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「Gレコ ファンジン 暁のジット団」vol:37(Gレコ2次創作 第9話・前半) [Gのレコンギスタ ファンジン]

「ガンダム レコンギスタの囹圄」


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第9話「全体主義の胎動」前半



(OP)


キャピタル・テリトリィ南東に位置する廃棄された研究施設。滑走路からホズ12番艦が飛び去っていく。彼らはゴンドワンのルイン・リーと合流することになっており、機体には発掘品のモビルスーツや小型の原子炉などを積んでいた。

残された隊員は大型トラックを使って残りの原子炉をゴンドワン北方まで運ぶことになっており、多くがすでに出発していた。

彼らクンタラ国建国戦線のメンバーは、キャピタル・テリトリィへ侵攻するつもりはなく、あくまで船舶によるゴンドワン入国を目指していた。そのためか、メンバーはゴンドワンこそ約束の地カーバであると信じ込んでいた。彼らはかなり大きく迂回して大西洋を渡り、北方の港を目指すことになっていた。

彼らに拉致されたジット団のメンバーも同行させられる手はずになっていた。しかし、クン・スーン、ローゼンタール・コバシらメンバー20名は、クンタラ国建国戦線に協力するそぶりを見せながら、ずっと脱出計画を練り上げていた。彼らは団長である亡きキア・ムベッキの忘れ形見でクン・スーンの実子であるジュニアを救出するため、キャピタルに向かう必要があったからだ。

彼らが反乱を起こしたのは、移動部隊が出払った深夜、最も人員が少なくなってからであった。すでに仲間のように扱われていた彼らは拘束もされていなかったので、見張りの男ふたりを襲撃するだけで宿舎からの脱出は成功した。

彼らはあらかじめ用意しておいたトラックに分乗して、コバシだけは愛機ズゴッキーを奪ってそのまま逃走した。

彼らの裏切りを知ったクンタラ国建国戦線のメンバーは、彼らを止めるべく銃を使用した。これはビーナス・グロゥブの人間には信じられないことであった。

コバシ「あいつら実弾を撃ってくるとかマジ頭おかしい」

先頭を行くトラック2台のあとを、ズゴッキーを駆るローゼンタール・コバシが毒づいた。ズゴッキーはライフルで倒されるほどヤワではなかったが、彼らが前方のトラックに分乗するジット団のメンバーを狙い撃ちしてくることに驚いたのだ。

施設にはまだ1000名の兵士がいるが、彼らの物資は不足しており、追いかけてくる車両もなければモビルスーツもない。そして彼らにはパイロット認証でロックの掛かったズゴッキーは動かせなかったのだ。

クンタラ国独立義勇軍を名乗るメンバーたちは、ビーナス・グロゥブの人間が地球のジャングルを酷く怖がっていると過信し、航空機や船さえ抑えておけば脱走しないだろうと高を括っていた。もちろんジット団のメンバーがそう吹き込んだだけなのだが、ビーナス・グロゥブという場所の神秘性が彼らに偽の情報を信じ込ませたのだった。

スーン「(トラックに揺られながら)本当ならいますぐにでも飛んでいってジュニアに逢いたいところだが、車ではかなり遠いのだろう?(同乗の兵士が頷く)なら仕方がない。連中がジュニアを人道的に扱っていることを願うしかない」

兵士A「キャピタルにはフルムーン・シップの乗組員が大勢亡命してすでに生活を営んでますから、あそこに戻ればなんとかなるはずです」

スーン「(幌をめくり)肉食獣だけには気をつけないとな。できるだけ海岸線を行こう」

クンタラ国独立義勇軍はついに追撃を諦め、引き返していった。





アメリアとゴンドワンの大陸間戦争は一層の激しさを増していた。その舞台となった大西洋には多くの戦艦が海の藻屑となって消え去っていた。

新聞は連日クリム・ニックとアイーダ・スルガンの終わりなき争いを社説で取り上げ、「闘争のための新世界秩序」か、「連帯のための新秩序」かを議論し合っていた。

クリム「戦争になれば闘争を呼び掛けた方に戦力は結集する。連帯を呼びかければどこも軍を動かさないからだ。平和は人を消極的にする」

ミック「ですが、闘争を呼び掛けた者は勝利と恩賞を与えねばなりませんね」

クリム「わかっている・・・。ダ・カラシュで出る。お前もラ・カラシュでついてこい。ドッティは出来たばかりの飛行場の確認だ」

アメリアとゴンドワンの戦争は主に海上が戦場になり、いまだお互いに相手国内に兵を進めるには至っていない。しかし、世界を手中に収めるのに、アメリアは必ずしも必要な土地ではなかった。

クリム・ニックとミック・ジャックを乗せたオーディン1番艦と随伴する2番艦は、イザネル大陸(アフリカ大陸)をかすめエルライド大陸(南米大陸)中東部へと迫っていた。この土地は移住最適地としてふたりがピックアップした土地のひとつであった。港町が点在しているが、どこも小さな漁村でしかない。

ゴンドワンの新型主力MSルーン・カラシュを改良した専用機ダ・カラシュで飛び立ったクリム・ニックは、工兵とともに先行して移住させたゴンドワンの若者たちが築いたこの拠点を一目で気に入った。町とまではいかないにしても、軍の拠点として十分な広さが整備されていたからだ。

着陸したクリムは、大勢の兵士や若者の熱烈な出迎えを受けた。アメリアの大統領の息子がゴンドワンでもてはやされるわけは、彼にスコード教への恐怖心がほとんどなかったことに拠る。クリムは信仰と距離を置き、その姿勢がキャピタルを恐れるゴンドワンの老人たちに出来ないことを成し遂げたのだ。

それがキャピタルの影響下にあるエルライド大陸への侵攻だった。アメリアに対して行ったカリブ地域の割譲要求はブラフだったのである。彼の狙いは最初からエルライド大陸とキャピタル・タワーであった。キャピタル・タワーとザンクト・ポルトを要塞化し、トワサンガへ侵攻するという修正グシオン・プランこそが彼の本命の作戦だったのである。

クリム「アイーダは姫さまだけあって甘い。民間船を装えば絶対に襲ってこないのだ。だからこうしてキャピタルの喉元へやって来られる。あと5日でここをもっと大きくしてキャピタル・テリトリィへの侵攻を開始する。ビルギーズ・シバが無能だとわかった以上、混乱しているうちに制圧してしまえばよい」

ミック「『闘争のための新世界秩序』への賛同を一夜で覆した借りは返してもらいませんとね。航空戦艦5隻、モビルスーツ100機、下がジャングルで地上軍が投入できないのは残念です」

意気揚々と司令本部のあるテントに入ったふたりであったが、様々な報告の中には残念なものも含まれていた。

クリム「そうか、G-セルフは奪取できなかったのか。(うつむき、もう一度視線を上げ)メガファウナのハッパに整備をさせて、動けるようにしたとの報告は受けた。そのあとはどうなったのだ?」

その質問に答えたのは、ゴンドワンからガランデンとともに出向して艦長を務めていたロイ・マコニックであった。彼はガランデンとともにキャピタルに残り、アーミー解散の時期に合わせゴンドワンへ戻る手はずになっていたが、アーミー解散に反対する一部反乱分子をそそのかし、ブルジン、ホズ12番艦を引き連れてクリム・ニックの作戦に参加する予定だったのだ。

ロイ「動けるようにはしたのですが、直後にキャピタル内でクンタラの反乱が起こったのです。それでホズ12番艦と一緒に逃げまして、ブルジンとガランデンで追いかけたところ、メガファウナが彼らと接触して攻撃を仕掛けてきたのです。それでやむなく撤退しました」

ミック「そのままブルジンとガランデンでこちらに合流したのね?」

ロイ「そうです」

クリム「メガファウナ・・・、アメリアとクンタラか・・・。結びついていたら厄介だな」

ミック「(クリムに向き直り)アイーダ姫さまが『クンタラ亡命者のための緊急動議』を可決させたことと関係ありますかね? クンタラ亡命者を大量に受け入れればフォトン・バッテリーの消費が早まるだけだと喜んだのに、見くびったようですね」

ロイ「ホズを奪われたのは自分の失態です。申し訳ありません」

クリム「いや(首を振って)ブルジンを2隻もキャピタルから奪ってきてくれたのは大戦果だ。なにせこれから戦う相手だからな。あれは航宙艦でもある。気にしないことだ。ホズみたいなオンボロ、クンタラにくれてやればいい」

ドッティ「G-セルフというのはそんなに良いモビルスーツなので?」

クリム「あれで負ければ諦めがつくという程度のことだ。ゴンドワンが用意してくれた専用機ダ・カラシュで勝てばいいだけのこと。ただ、メガファウナのベルリくんは、G-セルフと一緒だと・・・」

ミック「ジョーカーですわね」






ゴンドワン北方旧北欧地域では、相変わらず地域住民が町を捨てて流民となり、南へ下る現象が止まずにいた。

ゴンドワン北方は宇宙世紀時代に戦争に深く関与しなかったことで古い町並みが残り、人々の生活も安定していたのだが、北極の氷河が陸地を飲み込んでいく寒冷化現象の影響を如実に受け、全球凍結の噂が真実味をもって受け入れられる余地があったのだ。

またテロ事件も頻発しており、人々は治安が悪くなった町を捨て、南へ南へと生活拠点を移していた。

だが、全球凍結の噂も、テロ事件も、クンタラ国建国を目指すルイン・リーの策略であった。彼はトワサンガの技術者ロルッカ・ビスケスとミラジ・バルバロスを仲間に引き入れ、着々と支配地域を広げつつあった。ゴンドワン北方はいまや、クンタラ国を名乗る前夜といった状態になっている。

世界中に散らばっていたクンタラたちは、「クンタラ亡命者のための緊急動議」を議会で可決させたアメリアへ向かう者と、クンタラ国の噂を聞きつけてゴンドワン北方を目指す者とに二分されていた。

スコード教によって永らく虐げられてきたクンタラの人々は、リベラルな人間ほど宗教色の薄いアメリアを求め、コンサバティブな人間ほどクンタラ安息の地カーバを求める行動を取った。ルインの元へ集ってきたのは、宗教的に保守色の強い者たちで、戦闘意欲が強かったために、移住して即クンタラ建国戦線に参加する者が多数を占めていた。

つまり、ルイン・リーの支配地域は、住民が増えれば増えるほど、戦闘員も増えていったのである。

彼らを収容する住居はいくらでもあった。流民になる人間たちは家財道具を持ち出していくのが常であったが、不動産は置いていくほかなかった。人がいくらやってきても、住居は有り余るほどにあったのだ。問題はエネルギーである。北方地域自慢の森林地帯は惨めなほど壊滅していた。

ホズ12番艦が到着したのは、冬が本番を迎えたころだった。

ミラジ「これでおそらく通電するはずですが」

旧住民たちが公共の体育館として使っていた施設を占拠したクンタラ国建国戦線のメンバーは、キャピタル・テリトリィより運ばれてきた発掘品の原子炉を施設内の床板を剥がして並べてた。体育館は丘の上に立っており、遠く占拠地の町が一望できる。

この地域が最も人口が多く、ここを中心に新たな移住者は近隣の放棄された町々を支配下に置いていく準備が進んでいた。

ルイン「(床板を剥がされた体育館に並べられた多くの小型原子炉を眺めて感嘆する)これらがすべて宇宙世紀のモビルスーツに搭載されていたというんですか?」

ミラジ「月の周囲などいまだに宇宙世紀時代の原子炉がデブリとなって飛んでいるのです。宇宙ならば放射性物質が拡散してもいいだろうというので搭載していたのでしょうが、前世紀というのは何もかもが狂っていたとしか言いようがありませんな」

マニィ「(離れた体育館の入り口から大声で)ロルッカさんが用意できたってー」

ルイン「ではやってみますか。土の中で眠っていたものが果たして使えるものやら」

ルインがスイッチを入れると微かに動作音がした。彼はすぐにマニィのところまで歩き、一緒に成り行きを見守った。すると、丘の上に立つ体育館からすぐにわかるほど、次々に町が明るく輝き出した。墨色に濁って見えた町並みが、明るい暖色系の輝きに覆われていくさまは壮観であった。

マニィ「輝いている・・・」

ルイン「ああ・・・、これで今夜からはセントラルヒーティングも使えるだろう。もう凍えなくて済む」

ミラジ「(ふたりの近くにやってきて)ロルッカの奴も少しは静かになりそうですな」

ルイン「(振り向き)お尋ねしたいのですが、(町の方角へ手を拡げる)この原子炉というのはいつまで使えるものなのでしょうか?」

ミラジ「燃えている限りいつまでもです。核融合炉はまた違うのですが、そうですね、宇宙世紀初期のものでもあと1000年。後期のものなら3000年、もっとかな。要するにいつまでも使えます」

ルイン「使用量が供給量を上回らない限りですね」

ミラジ「原子炉はもっとあるのでしょう? 後で船でも運ばれてくるとか。だとしたら、クンタラ国の支配地域にどれほど人が住むのかわかりませんが、おそらく一生エネルギーには困らないはずです」

ルイン「なぜこんな便利なものをスコード教は禁止したのですか? アグテックのタブーの中でも最大のものとか。自分たちでタブーを作っておいて、フォトン・バッテリーの供給はギリギリしか行われず、こうして流民が発生しているのをなぜ黙って見ておいでか」

ミラジ「わたしは・・・(遠くでロルッカが睨みつけているのを見て首をすくめる)、スコード教徒ですから、その点については意見は申しませんが、前にあなたもおっしゃっていたように、原子炉は壊れると爆発して放射性物質を撒き散らして周囲を汚染します。そんなものをモビルスーツに搭載して、戦争を、つまり原子炉の壊し合いをしていたのですから、タブーにもなりましょう」

ルイン「宇宙世紀の人間というのはよほどバカな原始人だったのでしょうね。ああ、クリムという男はまさにモビルスーツオタクで、宇宙世紀の原始人モドキのような男でした。約束します。自分はこの原子炉というのを平和利用に限定して使いましょう。(町を指さし)見てくださいこの明かり。よし、マニィ、このまま町へ出て、一軒一軒電力が足りているか訊いていこう」

ルインとマニィは手を繋ぎながら町へ向かって歩き出した。マニィのお腹は徐々に大きくなりつつあった。ふたりには子供が生まれる予定なのだ。

ロルッカ「(ルインとマニィが離れていくのを確かめながら駆け寄り)ミラジ、お前本当にどうするつもりなのだ? 原子炉だぞ。アグテックのタブーだ。こんなことをしおって。これじゃクンパ・ルシータと変わらんじゃないか」

ミラジ「おまえさんはトワサンガに帰りたいのだろう? オレはとにかく生き延びて、アメリアで腰を落ち着けるつもりだ。いまは生き残ることが先決。ベルリ坊ちゃまもわかってくださるはずだ」

ロルッカ「あのメガファウナのギゼラとかいう女か。(床に唾を吐く)オレはもう本当にたくさんだ。戦争戦争戦争。地球は戦争ばかりじゃないか。いつ家が焼かれるかもしれないのに腰を落ち着けるも何もない。もうこんなのはまっぴらだ」

ミラジ「まぁそういうな。とにかく今夜からはセントラルヒーティングが使える。3か月待ては春も来る。暖かくなればまた考えも変わるさ。明日はあの発掘品のモビルスーツの起動テストをしなきゃいけない。オレはもう休ませてもらうよ」

ロルッカ「(遠ざかっていくミラジを睨みながら)地球人など互いに殺し合って全滅してしまえばいいのだ。オレはクンタラの世話になどなりたくない。だがオレに何ができる? 不細工なオレには誰もよって来やしない。武器商人を続けて、とにかく金を手に入れたい。金があればあとは何とでもなろうよ。先立つものさえあれば、いつかトワサンガへも帰れるかもしれない・・・」






カリル・カシスと9人の仲間たちは、案内された物件の内装の豪華さに驚いて感嘆の声をあげた。

不動産屋「以前のオーナーが高齢で店を手放すことになったのですが、フォトン・バッテリーの配給停止の影響で先の見通しが立たないことから買い手がつかなくて困っていたんですよ。現金でのお支払いと聞いていますし、お安くしておきますが」

カリルたちは店の中にある調度品やグラスや酒などを手に取ってかなり良いものだと確信した。

カリル「なかにあるもの全部込みでいいのよね?」

不動産屋「もちろんです。全部ばらして売ることも考えたのですが、この店はキャバレーといっても名店でして、固定のファンもたくさんおります。そうした方々からも早く新しいオーナーを見つけてくれとせがまれていたものですから」

こうしてカリルたちは東海岸の海沿いに大きな店を構えることになった。

元々彼女たちはクンタラであることを理由にキャピタルでまともな職を斡旋してもらえず、盛り場で働かされていた少女たちであったので、キャバレーの仕事には抵抗はなかった。自分たちの店であるため、賃金もキャピタルにいた頃より比較にならないほど良かった。

自分の店を持って働き始めた彼女たちの移民申請は捗り、若干の賄賂を用意建てしただけですぐに許可は下りた。店は常連だけでなく、若い女たち目当てで連日繁盛した。カリルを説教した世話人たちもこれには満足した。そして2度とクンタラ国とは交わるなと言い渡して去っていった。

ただ、彼女たちの中で一度芽生えた正義感を消し去ることは出来なかった。カリルはルインとの共闘を願う声に押されて、物品の横流しだけはやめることができなかった。

ゴンドワン北方地域を実質支配したといっても、ゴンドワン人のいる南部から物資を購入することなどできるはずがない。そこで飲食業であることを理由に食料品や日常品を大量購入できる立場を利用して、カリルはルインに食料や生活物資を送り続けた。

驚くことに彼女には代金が支払われた。口座に振り込まれた金額を見たカリルは、ゴンドワンのルインがすでにただのゲリラではなくなっていると認める外なかった。

ルインたちはすでに経済活動も行っていたのである。

カリル「これで貿易商に商売替えする算段さえついちまった。経済的な苦境を脱しちまうと、なんだか昔がウソのように感じる。これならあんまり危ない橋は渡らずに何とかやっていけそうだ」






夜のジャングルをひたすら北西へ向かって移動する2台のトラックとズゴッキー。目指す先はキャピタル・テリトリィだ。しかし、そこに辿り着いたからといって先のアテがあるわけではない。

スーン「ギャアアアア!」

コバシ「今度は何? あら珍しい生き物ね。これってもしかしてヒョウ?」

トラックの中の人間を食おうとしていたヒョウを、ズゴッキーで器用につまんで遠くへ放り投げる。

スーン「(真っ青になりながら)地球の生き物は呪われているのか。どいつもこいつも他の生き物を襲って殺そうとする。殺されたくないから爪をとがらせる。牙を剥き出しにする。奇声を上げる。毒を持つ。おかしい。こんな世界は狂っている。世界はもっと秩序立って美しくあるべきだ。そう、ビーナス・グロゥブのように。こいつらは勝手に進化してこうなった生き物ばかりなのだ。殺されたくないから強くなる。遺伝子が強化される。優勝劣敗で強いものだけが生き残る。これがクンパ・ルシータが目指した世界なのか。遺伝子を強化したものだけが生き残る世界。レコンギスタというのはそういうものだ。自分もそうだとわかっていたはずなのに。なぜビーナス・グロゥブの人間は地球人に勝てると信じ切っていたのだろう。こんな現実も知らずに。昆虫すら人間を襲ってくるとも知らずに、なぜ自分は当然のように地球人より強いと信じて、戦えば相手を屈せられると思い込んでいたのか。どうして思い上がったのか。地球のことなど何も知りもしないのに」

兵士A「姐さん、ずいぶんと弱気になってますねぇ。それより自分はなぜキャピタル・テリトリィがこのジャングルを開発しないか不思議なんですよ。ここを農地にしたらいいでしょ? 土地もある。雨も降る。水がいくらでも勝手に降ってくるんですよ」

兵士B「ああ、そうだな。ここを全部農地にすればいいんだ。キャピタルの連中はフォトン・バッテリーを右から左へ流すだけで金が入ってくるから怠け者なんだ。我々スペースノイドの労働者のように強い使命感で働いていない。働かなくても朝が来れば勝手に地球は温まるし、雨も降る。地球人というのは我々と根本的に意識が違う。危機感が教育されていない」

兵士C「こんな怠け者でバカな人間たちなら、いずれ独裁者に喝采を送るようになるだろうね。多くを与えると約束すれば、みんなすぐになびくだろう。生産した分しか分配されないと、地球人には理解できないのだ。地球という地の底に生きていると、魂を腐らせるのさ」


(アイキャッチ)


この続きはvol:38で。次回もよろしく。








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