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「Gレコ ファンジン 暁のジット団」vol:44(Gレコ2次創作 第12話・後半) [Gのレコンギスタ ファンジン]

「ガンダム レコンギスタの囹圄」


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第12話「全権大使ベルリ」後半



(アイキャッチ)


ラ・グー総裁が銃弾に倒れ血まみれの身体を地面に横たえたとき、ベルリは何者かに腕を掴まれ人垣の後ろへ放り投げられた。それが何かを意図したものなのか、単に子供を危険から遠ざけようとしたものなのかはわからない。ただベルリはラ・グーと引き離され、そのまま警官の群れに他の群衆とともに押しやられてしまったことは確かであった。

悲鳴が飛び交う現場で、人を押し分けて彼の元に辿り着くことはできなかった。ベルリはもみくちゃにされて何もすることが出来ないまま何度も背伸びをしてラ・グーの安否を気遣うことしかできなかった。騒然とした現場に救急車が到着し、ラ・グーは運ばれていった。

そしてベルリは無力感とともにその場に取り残されたのである。

銃声は2発。もう1発が誰かに当たったのか逸れたのかはわからない。犯人はその場で捕らえられて近衛兵団に連行されていった。近衛兵団と警察の間で小さな衝突もあった。それは市民にとって驚きであったらしく、商店はどこも臨時休業を決めて窓を固く閉ざした。

現場に集まってきた野次馬たちを避けて広場の方に移動したとき、興奮冷めやらない市民たちの間に改めてざわめきが巻き起こった。彼らが指さす先を見ると、オレンジ色のテン・ポリスのポリジットに先導されてG-セルフがやってくるのが見えた。スピーカーからベルリを呼ぶ声がする。

ベルリ「ラライヤ?」

G-セルフから呼びかけているのはラライヤであった。ポリジットから呼びかける声にも聞き覚えがある。かつてともに地球まで旅をした仲間であった。

広場に着陸したG-セルフはハッチを開けた。コクピットにはビーナス・グロゥブのものとは少しだけ形の違う近衛兵の装束をまとったラライヤがベルリのパイロットスーツを掲げて何か叫んでいる。ベルリはすぐにG-セルフに乗り込んだ。

ベルリ「なんでビーナス・グロゥブにラライヤが?」

ラライヤ「クレッセント・シップで来たんです。ノレドさんや法王さまも一緒。あと、トワサンガから子供を連れてきています。とにかく早く着替えて」

ベルリ「たったいまラ・グー総裁が撃たれて病院へ運ばれたんだ」

着替えを済ませたベルリはラジオのボリュームを上げた。すると、ニュースなどの番組をほとんど放送していなかったビーナス・グロゥブのラジオ局がしきりにラ・グー総裁の死去を繰り返し放送しているではないか。奇異に思ったベルリはラライヤに操縦を任せてラジオに聞き入った。

それによると、反ラ・グー派によるクーデターが起き警察組織の一部が暴動を起こしてフルムーン・シップの強奪を謀ったが近衛兵団を増員したラ・グー総裁がこれを鎮圧、首謀者のピッツラク公安警察長官は銃撃戦に巻き込まれ近衛兵団によってその場で銃殺、総裁は自ら近衛兵団を率いてロザリオ・テンの反乱分子を鎮圧したものの、その際に秘書のひとりによって暗殺されたとのことだった。

ヘルメス財団は直ちに副総裁であるキルメジット・ハイデンを新総裁ラ・ハイデンとして任命したとのことだった。

G-セルフとポリジットは、昨晩ラライヤが宿泊していたホテルに向かっていた。メガファウナ艦長のドニエル・トスはビーナス・グロゥブの混乱を見かねてベルリ、ゲル法王、ノレド、リリンの救出を指示してモビルスーツを送り出していたのだ。

ラライヤ「聞きました。ベルリさんはアイーダさんの名代としてラ・グー総裁と交渉するのだと」

ベルリ「そのつもりだったんだけど・・・、交渉相手がラ・ハイデンという人に変わった? しかもこんな形で?」

ラライヤ「(沈鬱な表情で首を振り)ビーナス・グロゥブはずっと何かがおかしいんです。昨晩わたしは市内が騒がしいのでホテルの外へ出てみました。すると近衛兵団の制服に似たものを着ているというだけで間違われて運ばれていったんです。そこでG-セルフに乗り込みました」

ベルリ「ぼくはそこでピッツラクという人に銃口を突き付けられて機体を明け渡したんだ。彼はレイハントン・コードのことを知らなくて、ぼくは解放された」

ラライヤ「ちょっと待っていてください。このホテルにノレドとリリンちゃんがいます」

そう告げるとラライヤはウィンチで道路に降り、ホテルのロビーに駆け込んだ。しかしすぐさま走り出てきてホテルの周りにいた人たちに何事か尋ねて回っている。

ベルリ「(叫ぶ)ノレドがいないのかー!」

ラライヤはコクピットに戻るとベルリに操縦を任せて自分はモニターのチェックに回った。

ラライヤ「法王さまは中心街の教会で説法しているそうです。ノレドさんは朝1番にリリンちゃんを連れて出て行ったままだと」

ベルリ「よし、手分けしよう。(モニターに向かって)ポリジットの人はビーナス・グロゥブに詳しいですから、中心街の教会に行ってゲル法王を救出してメガファウナに戻ってください。(ポリジットが頷いてすぐさま飛び立つ)ぼくらはノレドを探そう。あいつ、なんでこんなときにちょろちょろと」

ラライヤ「(怒って)それは違います。ノレドさんはトワサンガでベルリさんのお妃のフリをしろとジムカーオという人物に言われて以来、自分にできることを必死にやって来たんです。すべてはフォトン・バッテリーの供給を再開してもらうためですよ。ベルリさんだって一緒でしょう?」

ベルリ「それはそうかもしれないけど、地球ではキャピタルで反乱が起きたり、クリム・ニックがアメリアに戦争を仕掛けて来たり、クンタラ建国戦線とか、あっちこっちが滅茶苦茶なんだ。トワサンガもビーナス・グロゥブもおかしなことばっかり。どうしてこんな・・・」

ラライヤ「少しあてがあるので、ジット・ラボの跡地に向かってもらっていいですか。(ベルリが機体を飛ばす)ベルリさんのラジオを聞いていて思ったんですけど、もしラ・グー総裁を暗殺した犯人グループが、ラ・ハイデンという新総裁の仲間だとしたら、ラ・グー総裁の敵は近衛兵団を丸ごと吸収してしまいますね」

ベルリ「(操縦しながら)それはぼくも考えた。でもそれだと総裁の任命権を持つヘルメス財団という組織がすべての黒幕ということになってしまう。ヘルメス財団はスコード教の母体だ。そこが黒幕だなんて・・・」

ラライヤ「そういう思い込みはこの際は禁物なんです。反ラ・グー派がレコンギスタ派の残党であるなら、それはメガファウナが初めて訪問した1年前に発覚したのですから、とっくにラ・グー総裁が処分しているはず。それに、ビーナス・グロゥブはウソの歴史を教えています。わたしたちはフラミニアさんに聞いたんです」

ベルリ「フラミニアさんがビーナス・グロゥブに来てる?」

ラライヤ「フラミニアさんは地球で逮捕されて、クレッセント・シップでビーナス・グロゥブに連行されたあと裁判を受けて重加算税の処分を受けてから役所で働いています。彼女は月にムーンレイスという人々がいて、地球の種を保存していたと言ったんです。逆にわたしたちの祖先は、クンタラという身分制度をそのままにしている状態で、地球にクンタラを捨ててムーンレイスが蓄えていた種を奪ったと。そしてクンタラを地球の悪習だとウソを広めたと。ここからは想像ですが、宇宙の果てから戻って来た地球人は、まず月でムーンレイスと接触した。そして新たな食糧源を彼らから奪って、地球にクンタラを捨てた。彼らは食料であると同時に労働力として使われ、キャピタル・タワーが建設された」

ベルリ「そんな! いや待って、いまは・・・、いまはまだ待って」

G-セルフがジット・ラボの跡地に到着したとき、そこにはすでにジャイオーンを先頭に、5機のリジットが配されていた。






リリンは優秀なナビゲーターであった。彼女はユニバーサルスタンダードをよく理解しており、後部座席で様々なことを調べては前方のノレドに情報を転送した。

ノレド「(リリンから送られてくる情報を眺めながら)そうか、この空間は一辺が2kmの立方体なのか。なんでこんなに人工的に作ってあるのだろう? というか、リリンちゃん、すごい。そうかぁ、G-ルシファーってこんなこともできる機体だったのか」

G-ルシファーに乗ったふたりはそのままビル群の間をすり抜けるように飛んでいった。闇の宮殿と聞いていたノレドはそのあまりにそっけない風景にガッカリしていた。何もかも機能が優先されて、装飾的なものがどこにもなかったからである。ビーナス・グロゥブの地上とは大違いであった。

ビルの壁面はガラス張りだったので、宙を飛ぶG-ルシファーの姿がそのまま映し出される。地球育ちのノレドはこれほどのガラスの壁はアメリアで朽ちたものを見ただけであった。

アメリアにはここと同じような風景があったが、どれも朽ち果てそうになっている。ガラスは割れて蔦が覆い茂っていた。それは古い時代に作られた都市で、現在はそれらを改修して再利用するのがやっとなのだとアイーダに聞いたことがあった。現在の地球では再現できないロストテクノロジーなのだ。

着地してみると、道路は石畳ではなくてもっと柔らかいものでできていた。すると素材はアスファルトであるとモニターに表示された。

ノレド「G-ルシファーってただの兵器じゃないみたいだ。こうして分析するためのものなのかな? でもその割にいかつい装備がたくさんついているし・・・」

リリン「ノレドさん、あれはだれ?」

転送されてきた画面に映っているのは、ビルの中で働く銀色の肌の女性であった。望遠レンズで映し出された映像は不鮮明で目を凝らしてみても詳細は分からない。ただ人間のように動いて働いている。その他に人の姿はない。

眼の良いリリンはビルの中に動くものを見つけるとすぐにカメラで捉えて前方モニターに転送してくる。映るもの映るものすべてが銀色の女性だ。ノレドは仮面を被っているのかとも考えたが、実際に自分で確かめるしかないと覚悟を決めると、リリンにこう言い聞かせた。

ノレド「これからおねーちゃんはあの(前方を指さす)建物に入って調べてくる。リリンちゃんはここで待っていて。誰か人が近づいてきたらパネルのここを押せば大きな音が鳴るから。いい?」

リリンは黙って頷いた。トワサンガで改良されたG-ルシファーには生体認証コードが仕込まれている。ノレドはラライヤと同じでパイロット登録がしてあり、すべての機能は使えないが彼女でなければコクピットは開けられない。

ノーマルスーツのままノレドは機体を離れてビルの中へと入っていった。

フロアに人影はなかった。コツコツと靴音を響かせながら、ノレドはゆっくりと銀色の肌の女性を探した。エレベーターで8階へ上がると、そこは広いオフィスになっていた。床にはカーペットが敷かれ、埃を吸着するようになっている。窓際に、その女性は立っていた。

ノレド「あの、お聞きしたいことがあるのですが」

銀色の肌の女性はゆっくりとノレドの前へ歩いてきた。表情は変わらないが、微笑を浮かべているようにも取れる。身長はウィルミット長官ほどあり、ノレドが見上げるほどの大きさだった。彼女の銀色の肌がメイクではなく金属でできているのは確かだった。しかし継ぎ目はどこにもない。

ノレド「あたしはノレド。お聞きしたいことがあるんです。あなたは何ですか? 人間ですか?」

エンフォーサー「あなたのアイリスデータは存在しません」

銀色の肌の女性はそう応答した。

ノレド「誰のアイリスデータならあるんですか?」

エンフォーサー「すべてのエンフォーサーです」

ノレド「エンフォーサーとは何ですか?」

エンフォーサー「許可がありません」

埒が明かないようだと理解したノレドは、どうしたものかと思案した挙句、オフィスにあるものを物色し始めた。物を盗もうとしたときにエンフォーサーがどのように反応するのか確かめたかったのだ。エンフォーサーはノレドのあとをついて歩いた。まるで人間と変わらない動きで、継ぎ目のない肌が人間の肌のように自在に動くことに感心した。

彼女はどこまでもついてきた。ここでどのような仕事がなされているのか見当もつかず、めぼしいものもなく、他に人もいないようなので、ノレドは部屋を出た。エンフォーサーもぴったりとついてきた。エレベーターに乗って階下へ降りたが、彼女も一緒にエレベーターに乗って来た。

どこまでついてくるのかと歩き続けると、建物の入口のところまで追いかけてくる。しかしビルから出ることはしないのでどうしようかとノレドは迷ったが、フンと鼻から息を吹き出すとその女性型の人形を担いでG-ルシファーのあるところまで戻っていき、そのままコクピットに乗せてしまった。

ノレド「こいつ、重いなー。リリンちゃん、大丈夫? 何もなかった?」

リリン「なにもなかったけど、知らない人がたくさんこちらにくるよ」

ノレドは転送された画像を見て驚いた。たしかに誰かがやってくるのだが、服装が見慣れない様式なのだ。おそらく正装であるはずだが、灰色や藍色の上下に白のシャツを着て、色とりどりのネクタイを締めている。似たような服装はどこにでもあるが、ビーナス・グロゥブの正装とはまた違う。

男女の比率は同数ほど。人種は様々。一見するとアメリア風に取れなくもないが、やはりどこかが違う。その違和感が何によるものなのかノレドには分からなかった。

男たちが何か叫んでいるのでマイクを向けてみると、モビルスーツをここに入れてはいけないと叫んでいる。そこでノレドは彼らとコンタクトを取ってみることにした。

ノレド「(マイクで呼びかける)あたしたち地球からやって来た者です。探検していたらここには入ちゃって。ここは一体なにをするところなんですか?」

背広の男性「とにかくここへは入っちゃいかん。勝手に入っていいところじゃないんだ」

ノレド「ここはまるでアメリアみたいですね」

コクピットにカウンターが現れ、数字が表示された。数字は20000を中心に上下していた。

ノレド「(マイクをオフにして)これって人間が2万人いるってことなのかな。リリンちゃん、わかる?」

リリンは首を横に振った。ノレドの斜め後ろに座らせたエンフォーサーが彼らのアップが映るたびに反応するので、リリンはモニターをすべて彼らの顔に標準を合わせてみた。

エンフォーサー「アイリスサイン確認」

ノレド「ということは、あの人たちがエンフォーサーなのか。何を執行する人たちなんだろう?」

そのとき、座席に座らせていた銀色の女性エンフォーサーの挙動がおかしくなり、ガタガタと震え出したかと思うと急に停止して瞳を赤く光らせた。

隣に座らされていたリリンは恐怖のあまり泣き出してしまい、ノレドは道路に集まってくる人間のエンフォーサーを気にしながらリリンをあやさねばならなかった。

人間のエンフォーサーは女性を建物の中に避難させたのち、代表者数人だけがG-ルシファーの前に立って何か伝言しようとしている。しかしリリンの泣き声が大きくてノレドにはよく聞き取れなかった。男たちはなおも何かを叫んでいるが、リリンを泣き止ますためにノレドが操縦席を離れると、立ち上がったエンフォーサーが勝手にその場に座ってしまった。

エンフォーサーは座席に座ったまま動かなかったが、G-ルシファーの機体は勝手に動き出し、闇の宮殿と呼ばれるこの機能的な都市の上空を旋回したのちに虹色の光を放ち始めた。

その光に触れたものはその場で消え去った。ノレドは夢を見ているかのような心持でそれを眺めた。精緻に作られた都市が、絵に描いた都市を消しゴムで消すかのように消滅していくのだ。G-ルシファーは、ロザリオ・テンに張り付くように存在するさかさまの世界を文字通りこの世から消し去っていった。

20000人いた人間たちは上空からは豆粒のようにしか見えなかったが、避難口のような場所に殺到しているのは分かった。モニターを操作して確かめたかったが、リリンは泣き止まず手が付けられない。

30分ほどで、1辺が2kmのこの人工的な都市は完全に焼失してしまい、重力コントロールを失ったためかかつて文明を構成していた建築物の残骸である砂状の物質が漂うばかりとなった。

ようやく泣き止んでぐったりしたリリンにシートベルトをさせたノレドは、この状況をどう受け止めていいのかわからず茫然としていた。

ところが、エンフォーサーに操縦されたG-ルシファーは今度はメガキャノンを構えて壁をぶち抜いてしまった。そしてもうもうと煙が立ち込める中に入っていった。

その先にあったのは、巨大なドッグであった。遠くに資源採掘用の隕石が見える。数キロはある壁面にはヘルメス財団の薔薇の紋章が描かれていた。G-ルシファーはその空間の解析を始めた。また銀色の女性エンフォーサーの瞳が赤く光り、その上空を旋回したのちに虹のような光の粒を放出し始めた。それに触れた係留中の戦艦やモビルスーツ、作業用の足場などが消失していった。

はたと我に返ったノレドは、エンフォーサーをこのままにしてはいけないと揺さぶったり殴ったりしたものの相手にはまるで効いていないようで埒が明かない。そこで思い切ってラライヤのパイロットスーツを持ち出してそのヘルメットで思いっきり頭部を殴りつけた。

すると瞳の赤は消え、エンフォーサーはぐったりとうなだれた。

彼女を必死に座席から引き離すと、ノレドは操縦を取り戻して事態の収拾を図ろうとした。だが彼女はG-ルシファーの操縦に慣れているわけではない。ノレドは基本的な動作をさせることしかできないのだ。

このまま放置すると広大なこのヘルメス財団の施設まで灰燼に帰してしまうと恐れたノレドは、半べそをかきながら必死にパネルを操作して、虹色の光の粒の放出を止めようとした。だが何をどういじってもG-ルシファーは止まらず、30分ほどしてその空間内にあったものを何もかも消滅させてしまった。

ノレド「なんだったんだー。この機体に一体何があってこんなことになっちゃったんだろう。(後ろを振り返る)とにかくリリンちゃんだけは助けなきゃ」

そう覚悟を決めたノレドは、G-ルシファーが空けた巨大な穴をくぐり、ラライヤを探すためにジット・ラボまで戻ってみることにした。






急遽ビーナス・グロゥブの新総裁に任命されたキルメジット・ハイデンは、1時間早まった朝からおかしなことばかりが続くのを感じていた。

まだ副総裁だった朝のこと、ラ・グーからの命令で理由がわからないままスコード教の司祭を逮捕したのち、司祭に手錠をかけたばかりだというのに地球からやって来たゲル法王の説法に参加しなければいけなくなった。

その内容は素晴らしく、キルメジット・ハイデン自身も司祭逮捕の気まずさをしばし忘れて、聖堂に万雷の拍手が鳴り響いたときにはうっすらと涙を浮かべるほどであった。

永らくラ・グーの副総裁として任務を果たしてきた彼は、ラ・グーより120歳も若く、白い壮健な表情は頼もしさに溢れていたものの、真実の姿はムタチオンに苦しむ痩せ細った肉体をボディ・スーツでごまかしているだけであった。彼はヘルメス財団に迎え入れられたことで若返りの手術を受けられる手はずとなり、顔を元通りに戻し、肉体は屈強なボディ・スーツで固めて生まれ変わった。

そんな彼にヘルメス財団より呼び出しがかかったとき、ラ・グーはすでに絶命していた。すぐさま聖堂を出た彼はやって来た近衛兵団にエアカーに乗せられようとした。

それを呼び止める姿を確認したとき、彼は多くのことを悟らねばならなかった。

エアカーに乗り込む前に声を掛けられた彼は、それがラ・グーの第1秘書であると認め、近衛兵を下がらせて彼の話に耳を傾けた。表情を悟られぬように壁に向かって話を聞いていたが、その話は信じられないものだった。彼は男に耳打ちをした。

ハイデン「ヘルメス財団が宇宙世紀再来を目論んでいるなどという話をどうして信じられようか」

秘書A「でなければ、誰があのラ・グー総裁を手に掛けたりいたしましょう。詳しいことはいずれあなたさまの元へ何かが届けられるはずです。だれも信用せず、ご自身だけをお信じになることです。ハイデン閣下、護身用のピストルはお持ちで」

ハイデン「持っているがまさか」

秘書A「覚悟はできております」

ハイデンはその男を突き飛ばすと、男が身構えるより先にピストルを取り出して相手の頭を撃ち抜いた。倒れた男の手には銃が握られている。たちまち近衛兵が駆け寄り、聖堂から出てこようとしていた一般信徒を建物の中へ通し戻した。

近衛兵「この男は?」

ハイデン「(汗をかきながら)ラ・グー総裁の元秘書の男だ。不埒な話でたぶらかそうとするので撃ち殺した。(大袈裟に嘆いてみせる)神聖な聖堂の前でなんということだ。素晴らしい説法を聞いた後にこのような殺生をせねばならぬとは!」







赤紫色のジャイオーンを操っているのが誰なのか、ベルリには分からなかった。しかし、ラ・グー総裁を目の前で殺されたあとにG-セルフを渡せと要求されてもできるはずがなかった。

ジャイオーンと5機のリジットの目的はG-セルフのようだった。相手は搦手で機体を奪うつもりらしく、ビームもソードも使ってこない。ジット・ラボの建物の影に隠れながらの追いかけ合いは30分ほども続いた。G-セルフの中にはラライヤも同乗しており、身体を固定していないために重力下では下手な動きはできない。

途中で1度突き上げるような衝撃があった。物陰に隠れていたG-セルフはその衝撃で倒れてきたクレーンの下敷きになりかけた。すぐに建物の中から出ると、もうそこに敵の姿はなかった。

しばらくして姿を現したのはG-ルシファーだった。コクピットのハッチが開いており、ノーマルスーツを着たノレドの姿が見える。ベルリもG-セルフのハッチを開いて、2機は向かい合って寄り添うように停止した。良く見るとノレドは目を真っ赤にして泣いていた。

ノレド「(大声で)ベルリー。あたし大変なことをしちゃったかもしれない」

ベルリ「落ち着け、ノレド」

ラライヤ「(ベルリを押しのけ)リリンちゃんは無事ですかー」

ノレド「リリンちゃんは無事。でも、でも・・・」

ラライヤ「(ベルリに向かって)わたし、あちらへ行きます」

ベルリ「頼む」

コクピットでひとりになったベルリは、ノレドの様子が明らかにおかしいことや、リリンという自分の知らない少女をふたりが絶えず気にしていることなどを不思議に感じていた。

ベルリ「そうか、ノレドとは日本で別れてからもう何か月も会ってない。お互いに話さなきゃいけないことがたくさんあるんだ、きっと・・・。でもぼくは」

ゴンドワンの港町をシャンクで走っているとき、ふいに姿を現したケルベスに拾われてそのまま昔に戻ってしまった彼は、いまはアイーダの名代としてフォトン・バッテリー供給再開の件でビーナス・グロゥブを再訪し、ラ・グー総裁と話し合わなくてはならない立場であった。

ラライヤに抱き着きながらわんわんと泣きじゃくるノレドの姿を見ながら、ベルリは彼女との距離が遠くなったことを強く実感していた。


(ED)


この続きはvol:45で。次回もよろしく。






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