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「Gレコ ファンジン 暁のジット団」vol:45(Gレコ2次創作 第13話・前半) [Gのレコンギスタ ファンジン]

「ガンダム レコンギスタの囹圄」


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第13話「失われた設計図」前半



(OP)



ノレドの興奮は収まらず、メガファウナの軍医メディー・ススンによって鎮静剤が投与されしばらく眠らさせることになった。

ビーナス・グロゥブを襲った大混乱はひとまず収束していた。ゲル法王、ラライヤ、ノレド、リリンの4名は無事にメガファウナに回収され、地球人のビーナス・グロゥブへの入国は別命があるまで禁止されることになった。その間にメガファウナには補給が行われていた。

医務室で眠りについたノレドは軍医らに任され、ラライヤはリリンを伴ってブリッジに上がった。ラライヤが幼い彼女に代わって名前と父がトワサンガのガヴァン隊にいたことなどを紹介すると、メガファウナのクルーたちの間に重苦しい空気が流れた。

それもそのはず、メガファウナはザンクト・ポルトを占拠していたガヴァン隊と交戦になり、重力に慣れていない彼らの戦艦2隻を大気圏に押し込んで焼き殺していたからだ。ベルリをはじめ、その事実をリリンに伝えることはなかった。いまはただ戦争の虚しさを嘆くしかない。

ラライヤ「まさか・・・」

リリンを寝かしつけた後、緊急ミーティングの席でラライヤにはその事実が告げられた。しばらく絶句していた彼女であったが、気持ちに整理をつけると落ち着いて話し始めた。

ラライヤ「クレッセント・シップが地球を離れて、あっという間に何から何まで変わってしまった。誰が何を考えているのかさっぱりわからないんです」

ドニエル「オレたち軍人に罪がないとは言わない。だが(クルーたちを見回し)終わったはずの戦争がこうもあからさまに活発化しているのはどう考えてもおかしい。はじめはクリムの坊やのせいだと思った。キャピタルの政治体制のせいだとも思った。(頭を掻く)だがなぁ、釈然としねーんだ」

副艦長「トワサンガでベルリを襲撃したっていうメイドに化けたふたりの女はおそらくクリムの坊やの手下でしょうな。あの子の『闘争のための新世界秩序』『修正グシオン・プラン』ってのはキャピタル・テリトリィを奪って宇宙を侵略し、トワサンガ、ビーナス・グロゥブをすべてひとつの政府にするっていうアイデアですから、フルムーン・シップとG-メタルを欲しがってもおかしくない。それに、ベルリに後れを取ったのは機体のせいだとも思ってるでしょうから、G-セルフも欲しいはず」

ドニエル「おそらく表には出てきていないが、マスクもどこかで生きていてG-セルフで雪辱を誓っているはずだ。彼らのクンタラ建国戦線だの、ジムカーオ大佐だの、レイハントン家再興だの、なんでこんなにこんがらがっちゃったものかね」

ギゼラ「(溜息をつきながら)それに、ラ・グー総裁の暗殺。さっき法王さまに聞いた話じゃ、ラ・グー総裁はどういう理由かはわからないけど、スコード教の司祭を片っ端から逮捕していたとか」

ベルリ「(ラジオを耳に当てながら)逮捕された司祭は新総裁就任の恩赦で釈放されたってラジオで言ってますね」

ラライヤ「ヘルメス財団が黒幕で、スコード教がその隠れ蓑になっている可能性があります」

ラライヤのこの一言は驚きを持って受け止められた。

ラライヤはトワサンガでウィルミット長官らと過ごしたときに聞いた話や出来事などを話した。そしてゲル法王が冬の宮殿という場所に閉じ込められていたこと、ジムカーオ大佐だけでなくターニア・ラグラチオン中尉ほどの階級の人間ですら法王の解任を口にしていたことなど。

次にフラミニア・カッレから聞いたムーンレイスとクンタラの話。これらを総合すると、ヘルメス財団はウソの歴史をでっちあげ、自分たちを正当化した上で地球人を貶めるよう教育していることになる。

ラライヤ「地球は最初から我々の祖先が将来自分たちのものにするための開拓地として見做されていたんじゃありませんか? トワサンガもビーナス・グロゥブも、環境資源がある程度回復するまで、地球人に再建させて、時期が来たらすべて奪うつもりで」

副艦長「いや、待て待て。ラライヤちゃんの話は肝心な部分がおかしい。ヘルメス財団が黒幕だとして、目的はなんだ? つまりはレコンギスタだろう? ラ・グー総裁がレコンギスタを希望していたってことになるじゃないか。ヘルメス財団の総裁はラ・グーだ。地球なんてフォトン・バッテリーさえ止めればイチコロ・・・」

ドニエル「止めたんだよなぁ」

ギゼラ「いやいやいやいや、おかしいでしょ? だったらなんでビーナス・グロゥブは仲間割れしてるんです? ゲル法王をはじめわたしたち全員をここで殺しちゃえば、何かを疑う人はいなくなるんですよ。仲間同士で殺し合う必要なんてないでしょ?」

ドニエル「殺しには来てないが、歓迎もされていないんだ。ベルリひとりを中に入れたのだって、結局は罠だったわけだから。でもなんでビーナス・グロゥブがG-セルフを欲しがったのか」

ギゼラ「だからそれが反ラ・グーのレコンギスタ派なわけでしょ? 1年前に関係者を処分したつもりが生き残っていたって話で。だけど、クレッセント・シップもフルムーン・シップも地球と月の近くにあってビーナス・グロゥブには惑星間を移動できる船がなかった。戻って来たからフルムーン・シップとG-セルフを奪ってレコンギスタしようとした。彼らは船の出力を上げるのに必要なのがG-メタルだって知らなかった。だからG-セルフを奪おうとした。ほら、これで辻褄が合う」

ラライヤ「じゃあ、ラ・グー総裁がスコード教の司祭を逮捕したことはどう解釈するんですか? スコード教がレコンギスタ派だったとでも? ラ・グー総裁を暗殺した秘書もレコンギスタ派? それに、レコンギスタってそもそも何ですか? 地球を再侵略するという意味です。でも、実際のレコンギスタ派はフラミニアさんがそうですけど、ただ地球に行ってみたかっただけの人たちなんです。スコード教の中に地球に行きたいという人がいるなら、それこそこのメガファウナに乗せて一緒に連れて行ってくれと頼めばいい。真の侵略行為は何かと考えれば、地球と戦って土地を奪うことですよ」

副艦長「だからさ、それがしたいならフォトン・バッテリーなんか配給しなけりゃいいんだよ。地球はすぐに干上がって人口は激減する。モビルスーツも動かなくなる。侵略なんて簡単にできちまう。フォトン・バッテリーの配給をやっているのはヘルメス財団とスコード教だ。このふたつが喧嘩する理由がないんだって」

ギゼラ「喧嘩してるし、ラ・グー総裁は殺されたじゃない!」

ドニエル「ノレドがG-ルシファーで持ってきたちっこいMSみたいなの、あれは何か関係ないのか。ノレドはあいつのせいでなんかすごいことになったって泡吹いてたけど」

副艦長「ハッパの話じゃあれはアンドロイドっていう自動人形みたいなものだって話ですよ。なんでも宇宙世紀時代後期の代物で、人間をニュータイプにするのを諦めて、機械で代用したとか。もちろんアグテックのタブーに触れるもので、強化人間の代わりとかなんとか、ま、あいつはオタクだから話が半分もわからなかったけども。こっちの話には関係ないでしょ?」

ドニエル「これじゃ姫さまにどう報告していいのかわかんねー。ベルリ、お前はどう思ってるんだ?」

ベルリ「話が前後しちゃいますけど、自分は月でムーンレイスのディアナ・ソレルっていう女王さまに会ったんです」

ラライヤ「(血相を変えて)たしかに月にはムーンレイスの人々がいまも生きているとか、交代で起きているとかそういうお伽噺はありますけど、ディアナ・ソレルなんて大昔のお伽噺の主人公じゃないですか。そんなの担がれただけです」

ベルリ「ドニエル艦長は見てないですか、キエル・ハイム って名乗った女性」

ドニエル「トワサンガでか? オレはハッパといたからな。知らんな」

ベルリは月から発せられていた救難信号を辿ってムーンレイスの基地らしき場所に迷い込んだこと、ある部屋にレイハントン家の紋章の入ったコンソールがあり、G-メタルを入れたところディアナ・ソレルたちムーンレイスが続々と目覚めてきたことなどを話した。

副艦長「そりゃ貴重な情報だ。レイハントンの先祖が彼らを封印していたってのか?」

ラライヤ「(首を振り)有り得ない。ディアナ・ソレルなんて・・・。実在しているはずがない」

ベルリ「でもラライヤは冬の宮殿のことは知っていたんだろ?」

ラライヤ「冬の宮殿は、わたしたちがそう呼んでいただけなんです。モビルスーツの教練中に月の中に迷い込んだ子がいて、宮殿のような場所に出たからお伽噺の冬の宮殿だと仲間内で呼び始めただけです。スコード教の聖地だの、あんな恐ろしい映像が出てくるだのは知らなかった」

ドニエル「お化けでも出たのか?」

ラライヤ「戦争の映像ですよ。おそらく宇宙世紀時代の。G-セルフによく似た白いモビルスーツと赤いモビルスーツが戦っていて、激しい憎しみ合いが地球を荒廃させていく映像をずっとです」

副艦長「反省部屋のようなものだな。法王さまもお気の毒に」

ドニエル「あ、でも待てよ。ゲル法王さまはお人柄がいいからそういう戦争の映像を見て反省していたかもしれんが、ラライヤの話じゃねーけど、宇宙のスコード教の人間はその破壊の映像を崇めていたってことはねーのか? 破壊信仰のようなさ」

ベルリ「それはいくら何でもスコード教徒に対する酷い侮辱ですよ!」

ドニエル「まーまー待てよ、ベルリ。落ち着くんだ。可能性の話だ。もし宇宙のスコード教の連中が宇宙世紀時代の破壊行動を礼賛している状況があればどうなる? それをずっと隠していて、ゲル法王からラ・グー総裁が何か聞くか、ラ・グー総裁が何らかの理由で今回そのことに気づいたとしたら。そしたらスコード教の司祭を逮捕した説明もつくし、逆に殺された説明もつく。ベルリだって地球のスコード教のことしか知らないわけだろ?」

ラライヤ「わたしは艦長の意見に賛成ですね」

ドニエル「よし。議論はここでいったん打ち切る。事態は複雑だ。みんな自分でよく考えてくれ。それから、ノレドの話を聞いて、どうもG-ルシファーは何か別の目的のある機体かもしれないとわかった。あれはしばらく封印してアダム・スミスとハッパに調べさせる。アンドロイドってやつもそうだ。ついてはルアンはケルベスが使っていた赤いザンスガットに乗り換え、ラライヤはG-アルケイン、リンゴはモランに搭乗機を変更する。いまから言うことは絶対に守れ。オレはお前たちを必ず地球に還す。もう勝手な行動はしてくれるな。ラライヤとノレド、それにベルリ。オレの許可なく勝手な判断では動くな。ギゼラにはわりーが、ちょっと話の整理を頼みたい」







ビーナス・グロゥブの新総裁に選出されたキルメジット・ハイデンは、事態収拾に全力を傾けると話し、新総裁就任式の取り止めと前総裁であるラ・グーの葬儀を大々的に執行することを臣民に約束した。また副総裁はしばらく置かないとの方針も同時に示した。

街の中心部にある大聖堂で地球からやって来たゲル法王の説法を聞いていたあと、突然ラ・グー暗殺の報に触れた彼は、自分の敵となる存在がかなり大きなものだとすぐに確信した。それを裏付けるようにラ・グーの秘書官よりもたらされたヘルメス財団とスコード教の秘密。

このふたつの団体が目論んでいるものが宇宙世紀の再来となれば自分の命もそう長くはもたないだろうと覚悟するしかない。ラ・グーの秘書は自らの命をもってラ・ハイデンとなる彼に情報を託したのだ。これはラ・グーから彼に送られた最後の信頼の証であった。

秘書官は彼に何かがもたらされると死ぬ前に話していた。何かは情報であろう。それがどのように送られてくるのかは想像もできない。情報は途中で抹消される危険性もある。かといってあからさまにヘルメス財団と敵対すれば、余計に情報は届かなくなり、彼はお飾りの総裁になるしかなくなる。

新総裁ラ・ハイデンは、安全の確保を理由に近衛兵団長キャプス・マデンを王宮に常駐させ、ラ・グーの葬儀が終わるまでは秘書官も置かないことにした。それをして臆病と罵られるのは覚悟の上である。

ハイデン「老マデンにお聞きしたいのだが」

彼はラ・グーの肖像が掲げられる王宮の執務室で居心地悪そうに話し始めた。王宮ではラ・グーの12人目の妻が退去の準備を進めている。それにしても民政ではないにしてもなぜビーナス・グロゥブには王宮があるのかと彼はふと思うのだった。

キャプス「年寄りならば何でも知っているだろうと思われるのは心外だが、前総裁のラ・グーさまは、公安警察の反乱とスコード教の裏切りだとわしには言うておったな。反乱の黒幕はピッツラク公安警察長官。これはすでに銃殺されておるから、心配はいらんと思うが」

ハイデン「さて自分はラ・グー総裁のように頭が切れないので、いまさらレコンギスタでもなかろうと思うのですが。それに、警察や守備隊が真っ二つに割れて交戦していたのも引っ掛かります」

キャプス「ビーナス・グロゥブの者なら誰でもレコンギスタしたいのでは? もうこの場所には若々しさがない。わしはじきに死ぬからいいが、若い者はムタチオンに苦しむわしらのようにはなりたくないでしょうな。新総裁は何がそんなに不安なのじゃ?」

ハイデン「(不安の正体には答えずに話題を変える)総裁となったからにはラ・グーとは違った方針を出してみたいと誰もが思うでしょう。自分はビーナス・グロゥブの者を地球に入植させていこうと考えているのですよ。これについて老マデンのご意見は?」

キャプス「いいんじゃないか。ただそれを言い始めると誰もが我こそ先にと争って、ビーナス・グロゥブの保守管理が疎かになったり、フォトン・バッテリーの製造が遅れたりしよう。ただでさえムタチオンで苦しむ我ら、これ以上長寿化技術で延命するがいいか、人口減を受け入れフォトン・バッテリーの製造を諦めるがいいか、大きな決断になるだろう」

ハイデン「どちらにしてもいままでのようにフォトン・バッテリーを供給し続けるのは難しいはず。トワサンガと地球への供給量を減らすか、それとも・・・」

そこに王宮付きの使用人がやってきて、ふたりに客人があると告げた。ハイデンはこれを断ろうとしたが、相手がヘルメス財団の人間だと聞いて翻意し、部屋に通すよう命じた。

やって来た男は疲れ果てているように見えた。ビーナス・グロゥブの人間であるのは確かなようだが、どこか違和感がある顔立ちであった。服装もどこかおかしかった。フォーマルないでたちなのだろうが、ビーナス・グロゥブのいかなる流行にも同じものがない形を纏っている。

男はハイデンに向かって、2万人の人間をいますぐトワサンガに送り届けるように命じた。ラ・ハイデンとキャプス・マデンは驚愕するしかなった。男はビーナス・グロゥブの総裁に命令を下したのだ。

ハイデン「いまこのビーナス・グロゥブから2万人も人員を引き抜くことはできない。そんなことをしたらロザリオ・テンの保守管理さえ滞るようになるだろう。なぜいまそのような要求をなさるので」

男「もうここには何も残っていない。すべては失われてしまった。君はそれ以上のことは知らなくていい。とにかく船を用意して、トワサンガまで運んでくれればあとは自分たちでやる。船と食料、空気、水、そういったものを手配してくれ」

ハイデン「(両手を広げて)無理ですね。自分はラ・グーから引き継ぎを受けていない。それに2万人分となれば、かなりの量だ。すぐには手配できない」

男「何日で用意できるか」

ハイデン「悪いが用意などしないよ。ヘルメス財団の方だと聞いていたが、自分はビーナス・グロゥブの総裁としてこの話はお受けできない」

男「こんなに物分かりの悪い男だとは思わなかったな。君には申し訳ないが、これはヘルメス財団の重要事項ゆえ、詳しい説明をするのは何十年もあとになるだろう。とにかくトワサンガに行かねばならないのだ。もうここには何もないのだから」

ハイデン「何がないのですか?」

男「答えられない」

キャプス「すまんが口を挟ませていただこう。その2万人というのはIDをお持ちなのか?」

キャプスの質問に男は答えられない。彼は苦虫を噛み潰したような顔でふたりを睨み返している。

キャプス「そうか。すまんな。これもビーナス・グロゥブのためだ。悪く思うな」

そういうとキャプス・マデンはやおら立ち上がって男の眉間を1発で撃ち抜いた。

ハイデン「やれやれ。今日は殺生ばかりする日だ」

キャプスは大声で男の死体を始末すよう指示をした。王宮付きの使用人たちは新しい主たちがラ・グーとはまったく違う恐ろしい人物ではないのかと疑い、死体を運び出しながらビクビクしている有様であった。ハイデンとキャプスは目も合わさないまま飛び散った血が片付くのを待った。

ハイデン「自分はビーナス・グロゥブの副総裁になって、このコロニーの過剰生産の在り方についてずっと疑問に思ってきたのですよ、老マデン。地球が数千年文明を持続させるためのエネルギーの蓄積を行う崇高な任務。ビーナス・グロゥブの人間はそれを誇りに思って日々労働に精励している。さて、その過剰生産に別の目的があったなればいかがするか」

キャプス「ラ・グーさまは近衛兵団を通常の100倍に増員しろと命じてきましたが、いやはや、IDを持たないヘルメス財団だけで2万人。それに公安警察の一部、守備隊の一部、スコード教の坊主とくると、100倍でも足りませんなぁ。やれやれ、これでは総裁すら命も失うわけだ」

ハイデン「ビーナス・グロゥブにあった何かが失われたようで、焦ってトワサンガへ逃げる算段だったようです。つまり、トワサンガには失われたものがまだあると彼らは知っている。ということは、クレッセント・シップで何度も行き来していたということ。ラ・グー総裁は前日に闇の宮殿へ行かれたとか。同行した者らから報告は?」

キャプス「とっくに殺されましたわい」

ハイデン「なるほど。(頷く)なるほど。この騒ぎをトワサンガと地球に波及させてはなりません。ただちにクレッセント・シップ及びフルムーン・シップの出立準備を。自分はベルリ・ゼナムくんと会いましょう。彼ら次世代の若者たちに委ねるしかないようですから。そうか。何かが自分の元に届くとはこういうことであったか・・・」








ラライヤ「気がついた、ノレド」

ううんとうなってノレドは上体を起こした。そこはメガファウナの医務室のベッドの上であった。鎮静剤を投与された彼女はしばらくボンヤリとしていたが、徐々に頭がハッキリしてくるとまた混乱状態に落ちていこうとした。

ラライヤはそんな彼女の身体を支えて抱きしめると、ノレドは次第に落ち着きを取り戻して、静かに涙した。

ノレド「ラライヤ、あたし、大変なことをしちゃったんだよ。G-ルシファーが・・・」

ラライヤ「勝手に動き出したんでしょ。ノレドさんのせいじゃないです」

ノレド「でも、闇の宮殿も、巨大なドッグも、みんな消えちゃった。こんなことしたら、もう地球にフォトン・バッテリーなんて配給してくれなくなる。あたし、ベルリのためになるならって頑張ったつもりだったのに。なんでこんなことになっちゃったんだー・・・」

ラライヤ「なるようにしかならないですよ。ノレドさんのせいじゃないんです。ビーナス・グロゥブは何かがおかしくなり始めています。変化の前ってこんな感じだと思いますよ」

ノレド「でも、でも、地球の人たちにフォトン・バッテリーが来なくなったら」

ラライヤ「大丈夫、心配しないで。それより、ノレドさんの話を聞いていて思い出したんですけど、何もかも消し去ってしまう光の粒ってもしかしてあのときの?」

ノレド「そう、あのときの光の粒と同じなんだ。あたし、あれはああいう武器で、ラライヤが操作して出したんだと思ってた。でもあのエンフォーサーが・・・」

ラライヤ「エンフォーサー? 何かを執行する人ですか?」

ノレド「(泣きながら)よくわからないんだよ。ジット・ラボの跡地に行ったらフラミニアさんがいて、地下へのエレベーターを動かしてくれた。その前に闇の宮殿というのが地下にあるって聞いていたから、ビーナス・グロゥブの秘密を探ろうと思って行ってみたんだ。そしたらはじめはそこに誰もいなくて、空っぽの都市みたいなところで、建物の中にあの銀色の人たちだけがいたんだよ。それで建物の中に入って、何か手掛かりになるかもしれないって考えて、G-ルシファーに乗せて・・・、そしたら」

ラライヤ「目を離したすきに操縦席を奪われて、勝手に」

ノレド「ラライヤ、怖いよ。G-ルシファーは、多分空間を計測していたんだと思う。そして全部消しちゃった。本当だよ、あたしはそんなことしないもん」

ラライヤ「G-ルシファーって、ジット・ラボから盗み出した機体で、わからないことがたくさんありすぎますね。コバシさんやクン・スーンさんならわかるかもしれませんが・・・」

ノレド「あたし、死刑になるのかな。あそこ、最初は誰もいなかったのに、エンフォーサーを盗んだらたくさん出てきて」

ラライヤ「たくさん?」

ノレド「2万人。これもG-ルシファーが勝手に計算したんだ。それで、アップにしたら、アイリスサインを確認して、その人たちもエンフォーサーだって」

ラライヤ「ハッパさんはあれはアンドロイドじゃないかって。でも、エンフォーサーってなんでしょうね?」

ノレド「死刑執行人なんだ、きっと。あたしはとんでもないことをしてしまった」

キラン・キムがノレドを横にならせたので、ラライヤはいったん医務室を離れた。するとその脇にベルリが立っていた。

ラライヤは少し怒って、なんで自分でお見舞いできないのかと叱った。なおも何か言おうとしたとき、ベルリは艦内放送でブリッジに呼び出されてしまった。

ベルリがブリッジに上がってみると、ひとりの杖を突いた老人が立っていた。

ドニエル「こちらはビーナス・グロゥブ近衛兵団のキャプス・マデン兵団長という方だ。先ほどランチで到着して、ベルリと話があるらしい。(キャプスに向かって)本当にここでいいので。何なら別室をご用意できますが」

キャプス・マデンは見かけによらず闊達としており、大声量でここで良いと告げるとベルリに向き合って話を始めた。

キャプス「お前さんがレイハントンの誘拐された王子か」

ベルリ「あ、はい」

キャプス「フルムーン・シップをどうやって操縦してここまで来た?」

ドニエル「それはわたしから。ここにいるステアが、クレッセント・シップで操縦を習ったのです。アメリアには優秀なメカニックもおりますので、機関部の知識は動かせるくらいにはありました」

キャプス「(ドニエルの説明に納得して頷き、ベルリに向き直る)現在ビーナス・グロゥブでは容易ならざる事態が起こっていてな、詳しくは説明しないが、クレッセント・シップとフルムーン・シップをしばらくお前さん方に預けたい。トワサンガと地球は現在どうなっておるか」

ベルリ「残念ながら各地でまた紛争が勃発しております。彼らは地球統一政府を作り、トワサンガ、ビーナス・グロゥブと侵略するつもりでいるのです。クレッセント・シップとフルムーン・シップを地球圏へ移動させるのは危険ではないかと」

キャプス「それがそうもいかんのだ。もしこちらにこの2隻があると、2万人以上がトワサンガに押しかけ、侵略戦争を仕掛ける可能性がある。状況が終了するまで預かってはもらえまいか。それとも、君らではクレッセント・シップとフルムーン・シップをやすやすと奪われてしまいそうか? 君はトワサンガをどれほど掌握しているのか」

2隻の巨大惑星間移動船を押し付け合うのは奇異な光景であった。本来ならばそれを得たものが一気に有利になる船であったからだ。

ベルリ「ぼくは地球育ちなので、トワサンガの掌握なんて考えたこともないんです」

キャプス「(失望した声で)親父と違って君は頼りにならん男だな。では、トワサンガの統帥権をビーナス・グロゥブに返上し給え。我々近衛兵団がトワサンガへ赴き、統治しよう。君らはここに残って、新総裁のラ・ハイデンの下で働くがよい」

戸惑うベルリが何か言いかけたとき、ブリッジに大きな声が響き渡った。姿を現したのは医療用の部屋着を身に着けたノレドと彼女を支えるラライヤであった。

ノレド「トワサンガの統帥権は渡せません!」

キャプス「あなたは?」

ノレド「あたしは・・・レイハントン家の王妃です! 改めて申しますが、トワサンガの統帥権は渡せません。クレッセント・シップとフルムーン・シップはこちらで預からせていただきましょう。しかし、2隻とも地球圏へ持っていった場合、いつビーナス・グロゥブにお返ししていいのか」

キャプス「ふむ。では半年後に返していただくということでいいかな」

ノレド「わかりました」

心配になったドニエルが慌ててノレドを制しようとするが、ノレドはそれを押しのけてキャプス・マデンと向き合った。

ノレド「地球は現在、法王庁より発表されたフォトン・バッテリーの供給停止に怯えています。ビーナス・グロゥブよりそれが再会されるという確約はいただけますか?」

キャプス「(感心して)ふむ。では、地球圏での戦争を半年で終わらせ、その報告をクレッセント・シップとフルムーン・シップとともに持ってきたら供給再開をいたそう。これで不服はないか?」

ノレド「必ず戦争を終わらせてみせます」

キャプス「良い返事だ。この科白をそこの坊やから聞きたかったものだが、坊やは戦うのが怖くなっているようだ。戦いが終わらぬうちから終戦気分で戦意を喪失しているようでは、そう遠くないうちに君は死ぬだろう。早くその妃との間に子でも作ることだ」

そう言い終わると、キャプス・マデンは矍鑠たる足取りでブリッジを去っていった。







初めて見るアンドロイドを分析していたハッパは、その肌がトワサンガで整備を依頼された巨大な頭の取れるモビルスーツの表面に酷似していることに気がついた。

顕微鏡で採取した微量の粉末を眺めていた彼は、昔読んだSF小説のアイデアを思い出した。

ハッパ「この肌に見える金属の粒が、1台1台自立した小さなマシンなら、こいつの表面が人間の肌のようになっている説明がつく。ナノ・マシンとでも呼べばいいのか。だが、そんなことはあり得ない。こんな小さなマシンを無数に作って動かすなどできるはずがない。ましてや、トワサンガで見たあのMSほどもあったらその量は膨大だ。ああ、ヘルメスの薔薇の設計図だけじゃなく、宇宙世紀時代のあらゆる技術が手元にあれば、もっともっと凄いものがあるだろうに。宇宙世紀は戦争の時代かもしれないけど、こんなのまさにロマンだ! オレはこんな夢にあふれた時代に生まれたかったよ」


(アイキャッチ)

この続きはvol:46で。次回もよろしく。



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