4人のうち誰もその結論に異論をはさまなかった。ムーンレイスは地球で起きた最終戦争前に地球に帰還して、その特出していたテクノロジーによって逆に地球の終焉を早めた悪しき人類だったのだ。彼らの使う正暦もどこが起点なのか判然としない。

「ビーナス・グロゥブからの指示で、冬の宮殿にある映像情報は全面的に保存せねばならないようですが、カール大佐、例の場所のことはいかがいたしますか?」

例の場所というのは、カールがムーンレイスを追いかけて引きずり込まれそうになった地球と宇宙の境目にある場所のことだった。

「宙域情報を特定しました。かつて隕石落としがあった宙域に、思念体に作用する何かがあるようですが、サンベルト上空ですので軌道エレベーターの終着ナットにでもして封印できるかと」

軍籍の3人は瞬時に情報を共有できるが、クンタラのふたりは言葉で判断する。カールは彼らを未熟で危うい存在だと蔑む。一方で彼らは無能ではなく個としての判断には優れた能力を発揮することもある。なぜ肉体を捨てないのかカールには不思議でならなかった。

「地球文明崩壊に立ち会い、地球環境の自律的回復を待ったのちに再入植するつもりが、手違いで地球人との争いになった。おそらくこんなところでしょう。彼らが黒歴史と呼ぶのは文明を崩壊させた歴史、地球の歴史そのもののことでしょうから、ヘルメス財団の考え方とも一致します」

メメス博士は頬をポリポリと引っ掻きながら考えを述べた。

「彼らは宇宙世紀後期の技術体系から進歩しないうちに地球に帰還してしまって、何かおかしな装置でも作ってしまったんじゃないかな」

「そのころの地球人というのはオリジナル?」カールは疑問を口にした。「ああ、そうか。オリジナルだからこそ対立があったわけか。文明崩壊直前の人間同士の対立とはどんなものだったろうね」

「そりゃもう」メメスは嬉しそうに両手をグシャグシャ掻き回した。「互いに全く話が通じないような状態でそれでも何か話すのをやめられない、みたいな?」

「最悪だな」カールは顔をしかめた。「抵抗を諦めさせようとアムロ・レイの名前も出してみたのだが、ムーンレイスは知らないようだった。伝わっていないのか」

「人も時間も断絶だらけなんでしょうね」

「そんなものは人間と呼べないだろう。人間というのは繋がり合っているものだ」

「それは・・・」サラは思わず口答えした。「肉体を持っていれば人間は誰しも他人に触れられたくないものはあるんです」

「肉体がバイザーみたいに自分を他人から隠してくれると思っているのね」チムチャップは黒い髪を引っ張った。「殻の中に閉じこもることが当たり前になるとそうなるのかしら」

「解放された思念を知らないわけだから」メメスはこの任務に就いてから絶えず笑みを浮かべるようになっていた。「肉体の限界を超えた思念は我々クンタラにもムーンレイスにも理解できるはずがない。意見の相違が対立に発展して殺し合いになることを皆さんが理解できないように」

「ヘルメス財団はそんなものに退化しようというのか」

カール・レイハントンは大きな溜息をついた。メメスが応えた。

「大佐、ヘルメス財団は安全に利潤を確保して快楽を追求する団体ですよ。彼らは快楽のために人類に戦争をやめさせなかった。だから大佐が肉体のアバターを使う任務に志願したとき、喜んで送りだしたわけです。チムチャップ中尉とヘイロ少尉を女性化させて同行させたのも、大佐に肉体の快楽を思い出させるためとこのメメス想像いたしますが?」

「そうなのか?」カールはチムチャップとヘイロに話を振った。

「さあ」

ふたりは首を傾げた。3人とも性行為中は思念をアンドロイドに移していたのだ。

「ありゃありゃ、そりゃ残念」

メメスは心底残念そうだった。身体的欲求を快楽や苦痛と認識して、それを味わおうという考えすら3人はなくしてしまっていたのだ。メメスは話を続けた。

「大佐や随伴のおふたかたはですね、人類の歴史はニュータイプによって作られたわけじゃないことを理解しないといけませんよ。快楽、苦痛、嫉妬、悲痛。それらを分かち合えない悲しき生物だから滅亡の危機に瀕し、ヘルメス財団が救おうとしているのですよ」

ヘイロが抗議した。

「そんなものに退化したらまた同じことを繰り返すだけでしょ?」

「快楽を味わいつつ、戦争をしない仕組みを模索しているんですよ。愚かなことにね」

彼らがムーンレイスについて理解できないことの多くは、肉体という囹圄に囚われた人間と、そこから解放された人間との決定的な相違であった。またカールら思念体の3人とメメス、サラの違いでもあった。チムチャップはサラに顔を向けて尋ねた。

「クンタラはどうなの? ヘルメス財団と一緒? 快楽を捨てられないの?」

「わたしたちは・・・」サラは困ったように父を見たが、父は言ってしまえと目で訴えていた。「快楽が目的ではないのです。人生の目的はカーバに到達すること。カーバに到達するには善行を積みませんと」

娘の答えはメメスをガッカリさせるものだった。一方で彼は有益な情報も得たのだった。



2、



さらに6か月が経過して軌道エレベーターの建設が始まったころ、ビーナス・グロゥブでは人類の復元作業が開始されていた。アバターとしての肉体ではなく、個としての再生であり、その肉体の中には誰の思念体も入り込めない。彼らが大事に保管してきたオリジナルの再生であった。

「わざわざオールドタイプに戻る意味が分からないな」

カールは肉体に戻ったのをいいことに、レコンギスタ主義について批判的意見を述べた。思念体となりせっかく相互理解の新境地に辿り着いた人類を、わざわざ旧人類の状態に戻そうというビーナス・グロゥブの方針に彼は反対していた。彼の反対意見は共有され、留保されている。もし人類が相互断絶の状態に戻った場合、彼は断絶状態にある人々を統治するために皇帝になると宣言している。この考えもヘルメス財団は情報共有した上で留保していた。

メメスはビーナス・グロゥブから送り込まれたクンタラたちを地球に降ろし、軌道エレベーターの建設に従事させていた。例のサンベルト上空の異質な空間については、軌道エレベーターの最終ナットとして隔離することになった。ビーナス・グロゥブはこの空間をスコード教に利用すべきかどうか議論を続けていた。

カイザーのコクピットから軌道エレベーター建設の進捗を確認するカールの脳内に、月の裏側にいるチムチャップ・タノがアクセスしてきた。

「ビーナス・グロゥブのクンタラは全員こちらに送られたらしいのですが」

「その話は音声で出来ないかな」

チムチャップはカイザーの人工知能に入り込んで人工音声で話を続けた。

「こちらに来たクンタラの人たちから聞きまして、どうやらあの漏れていた秘匿情報は本当らしいと。それだけでなく、食人もされたクンタラたちは話していまして、大佐の判断を仰ぎたいのですが」

「自分の考えを誰とも共有したくないということか。どうやらマズいことでもあったか」

「そうなんです。ビーナス・グロゥブで進められているオリジナルの再生ですが、かなりの数が自分のオリジナルを過去に再生させていたことがあって、その際にどうもクンタラの食人を行っていたというのですね。それは自分のオリジナルが死後に思念体に戻れるかどうか不安だったためと、機械の長期故障で食料が不足したためらしいのですが」

外宇宙に進出していた人類は、科学文明の粋ともいうべき恒星間航行用新型ラビアンローズを2台用意して地球に向けて出発した。ラビアンローズに蓄えられた科学技術に関する情報は膨大で、もはや人間はそれを捨てて生きることなどできなくなっていたのだ。

人間は1代限り急成長する人工胚に自分=個というものを託し、肉体を移住先の惑星に残した。地球に戻ることができるのは、思念体に進化できたニュータイプと、独自の宗教を持つ奴隷階級の者たちだった。ニュータイプには機械式と有機式の2種類のアバターがあてがわれたが、多くの者は眠りについたまま艦の運航には関与しなかった。

ラビアンローズは奴隷たちによって維持管理され、彼らのために最低限の食糧生産が行われていた。独自の宗教を持つ一団はニュータイプとして意思疎通もできるが、宗教上の理由で肉体を捨てることを拒んでいた。彼らは何百年も生と死を繰り返し、思念体となるものはひとりもいなかった。

思念体となった者らは、奴隷たちが生まれ死んでいく姿を見続けた。死んだまま残留思念を残さない者がほとんどだったせいで、彼らは自分のオリジナルが再生されたのちのことが心配になった。はたして地球帰還後に再生されるはずの自分のオリジナルの肉体は、再び思念体となって永遠の命を得ることができるのか。人工胚は人間の手によってデザインされており、それが自分というものを完全に再生してくれるとの保証は政府発表だけだったからだ。

そこで思念体となった者らの一部が、自分の人工胚のクローンを作って肉体を再生させた。それは思念体となった彼らとは別の意思で動き、生き、コミュニケーションの取れない存在だった。アバターのように中に入ることもできない。自分とは全くの別人格なのだ。

出来る限り自分に近づけようとアバターを使って教育をしてみても、教育者と生徒の関係にしかならない。数十年後、彼らは死に、肉体の死と同時に思念も失われた。そこに機器の故障が起こり、階級意識が芽生えて解放奴隷であったはずの労働者が食料と見做されるようになった。

クンタラという言葉はこのときに生まれた。

その後、自分は再生されないと自暴自棄になった人間が、有機アバターを使ってクンタラを強姦するなど肉欲に耽るようになった。強姦によって生まれた子供の中には、有機アバターのように思念体を取り込みやすい体質の子供が生まれるようになった。カール・レイハントンは驚きの声をあげた。

「いまクンタラと呼ばれているのはアバターとの混血ばかりなのか?」

「ほとんどがそのようです」

「だからビーナス・グロゥブはすべてのクンタラをこちらに寄越したというのか。ラ・ピネレ、度し難い男だ。アバターは遺伝子情報が違う。アバターの遺伝子情報がすべてのクンタラに入ってしまっているというのなら、クンタラを処分せねばならないではないか」

カール・レイハントンは日々組みあがっていく軌道エレベーターをモニター越しに見下ろした。

「メメス博士を呼び戻せ。建設計画は遅延させるな」


3、


「大佐には誠に申し訳ないと、これでも反省しておるのですよ」

カールに呼び出されたメメスは、あっさりと事の次第を白状した。

彼は自分たちクンタラがアバターとの混血になってしまったことを知っていた。だがそれは、惑星を旅立ったときに定めた禁を破った人間たちが悪いのであって、クンタラの責任ではないというのが彼の言い分であった。カールはすぐに彼の主張を認めた。非があるのは自分たちだと。

「だが、それを知りながら博士はなぜそれを隠し、地上に降ろしたのですか。このままでは地球人にまったく違う遺伝子が入り込んでしまう」

「人間ですよ!」メメスは強く抗議した。「もしアバターとの混血が人間でないものだとしたら、それは我々クンタラがもっとも大きな影響を受けるはずでしょ。しかし我々はアバターのように誰かの意思が入っていないときは呆けたような物体になるわけじゃない。いつだって、寝ているとき以外、あるいは寝ているときでさえ、自分自身なんです。それは我々の人としての歴史が証明している。クンタラだって人です。何も変わらない人です。アバターと混血していようと、人として生きられるのです」

「だからと言って、恒星間移動の数百年の間に生まれてしまった人でない者を・・・」

「人なんですよ。我々は人なんです。サラのお腹の中にいるあなたの子も人です」

「サラの・・・、まさか、おまえはこれがアバターだと知りながら娘に性行為させたというのか」

「人質ですよ」メメスは眼鏡を直した。「こっちだって死にたくない。死なないためにはなんだってやりますよ」

「アバターの子など、人質になると思っているのか。わたしはヘルメス財団の一員として義務を果たすことは放棄していない」

「最初に義務を放棄してあなたに責任を押し付けたのは、ビーナス・グロゥブのラ・ピネレ総裁ではありませんか。あなた方はね、アバターなら処分できるでしょう。あれは確かに人ではない。人型のアンドロイド、有機人工生命体です。でもわたしたちは違いますね? 人としての意思がある。ひとり殺すのだって大変です。泣く、喚く、罵る、逃げる。死なないためなら何でもやりますよ。永遠に生きているあなた方には肉体を持った人間のことなどわからんのですよ。いいですか、断言しておきますが、ビーナス・グロゥブで再生される人間たちは、必ずアグテックのタブーを破って延命のための遺伝子処置や肉体の機械化を始めますよ。人の寿命は50年ほどです。でも絶対にビーナス・グロゥブの人間は50年で死んだりしない。あらゆるタブーを犯して、ラビアンローズに眠るすべての医療データを駆使して、200年でも300年でも生きようとするでしょう」

「だがそんな長寿では地球の資源はもたない。すぐに枯渇してしまう」

「あなたを排除しないのは、まさにあなたの危惧を共有しているからなのです。いいですか、大佐。人間は死ぬのが怖いのです。長生きしたいのです。出来れば永遠に生きたいのです。でも、誰しも強い残留思念を残して、それをコントロールできるわけじゃない。しかもそのサイコミュの技術は廃れてしまった。あなた方の先祖が、すべてのオリジナルの残留思念をサイコミュの力で残してしまうとカルマ・フィールドが発生して思念を溶かしてしまうと知り、怖くなって技術を放棄したんです。我々労働者階級の人間は誰ひとり思念体になどなれなかった。当時の支配者階級の人間だけですよ。それがあなた方ヘルメス財団じゃありませんか。クンタラは数十年で死んで世代が入れ替わるから話が伝わっていないなんて思ったら大間違いですよ。我々は全部口頭で伝えてきたんですから」

「カルマ・フィールドとは以前に話していたものか?」

「そうです。大佐も引き込まれそうになったでしょう? 思念体があそこに取り込まれたら塊となって存在する思念はバラバラにほどけて消えてしまうのですよ。大佐があのときに死ななくて本当に良かった。計画がおじゃんになりますからね」

「計画していたわけか。なるほど。では、条件を聞こう。博士は何を求めてこんなことをしたのだろう?」

「まずは、クンタラを殺さないでこのままにしていただきたい。地球に降りてわかったことですがね、クンタラは我々だけじゃない。多くの宇宙からの帰還者たちの中で食人は発生していて、なかには同じ人間を牧場のように飼っていた集団もいたそうです。それに地球でも資源がなくなったときに食人が行われた。あらゆる文明にそのような記憶があって、すべて名称はクンタラです。なぜその言語なのかは解明されておりません。一生分からないでしょう。誰が決めたわけでもないのに、差別階級に陥った人間はすべてクンタラと呼ばれます」

「博士は話を逸らしている。食われたことと、アバターの血が入った者は別の話だ」

「そうではない」メメスは必死に食い下がった。「同じ人間なんです。だから取引がしたい。大佐の考えとも一致するはずですよ。あなたがたに、ビーナス・グロゥブと戦っていただきたいのです。彼らは、いずれオリジナルが増えます。オリジナルは自分の頭で考え、自分の頭で行動します。当然規範はあなたがたのような、永遠の命を持った人間が作るのでしょう。ヘルメス財団1000年の夢とでも名付けて。でも、肉体を持った人間は、利己的です。必ず階級制度を作って自分の身を制度で守ろうとする。あなたがたがサイコミュの技術を放棄したことと同じですよ。自己保身。ビーナス・グロゥブがやろうとしていることは、完全なる秩序の独占です。自分たちが秩序なのです。当然大きな義務も負うでしょう。だがそんなものは、わが身可愛さの前にはあってないようなもの。どんなことがあっても、ビーナス・グロゥブ優位の形を壊すことはありません」

「それを壊せというのか、わたしに?」

「いえ、皇帝になっていただければいいのです。ビーナス・グロゥブとは違う政体を作っていただきたい。それで、あなたがた思念体はいずれ大佐に賛同するでしょう。必ずそうなります。オリジナルの人間が増えれば、彼らはいるのかいないのかわからないあなたがたのことなど気にも留めず、自分たちでルールを作ろうとします。大佐の懸念の通りのことが起きるでしょう。人間同士の関係は、相互断絶が当たり前になり、人間社会は無秩序状態に戻ります。ラビアンローズの本当の目的を知っていますか? これは戦争を継続させるための宇宙ドッグなのです。武器を直すための軍港なんです。こんなものを後生大事に抱え込んで、宇宙の果てまで飛んで行って、ずっと人間は戦争を継続してきた。あなたがたが肉体を捨てて、相互理解の世界を構築して初めて戦争は終わり、地球へ還ろうという話になった。しかし、地球で生きるのに思念体などという形である必要はない。元の姿に戻り、人間になって地球に住みたい。そう考えたから、別の恒星系を脱出するときに人工胚を用意したわけです」

「そうだ。そして我々ヘルメス財団は、宇宙世紀の失敗を繰り返さない秩序ある宇宙を構築する」

「人間同士が相互断絶したままで? そんなことは無理です。大佐の懸念の通りです。だから大佐は、しかるべきときに皇帝にならねばならない。いや、宇宙を統べるとなるとビーナス・グロゥブが黙っていないかもしれない。皇帝の前に王にでもなるといい。トワサンガを王政にするのです。あくまで王はビーナス・グロゥブの臣下、ヘルメス財団の臣下でよろしい。そして、王の権限で我々クンタラを見逃していただきたい。アバターとの混血など、地球という大きな器の前では些細なことです。わたしたちはアバターの血の入った子供をたくさん養育してきました。たまにちょっと思念体が入りやすくなる特異体質の人間が生まれるだけです」

「本当にそれだけなのか?」

「本当ですとも。クンタラと呼ばれる人間に共通するのは、宇宙世紀初期に発生したカーバという理想郷を信じるか信じないかで決まるようです。先ほどあらゆる時代の下層階級がクンタラと呼ばれてきたと話したはずです。これは宗教の違いなのです。わたしたちはこの宗教を捨てられなかったために、いつも少数派だった。そして何か事があると、最もおぞましき立場にされていった。そのカーバこそ、カルマ・フィールドだとわたしは考えます。この生の苦しみから解脱して、解放される場所・・・」

「サラが孕んだアバターの子はどうする?」

「世継ぎですよ」メメスはニヤリと笑った。「レイハントン2世です。大佐は肉体を捨てて長いからわからないでしょうが、王政は子供を作らねば維持できません。それに、トワサンガにも肉体を持つ人間を増やさねばビーナス・グロゥブには対抗できなくなります。アバターの生産は我々クンタラが代々担ってきましたが、我々はビーナス・グロゥブから追放された。どうしてだかわかります? レコンギスタ派はもはやアバターを捨てようとしているのですよ」

「うむ」

「アバターは人間じゃないからです。そして無秩序な世界が誕生し、人類は宇宙世紀を繰り返すのです。アンドロイド技術もすぐにタブーになるでしょう」

「それは断固阻止する」

「どうやってですか? オリジナルの人間相手に、アバターの生産もなくどうやって対抗を? 無秩序の拡大とをどうやって食い止めますか? まさか絶滅させるつもりですか? それでは何の意味もない。人工胚から多くのオリジナルが再生されます。この世に関与しようとする思念体は大幅に減るでしょう。いまのあなたが少数派であるように。それでもラビアンローズと我々クンタラがいれば勝てます。勝って、宇宙の秩序を保ちながら地球と人間を運用することは叶うでしょう」

「クンタラを?」

「我々はアバターの血を引いております。王政を宣言してトワサンガを独立させていただければ、感応力の強い人間を選別してトワサンガの住民と出来ます。さすれば、ビーナス・グロゥブのオリジナルを受け入れずに独立した戦力を作れるのです。サラが生む子を王として、永遠の命を持った人間がこの世にいるなどとはおくびにも出さず、ビーナス・グロゥブの裏社会にも賛同者を匿ってこれから増えてくるオリジナルの対抗組織を作るのです。そして、ビーナス・グロゥブがヘルメス財団の、つまり欲を失ったあなたがた思念体の理想を失い相互断絶を抱えたまま地球に戻ろうとしたとき、どちらが地球を治めるにふさわしいかを定める選別を行えばいいのです。執行の権限はあなたがたが持てばいい」

「なぜわたしに手を貸そうとするのか」

「そりゃ欲がないからですよ」メメスはさも可笑しそうに唇を歪めた。「ビーナス・グロゥブのオリジナルたちは、間違いなく大きな差別意識を地球に持ってレコンギスタするでしょう。そしてその被害者はいつも我々クンタラです。スコード教に改宗できない、我々クンタラなんです」

「そういうことか」

レイハントンはメメスを開放して再び地球に降ろした。皇帝となってでも宇宙世紀の再来を阻止するつもりだった彼は、思わぬ形で賛同者とその計画を得ることになった。

宇宙に対立の種を生まないために作られたスコード教という宗教。宇宙宗教であるはずのそれに参加できないクンタラは、自分たちがオリジナルでありながら、人種対立を生じさせるビーナス・グロゥブのオリジナル再生に反対の立場だったのだ。

(つまり)カール・レイハントンは誰とも思念を共有できないようにサイコミュに逃げ込んだ。(’つまりクンタラたちは、ビーナス・グロゥブから追放されたように見せかけて彼らから逃げたのだ。恒星間航行中によほど酷い仕打ちを受けてきたのだろう。そして、彼らの理想郷カーバが近いここ地球にやってきたのだ)

カール・レイハントンは、予定通り軌道エレベーターの建設をメメスに任せ、自分はトワサンガ宙域に資源衛星を運び、地球から上がってくるクンタラの子たちを受け入れるスペースコロニーの建設を始めることにした。



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