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「Gレコ ファンジン 暁のジット団」vol:58(Gレコ2次創作 第19話・前半) [Gのレコンギスタ ファンジン]

「ガンダム レコンギスタの囹圄」


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第19話「トワサンガ大乱」前半



(OP)


ムーンレイスの艦艇はリギルド・センチュリーのものとデザインが大きく違い、どれも流線型の美しい形をしている。新造されたものや古くより使われていたものを合わせて100隻にもなる大艦隊が月の裏側の宙域に結集しつつあった。

それに呼応するかのように、トワサンガからもクノッソスが出てきた。だがクノッソスの数は少なく、ほとんどが銀色ののっぺりとした細長い船であった。その船には艦橋はついておらず、砲台もない。形は長方体であるが角が丸く、特に先端部分にはかなりの丸みがついている。どこに武器が隠してあるのか、どこから外を見ているのかまるでわからない。

その先頭にいるのはゴンドワンから宇宙へ上がってきたガランデンとオーディン2隻であった。宙域には大量のミノフスキー粒子が散布されていた。

ムーンレイス・アメリア同盟の指揮はソレイユに乗艦するディアナ・ソレルに委ねられていた。

ディアナ「オルカはホエールズとは違ってソレイユと性能は同じなのですから、火力の乏しいメガファウナの前に出て守ってあげなさい。メガファウナは状況を見て作戦通りに」

ディアナは望遠カメラで捉える正体不明の戦艦を、薔薇のキューブで作られた宇宙世紀末期のものと推測していた。問題は動力源であった。フォトン・バッテリーが使用されていれば、いくらトワサンガにバッテリーが豊富にあるからといっても限度がある。

しかし自分たちと同じ縮退炉が使われていた場合、戦闘はかなり長引くことになる。

戦いの火ぶたは双方の先陣が100㎞まで接近したとき、主砲の撃ち合いによって始まった。漆黒の闇に包まれた月の裏側の宙域に、禍々しく伸びた閃光と火花が飛び交った。

その様子は月面裏側の地下にある冬の宮殿にも映像が送られていた。冬の宮殿に映し出された戦争の映像を見上げていたゲル法王とウィルミット・ゼナムは固く手を組んでそれを見つめていた。

ウィルミット「(泣き出しそうな声で)こんなの・・・、冬の宮殿にある宇宙世紀の映像と変わらないじゃありませんか」

ふたりとともに冬の宮殿に残ったのは、ノレドとリリンであった。旧時代のコンソールの操作は他の3人ではまるでわからず、リリンだけが操作方法を見つけて動かすことが出来た。

彼女は空中に投影される戦争の様子にはさほど興味を示さず、その映像が録画されていることを発見して興奮していた。冬の宮殿は、古い映像を保存するだけでなく、新しい戦争の映像を記録する巨大装置でもあったのだ。映像は撮り溜まると自動編纂されてひとつの映像として繋がれていった。

ゲル法王「冬の宮殿がこの戦争を記録しているのならば、この戦いもまた人類の黒歴史なのです」

ノレド「クリム・ニックの覇権主義がまた黒歴史を生み出したんだ。あいつ、ミック・ジャックさんが死んだってのにお葬式も出さないでこんなこと!」






先陣に出されたオーディン1番艦の艦長ドッティ・カルバス中佐は、生まれて初めて体験する宇宙での大規模戦闘に戸惑い、恐怖を感じていた。

クリムトン・テリトリィの利権に目がくらんでクリム・ニックを出し抜いてゴンドワン軍の指揮官になったはいいが、彼は地球での大陸間戦争の経験しかない。そしてフォトン・バッテリーの制限のある地球ではこれほどの数の艦隊戦など起こりようもなかったのである。

自分たちが同盟を結んだトワサンガも、敵対するムーンレイスも、彼の常識を逸脱した存在に思えた。古代種族と紹介されたムーンレイスが異質であるのはまだしも、自分の背後にいるトワサンガ軍にも同じものを感じるのはなぜなのか。宇宙に上がってきたばかりの彼には知る由もなかった。

戦いは双方が10分の1程度の戦力を割いた艦隊のみで続いていた。ムーンレイス側の艦隊行動はよく訓練されていて、ゴンドワンの3隻の艦艇は後手に回って被害を拡大していた。

ドッティ「まだMS戦にもなってないんだぞ。なぜこんなに被害が出るんだ! ガランデン、もっと前へ!」

するとガランデン艦長のロイ・マコニックから光通信で暗号文が届き、艦隊行動ができない自分たちは下がるべきではないかと意見された。

ドッティ「下がる? 下がっていいのか? それは誰に許可を取るんだ? とりあえず回避!」

この回避行動が失敗だった。右舷に舵を切ってメガ粒子砲をかわしたオーディン1番艦は、ガランデンの逆に動いてしまい、先陣の中から1隻だけはみ出るように離れてしまったのだ。

オーディン1番艦は右翼に展開して前に出てきていたムーンレイスのオルカに一斉射を喰らって横腹にしこたま被弾してしまった。

ドッティ「いつの間にか目の前に展開している部隊がいるじゃないか。なんでどこからも情報が来ないんだ? MS隊発進。あの艦隊を叩け!」

通信士「ガランデンより入電。トワサンガの艦隊の動きに合わせろとのことです」

ドッティ「弾幕が薄い! MSにも外へ出て船の護衛をさせろ。船は回避!(通信士に向かって)隊列に戻れってことか? よし回避しつつ下がれ」

オーディン1番艦は一見果敢に戦っているようで、回避行動が多すぎて主砲の狙いが定まらず何の成果も挙げられていなかった。わずか数か月でクリムが世界一の金持ちになっていった様を間近に見ていた彼は、早く地球に還って自分がその座に座ることにしか興味がなかったのである。







ドニエル「これじゃオレたち、何もできんぞ」

大艦隊の左翼後方に置かれたメガファウナは、トワサンガ・サウスリングに強制着陸してレジスタンス派に連携を持ち掛ける作戦にいつ持ち込むか考えあぐねていた。

副艦長「ジムカーオというのが言葉巧みに自分らをトワサンガに入れなかったのは明らかなんですから、住民が蜂起して彼を追い出してくれさえすればこの戦争は終わるんですがね」

ドニエル「こっちは王子さまと姫さまがいるんだから、何とかなりそうなものだが」

ギセラ「何とかされちゃ困るから入れなかったんでしょうよ」

メガファウナのモビルスーツデッキではすでに各員がスタンバイした状態で戦闘配置についていた。しかし艦隊戦の様相を見せてきたことから、大規模戦闘の訓練をしていないメガファウナとラトルパイソンは戦場の後方に置かれたままになっていた。

ラトルパイソンのブリッジではアイーダが恐怖心に駆られながらモニターを見上げていた。

アイーダ「アメリア軍総監として戦場の映像は随分見ることになりましたが、結局あんなものは子供同士の小競り合いに過ぎなかった。宇宙での戦いは規模が違う」

ブリッジクルー「ディアナという人はなぜこんな複雑な指揮が執れるのでしょうか?」

アイーダ「ウィルミット長官が宇宙世紀時代の設備の中に残っていたデータを偶然発見したとかで、それに基づいて行っているとは聞きましたが」

そのような危険なデータが廃棄もされず残されていることが恐怖であった。基地として使われていたところにはそうしたものが残され、宇宙空間にはいまだにMSに搭載されていた小型原子炉がデブリになって高速で飛び回っている。もしこの艦隊戦に勝利を収めても、宇宙空間にさらなるゴミと人間の死体を増やすばかりなのだった。

アイーダ「やはりわたしたちがここで責務を果たさなければ。グリモアを1機用意。メガファウナに光通信でいまからそちらに行くと伝えてください。ラトルパイソンは艦長に任せます」

ブリッジクルー「姫さまにそんなことさせられませんよ!」

アイーダ「わたしがここにいても役に立てることはありません」

そういうとアイーダはブリッジを降りてグリモアで宇宙に飛び出してしまった。

緊急入電を受けたメガファウナはアイーダの行動に驚いてグリモア隊を出撃させた。メガファウナのグリモア隊はアイーダのMSを隠すように広く展開してビームに警戒した。

モビルスーツデッキに入ったアイーダは懐かしい顔と対面して旧交を温め合うつもりであったが、すぐさま大勢に囲まれて説教を受けることになった。

アダム・スミス「大事なお身体であらせられるのになんという無茶を」

アイーダ「あーー、うるさい! ベルリはどこですか?」

騒ぎを聞きつけたベルリもG-セルフのコクピットから出てきて騒動に加わった。嬉しそうな顔をしながらも口々に文句を言ってくるデッキクルーを押しのけて、アイーダはベルリとラライヤを近くに招き寄せた。

アイーダ「こんな宇宙世紀みたいなことをさせていてはいけないと思うんです。ラライヤさん、サウスリングにどうやったら入れるでしょうか?」

ラライヤ「こちらをサウスリングに誘い込む作戦だったらどうするんですか?」

アイーダ「かといって見てください、この怖ろしい光景を。これを終わらせるにはやはりわたしたちがトワサンガの住民に訴えかけるしかないのでは?」

ラライヤ「サウスリングは確かにわたしたちに好意的ですけど、なかの様子はわからないんですよ」

ベルリ「母さんの話や艦隊の出撃の様子から察するに、ジムカーオ大佐がノースリングを拠点に動いていることは確かですよ。もちろんラライヤさんの言う通り罠かもしれませんけど」

アイーダ「ハッパさん!」

輪の中に入らずG-ルシファーの整備をしていたハッパを手招きで呼び寄せると、アイーダは空いている機体はないか尋ねた。ハッパは腕組みをして珍しく政治的な発言をした。

ハッパ「確かにグリモアで乗り込むと、アメリアの侵略行為だと宣伝に使われる可能性もありますね。でもこちらも空いているのはG-ルシファーくらいで」

ラライヤ「ルシファーが使えるなら、わたしがアルケインを降りて・・・」

ハッパ「待て待て。G-アルケインにはサイコミュをつけてあるんだ。もしまたエンフォーサーのG-シルヴァーとベルリが戦うことになったら、ラライヤに何とかしてもらわないと危険だ」

ラライヤ「G-ルシファーのコクピットもサイコミュというシステムなんでしょう?」

ハッパ「いや、あれはエンフォーサーがユニットなんだ。機体自体には搭載されていない。パネル操作が後ろについているからまだ複座のまま改造が出来ていなし、もし戦闘中に敵のエンフォーサーがコクピットに乗り込んで機体を乗っ取ったらどうする? 長官の話じゃお茶汲みさせるくらいたくさんいたらしいじゃないか。とにかく、艦長の許可を取ってくれないと絶対に出せないからな!」

それを聞いたアイーダは各自持ち場に戻るように指示をすると、ベルリとラライヤを伴ってメガファウナのブリッジに上がった。

ベルリ「姉さん、本当にやるつもりなの? 一応ぼくが王子なんだから、ぼくだけ行けば・・・」

アイーダ「弟だけにしょい込ませるのは嫌なんです!」

3人が艦橋に姿を現すと、ギゼラとステアが小さく拍手をして出迎えてくれたが、ドニエルはカンカンで、拍手をするふたりを歯を抜き出してギッと睨みつけた。

ドニエル「無茶しないでくださいよ、姫さま」

アイーダ「艦隊戦の様子はどうです?」

副艦長「オーディン2番艦が1番艦の盾になって撃沈しましたよ。1番艦っておそらくクリムでしょ? あんなことをするのは指揮官の器じゃないね」

アイーダ「ではまだ被害は1隻だけ?」

ドニエル「1番艦ももうじきでしょうなぁ。動きがおかしすぎる」

アイーダ「このまま全軍入り乱れた戦争になったら、この宙域は2度と船が航行できないほどデブリだらけになります。何とか戦争を止めさせたい」

ドニエル「それで自ら出撃ですか。ストレスが溜まってるだけじゃないでしょうね?」

彼はモビルスーツデッキにいるハッパを呼び出した。ハッパはスパナで肩を叩きながら、なぜか諦めたような顔で画面に出た。

ドニエル「サイコミュとかいうのはお前しかわからんのだ」

ハッパ「姫さまにG-アルケインを使わせれば、G-シルヴァーにエンフォーサーが乗っていた場合、ベルリに危険が及びます。かといって姫さまは複座のG-ルシファーには慣れていない。G-ルシファーのサポートにエンフォーサーを使うなど論外。こんな状況です」

ドニエル「ノレドの報告では、エンフォーサーは操縦席に移動してアレをしでかしたんだろう? だったら後部座席に固定しておけば」

ハッパ「怖いこと考えないでくださいよ」

ドニエル「G-セルフとG-アルケインはセットで使わないとG-シルヴァーには対抗できないってことか」

ハッパ「それにベルリとラライヤも」

アイーダ「でしたら、やはり」

ドニエル「それは絶対に許可できません。ひとりで行くなどもってのほか。・・・しょうがない。ソレイユに連絡。これよりメガファウナは戦争の早期終結のために戦線を離脱してサウスリングへ向かうと」

ソレイユからはすぐに許可するとの連絡が光通信で届いた。

ドニエル「メガファウナ行くぞ。ステア、このままゆっくりと後退して陣形が再編されたら急速離脱。下方からサウスリングへ向かう。(アイーダに向き直り)向こうも陣形を崩していませんので、近づけないようなら無理はしませんからな。そのときは諦めてラトルパイソンに戻って下さいよ」

アイーダ「わかってます」






セントラルリングの貨物用デッキから小型ランチと共に宇宙空間へ出たG-シルヴァーはクリム・ニックが操縦していた。随伴の小型ランチには彼の配下のゴンドワンのスパイ3人が狭い場所に同乗していた。

彼らは戦闘空域から身を隠すためにシラノ-5の裏側へと回った。この辺りはミノフスキー粒子の濃度が低く、通信も可能だった。

クリム「あの銀色の船は戦艦なのだろう? あれを奪って地球に戻ることはできないか?」

兵士「自分のような下っ端にはそれこそ無理な注文ですよ」

事情を話してアイーダに慈悲を乞うかと迷っていたときであった。ノースリングの上部にある岩石の部分が大きく開き、トワサンガの主力戦艦になっている銀色の棒のような船体が出現するのが見えた。

クリム「侵入するぞ、ついてこい」

ハッチが閉じる前に、クリムはG-シルヴァーでその内部に潜入した。そこにあったのは資源を採掘した空洞を利用して作られた巨大な兵器工場であった。壁面には巨大な薔薇の紋章が見える。

クリム「ここはどういう場所なのだ?」

兵士「自分は下っ端なので・・・。他の者も初めて入ったそうです」

こんなときにミック・ジャックがいてくれれば・・・。ドッティ・カルバスに裏切られてから何度同じことを思ったか数えきれないほどであった。

空洞の内部は巨大で、戦艦の組み立てからMSの製造ラインまで整っている。それどころか小型艇からエアカーの組み立てまであらゆる生産設備が稼働していた。

クリム「これがヘルメス財団というものなのか。それにしても・・・」

それにしても何かが違う。この違和感は何だろうかと考えたとき、彼の機体は下方より攻撃を受けた。

モニターに映し出されたのは巨大なMAであった。ユグドラシルを想起したが、形状はまったく違う。それは闇の底からゆっくりと巨躯を浮上させてきた。古代の甲殻類を思わせるその機体からは、底知れぬ邪悪さが発散されており、クリムは胸が締め付けられるように感じた。

クリム「いかん。ここを出るぞ!」

そう指示したときにはすでに小型ランチの姿はなかった。先に逃げたのかどうかも彼にはわからない。不安に駆られた彼は一気に加速して下降し、MSのラインに置かれていたビームライフルを拝借するとすかさず上昇して開いたままになっているハッチから外へ出た。

不気味な姿をしたそのMAもG-シルヴァーを追いかけるように外に出てきた。敵なのか味方なのか、クリムは迷った。しかしトワサンガに自分の味方がいるはずはないと悟り、改めてMAと向き合った。2機は虚空に浮かんだまましばらく正対していたが、やがてMAはファンネルを大量に放出した。

その様子をモニターで眺めているのはジムカーオ大佐であった。彼がいる部屋には銀色の女性型エンフォーサー以外誰もいなかった。彼は明かりの消えた暗い部屋でたったひとつだけ灯された大型モニターを眺めていた。

その部屋に小型ランチを降りた兵士やその仲間たちが入ってきた。彼らはゴンドワンのスパイとして送り込まれていたが、とっくにジムカーオに寝返って彼の意志通りに動いていたのだ。

ジムカーオ「ご苦労だった。2重スパイは大変だったろう? いずれ君たちの願いは叶えられる。それまでは大人しく待っていてもらいたいものだ」

兵士「クレッセント・シップとフルムーン・シップを奪うところまでが任務だと聞いていたのですが」

ジムカーオ「(はじめて彼らの顔を見て)ああ、そうだよ。しかし物事には手順というものがあって、それを踏み外すと最終的に望むものは得られない。君らは彼らに顔を知られてしまったから、しばらく仕事は回せない。どちらにしても、ベルリとアイーダが持っているG-メタルがなければレイハントン家の残したものを手に入れることはできないだろう」

それだけ告げると、彼らには興味を失ったようにジムカーオは顔を逸らした。彼の協力者たちはこれ以上その場にいても何も訊き出せないとわかって大人しく部屋を辞していった。

ジムカーオ「(エンフォーサーに向かって)記録は録れているのだろうな?」

エンフォーサー「すべてのカメラが正常に作動しております」

彼らが見つめるモニターにはクリムのG-シルヴァーとMAザム・クラブの戦いが映し出されていた。

ジムカーオ「ザム・クラブで追い込んでクリム・ニックという人物が覚醒してくれると手駒も増えるのだが」

ファンネルを放出したザム・クラブは対峙するG-シルヴァーに攻撃を仕掛けた。四方八方からショートレンジ攻撃を浴びせられたクリムは、かわすこともできず何発も直撃を喰らった。それでも大破せずにいられるのは、G-シルヴァーの性能というより、ビームの出力が弱めてあるためだ。

クリムは宙域から離れようと何度も脱出を試みたものの、ザム・クラブはつかず離れずで追いかけてくる。ファンネルによる攻撃をクリムはかわすことさえできなかった。やられるがままのクリムを眺めていたジムカーオは呆れてしまい、手を軽く振った。

ジムカーオ「もうよい。あれは見込み違いだ。YG-111は回収。ザム・クラブのバララ・ペオールは帰還させろ」

そういうと彼は部屋を後にした。残された女性型エンフォーサーは、その場に立ちすくんだまますべての機器を操って状況を終了させた。暗い部屋に映像が投影される。それはトワサンガとムーンレイスの戦いの映像であった。

先陣を切らされたゴンドワン軍はすでにオーディン2番艦が撃沈して1番艦も半壊状態になっていた。宇宙での戦闘経験のあるガランデンのみが奮闘していたものの、3カ所に小破を負っておりこのまま前線で戦い続ければいずれオーディンと同じ運命になるのは目に見えていた。

トワサンガのヘルメス財団が記録するこれらの映像は、通信衛星を経由して地球に配信されていた。

全世界の地球人が宇宙で起こっている大規模紛争の映像を真に当たりにして恐怖に震えていた。クリムトン・テリトリィ、アメリア、ゴンドワンその他のすべての地域に戦争の様子がわずかな時差で生配信されていたのだ。配信主は法王庁であった。

すべてのテレビ番組は臨時放送として戦争の様子を伝え、解説者が宇宙からの脅威を訴えていた。テレビはアメリアと古代種族ムーンレイスが結託して世界を宇宙世紀に戻す工作をしていると法王庁からの発表をそのまま伝えていた。トワサンガに協力した敬虔なスコード教徒であるゴンドワンは、果敢に先陣を務めたオーディン2隻が撃沈され、悲劇の主人公であるかのように扱われていた。

悪役にされたのはアメリアであった。法王庁は激しくアメリアを非難する声明を発表した。

そのアメリアに舞い戻ったロルッカ・ビスケスの元には、大量のモビルスーツの注文が舞い込んできていた。宇宙からの脅威に怯えた各国は、崩壊した旧キャピタル・テリトリィや、対ムーンレイスでいいところなく撃沈されたゴンドワンに頼るのは愚策であると判断して、政策を自主防衛に大きく舵を切ったのだった。

得体の知れない古代種族ムーンレイスと行動を共にしてトワサンガを攻撃しているアメリアは、アイーダが発表した「連帯のための新秩序」が説得力を失い、同盟国が次々に離反していた。

NYにオフィスを構えたロルッカは、大金を積んで雇い入れたカリル・カシスの店の踊り子に仕事を任せ、自分は酒と女に溺れる生活になっていた。

なにせ何もしなくとも注文は舞い込み、商品はクリムトン・テリトリィから船便で毎日のように届くのだ。彼はどの国への入国もフリーパスとなり、有り余る金で政界のフィクサーとして暗躍する計画も立てていた。彼が考えるのは、どの国とどの国を対立させれば最も武器が売れるか、だけであった。

ロルッカが武器商人として暗躍する影で、カリル・カシスと9人の仲間たちは再びクンタラ建国戦線の活動を活発化させていた。彼女らは女に弱いロルッカに付け込み、実質彼を傀儡として操っていたのである。

ゴンドワンの地域は政府こそまだ存続していたものの、クンタラ建国戦線は支配地域を4分の3にまで拡げ、もはや政府などないも同然であった。

その立役者であるルイン・リーは、愛妻マニィと愛娘コニーを引き連れて、クリムトン・テリトリィに降り立とうとしていた。



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この続きはvol:59で。次回もよろしく。
















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